スーパーロボット大戦Z 魔王の降臨   作:有頂天皇帝

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まえがき
今回は戦闘シーンはなく、ナナリーに対して厳しい表現がありますので、ナナリーファンの方は読む際はお気をつけください。今回でアッシュフォードでの会談は終了して次回では前半に会話パートを挟んでからフジの決戦前最後の戦いを書く予定です。



第九話 真なる皇帝

───時は遡ることペンドラゴンが制圧される3日前。シュナイゼルの切り札である空中要塞《ダモクレス》の頂上部にある屋内庭園。

色とりどりの花が咲き誇るその庭園の最奥に、車椅子に座ったひとりの少女────ナナリー・ヴィ・ブリタニアがいる。その両側を固める4人の男女は、シュナイゼル、カノン、コーネリア・リ・ブリタニア、ディートハルト・リート。その5人の前に、騎士服と色とりどりのマントを纏った男女────ブリタニア帝国最強と名高い、シャルル・ジ・ブリタニア直属の騎士団《皇卓の騎士(ナイトオブラウンズ )》だ。

 

ところがミケーレ・マンフレディの死亡とモニカの裏切りによって元々空席だったものも合わせて5つの空席ができていた。しかしシュナイゼルによって新たに5人の騎士が推薦されたことにより空席が埋まり、正式な12人の精強な騎士たちが《皇卓の騎士》の座に集った。現在のメンバーはすなわち────

 

 

第一席(ナイトオブワン)》ビスマルク・ヴァルトシュタイン。

十三騎士の筆頭にして帝国最強の名を欲しいがままにする豪傑で、シャルルが右腕として最も信頼を置いている人物。大型の専用ナイトメア《ギャラハッド》に搭乗し、シャルルより銘を授けられた身の丈以上の大剣《エクスカリバー》を振い指揮を執る。

 

 

第二席(ナイトオブツー)》、シルヴェスター・アシモフ

重武装特機《ジガンスクード・フーモ》に搭乗し、ロシア軍時代の部下たちとブリタニアで新たに配下となった強靭な戦士たちによって結成された《鋼鉄の巨人兵団(アイアン・タイタンズ)》を率いる。

元ロシア軍人の英雄にして《軍神》の異名を持つことから味方からは敬われ、敵からは恐れられた屈強な赤い長髪の老戦士。娘が大病を患ったことによりその治療のためにブリタニア軍に入隊し、その実力の高さから一気にブリタニア軍でも高い地位へと登りつめ娘の治療を条件にラウンズの称号を受け入れた。性格は豪快で荒っぽいが、軍人として確かな実力を持ち、浮き足だつ新兵を一喝して落ち着かせる、自身の非を認めて頭を下げる等、大きな器の持ち主。

洞察力に優れており、実はSF小説で文壇デビューもしている。

部下にも慕われており、自身を『軍人』と言いつつも軽口でやり取りできる信頼関係がある。

反面、軍人としての非情さも持ち合わせており、敵対するものには容赦なく手を下す。家族や仲間に対する愛情は本物であり、根は情の深い人物である。

 

 

第三席(ナイトオブスリー)》、ジノ・ヴァインベルグ

名門貴族の出であるものの、高機動戦型ナイトメア《トリスタン》を駆るパイロットとして超絶的な技量を持ちその実力で現在の地位についた。性格は陽気で人なつこく、ナンバーズ出身のスザクや記憶を失ったライにも友人として接していた。

 

 

第四席(ナイトオブフォー)》、ドロテア・エルンスト

男勝りを通り越して剛毅な性格の褐色肌の女性であり、騎士として武人として常に堂々としている。火力に優れた重装型の専用ナイトメア《パロミデス》を乗機とし、ティアルナと並んで女性ながらビスマルクと肩を並べるほどの豪傑として知られており、その実力も決して伊達ではない。

 

 

第五席(ナイトオブファイブ)》、アドルフ・ラインハルト

高速戦仕様モビルスーツ《ブレイブ・ドンナー》を乗機する金髪の美丈夫で、感情を表に出すことはあまりなく部下に対してもキツい口調で当たるが、それはそれは「危険な任務の中で、部下たちに情を移すと辛くなってしまう」という想いゆえの言動であり、実際には部下の名前やプロフィールを全員分を余すところなく把握している頼れる人間。元はブリタニアの非道な実験の被験者として扱われていたがその実力の高さからシュナイゼルによって推薦されたと言われているが、実際のところ部下の命運を握られているためそれに従わざるを得ないとも言える。

 

 

第六席(ナイトオブシックス)》、アーニャ・アールストレイム

感情を表に出す事が少なく、特に興味の無い事は他人や物事に無関心なように見受けられる。ただし皇帝騎士のナンバー6の称号と、砲撃戦仕様の超重武装型の専用ナイトメア《モルドレッド》を駆るその技倆は伊達ではなく、最年少でその地位についている。

 

 

第七席(ナイトオブセブン)》、枢木スザク

ラウンズの中で唯一のナンバーズ出身の騎士。元々は第三皇女ユーフェミア・リ・ブリタニアの騎士であったが、ブラックリベリオンにてゼロを捕まえた功績によってラウンズの地位を得た。ナンバーズであることから一部の人間を除いて見下されているがそれに負けず内部からブリタニアを変えようと言う志を持つっている。生身でもビスマルクに並ぶ実力を持っており、最新鋭ナイトメアである第九世代KMF《ランスロット・アルビオン》を操り《白き死神》として敵に恐れられている。

 

 

第八席(ナイトオブエイト)》、ゾーリン・ファナスティック

オレンジの短髪で、右半身に奇怪な紋様を刻んでおり、右目が斜視気味の女性。乗機はパーシヴァルと同じ近接戦仕様のナイトメア《ダゴネット》。典型的なブリタニア貴族でありブリタニア人以外を下等な猿と見下しており金と権力、栄誉に対してとことん貪欲である。弱者をいたぶることを趣味としており投降してきた相手を笑いながら嬲り殺しすることから味方からも恐れられている。ルキアーノ・ブラッドリーと同じ戦場に立った時は獲物の奪い合いと腕を競い合うために2人が競った後の戦場は悲惨な状態となって殺されていることが多かった。

 

 

第九席(ナイトオブナイン)》、ノネット・エニアグラム

気さくで明るい女性で後輩の面倒見がよく、コーネリアに戦闘指南をした先輩であり、旧知の親友でもある。乗機はランスロットをベースにした接近戦仕様の専用ナイトメア《ボールス》。エリア24の総督になったマリーベルに代わって、大グリンダ騎士団の参謀としてオルドリン、ソキア、レオンハルト、ティンクのサポートを務めている。

 

 

第十席(ナイトオブテン)》ルキアーノ・ブラッドリー

《ブリタニアの吸血鬼》の異名で知られている人物で、本人の自称は《殺人の天才》。非常に好戦的かつ残虐な性格で「命は尊く最も大事なもの」だと認識しているのだが、だからこそそれを奪う殺人や破壊、及びそれらを合法的に行える戦争そのものに至上の快楽を見出している。第二次ブラックリベリオンにて紅月カレンと紅蓮聖天八極式に敗れ死亡したと思われていたが瀕死の状態を運良くシュナイゼル軍が保護し身体の半分以上を機械にすることによって生きながらえることに成功した。そのため自分を殺しかけたカレンにただならぬ恨みを抱いている。搭乗機はパーシヴァルを本体部分(コアユニット )にしたナイトギガフォートレス《パーシヴァル・クルーアル》。

 

 

第十一席(ナイトオブイレブン )》、デシル・ガレット

《神殺の英傑》の1人であるゼハート・ガレットの兄であり、Xラウンダーという優れた力を持っていることからブリタニア軍でも頭角を現していた。

相手の命を奪うことに快感を得ているルキアーノ以上の下衆。元々幼稚だったのがブリタニア貴族による選民思想によってさらに悪化しておりラウンズの中でも枢木スザク以上に煙たがられているが、その実力だけは本物のためそこだけは認められている。乗機は《ゼイドラカスタム》。

 

 

第十二席(ナイトオブトゥエルブ )》、バレット・ギュスターヴ

顔に大きな十文字の傷を持ち、膝まで垂れる長い髭をたくわえた屈強な老人。

かつてビスマルクやマリアンヌと共に血の紋章事件でシャルルに反旗を翻したもの達との戦いで両眼が潰れて盲目になってしまったがそれでもその実力は衰えるどころかさらに増しており、その実力はビスマルクが背中を預けるほど信頼出来るものだ。

