転生したらガーネフだった件   作:乾燥海藻類

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開拓編

テーベへと拠点を移し、俺は本格的に開拓事業を進めることにした。

大陸各地から開拓民を募集し、テーベは賑わいを見せる。

ワーレンからも傭兵団がやってきた。シーザはいなかったが、ラディはいた。出稼ぎ感覚なのかもしれない。

 

儲けの匂いを嗅ぎつけて、商人も集まってきた。人が集まれば経済も発展する。幾人かの商人は俺に投資を持ちかけてきた。

カダインの事業に食い込めなかったことを後悔しているのだろう。

まああの時の俺は信用が足りてなかったからな。慎重な商人ほどカダインには近寄らなかった。その結果、死中に活を求めた若い商人が一番利益を得た。

 

言ってみればテーベは、商人たちにとっては第2の大型商機(ビッグウェーブ)なのだ。

アカネイアは利権が大きく、新鋭の商家は切り込めない。しかも今のアカネイアはかなりゴタゴタしている。

復興で盛り上がっているアリティアも、商機という意味では落ち着いてきた。

グルニア、マケドニアは大きく荒らされたわけではないので、地元の商人たちで十分に回るだろう。

 

今のテーベは開拓の最前線。かつては幻の街と呼ばれたテーベも、今は少なくない人間の暮らす、現実の街となっている。

さて、開拓開拓と叫んでみても、そう簡単にいくものではない。簡単にいくなら先に誰かがやっている。

まずテーベの北には険しい山脈がある。

この向こう側がどうなっているのか、船乗りたちに聞いても、行ったことがないから分からないという。

 

どうやら北西にある島が海賊の根城になっているようで、北に向かうと彼らに襲われるのだそうだ。

つまり、西回りで船を出すと海賊を相手にすることになる。山越えルートだと飛竜や蛮族が相手になる。

 

最短ルートはオレルアンの北から内海を渡るルートなのだが、オレルアンとの交渉も面倒だし、港を造って大型船を造ってとなると時間がかかってしまう。

ちなみに、山脈の先の地形は大体分かっている。頭の中の大陸地図(原作知識)が正しいという前提だが。

 

ところで話は変わるが、レスキューの杖というものがある。

その名の通り、遠方にいる仲間を救出する魔法なのだが、実はこの魔法、相手の同意が必要なのだ。

考えてみれば当たり前の話で、相手の同意なく呼び寄せることができるのなら、それは救出ではなく拉致の魔法だ。

 

同意を得て、魔法の対象とするには、相手と魔力の波長を合わせて釣り上げる必要がある。釣り上げると表現したように、感覚としては一本釣りに似ている。

前置きが長くなったが、要するに自分と対象は魔力という糸で繋がっているのだ。

これがきっかけだった。もしかして通信に使えるのでは、と。

 

結果から言うと、成功した。リンクさせた魔導書を一対用意する必要はあるが、確かに声は繋がったのだ。

距離の問題はあるが、中継地点を作れば解決する。

 

技術革新だ! と1人で盛り上がっていたが、落ち着いて考えてみたら、これガトーがやっている「声を届ける」魔法の劣化版だな。

いや、ガトーしか使えなかった魔法を魔導書に落とし込めたのは快挙では?

うむ、そう思うようにしよう。

 

話を戻そう。

俺は悩んだ末に、海路を使うことにした。その足掛かりとして、海賊の占拠している島を獲る。

あいつらは利の匂いに敏感だ。開拓を進めていけば、必ず攻め込んでくる。その前に叩いてしまう方が安心なのだ。

それにチマチマと交易の邪魔をされることに、商人や船乗りも嫌気がさしていた。人気取りのためでもあるのだ。

 

陣容を整えて、深夜に船を出向させた。

島の裏手に船をつけ、夜明け前に攻め込む算段だった。

だが、敵も用心深い。船は敵の哨戒船に発見されてしまった。

夜中だというのに、真面目なことだ。いや、夜中だからこそか。

 

「メティオを打ちこめ。沈没はさせなくていい」

「了解!」

 

