人見知りの魔法使いと気弱な剣士くん 作:SS好きのヨーソロー
好きな人、僕にとってそれは誰に当てはまるのだろうか。
直ぐに頭をよぎったのは、桐ヶ谷直葉ちゃんだった。
あの子に対しては正直恋情を抱いていただろう。まあそれも美しい感情ではなく、どちらかというとドス黒い欲に塗れた気色の悪い感情だろうが。
あの恋情は、正確には恋愛感情というにも烏滸がましいものだ。
本人に対する憧れ、自分にないものを持っているところに魅力を感じ、それをただ求めていただけにすぎない。
そして極め付けに、未熟ゆえの自身の愚かな行動だ。
相手があの桐ヶ谷直葉ちゃんだったからまだ良かった、普通なら一発で通報されてもおかしくないだろう。しかも元々ゲームに誘ったのは紛れもなく僕だ。
それであの動きか。
・・・はあ、過去のムーブとはいえなぜあんなに気持ちの悪いことができた僕は。正気の沙汰じゃないだろ、吐くぞ気持ち悪くて。
・・・やめよう、これを考え始めたら何も始まらない。
そういえば・・・元気にしてるかな、あの子は・・・・・・
悩みはあるがそれを引きずっては何も始まらない。今は気にせず過ごすことにしよう。
せっかくだ、早速パン屋さんへ行ってみるとするか。
「いらっしゃいませ、って伸一くん!」
「よぉ沙綾ちゃん。おはよう、早速きたよー」
「いろいろ美味しいよ、おすすめは」
「カレーパンはおすすめだねぇ・・・あとメロンパンでしょー、クリームパンでしょー、あっ、サンドイッチとかも・・・あとは・・・うーん、全部かな」
「結局全部じゃん。モカらしいね」
「えー、だって事実じゃん。ねー蘭」
「・・・はいはい。まあ否定はしないけど。
あ、でもお兄さん、チョココロネは試してみて。あれは結構美味しいよ」
「お、おぉ。ありがとう二人とも。えーっと・・・Afterglowの子達だよね?」
「そうでーす、ギター担当モカちゃんなのだー、いえーいいえーい」
「・・・ボーカル担当、美竹蘭です」
「長田伸一です。といっても、みたことはあったかな?何はともあれよろしく頼むよ」
「はい、恭二から聞いてますから」
「恭くんの友達、聞いてますよー」
「あはは、そっか・・・あいつにもよろしく伝えておいてくれ」
「わかりましたー。恭くんもコーヒー飲みに来いっていってましたよー」
「お、そうか・・・なら行こうかな」
「その時はモカちゃんがおすすめを教えてしんぜよー」
「それ、つぐみの仕事でしょ・・・」
「二人は仲がいいね。・・・じゃあ、僕はこれで。またどこかであったらよろしく頼むよ」
ニコリと微笑むとパンを買って外に出る。
Afterglow、そして羽沢珈琲店・・・今度、是非とも行かないといけないな。と思った今日この頃であった。
昼食時
「・・・あ、なあなあ、今度バイトが被らない日ある?みんなで羽沢珈琲店行かないか?」
「そういえば恭二が働いてる場所だったよな。気になってたんだ」
「姉さんが言ってたよ、あそこのコーヒー好きなんだってさ」
「へぇ、松原さんはコーヒーが好きなんだな。なんというか親近感が湧くよ」
コーヒーは本当に素晴らしい。甘いから苦いまで、全てを楽しむことができる良いものだ。
特にコーヒーと共にいただくデザートがこれまた合うというものだ。
「今度姉さんを誘ったらどうだい?この前話を聞いたよ、優しそうな雰囲気だったー、って言ってたからさ」
「・・・いや、しかし松原さんは人見知りというか緊張してしまうんじゃなかったのかい?」
「だから話してみて雰囲気を知ったんでしょ。伸一もカフェとかよく行くだろ?美味しい店とか気になるって言ってたよ」
「・・・まぁ、君が嫌じゃないならいいが」
「なんでそうなるのさ」
「・・・そりゃ僕なんかに・・・っと、すまん。悪い癖が出た」
「・・・本当ね。姉さんたちに絡んで教えてもらいなさい、伸一はそんな人じゃないって」
「・・・確かにこころちゃんはすごいな。あの子の明るさは卑屈になる余裕がない」
「だよね。僕もハロハピの楽曲は好きなんだ。背中を押されるんだよね」
「・・・あぁ、なんだかわかるなぁ」
「とりあえず、お前ら今日バイトある?」
「ないよ」
「右に同じく」
「じゃあ今日行かないか?」
「あり。行きますか」
「お、いいねぇ!」
「だろ!じゃまた放課後にな!」
というわけで一旦別れ、また放課後に合流することになる。
放課後、早速僕たちは羽沢珈琲店の方へ赴くことにした。
「ここ、口コミもすごいいいみたい」
「料理もコーヒーも美味しくて清潔感がある、か」
「店員の対応もいいって書いてるな」
「地元民御用達らしいな」
「納得だね。ここ一体は暖かい雰囲気だし。着いたか」
ドアを開けると、カランカランと音が鳴る。
「いらっしゃいませ!あ、みなさん!きてくれたんですねー」
「お、頑張ってるねーつぐみちゃん」
「やっほーつぐちゃん」
「・・・確かAfterglowのキーボード担当の子だったね」
「はい、羽沢つぐみです!三名様ですねー、すぐ案内します!」
店に入ると、早速彼の姿が目に止まる。
「伸一!それにみんな!」
「やあ恭二、きたぜ」
「おー、様になってんなぁ恭二!」
「ふふ、その服にあってるね恭二」
「えへへ、そうだろ?詩乃ちゃんにも似合ってるって言ってもらったよ」
「お、よかったじゃん」
「皆さん仲良いんですもんね。こちらへどうぞ!