トリスタンをベースにした高機動戦型ナイトメア《ライオネル》を操り、シャルル自らが銘を授けられた長剣《カラドボルグ》を振るう。

既に軍を引退し隠居していた身であったがビスマルクとシュナイゼルからの強い推薦によって再びその剣をとることになったが、ゾーリン、デシルを始めとした一部のブリタニア騎士たちからは軽く見られ蔑すまれていた。

 

 

シュナイゼル率いる旧皇帝軍最強戦力カードである彼らの他に、この庭園にいる者とすれば、オルドリン、ソキア、レオンハルト、ティンクらグリンダ騎士団の面々と、シュナイゼルの同盟相手である神聖ミスルギ皇国の皇帝ジュリオ・飛鳥・ミスルギと妹のシルヴィア・斑鳩・ミスルギ、2人の側近である紳士然とした青年・エンブリヲ。エンブリヲの配下である《ダイヤモンドローズ騎士団》。同じくシュナイゼルの同盟相手である治安維持を目的とした武装組織《ギャラルホルン》の中で最大規模の艦隊を所持する《月外縁軌道統合艦隊アリアンロッド》の指揮官ラスタル・エリオン、ラスタルの直属の配下であるガエリオ・ボードウィン、ジュリエッタ・ジュリス、イオク・クジャンと、独立新興国家《ファウンデーション王国》の宰相であるオルフェ・ラム・タオとファウンデーション王国の近衛師団《ブラックナイトスコード》、そして反コーディネイター団体の指導者《ブルーコスモス》の盟主ロード・ジブリールがいる。

 

「ナナリー。先にも伝えたように、ルルーシュが生きていたよ。しかし────」

 

ナナリーのそばに跪く形で目線を合わせ、シュナイゼルが囁くように話しかける。

 

「お兄さまは・・・ルルーシュお兄さまは、いつも優しかった」

 

と、最初は悲しそうな表情をしていたナナリーになっていたが、次第に失望と憤りが綯い交ぜになった表情になっていく。

 

「お母さまを亡くし、目と足の不自由な私が生きていけるようにと、いつも手を差し伸べてもらっていました。けれど、いつからか、お兄さまは変わってしまった・・・人々を騙し、傷つけ、世界を混乱させる・・・!」

 

そして、一呼吸置いた後、大きく切実な声でこう言った。

 

「私は・・・ルルーシュお兄さまを止めたい────!!」

 

「ナナリー・・・」

 

コーネリアが、そのナナリーの切実な声と表情に息を呑んだ。そしてシュナイゼルは、間を置いてからゆっくりと立ち上がり、ナイトオブラウンズを振り返る。

 

「ナイトオブラウンズの諸君。私はナナリーを補佐して偽帝ルルーシュを討つつもりだ。君たち皇帝直属の騎士はどう動く?」

 

シュナイゼルの問いに、12人のシャルル直属の騎士たちはこう斉唱した。

 

「「「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは・・・皇帝にあらず!!!」」」

 

それから次に、ビスマルクが一歩前へ進み出て、シュナイゼルとナナリーに向けてこう言った。

 

「我々ナイトオブラウンズが先頭に立ち、偽帝ルルーシュと反逆者マリーベルらその一派の者たちの征伐の準備を進めます。シュナイゼル皇子たちはブリタニアの貴族や騎士、そして民たちをまとめてください」

 

ビスマルクの言葉に、シュナイゼルは言葉には出さなかったが、薄ら笑いを浮かべて頷いた。それからシュナイゼルは、ジュリオ、シルヴィア、エンブリヲ、ラスタル、オルフェ、ジブリールに顔を向けるとこう話しかけた。

 

「そういう訳で、我々は偽帝ルルーシュを討ち取るために全力を尽くす。君たちにも是非とも御助力をお願いさせてもらうよ」

 

「いいですとも。そのために我々ミスルギも貴殿と手を結ぶことを選んだのでね」

 

「私の可愛い《ダイヤモンドローズ騎士団》の力、シュナイゼル殿もきっとお気に召しますでしょう」

 

「右に同じです。我らアリアンロッド艦隊も総力を上げて、シャルル代表の地球連邦を取り戻すことを約束いたしましょう」

 

ジュリオ、エンブリヲ、ラスタルがシュナイゼルに対してそう答え、シルヴィアは右に同じと言いたげで楽しそうな笑みを浮かべて頷くが、オルフェとジブリールはどこかシュナイゼルを警戒するような目で見ている。そんな中でビスマルクはノネットを振り返り、

 

「ノネット。貴卿は引き続きグリンダ騎士団を率い、シュナイゼル皇子らの藩屏となりお護りせよ」

 

「イエス・マイ・ロードだ。ヴァルトシュタイン卿」

 

ひとりだけ征伐から外されることに不服を唱えることなく、ノネットはあっさりと頷いた。その様子を見てから、シュナイゼルはナナリーを振り返る。

 

「ナナリー・・・よく決断してくれたね。いくら血を分けた兄妹であったとしても、凶行は止めなければならない」

 

「わかっています、シュナイゼルお兄さま。だからわたしは────」

 

「ナナリー皇女殿下・・・」

 

つい先日までの穏やかさとは打って変わって、毅然とした態度で振る舞うナナリーに、オルドリンは息を呑んだ。ソキアたち他のグリンダ騎士団の面々、警備に当たっているナナリーの筆頭騎士であるアリスを始めとした若い少女たちで結成された騎士団《小さい魔女 (リトルウィッチ)》のメンバーと彼女らと同じくかつての優しいナナリーを知っているスザクやジノ、アーニャも同じだった。

そして、艦内庭園の木々の裏に隠れる形でこのシュナイゼルとナナリーの会話を耳にした、篠崎咲世子も耳にして、胸を痛めて────。

 

そして3日後、同盟相手であるディガルド武国、メガトロンたちディセプティコン、ヴィンデルたちシャドウミラー、メキボスたちインスペクター、キバとガランによる同盟軍たちと共にペンドラゴンに対して進軍を行いたった3時間で制圧して見せたのだった。

 

◆◆◆◆◆

 

そして時は戻りアッシュフォード学園の会談場へとマーヤたちが駆け込む数分前。

第零騎士団の女性騎士のひとりが、ひどく慌てた様子で辺りを見回して叫んでいた。

 

「ラ、ライ卿・・・!ライ卿はいずこにっ!?」

 

「なによ、騒がしいわね。何があったわけ?」

 

アッシュフォード学園の警備に参加していたアルゼナルの一員であるアンジュが見咎めると、その女性騎士がアンジュを振り返り、息を切らしながら彼女の前に跪いた。

 

「セシル補佐官から緊急入電が・・・至急皇帝陛下とライ卿にお取り次ぎ願いたいとのことです!!」

 

「は?至急ってなんなの・・・」

 

女性隊員のその言葉にアンジュ、そしてタスクたちが訝しげになった時。

 

「お、おい! あんた、大丈夫か!?」

 

「誰か! 誰か救護班を呼んでくれっ!!」

 

近くから、慌てた2人の少女の叫び声が聞こえてきた。

アンジュたちがそちらに目を向けると、同じく警備同然の待機をモニカから命じられていたヒルダとロザリーが、片膝をついたレオタード風の装束の女性────篠崎咲世子に声をかけていた。見るとその女性は、あちこち傷を負っていた。

 

「しっかりしてください。大丈夫ですか? 何があったのですか?」

 

そこへナーガとカナメと共に駆けつけてきたサラマンディーネが、咲世子に話しかけた。すると、

 

「ラ、ライ様と、ルルーシュ様に・・・お取り次ぎを・・・!伝えなければ・・・伝えなければ・・・っ」

 

咲世子はサラマンディーネを、自分の口元に引き寄せる。

そして、傷だらけになってまでここへ持ってきた知らせを、彼の耳に入れた。

 

「────なんですって!?」

 

その知らせに、サラマンディーネが思わず驚きの大声を発した。アンジュとタスクたちも、つられてハッとした表情になった。

 

 

さらに同じ頃、カンボジアのグランベリーでも。

 

「エニアグラム卿!!き・・・緊急入電ですっ!!」

 

「え・・・ウソ!?ペンドラゴンが!!」

 

艦橋のオペレーター席で、エリシア・マルコーアとエリス・クシェシスカヤが、ひどく取り乱した様子で叫んでくる。

 

「今度は何だい!?報告は正確にしな!」

 