天空から火の玉が降り注ぐ。敵船に火災が発生し、逃走を始めた。

その灯りはもはや目印でしかなかった。

敵はこちらを商船と勘違いしているだろう。距離を取ったまま追跡する。

払暁になると、海賊の港が見えた。

大型船が2隻。中型船が2隻。小型船が6隻か。大所帯だな。まあ島ひとつを占拠しているなら妥当なところか。ちょっともったいないが、逃げられても面倒だ。まとめて沈めておこう。

 

「――隕石召喚(メティオ)

 

簡易版ではない、本物のメティオ。降り注ぐ隕石が、全ての海賊船を破壊した。

 

「足は奪った。乗り込むぞ」

「海賊どもは殲滅でよろしいですか?」

「死兵を相手にするのは厄介だ。武器を捨て、降伏するのなら許してやれ」

「……許すのですか?」

 

傭兵隊長(ラディ)が微妙な表情を浮かべる。まあ賊相手に戦うのは、彼の方が経験豊富だろう。情けをかけて痛い目にあったことがあるのかもしれない。

 

「新しい魔法の実験台になってもらう。大半は死ぬだろうが、耐え抜くことができれば、労働刑で許してやろうというだけの話だ」

 

俺がそう言うと、ラディは渋々ながら納得してくれた。ちょっと引きつったような顔をしていたのは気のせいだろう。

ラディ率いる傭兵隊が上陸し、エルレーン率いる魔導士隊が援護する。

 

「おまえたちは戦場を迂回して賊のアジトへ向かえ。捕らわれた者がいるやもしれん」

「ハッ!」

 

カダインにいるのは魔導士だけではない。その中から選別して密偵部隊を作った。忍者のようなものだが、この世界には忍者という言葉はない。

素早い魔導士、魔法の使える盗賊、くらいの認識だ。

 

戦況はこちらが優勢だ。傷を負ったらリブローが飛び、深手を負えば一度下がってリライブで回復するといった攻守において隙の無い布陣だからな。

対して相手は全員が海賊だ。剣、槍、斧、弓と武装は様々だが、魔導士はいなかった。

 

「武器を捨てて降伏しろ! 命までは取らない!」

 

ラディが声高に叫んでいるが、最初はゲラゲラと笑われているだけだった。まああいつ童顔だからな。整ってはいるが、海賊から見ればナメられる容姿だ。

だが戦況が悪くなるにつれ、降伏するものが増えてきた。

そして、投降した海賊の1人の頭が、吹き飛んだ。

 

「日和ってんじゃねぇ! 今さら俺たちが許されるわけねぇだろうが! 戦うんだよ!」

 

頭目の恫喝で流れが変わった。身長は2m近くあるな。はち切れんばかりの筋肉に、キラリと光る珍しい形の長剣を手にしている。

あれは日本刀か? いや、何か違うような……そうか、倭刀だ。凄いな、相当なレアモノだぞ。

 

頭目はかなりの実力者だった。傭兵部隊は鎧袖一触で突破され、あの暗黒戦争を生き抜いたラディも防戦一方だ。飛んでくる魔法もひらりとかわしている。巨体の割に素早い。

その奮戦ぶりに、海賊たちも息を吹き返し始めた。

このままではマズいか。

飛行魔法でふわりと浮き上がり、頭目の前に降り立つ。

 

「なんだこのジジイ!」

 

舞い上がった砂に目を細めながら、頭目が俺を睨みつける。

 

「見せてやろう。心の闇が作り出した、最強の力の象徴。完全なる勝利を導く絶対的な力を。この力の前では、あらゆるものが無力」

「――ッ!?」

 

危険な空気を感じ取ったのか、頭目は一足飛びで距離を詰めてきた。

速い! ぐだぐだと口上を述べているヒマはなさそうだ。

 

「死ぬがよい、マフー!」

 

手加減なしの全力マフー。怨霊たちが形を成し、標的へと襲い掛かる。

 

「なっ!? クソがっ!」

 

頭目は驚くべき速さで回避行動に移った。並みの精神力なら足がすくんで動けなくなるところだが、たいした胆力だ。だが残念。マフーからは逃げられない。

怨霊が頭目の精神へと潜り込む。

 

「あ、あ、ああ、アアアァァァアアァッッ!!」

 

断末魔の悲鳴が響き渡る。その絶叫は、戦場の隅々まで届いただろう。

目、耳、鼻、口、あらゆる穴から血が噴き出し、頭目は仰向けに倒れた。

エッグいなぁ。こんなモン生み出すほど、ガーネフは心に闇を抱えていたのだろう。ただ使用者が俺に変わってから、少し性質が変わったような気がする。この頭目も、マフーの前で動けてたし。