恭くん、皆と話してきなよ」
「え、いいのかい?」
「もちろん!今日は比較的楽だしイヴちゃんもいるから!」
「ありがとうつぐちゃん。・・・3人とも、何が飲みたいとかある?」
「特には・・・決めてないね」
「OK、ならここのブレンドを淹れるよ」
「お、それは楽しみ!」
「恭二のコーヒーは飲んだことないからな、楽しみだね」
任せて、と言い厨房へ向かう恭二の姿を見てつい微笑む。
「恭二、やっぱり生き生きしているなぁ」
「・・・ありがとうございます、皆さん」
「気にしなくていいって。僕たちは彼のやりたいことを手伝っただけさ」
「そーそー、啖呵切った恭二は格好良かったよな!」
「『シノンやみんなのため、そして僕自身のために!兄さんは僕が止めてみせるッ!!』だったかな、あれ本当にシビれたよ」
懐かしい思い出を話す。コーヒーを持ってきていた恭二はというと、顔面が真っ赤だった
「ちょっと!その話はやめておくれ!恥ずかしくて仕方がないじゃないか!」
「今更だろ、慣れろって!あれ結局中継されてたんだし」
「そ、そうはいってもなぁ」
「あはは、恭くんすごくカッコよかったよ!」
「・・・照れくさいなぁ。ありがとうつぐちゃん。
あとこれ、コーヒーです。オリジナルブレンドなんだ。きっと気にいると思うよ」
テーブルに置かれたコーヒーに口をつける。
「・・・あ、本当だ。すごく美味しい!」
「・・・確かに。飲みやすいな、口当たりもすごくいい」
恭二の淹れたコーヒーが美味しい、とは偶に詩乃ちゃんから聞くことがあったが、まさかこれほどまでとは思っても見なかった。
「・・・全く、詩乃ちゃんがいっていたことがよくわかる」
「あはは、なんだか照れくさいなぁ」
「はい!シノさんはキョウジくんととても仲がいいです!」
「あ、イヴちゃん。こんにちは」
羽沢珈琲店の制服を着た白髪の美少女。モデル的見た目をしているこの子を僕は知っている。
「・・・Pastel*Palettesの若宮イヴちゃん、かな?」
「はい!知ってくれてるのですか!?」
「はは、詳しくはないのだけれどね、テレビでよく聞く名前だと思ってね。こいつらはまあ知ってると思うし、一応僕の自己紹介を。僕は長田伸一。こいつらの知り合いで普通の学生さ」
「あ、ナガタくん!あなたがナガタくんなのですね!?」
嬉しそうな顔をし、ずいっと近寄る彼女についびっくりする。
「おっと、どうかしたのかな?と言うか僕のことを知っているのかい?」
「はい!スグハさんから聞いてます!とても優しい人だと!」
「・・・スグハ・・・直葉ちゃんか。と言うことは剣道関連かな?」
そういえば、前にりんちゃんが若宮さんが直葉ちゃんのことについて熱弁していたと言うことを教えてくれた気がする。
「ハイ!それにとても剣道が強いと聞いてます!」
「・・・そ、それは僕の話かい?」
「違うのですか・・・?」
「う、うーん・・・自分では強いとは思ったことはないが、一応竹刀を振ることはできるね。僕はネットゲームを嗜んでいるんだが、そのゲームで僕は刀を使っているんだ。だからそれの練習として竹刀を振ることはあるね」
「VRですよね!スグハさんから話を聞いてます!私も気になってたんです!」
「VRはいいよ。本当に別世界に行ける感覚だからね。
まあもし何かの機会があれば僕の知り合いを紹介しよう。
ここにいるユウたちもVRには詳しいし、直葉ちゃんのお兄さん、桐ヶ谷和人くんもとても詳しいんだ」
「カンゲキです!ありがとうございます!親睦のハグを・・・」
「おっと、ぼくは恥ずかしがり屋でね。シェイクハンド・・・握手でいいかな?」
「もちろんです!これでワタシたちは友達です!」
「・・・はは。よろしく頼むよ。
・・・悠真、これ僕悪くないよな」
「いやもう逆に偉いよ。割とまじで」
「さすが伸一だね。理性の化け物(笑)のあだ名をつけてあげたいよ」
「ツッキー、それはおちょくってる。めっちゃおちょくってる。煽りレベル100だからね???」
若宮さんが頭を???にしているが知らないほうがいい。
ピュアな心はどうしても、汚したくないからね!!