モニターに目を向けながら、ノネットが尖った声を出すと、エリシアが悲鳴じみた声でこう叫んだ。

 

「シュ、シュナイゼル殿下とディガルド武国を含めた同盟軍によって帝都ペンドラゴンが制圧されした!!!」

 

「「「────!!?」」」

 

ノネット、そしてオルドリンたちが驚いて振り返る。

そしてノネットがエリシアとエリスにすぐさまモニターを切り替えさせると、そのモニターに新たに映し出されたものを見て、環境にいる誰もが言葉を失った。

 

「ッ────!!」

 

「こ、これは・・・!?」

 

モニターの中に映し出されたのは、神聖ブリタニア帝国の首都・ペンドラゴンだった場所だった。

そこはかつてブリタニアの首都として栄華を誇っていた都市としての姿を誇っていたその都市は至る所に争いの後が見られ半壊している場所が多々あった。映像の一部では逃げ惑う人を虐殺するブルーコスモスとアリアンロッド艦隊のモビルスーツ、投降した兵士を踏み潰すディガルド武国のバイオゾイドとキバ軍の量産ロボットたちが嬉々として虐殺に及ぶ姿などが映っていた。

そのあまりのおぞましい映像を前にオルドリンたちが戦々恐々とこの有様を見つめる中、ノネットは怒りの形相でギリッと唇を噛み締めた。

こんな馬鹿げた芸当を指示する人間は、たったひとりしかいない。それもトウキョウ租界にて虐殺を行ったあの悪魔の兵器としてギアス以上に恐れられるアレを決戦兵器として多数積み込んだあの《要塞》を作った、男────。

 

「おのれ・・・シュナイゼル・・・っ!」

 

今はここにはいない第2皇子の名前を自分にしか聞こえない程度に呟き、ノネットはさらに唇を噛み締めた。

 

 

そして会談場では、マーヤに続いて、ソレスタルビーイングの母艦であるプトレマイオスのオペレータのフェルト・グレイスから、似たような報告が寄せられた。

それにスメラギたちが騒然となる中、今度はエターナルにいるメイリン・ホークから通信が入ってきた。

 

『ラクス様、シュナイゼル皇子から私たちとルルーシュ皇帝に通信が入っています!』

 

「なんですって!?」

 

「シュナイゼル皇子から・・・!」

 

シュナイゼルからの通信にルルーシュたち、そしてスメラギたち共々驚かされながら、ラクスが険しい表情で耳元のインカムに向かって答えた。

 

「わかりました。メイリンさん、回線をこちらに繋いでください」

 

『了解しました!』

 

ラクスがメイリンに通信を繋げるよう指示を出す中、ルルーシュはシュナイゼルに対して内心激しい舌打ちを送っていた。

 

(シュナイゼルめ・・・先手を打ってきたか・・・!!)

 

その時、会談場に設置されている立体モニターが起動し、空中ディスプレイが空に浮かび上がるとその画面に大胆不敵な凶行に手をつけていた男の顔が映り込んだ。

 

『────黒の騎士団との密談の時以来になるかな。他人を従えるのは気持ちがいいかい、ルルーシュ?』

 

「シュナイゼル・・・!!」

 

いつもと変わらない、悠然とした笑みを浮かべる帝国宰相シュナイゼルに対してルルーシュは顔を険しくさせる。ライ、トレーズ、ライ、イングラム、ビアン、ゼハート、ミリアルド、バン大佐、マリオ、マーヤ、モニカもだ。

そしてZEXISのスメラギ、ジェフリー、F.S.、ラクス、アムロ、クワトロ、刹那たちも睨むようにして見てくる中、シュナイゼルは穏やかに告げた。

 

『《終焉の騎士(ナイトオブゼロ )》、《神殺の英傑(エインヘリアル )》十二騎士、そしてマリー率いる大グリンダ騎士団と大ゾギリア共和国をはじめとした君の同盟国や数々の組織・・・。いずれも確かに強力な精鋭(エース)だが、今、フレイヤ弾頭の全ては私の手にある。こちらの同盟国である神聖ミスルギ皇国とファウンデーション王国、ロゴスも含めた私についてきてくれる者たちと合わせれば、君の持ってる切札(ジョーカー)たちに対抗できるのに相当の戦力となるだろう』

 

「・・・・・・」

 

ルルーシュは険しい顔をしたまま何も答えず、黙ってシュナイゼルの言葉を聞いていた。そして少し間を置いてから、モニカが口を挟んできた。

 

「随分大胆な 凶行(行い )に出てきたものですね、シュナイゼル殿下。あなたが宰相として尽くしてきたシャルル・ジ・ブリタニア時代の帝国の愚行を省みず、ましてや時勢を直視せずに仕えるべき主君である皇帝に弓を引くとは、乱心されたのですか?」

 

『クルシェフスキー卿・・・そしてミリアルド・ピースクラフトにライ卿か。ここにはいないフリューゲル卿やエーカー卿、フォルネウス卿もだが、君たちも変わりないようで安心したよ』

 

シュナイゼルは悠然な笑みを崩さず、さらに続けた。

 

『君たちがなぜ地位を捨て、ルルーシュの騎士となったのかについては見当はつく。父上は確かに皇帝に相応しくない人物で、帝国を腐敗させたのも事実だが、残念だが君たちが主君と仰ぐルルーシュも、父上と同じように皇帝に相応しくないということを自分で証明してしまったんだよ』

 

「ほう・・・なるほど。では、皇帝に相応しいのは自分だと?」

 

『違うな。間違っているよ、ルルーシュ』

 

ここで、シュナイゼル側の映像を捉えていたカメラの位置が変わった。

 

『皇帝に相応しいのは────彼女( ・・)だ』

 

彼女(・・)・・・?」

 

「誰だ、そいつ・・・」

 

そう言いかけたマーヤとマリオはもちろん、カメラが映したその“彼女”を見て、ルルーシュの顔が引き攣った。

 

「!!!」

 

「「なっ・・・!?」」

 

「「君は────!!」」

 

いや、ルルーシュだけではない。横にいたライ、モニカ、ゼハート、ミリアルド、マーヤ、マリオ、トレーズ、ビアン、イングラム、バン大佐そしてスメラギたちですら、“彼女”を見たと同時に愕然としたように表情を強張らせた。

 

『────お兄様、ライさん・・・それにマリオさんに、マーヤさんも。私は、あなたたちの敵です』

 

そのモニターに映っていたのは、ナナリー・ランペルージ・・・否、ナナリー・ヴィ・ブリタニアだったからだ。

 

ナナリーがそう告げた途端、ルルーシュの顔が引き攣った。

いや、ルルーシュだけではない。ライ、モニカ、ゼハート、ミリアルド、マーヤ、マリオ、トレーズ、ビアン、イングラム、バン大佐そしてラクスとスメラギたちですら、愕然としたように表情を強張らせた。

そこにはかつて、このアッシュフォード学園にて蝶よ花よと大切に育てられ、争いとは無縁だった優しい少女の姿はなく、1人の皇女としてその盲目の瞳の奥に戦う決意を秘めた少女が映っていた。

 

「ナ・・・ナナリー・・・!生きて・・・いたのか!!」

 

ルルーシュが引き攣った声で問うと、ナナリーは静かに頷いた。

 

『はい。シュナイゼル兄様のおかげで』

 

「シュナイゼルの・・・!?」

 

ライが驚きの声を上げる一方、ルルーシュの唇は、動かなくなってしまった。先ほどまでの冷静さも余裕もない。ただ、ナナリーは死んでいなかった────その事実の前に、立ち尽くすことしかできないでいる。

茫然自失とし、精神的に無防備になりかけていたルルーシュのそばにマリオとマーヤが駆け寄って後ろへ引き戻し、代わりにその前にライが進み出る。この状況はまずい。おそらくそう思って、ルルーシュの代わりに矢面に立つつもりなのだろう。

 

「ナナリー・・・君が生きていたことは正直嬉しい。だけど皇帝になるって言うのはなんの冗談なんだい?」

 

ライは素直にナナリーが生きていたことに喜びつつもその目は鋭くナナリーを睨んでいた。その目は常人なら怯んでもおかしくないほど鋭く自然と語気も強くなっていたが、ナナリーはそれに負けじと凛とした態度で答える。

 

『本気です。ギアスという呪われた力で多くの人たちの人生を、ユーフェミア姉様を滅茶苦茶にしたお兄様の悪行をこれ以上見逃す訳にはいきません』

 