 

「まだやるかね」

 

静寂の中で、俺の声はよく響いた。海賊たちは次々と武器を投げ捨てていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海賊のアジトには、やはり虜囚がいた。海賊たちの下で奴隷のようにこき使われていたそうだ。その中には女性もいた。どこかから攫われてきたのだろう。

人質にするべくアジトに戻ってきた海賊もいたそうだが、それは潜入していた密偵部隊が対処した。

あの頭目とはすれ違いだったそうだ。運が良かった。たぶん密偵部隊では対処できなかっただろう。

 

保護した虜囚たちは、海賊の皆殺しを望んだ。半狂乱となって「全員殺して!」と叫んでいた女性もいた。余程酷い目にあったのだろう。

ぶっちゃけそれでもいいかと思ったのだが、命は取らんと宣言して投降させたのだ。前言を翻すわけにもいかん。

ラディが言うには、海賊相手に約束を守る必要はないらしいが。

……それでいいのか。ちょっと怖いぞラディくん。

つかおまえ、紋章の謎(第2部)で暗殺集団に雇われてなかったっけ?

 

そういえばエレミヤの孤児院ってどこにあるんだっけか。各地の孤児院への寄付は以前から行ってきたが、途中から司祭(部下)に任せきりだったからな。カダインの評価も上がるし、魔導の才がありそうな子供もスカウトできる。

たぶん俺が前面に出ていたら、人買いみたいに思われただろうな。自分で言うのもなんだが、結構な悪人面だし。でも目は優しくなったと言われる。社交辞令かもしれんが。

 

戦闘も終わり、降伏した海賊を砂浜に集めた。

虜囚たちにも顛末を見届けてもらおうと立ち会ってもらっている。

 

「今からおまえたちに魔法をかける。それに耐え抜くことができれば、罪を許そう」

 

海賊たちが怯えた様子を俺を見上げている。そんなに怖いかね?

 

「――闇の裁き(ジャッジメント)

 

海賊たちの瞳がグルンと裏返る。これは以前に開発したナイトメアを改良した魔法だ。

この魔法は、罪の軽重によって悪夢の内容や時間が変わってくる。

ここで重要なのが罪悪感だ。例えば猟師は生きるために、動物を殺したりするが、それは罪ではなかろう。

傭兵や兵士も、場合によっては人を殺すが、それは罪ではないだろう。

もちろん、多少の罪悪感を感じていれば、この魔法でダメージは受けるかもしれないが。

 

つまりこの魔法は完璧ではない。罪を罪だと感じない者には効果がない。魂の根源に作用する魔法なので偽証は不可能だが、生来の精神病質者には、たぶん効果が薄い。

実験も十分ではなかったし、ある意味ではこれも実験の一部だ。

砂浜に集められた60人ほどの海賊たちの反応は様々だった。

 

絶叫する者。

助けを懇願する者。

小刻みに痙攣する者。

泡を吐いて気絶する者。

陸に打ち上げられた魚のように跳ねる者。

 

ちなみに、罪悪感の感じ方で悪夢の時間が変わると言ったが、この時間とはあくまで脳内の体感時間であり、現実の時間とは一致しない。

実際の時間としては10分ほどだ。

辛うじて生き残った者は8人だった。

 

この者たちは改めて精査し、石切り場か塩田で働いてもらうこととする。一応、虜囚たちに許可を求めると、彼らはもの凄い勢いで首を縦に振った。

うむ、了解を得られてよかった。

 

これで開拓の足掛かりはできた。

まあまずはこの島の開拓だな。海賊たちは奪うだけで、畑なんぞ作ってはいなかったからな。探せばたぶん鉱山もあるだろう。あるといいな。金山があれば最高だ。

水平線に目を向ければ、太陽が完全に顔を出している。

俺たちの前途を祝福するように、眩しい朝陽が降り注いだ。

 

 

 




というわけで完結です。(2回目)
これ以上は建国なろうチートの2番煎じになりそうなので。
ラディは成長率はかなり高いのに、オツムの方はあんまりよろしくないという設定らしいです。でもまあ部隊指揮くらいはできるだろうと。
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