FEカプありSSまとめ 作:猫ご飯
──運命だと思った。
よく、分からないモノに襲われて、死にそうになったときその人は私を助けてくれた。
青い髪の、白銀の鎧をつけた王子様。そんな人。
絵本の中から現れた私だけの王子様。
きっと、こんな村から私を連れ出して幸せにするために来てくれたのだ。
そう、私は気づいてしまった。
「無事か?」
その人の声は程よい低さで、私の心を癒やしてくれる音だった。
「は、はい……♡」
甘く、甘く声に艶を乗せて答える。私を見て欲しい、私の王子様になってほしい。そんな思いを乗せて。
「ならよかった、屍兵には気をつけるんだ、家は近くか?」
首を横に振る、今日は山菜を取りに山に来ていたから村までは半刻ほどかかる。
「じゃあ、送っていく」
「あ、ありがとうございます……!あの、お名前は……?」
「俺?俺は……クロム、クロムだ」
王子様は名前まで素晴らしいのか、あぁやっぱり私のための王子様だったのだ。この国の王子様と同じ名前だけど、もしかして本当に──?
王子様なのだろうか、だとしたら本当に運命で──
「クロム様、ありがとうございます、お手数おかけしますが送っていただけると、もしよろしければ私の家にお泊まりになられては?あと少しで夜が来ますし……!」
口からどんどんと言葉が溢れてくる、クロム様を引き止めて私を見て欲しい。私だけを見て!
「いや、大丈夫だ。近くに天幕を張ってある」
「そう、ですか」
作戦は失敗した。でもまだ、まだある。なにかきっと──!
「ルフレ、来てくれ」
王子様の声が甘い甘い声に変わった。
私以外の名前をその口で紡いだ。お姫様を呼ぶみたいな甘い声で。
「どうしたの?クロム」
「あぁ、この子を村まで送っていこうと思ってな、お前にもついてきてほしくて」
「えぇ、わかったわ。一緒にいきましょう」
王子様は、女の人に恋する目を向けた。
甘い声で、愛を囁くように会話をする。
どうして、どうして、どうして──!?
私の王子様なのに…………!どうして他の人を見るの!??私の王子様なのに!
その空間にボキッと心が折れる音がした。
私の王子様は、私を見てくれなくて一目惚れなんか存在しなくて私だけが勝手に舞い上がっていて──
王子様は私以外のこの、白銀の髪を持った女性が好きで、私は眼中になくて。
最初から負け戦だったのだ。
勝つ未来なんて無い戦。私は一生この村から出れず、出ようとも思わない。この村で一生生きていく。
だって、私は村の外に出ていく勇気なんて無いのだから。
「あの、大丈夫です、走ればすぐ村に着きますし、だからその、助けてくれてありがとうございました!その、クロム様も気をつけて──!」
早口でお礼を述べて、その場から逃げ出した。
目から流れる涙を無視して。