ナナリーは強い覚悟を持ってライに対してそう答える。そんなナナリーの姿を前にしてもライは静かに続きを待っていた。

 

『お兄さまも、ライさんも、マリオさんも、マーヤさんも、ずっと私に嘘をついていたのですね。本当のことを、ずっと黙って。でも、私は知りました』

 

硬直していたルルーシュの頬がびくりと震えた。

 

『お兄さまが、ゼロだったのですね・・・!』

 

ナナリーは、膝の上に置いた手を握りしめた。

 

『どうして・・・?それは、私のためですか・・・?もし、そうなら・・・私は────!』

 

続く言葉は、喉の奥に消えてしまう。鉛のように重い静寂が通信空間に満ちる。

望んだことではないが、それが自分のためだったのなら兄がゼロとなり世界に混乱を齎したことは、自分にもそうさせてしまった責任の一端がある、とでも言うように。

そしてどうしてそんな真似をしたのかと責める気持ちもあって、ナナリーは悲しむように項垂れた。

────ルルーシュがどんな想いでゼロになり、そしてどのような覚悟と決意をして何を成し遂げようとしたのかを知ろうともせず。

それを見て、そして妹やライともども糾弾の対象に挙げられたマリオ・ディゼルは、堪えるように手が白くなるまで握りしめているルルーシュを一瞬だけ見遣ってから、ナナリーに視線を戻した。

そして────。

 

「────だったら、なんだというんだ?」

 

『え・・・?』

 

突然、そう言ったマリオに、ナナリーが表情を驚きに強張らせた。

ルルーシュ、ライとマーヤたち、そしてアムロ、クワトロ、スメラギたちがハッとした顔で一斉にマリオを振り返る中、

 

「ルルーシュと俺たちが嘘をついていて? ルルーシュがゼロで? ルルーシュがギアスという訳のわからない力で人々を操って? だからどうしたって聞いてるんだよ」

 

『なっ!?』

 

顔に手を当てて、その手の下で意味が分からんと言わんばかりに鼻で笑ってくるマリオに、ルルーシュとライたちが、スメラギたち共々さらに驚く中、ナナリーは気色ばんで反論しようと口を開くが、マリオはそれを遮った。

 

「第一、多くの人を見殺しにして人の意思を踏み躙った君が、俺とマーヤとライはともかく、ルルーシュを責める資格があるとでも本気で思っているのか? ちゃんちゃらおかしいんだよ」

 

「ま、マリオ・・・!?」

 

「マリオくん!?」

 

生徒会室の一同が驚きに息を呑む中、マリオはまるで戦いに臨んだ時と同じく、迷いがなくて殺意めいた怒りに満ちた表情と大声でナナリーを指差し、勢いよく言い放った。

 

『私がいつそのようなことをしたというんですか!? 言い掛かりも大概にしてください!!』

 

『そうだ・・・!ナナリーは思いやりのある優しい娘だ!!お前たちやルルーシュと違ってな!!』

 

まさかの論破による困惑、そして糾弾し返されたことへの怒りで顔を赤くするナナリーに、そこにいたのか第2皇女コーネリア・リ・ブリタニアが現れ、ナナリーの援護をしてマリオを睨みつける。

シュナイゼルの指示でナナリーをここまで仕上げてきた(・・・・・・・・・・ )とはいえ、ユーフェミアに似た雰囲気と優しさを持つナナリーに共感してしまい、その上でユーフェミアの意思を捻じ曲げて口元を拭うルルーシュと同列扱いをするとは、という意味の睨みだろう。

その時、兄のそばで俯いて黙っていたマーヤが、コーネリアに対抗するようにキッと顔を上げ、勢いよく口を開いた。

 

「何が言い掛かりだというの?事実でしょう。ナナリー、あなたがシュナイゼルと共にやったことは民衆の上に立つ為政者として、民を守る帝国の皇族として最低最悪の行いよ。しかも、あなたは職務放棄をして民間人を見捨てた挙句、シュナイゼルとコーネリアの尻馬に乗っかる形で皇帝を僭称して、自国民を虐殺した。これだけのことをしておいてルルーシュや私たちを批判できる神経を疑うわ」

 

「マーヤ・・・」

 

「マーヤ、ちゃん・・・」

 

マーヤの言葉に、さらに息を呑むルルーシュとライたち。そしてアムロとクワトロとスメラギたち。

そんな、重い静寂を突如として切り裂いた黒き双子の狂犬に唖然とさせられるも、意気を取り戻したらしいトレーズとミリアルドがそれぞれこう言った。

 

「全くだな・・・シュナイゼル殿下の行いを知ってそれに同意しておき、あたかも出陣の生贄とばかりにペンドラゴンの住民たちを皆殺しにておいて、そのような寝言を言える図太さは私にも真似ができないよ」

 

「本当にですね、トレーズ司令。陛下がギアスでユーフェミアを滅茶苦茶にし、その上で多くの人の意思を捻じ曲げてきたことを責めるなら、フレイヤで多くの国民の気持ちを蔑ろにして人身御供にしたナナリーとシュナイゼルは一体どういう橘なのでしょうね? 他人を責める前に、自分の行いを振り返ったらどうですかな?」

 

トレーズとミリアルドもまた冷たい声色でナナリーの矛盾を指摘し、呆れたようにモニターに映る彼女を見つめる。いつの間にか自分が糾弾 せめかえされていることにナナリーは怒りと困惑を露わにして、反論とも言えない反論をする。

 

『ペンドラゴンの皆さんには降伏宣言を行いました!!それで民間人の方々はちゃんと避難をさせました!!それに、職務放棄なんてしていません!!』

 

「ほうほう、職務放棄をしていない、ねえ。またまた面白い寝言だなぁ。起きて寝言を言えるなんて器用なこと、そうでしょうトレーズ司令?」

 

褒めているよりも貶している意図が見え見えなマリオにナナリーは言い返そうとしたが、その前にいきなりマーヤがこう挙手したことでできなかった。

 

「質問いい? ナナリー、皇帝になる前はなんだった?」

 

『・・・エリア11の総督です』

 

「そう。それで、その総督の職務はなに?」

 

『エリアを統治し、秩序と臣民を守ることです・・・!』

 

「なるほど。まあ、さすがにそれは分かってるか。えらいえらい。それで?ナナリーはなんで総督になろうと思ったのか、教えてくれない?」

 

『お兄様を探して、もう一度アッシュフォードの時のように暮らすためです。・・・最も、お兄様がゼロで悪戯に世界を混乱させて、戦乱に陥れて私たちを騙していたみたいですが』

 

「ふうん・・・まあ、とりあえずだけどそういうことにしておくわ。それで? 総督になってこのエリア11をどうしたいと思ったの?」

 

飽きた感じに問いかけるマーヤに、ナナリーは怒りと誇らしげをないまぜにした顔で答えた。

 

『日本人とブリタニア人の差別を・・・!貴族じゃないからと虐げられる人を無くそうとエリア11を平和にしたいと思いました!! だからこそ、必死になってエリア11を《衛星エリア》へと上げたんです・・・!!』

 

ブリタニアの植民地の中でも、属領として安定したと認められた植民地《衛星エリア》。

それに昇格できたおかげで、エリア11にテロがなくなった平和になったのだと叫ぶナナリーは気付かない。

この場の空気を突然変えてみせたディゼル兄妹、トレーズとライだけでなく、イングラム、ビアン、ゼハート、ミリアルド、バン大佐が幻滅と失望が入り混じった眼差しで見つめていることに。そして完全に蚊帳の外に置かれる形となったアムロ、クワトロ、スメラギたちは、呆気に取られた様子でモニター越しに繰り広げられる舌戦を見つめていた。

 

「ふーん・・・そうか。人種差別を、身分差別を無くしたいと思った。それで、エリア11を平和にしたいと。そして《衛星エリア》になったお陰で平和になったと・・・」

 

『はい、そうです!!最も、お兄様がその平和を壊すようなことをしてくれたせいで、多くの犠牲が出まし────』

 

虚勢を取り戻し、さらに糾弾しようとしたナナリーに向かって、マリオは魂の底からこう吠えた。

 

「────そのトウキョウ租界の人たちを見捨てて職務放棄をした挙句、シュナイゼルに担がれただけの皇帝を名乗り出て、自分と同じ国民を虐殺した奴が『人種差別・身分差別を無くして平和にしたい』だと!?多くもの民を虐げてきたお前が、よくもそんな事をほざけるな! これのどこが『平和にする』ための行動だよ!!」