羽沢珈琲店に行き、アイドルと仲良くなった(決して僕の思い込みではない。・・・思い込みではないよね?)日からしばらく。
僕は普通にハマって通い慣れてしまっている。
恐るべし羽沢珈琲店、恐るべし試作のケーキ!
恐るべし、常連のあったかいこの空気感!!
「ふっふっふー、伸一さんも入り浸ってますねぇ」
「いや、これは入り浸るって・・・だって美味しいコーヒー飲めるんだよ?たまに試作のケーキ食わせてもらえるんだよ?ここ最高すぎやしませんかね」
「わかりますよぉ。つい入り浸りますよねえ」
「私たちはほぼ集まるためみたいなもんでしょモカ。・・・こんにちわ、伸一さん」
「おー、こんにちわ蘭ちゃん」
「うー、二人がこんな男の人と仲良くやってるのイメージ出来ないよぉ・・・」
「それ僕のこと貶してないよね?頼むから貶してないといってくれ」
「も、もう!だめだよひまりちゃん!伸一さんはそんな人じゃないよ!」
「うぅ、つぐみちゃんは天使だなまじで」
「あー!おい!つぐみをたらしてんじゃねーぞー?」
「ノリが厄介なおじさんなんだよ巴ちゃん。たらせる勇気あるわけないじゃない」
絶賛Afterglowのメンバーから揶揄われております。常習犯上原ひまりと宇田川巴。絶対許早苗
「まあまあ、甘んじて受け入れなよ伸一」
「お前はこっちの味方だと思ってたよ恭二」
「僕はAfterglowと詩乃ちゃんのために戦うからね」
「きゃー、恭くんかっこいー!」
「よっ!かっこいいぞ恭二!」
「また始まったよこの流れ。よく飽きないね君たち?」
「そりゃあ、これがAfterglowのいつも通りですから」
「おー、蘭から出ました。いつも通り。いただきましたー」
「もう、やめてよモカ!」
「なんだかんだ言って、伸一さんもノリノリじゃーん」
「ノリノリじゃーん?」
「言っとくけど常習犯二名のせいだからな?おい待て常習犯知らんぷりするんじゃないこっちを見なさい」
やれやれ、と頭をかきながらため息を吐く。
つぐみちゃんはその様子を見て笑ってた。あかんこの子も楽しんでる。
「・・・皆、仲良さそうでよかった」
「・・・そりゃま、君の人徳だろうな。君みたいないい子がいるからいつも通り?ってグループに僕は仲良くさせてもらってる。君のその長所は羨ましい限りだぜ」
「おー、伸一さんがいいこといったー」
「明日もしかして槍でも降る?」
「OKひまりちゃん君の家の周りにだけ逆さのてるてる坊主を大量にばら撒いておくよ」
「うわぁ!?ガチガチの呪いじゃん!」
「ひまり、明日は別行動しよう」
「アタシも雨は嫌かなー」
「えぇ!?みんなひどいよー!」
「自業自得さ。ちなみに無関係なフリをしているそこの宇田川巴ちゃん。君の家にも実行だ」
「ヒェッ・・・・・・」
この子達と話しているとついネタに走ってふざけてしまう。
周囲も不愉快そうな様子はなく、微笑ましいものを見る目でこちらを見ている。
Afterglowとその幼馴染新川恭二。
彼を通じなければ知り合うことのなかった彼女ら。
蘭ちゃんが言っていた、いつも通りの日々を僕は今日も精一杯楽しんでいる。