 

マリオは、憤怒と侮蔑が綯い交ぜになった表情で殺気も隠さずにナナリーを睨みつけた。初めて向けられる悪意に怯えるナナリーを抱き締めながら、コーネリアがこう返してきた。

 

『ならば・・・、ならば、ナナリーがいつ民を虐げてきたというのだ!?』

 

そのコーネリアをまっすぐに見返して、マーヤが兄に代わってナナリーの罪状を並べあげるようにこう口を開いた。

 

「私たちがナナリーが民を虐げてきたと思った理由は、まず第二次トウキョウ決戦の後」

 

『それが・・・どうしたというのですか?』

 

「あなた、あの時総督だったよね? シュナイゼルに助けられたって言ってたけど、あの後は一体何をしていたの?」

 

『・・・グランベリーで保護された後、シュナイゼルお兄様が・・・「戦争は終わったから休んでもいい」と言っていましたので・・・』

 

「それでエリア11に戻らずに休んだ、ということなんだ」

 

兄と共に軽蔑の色を益々深くするマーヤに、ナナリーは気付かずに答えた。

 

『私は・・・私は、一度気になって戻った方が良いのでは、と思いましたけど、シュナイゼルお兄様は「心配しなくてもいい」と仰ったので、カンボジアでお兄様を止める為に準備をしていました・・・』

 

その言葉に、ディゼル兄妹は理解し、諦念を抱いた。

この少女は何も分かっていない。いや、何も分かろうとしていないのだと。

もしも少しでも罪悪感があるのなら、それが感じられるのなら、あまり責めないでおこうかと思った。

しかし、彼女の様子から言葉から罪悪感が感じられなかった。むしろ上の者が休んでもいいからというだけで、総督であることを放棄して休むのが当然と思っているようだった。

それを見て、ディゼル兄妹は手心を加えることをやめた。彼女はかつて、アッシュフォード学園でルルーシュやスザク、ライと共に妹のように可愛がって、それに対して思いやりと感謝の気持ちを忘れなかった心優しいナナリーではない。自分たちから両親も、思い出も、かけがえのない日常など全てを奪ったシャルルと同じ、ブリタニアの旧き貴族や皇族なのだ。だから・・・。

 

「シュナイゼルが『休んでもいい』と言ったから休んだって?君って、本当に無責任なんだね。君にとって総督の責務は、他人が休めと言ったら簡単に責任放棄が出来る。そんな安っぽいものなんだな」

 

『っ!?わ、私のどこが無責任なのですか・・・!!』

 

「何もかもだ!!お前が第二次トウキョウ決戦から今に至るまでの行動が全てを語っているんだよ!!」

 

ガンッ!!と、テーブルを激しく殴ったマーヤが、第二次トウキョウ決戦の後に取ったナナリーの行動を非難した。

 

「お前はあの時点で総督で、総督には臣民を守る義務がある。そして第二次トウキョウ決戦でトウキョウ租界と、その周辺地域は甚大な被害を被っていたわ。その時にお前がやるべき事はシュナイゼルに甘えて休むことなんかじゃない。エリア11に戻って自分が生きていることを発表し、復興支援とその救助をする事だった。なのにお前は、助けを求めている彼らを見殺しにして、自分だけカンボジアでそこにいる死に損ないの魔女と共に悠々自適な生活を送っていた! 総督としてやるべき事を放棄した挙句、今度は皇帝だって・・・?ルルーシュを・・・私たちをバカにするのもいい加減にしろ!!」

 

『っ・・・!!』

 

「そしてお前が総督として彼らを助けなかったせいでどれだけの被害が、犠牲が出たと思う!?フレイヤの爆風による余波や、その二次被害で今も苦しんでいる人も出たのに!それなのに・・・シュナイゼルの尻馬に乗っかって、よくもその顔を出せたものだな!!」

 

ディゼル兄妹から浴びせられる怒声にナナリーは顔を青ざめながらも何とか言い返す。

 

『わ、私は・・・見殺しにしたつもりは、ありません。それに・・・一刻も早くお兄様を止めないと、と焦ってて・・・』

 

「その罪のない臣民を見殺しにしてでも、ルルーシュを止めることの方が大事だというのか? そんなに私情を優先したかったら、総督や皇帝になんか最初からなるな!!」

 

『どうしてそこまで言われなくてはならないのですか!?皇帝を、地球連邦代表を辞めるのはお兄様の方でしょう!!それに、被害があったのはあのトウキョウ租界だけで、他は被害を被ったわけじゃないでしょう!!』

 

フレイヤが齎す被害を直接目の当たりにしていないナナリーは、そんな大袈裟なと言いたげな顔をしていた。無理もないだろう。フレイヤの実態を詳しく知らされておらず、目も見えない為、分かるはずもないのだ。

だが、それでも彼女はテレビで小耳に挟む程度で聞いていたはずだ。ルルーシュたちの行動によって被害は多少抑えられたがそれでもフレイヤの一次被害と二次被害で計3000万人もの軍民が死んだ、どこかで小耳に挟んでいたにも関わらず、ナナリーは理解していなかった。否、理解はしてもそれは被害が出た人数で、そこにある状況などは理解してもいなかったのだろう。

だから、彼女は自分の統治下で起きた事なのに他人事のようにいられた。その根底には「自分の役目は終わったのだから別の誰かがやるべき」という甘えがあった。それをディゼル兄妹と共に見抜いたライは、ふたりに代わって弾劾を続けた。

 

「・・・どうやら詳しく言わないとわからないようだね。それなら教えてあげるよ。あの第二次トウキョウ決戦の死亡者は、フレイヤによる直接の被害で1000万人、それに派生した二次被害で2000万人だ。分かるだろ、この数。3000万人ということは、日本の総人口の約三割だ。しかも、救命施設も消滅した上に救助隊も派遣されなかったから、二次被害や爆風による余波に巻き込まれた死傷者を助ける事も出来なかったし、それによって伝染病も発生したんだよ」

 

『え・・・?で、伝染病?』

 

最後の言葉にナナリーは驚くと、ライは淡々とした様子で弾劾混じりの説明をした。

 

「どうして驚く?フレイヤはギアスと同じ未知の[[rb: 兵器>暴力 ]]そのものだ。仮に爆発から生き延びることができたとしても、空気に飛び散ったその残滓に触れたり吸い込んだりするだけで副作用もあり得るだろうし、人体に悪影響を及ぼす事だってある。それに・・・トウキョウ租界には穴が開いてて、そこに水が溜まっていたんだよ。不衛生で汚い水がね。そして、それによって迂闊に近づいた人たちは治療されることもなく死んでいった。しかもフレイヤの被害は爆心地となったトウキョウ租界だけじゃない。関東圏のほぼ全域( ・・・・・・・・)に出ていたのが、レイラたちワイヴァーン隊の調査の結果で判明したのさ」

 

『か、関東圏の、ほぼ全域・・・っ?』

 

副作用云々を聞いても理解が及ばないのか首を傾げていたナナリーだったが、「関東圏のほぼ全域」という被害の大きさに彼女は恐怖のあまりに身体を大きく震わせた。

他人事のようにいられた第二次トウキョウ決戦の被害が、今更ながらに隣人のように身近に感じられ、ナナリーは怖くなった。それは被害の大きさなのか、その被害が自分の所為なことになのかは分からないが、とにかくナナリーが恐怖し出したのを、アムロ、クワトロ、スメラギたちは呆然とした表情で見つめていた。

 

「爆心地の近くにあった他の租界やゲットー双方も余波によって家も無くなったし、人々も瓦礫の下とかに埋もれて救助されることなく死んでいった。その中には、農家や畜産業を営んでいる人もいただろうから、家畜も放置される。ではそうなった場合、牛や豚や鶏はどうなる? 当然死んでしまう。人間の死体や家畜の死体をそのまま放置したらどうなるか、君もわかるだろう?」

 

『ほ、放置したらってそんなの・・・』

 

腐るに決まっている。なぜならば現実 リアルでも仮想 フィクションでも、死体は時間が経つと死臭が出るって言っていたから。そんなの汚いに決まって・・・。

そこまで考えたところで、ナナリーがヒュッと息を呑んだ後、ライがさらに畳み掛けた。

 

「こう言うのも失礼だし、屍に鞭打つような残酷な言い方になるが、放置された死体は汚い。何故ならば時間が経ったら死臭も、出るし虫だって集ってくるからな。病人も一緒だ。辛うじて生き延びた人たちも病気に掛かったり手足を無くしたりしているんだ。中には寝たきりの人もいるから当然排泄物も垂れ流しになる。その結果、伝染病が発生したのさ。あたかも、第二次世界大戦でヒロシマとナガサキに投下された原子爆弾がもたらしたものと同じようにな」

 

「あ・・・。あっ・・・あ・・・・・・」

 

ナナリーが、顔を青ざめて首を横に振った。ディゼル兄妹が見殺しにしたと責めた理由が漸く理解したのだ。

自分が戻らなかった所為でトウキョウ租界の軍民が死んだだけでなく、二次被害が出て多くの人が死んでしまった・・・否、殺したのだ。

今すぐに戻っていれば、救助隊を派遣していれば、助かったであろう人達を、自分は殺した。

だが、理解しても彼女は認めなかった。認めたくなかった。だって、認めたら────。

 

「分かったかい?ナナリー。君が戻らずに何もしなかった所為で、助かった筈であろう人々は死んだ。これは紛れもない事実で、君がルルーシュを止めることを選んで見捨てた結果なんだ。これのどこが『平和にするための行動』だ」

 

『ナナリーは知らなかったのだ・・・!それに、ナナリーも子供だ!! そこまで考えが回らなくて当然────』

 

「お前は黙ってろ、コーネリアあぁっ!!』

 

ライに事実を突きつけられて泣きそうな顔をするナナリーを庇うコーネリアの言葉を、マリオが再び一蹴した。

 

「自ら総督を志願しておきながら知らなかった・・・?考えが回らなくて当然!?だったらなんでそんな奴が総督になろうと思ったんだ? 『知らなかったから』『子供だから』という言い訳が立つと思うな! コーネリア、そしてあのお花畑頭のユーフェミアと同じ総督になった以上、無知であることは許されないんだよ!!子供である事を理由に甘えるのも不自由を言い訳に怠けるのもなぁっ!?」

 

ひとしきり吠えた後、息を使い果たして胸を握り締め、肩を上下させる兄を抑えてから、マーヤが第二次トウキョウ決戦のことも責めた。

 

「そもそも、あの第二次トウキョウ決戦の被害だってお前にも責任があるよね? ナナリー」

 

『どうして私の責任になるのですか!?あれはフレイヤを撃ったスザクさんの責任でしょう!!』

 

ある事ない事全て押し付けて、と言わんばかりの態度に、ライが責任の在処を話す。

 

「彼らも何度も言うけど君は総督。君はどうやらシュナイゼルに指揮権を全権委任したらしいが、だからと言って、君の責任が無くなる訳じゃない。総督と副総督は、エリア内の最高責任者だ。部下がどんな不祥事をやらかそうと最終的に責任は、君に回ってくるんだ。それにフレイヤについてはシュナイゼルがエリア11の要職に就いているのならともかく、別に就いている訳でもないからね。そして・・・スザクがフレイヤを撃ったことは確かにその通りだ。僕たちも確かにこの目で見ている」

 

『でしたら!!』

 

「だからと言ってそれを責める権利、君にあるとでも思うのか?」

 

『それは・・・ですが、スザクさんがフレイヤを撃たなければ・・・!』

 

被害は出なかったと言うナナリーだが、端から見ればそれは責任転嫁にしか聞こえなかった。

総督という責任ある立場にいながらそのような態度をとるナナリーに対して、トレーズとミリアルドたちはとうとうはっきりとした不快を顔に露わにして、ナナリーを睨みつけていた。

 

「実際に落としたスザクでも、後の歴史書にはナナリーが落としたと記される。その威力や結果を、君が知らなくても、あの場の最高責任者はナナリー。他ならない君だったんだから」

 

『あ・・・』

 

下の者がやった事でも最終的には上の者の責任になるという事がじわじわと浸透し、ナナリーは第二次トウキョウ決戦で3000万人もの人が死んだのは、[[rb:スザクだけでなく自分のせいでもある > ・・・・・・・・・・・・・・・・・]]ことを漸く理解した。

しかしそれでも、自分の犯した罪を認めずに他人の行動を責める。

 

『で、ですが!!そもそもお兄様がエリア11で武装蜂起なんかしなければ起こらなかった事じゃないですか!!』

 

「それを言い出すのならシャルル・ジ・ブリタニアが侵略戦争を起こし、他国を植民地なんかにしなければあの第二次トウキョウ決戦だって起こり得なかったから、その仮定自体は無意味なことだ。それにルルーシュや黒の騎士団には占領下にあって、虐げられてきた日本人を救うという大義名分を掲げていた。で、それを受け入れようとせずに対抗したということは…・・・『ナンバーズはブリタニア人に従えばいい』『イレブンが反抗するな』ということなのか?」

 

『そんなこと・・・思っていません!!私は、ただお兄様に・・・黒の騎士団に争いを起こして欲しくないと思って・・・!!』

 

そう主張するナナリーだが、ナンバーズ側には争いを起こして欲しくないのにブリタニア側の争いを批判しないのは何故だろうか? その矛盾を妹やライと共に内心蔑みながら、マリオはさらに口撃する。

 

「だけどお前は実際にこっちに和平を申し込んで来なかったし、同盟を組もうとかそう言うの言ってこなかっただろうが。それに第二次トウキョウ決戦が起きるまで、法令一つ改正もしなかったよな?統治はカラレスと、そこにいるコーネリアよりも緩やかだったけど、結局はそれだけだ。他国人はずっと差別され続けていたのにな。だからこそ、ルルーシュも黒の騎士団 あのれんちゅうもそれを変えようと戦ってきたのに、『人種差別・身分差別を無くす』と主張を同じくするお前がそれを理解してもいなかったとは・・・」

 

『そんな・・・』

 

自分のやって来た事は所詮は対症療法であり、社会を根本から変えるものではなかった。

だからこそゼロは、兄はそれを変える為に武装蜂起したのだと言われて漸くナナリーは理解し、呆然とした。

そんな彼女に責めの手を緩めることをせず、トレーズとイングラムが続ける。

 

「それに、《衛星エリア》の昇格ぐらいでエリア11は平和になったと喜んでいられるのもナンセンスというものだ。所詮は規制が緩和されるだけの、檻の中の平和のようなものなのにな」

 

「その人種差別・身分差別を無くしたいならエリア11と、ブリタニアの在り方を根本から変えないといけないのに、その努力もしていないし、《衛星エリア》になれば帝国の歯車として組み込まれるだけで何の解決にもなっていない。これのどこが『差別を無くす為の行動』なんだ?」

 

『そ、それは・・・』

 

《衛星エリア》になれば治安も安定し、人種差別や身分差別は直ぐにではなくても徐々に減っていき無くなるだろうと思い込んでいたナナリーにとってトレーズとイングラムの言葉は衝撃的なものであり、自分の信じ込んでいた現実が崩れそうになるのを車椅子の肘掛けを掴んで何とか保つ。

自分のやって来た事が社会を根本から変えるものではなかったと理解しても、自分がナンバーズの為にやれることをやらなかったと言う事実を、《衛星エリア》昇格以上に難しい法令ひとつの改正すらしたくなかったと言う本音を、認めなかった。

薄情で残酷な行動と矛盾を突きつけられても彼女は自分の罪と愚かさを認めたがらなかった。自分の正当性が、正義が無くなる事を恐れてナナリーは矛先をずらそうとするが、それよりも先にモニカが話し始める。

 

「先程部下から報告が届きました。シュナイゼル殿下と同盟軍によってペンドラゴン守備隊は皆殺しになりその戦闘の余波によってペンドラゴンの住人の4割が死亡したとのことです」

 

『え・・・』

 

『馬鹿なっ!?ペンドラゴンの住人は避難済みだと兄上が・・・!?』

 

モニカからの言葉にナナリーだけでなくコーネリアも驚きに目を疑った。

 

「生き残っていた部隊の人間からの話によれば避難勧告もなしの突然のシュナイゼル殿下たち同盟軍による侵攻が行われ動揺した守備隊はろくな抵抗も出来ず壊滅。侵攻が行われた際に民間人にも多大な被害が発生しその中には一部の部隊が暴走し積極的に逃げ惑う人々に対して攻撃を仕掛けていたそうです」

 

『そんな・・・!?』

 

モニカからの淡々とした報告に対してナナリーは信じられないと言わんばかりに顔を青ざめさせ声を震わせているが、モニカからすればその程度のことも理解していないのかとナナリーに対して侮蔑の目を向けていた。これまでブリタニア軍が他国を侵略した時やレジスタンスなどを殲滅する際も表向きは降伏勧告を行ってから攻撃を仕掛けていると言われているが、実際のところそれを守っているブリタニア軍は少なく武器を持たない一般人だろうと降伏し武器を捨てた人間であろうとブリタニア人でないというだけでその命を踏み躙っていた。中にはゲームを楽しむ子供のように笑いながら殺すものまでおり以下にブリタニアが腐敗しているかということが分かる。現にコーネリアも過去にエリア11の総督就任時にゼロを誘き寄せるためだけにサイタマゲットーを制圧を行いレジスタンスだけでなく彼らを匿っていたという理由だけで生きるために必死なだけだった戦う力もない一般人を容赦なく皆殺しにしている。────弱者には何の権利も与えられず、自ら主張することすら許されていない。それがブリタニア・ユニオンという大国の昔からの考えでありシャルル皇帝が唱えていた国是の1つでもあった。故にシュナイゼルが民間人の犠牲を考えて行動すると信じきっていたナナリーはモニカたちからすれば愚かとしか言いようがない。

 

「君たちが否定しようと現実は変わらない。エリア11でフレイヤによって犠牲になった遺族も、ペンドラゴンで君たちの侵攻の犠牲となったもの達も決して君たちを許すことは無い。そして会話による説得を選ばず武力による実力行使に出た時点でナナリー、君たちに僕らを否定する権利は無い」

 

ライはナナリーに対して侮蔑と弾劾の言葉を浴びせ、それに対してナナリーは違うと反論しかけて口を閉じた。コーネリアも困惑しきった表情で、シュナイゼルがいるであろう方向を見据えている。

ペンドラゴン制圧は『変わってしまったルルーシュを止める為の正当な行動』とナナリーは信じて疑わずそう思っていた。けれど、違った。他に方法はあったのだ。ライの言う通り、戦いを仕掛けるよりも先にペンドラゴンに単身乗り込んでルルーシュを説得する。それが無理なら、罵倒して引き止める。それでもダメなら武力かフレイヤで脅してでも強制的に止めさせる。など、幾らでも手は打てたのだ。

なのにナナリーはそれを選ばず、「嘘を吐かない」シュナイゼルお兄様の仰る事だからと深く考えもせず認めたのだ。責任放棄をしてエリア11に住む民を見殺しにした総督を、あまつさえ自国民を人身御供にした皇族を、誰も認める筈がないのに。

自分の怠惰と甘えが多くの人を殺し、苦しめてきた。自分のやってきたことは何一つ変えられていなかった。ただ見た目を綺麗にしただけで、本質そのものを変えていなかった。口では大層な理想を唱えておきながら、不自由を言い訳に自分は変えようとする努力を・理解することを全くしてこなかった。

そうした結果からか、今まで俯いて、アムロ、クワトロ、スメラギたちと同じように沈黙を不気味に守り続けていた彼が────。

 

「フ・・・フフ・・・・・・」

 

不意に、笑い声が上がった。

ルルーシュであった。端正な顔が不敵に笑っている。・・・その顔を蒼白くさせたまま

 

「なんともつまらん盛大な茶番劇だな・・・。まさか、我が妹ながらここまで図々しいとは思わなかったぞ。その程度の生半可な覚悟で、あんな青臭い啖呵を切ったとでもいうのか?」

 

『え・・・』

 

ナナリーが困惑しきった唇を開けた。その姿を、ゆっくり顔を上げると共にルルーシュは嘲りの目で見た。そして、ナナリーには見えない。いや、そもそも通信機の画面に「それ」は映っていない。

それ以前に、やはり彼女は気付いていない。ルルーシュが兄としての自分ではなく、皇帝としての自分を選んだことを。それが────シュナイゼル、そしてコーネリアの口車に乗せられて、自分が感情的に決めつけて兄を切り捨てた結果であるということに。

 

「あの日・・・お前が総督になったのを知った日から、俺はお前なりに弱者を、民のことを想って総督になったのだと思っていた。愚かではあったが優しさのあったユーフェミアと同じく、優しい世界を望んだのもその為だと思っていた。しかし・・・違っていた。お前は彼等を守る事より、自分の感情を俺にぶつける方が大事だったんだな。だからシュナイゼルの尻馬に乗っかって、人身御供という真似ができた・・・」

 

『っ!! お、お兄様だって・・・!ユフィ姉さまを滅茶苦茶にして、しかも多くの人まで操ったくせに!!』

 

「そうだな・・・それについては否定はしない。それで?だからなんだ?」

 

自分に掛けていた声色とは全く違う、冷ややかな声にナナリーは知らずぶるりと身体を震わせた。

 

「俺は確かにユフィも含めた多くの人間の意思を捻じ曲げてきた。だからといって、俺以上に涼しい顔で人の意思を踏み躙ってきたシュナイゼルに与して、ましてやペンドラゴンの1億を人身御供にしたお前に言われたくない。結局のところ、お互い様 、つまりはそういうことだ」

 

『だ、だからって、それは・・・でも・・・』

 

そう言われてナナリーは不満げな顔をした。今まで自分の意見がなまじっか罷り通っていたばかりに自分の意見は正しいと思い込み、世の中は白と黒でできていると信じ込んでいたのだろう。

だからこそ、相手も悪くて自分も悪いという考えや意見があまり理解出来ず、ただ母親(マリアンヌ)の代わりとはいえ自分の言うことを聞いてくれた実兄(ルルーシュ)が、真っ向から自分の意見を否定したというのが気に食わないのだろう。

そんな狭い世界で育ってきたナナリーを見て、ルルーシュは今にして教育を間違えたかと内心嘆き、もっと現実を教えてやれば良かったかと痛いほど後悔していた。しかし、後悔しても過去は変わらない。ライ、ディゼル兄妹たちが繋いでくれた命を無駄にしない為にも自分はひた走るしかないのだ。そう────第99代ブリタニア皇帝として。

ナナリーも糾弾した、マオやライと同じく辿ってしまったギアスの暴走による、ユーフェミア・リ・ブリタニアを滅茶苦茶にしてしまったが故に起きた行政特区の悲劇の時から、自分の手はもう拭い切れないほどの血と涙で汚れきっている。自分にはもう進むしかない、だから・・・。

 

「それともお前はまさか、人からお恵みをいただくことが当たり前だと考えているのか? それで今度はトウキョウ市民を見殺しにし、ギアスを持つ俺を絶対悪だと断じ、その挙句に自分を絶対正義だと信じながら、シュナイゼルに寄り添い、フレイヤを解き放つという我が物顔の凶行に手を貸したというのか」

 

「ルルーシュ・・・」

 

「陛下・・・」

 

ライが戸惑ったような声を出す。そして彼とディゼル兄妹、モニカが見つめる椅子の肘掛けに置かれたルルーシュの手は、間断なく小刻みに震えている。マーヤは、そんなルルーシュの姿からほんの少し苦しげに顔を背けていた。

 

「自らは手を汚さず、他人の行動だけを責める・・・お前は俺が否定した古い権力そのものだな。そんな奴らもいたからこそ、俺たちがあんなことになった (・・・・・・・・・・・・・)のも忘れたとでもいうのか。どうなんだ、ナナリー・・・言ってみろ!!」

 

『そ、それは・・・』

 

ルルーシュのその言葉に、ナナリーの顔がいつになく激しく引きつった。ここまでのナナリーとルルーシュたちの会話は、もはや傷の抉り合いに等しかった。流れで蚊帳の外に置かれてしまったアムロ、クワトロ、スメラギたちは、ただただその凄絶な言葉での傷の抉り合いに息を呑むしかなかった。

 

「誰のためでもない。俺は俺自身のために、世界を手に入れる。もうこれ以上、シャルルやシュナイゼルのような奴らに我が物顔の好き勝手にはさせない為にもだ。お前がシュナイゼルと手を組み、我が覇道の前に立ちはだかると言うのなら、もう俺はお前を妹だとは思わない。俺やライを絶対悪だと断じ、自分を絶対正義だと言った時点で、もう容赦はしない・・・叩き潰すだけだ」

 

ルルーシュは肘掛けから離した手で、モニターの中のナナリーを指さしてこう叫んだ。

 

「旧エリア11総督、ナナリー・ヴィ・ブリタニアに命ずる・・・。第二次トウキョウ決戦における市街地でのフレイヤ弾頭の使用と、それに伴う軍民合わせて3000万人の死亡に対する責任、加えて戦闘終結後に死亡を装って行方をくらました職務放棄と帝都ペンドラゴンを侵略した罪を釈明するために、武装解除した上でただちにエリア11まで出頭せよ。総督も満足に勤められぬ者が皇帝を僭称し、唯一皇帝たる私に弓引くなど、どこまで厚顔であることか・・・。国に対する責任を一片も果たしていないうちから、聖女面で説教などおこがましい!!まず己を恥じる事から知るがいい!!!」

 

『お・・・兄様・・・そんな・・・・・・』

 

敢然として、そして苛烈な糾弾の言葉を投げつけて非難してくるルルーシュに、ナナリーは身体を震わせながら漸く察した。ルルーシュはもう自分の為だけに動いてくれる兄ではない。万民の上に立つ皇帝であり、自分のことをもう見てもくれないのだと。

敵対する道を選んでいながら、ナナリーは兄は自分を切り捨てないどこか甘い考えを持っていた。だから、兄は今までのように自分の意見を聞いてくれると高を括っていた。けれど、それはただの願望に過ぎず、ルルーシュはブリタニアを、延いては国民を守る為にナナリーを切り捨てたのだ。その心に血と涙を流しながら・・・。

 

「コーネリア・リ・ブリタニア!!そしてシュナイゼル・エル・ブリタニア!!聞こえているか!?これを最終通告とさせてもらう。お前たちも職務放棄、並びにペンドラゴン襲撃の咎で速やかに武装解除した上でただちにエリア11に出頭せよ。48時間以内にこれを行わない場合、神聖ブリタニア皇帝及び帝国に対する反逆者として、ブリタニア全軍を以てお相手しよう!!!」

 

ルルーシュはナナリーに対してそう強く宣言する。

 

「ゼロ・・・」

 

「君は・・・」

 

そんなナナリーに対して厳しい言葉を[[rb: 弾劾>吠え ]]たルルーシュの姿をスメラギとロジャーが驚いた様子が見つめていた。それはアムロ、クワトロ、ラクス、F.S.、ミツバ、オプティマス、ダイテツたちもだ。

 

「────座興はもう十分だろう。隠れてないでそろそろ出てきたらどうかな、シュナイゼル殿下?」

 

ルルーシュとナナリーの会話が終えたのを見届けた後、トレーズが不敵な笑みを湛え、毅然とモニターに向かって呼びかける。

すると同時に、映像がシュナイゼル側に戻った。

 

『いやはや、参ったね・・・まさかここまで論破されようとは。君たちの結束(チカラ )を甘く見過ぎていたようだ』

 

先ほどナナリーやコーネリア共々、ディゼル兄妹によってこれでもかとばかりに論破されたにも関わらず、シュナイゼルは相変わらず悠然とした態度だった。

 

『君たちの結束、そして主張と事実については認めよう。だが、我々とラウンズたちはそれでもルルーシュを皇帝として認めることはできない。なにしろ正当ではない手段で皇位を継承し、あまつさえ先帝を弑虐しているのだからね』

 

「シュナイゼル・・・!」

 

悠然と開き直るシュナイゼルに、ライ、ディゼル兄妹、ゼハートそして刹那、アムロ、キラ、エッジ、レーツェルが気色ばむ。そんな7人を無視して、シュナイゼルはモニカに呼びかけた。

 

『クルシェフスキー卿。我々は偽皇帝ルルーシュを討つために戦力を集結させている。君と、フォルネウス卿、フリューゲル卿、アルカディア卿、ハーゲンティル卿、ヴィエルジェ卿も参加してくれることを願いたい。私のほうからヴァルトシュタイン卿にラウンズに戻れることや過去の罪を無くす口利きはするし、望むのであれば金品や新たな機体()、領土やラウンズ以上の地位など、望む報酬はなんでも与えよう』

 

シュナイゼルの呼びかけに、モニカも険しい表情でこう一蹴した。

 

「その提案、いいえ命令はお断りします。私は私の意思でルルーシュ皇帝陛下のために、この剣とこの身を捧げると誓いました。あなたやシャルル・ジ・ブリタニアのような存在がいたせいで、かつてのブリタニアに私が戻る場所などなくなってしまったも同然です。そして何より、ヴァルトシュタイン卿らかつての同門たちもただの意思なき傀儡と成り下がったことが、残念でなりません」

 

『なるほど・・・ではライくん、君はどうかな?』

 

シュナイゼルは、ライに呼びかけた。呼びかけられたライの眉が、ピクリと動いた。

 

『君のことは父上やラウンズの諸君からも色々と聞いている。そして今まで君の実績から、父上たちの言うように君には見るべき点が大いにあると評価させてもらった。私と共に来るのならば、ナナリー同様君も迎え入れてあげよう。それに、君はルルーシュとナナリーの盟友(親友 )だろう?これ以上ルルーシュが自分の手を罪と血と涙で汚していくのは見るに堪えないと思うが、どうかな?』

 

「・・・・・・」

 

険しい表情で腕を組み、黙ってシュナイゼルの言葉に聞き入っていたライ。シュナイゼルの勧誘の言葉が終わった後、彼はゆっくりと口を開いた。

 

「・・・話になりませんね」

 

『うん?』

 

シュナイゼルが聞き返そうとすると、ライは先ほどのナナリーやディゼル兄妹に負けないくらいの冷たさと鋭さをもって、拒否の理由を述べた。

 

「ナナリーを旗頭(皇帝 )に押し上げ、ルルーシュのやり方を否定し皇帝を名乗らせる。その口でにエリア11とペンドラゴンを含め多くの人々を奪っておきながらルルーシュを否定する。そのようなやり方は、あなた方が悪逆の偽皇帝だと糾弾している陛下と大して何ら変わりはないと思わないのですか?それに、あなたはこの期に及んでまだ偽皇帝を討つという大義名分を掲げる元気があるようですが、その表情とその口ぶりはどう見ても、大義のために立ち上がった人間のものじゃない。

先ほど僕たちが挙げたあのトウキョウとペンドラゴンでの大惨劇を平然と引き起こし、それ以前にナナリーという駒と、フレイヤという武器を担ぎ出した時点で、あなたは自分でそれを証明したようなものです。・・・そもそもシャルル・ジ・ブリタニアにギアスをかけられ、駒として好きに扱われた時点で、あなたたちブリタニア皇族の腐れ切った性根というものが目に見えてなりません」

 

『・・・・・・っ!』

 

ナナリーに向けられたそれと同じライの苛烈な言葉に、シュナイゼルは一瞬驚きに目を剥いた。

そこで今までZEXISと共に沈黙を守っていたラクスが、その美しい風貌を鋭く凛とした怒りに歪めると共にこう口を開いた。

 

「ライさんの言う通りです。シュナイゼル・エル・ブリタニア・・・平然さを装って荒唐無稽なことを口にしながら、ナナリーさんを手足にして行っているその暴挙を鏡で見て、あなたも先ほどルルーシュさんと同じく皇帝に相応しくない実父(シャルル皇帝)と大して変わらないと感じたことはないのですか?」

 

「そうです。あなたのやり方もルルーシュと同じく、恐怖で人々を支配するものだ。そのような連中を、僕たちは決して認めない」

 

「右に同じくだ。あなたがこれ以上大義名分の名を暴挙を繰り返すというなら、俺たちZEXISも黙ってはいない」

 

「ドライクロイツも同じです。私たちはあなた方のような力で人を支配する人間のやり方を決して認めません」

 

「屍に鞭打つようで気が引けるけど、ナナリー・ランペルージ・・・いいえ、ナナリー・ヴィ・ブリタニア。私たちからも最初で最後の警告を送らせてもらう。目を覚ますなら今しかないわ (・・・・・・・・・・・・・ )。それができないようなら、たとえあなたが相手でも私たちは容赦はしない。よく覚えておきなさい」

 

『っ・・・・・・!』

 

ライに同意するかのように、ZEXISとドライクロイツからラクスに続く形で代表してキラ、アムロ、スメラギもシュナイゼルに対してそう告げる。シュナイゼルは、ライとZEXIS、ドライクロイツたちをあわよくばこちら側の戦力に取り込もうとしたが、先にナナリーを通す形で自分たちの暴挙を暴露され、糾弾された上でそう返されてしまったため、シュナイゼルはこれは一本取られたとばかりに少し苦笑した。

そして最後にスメラギから鋭くも厳しい声で警告を投げかけられたことに、ナナリーが声を震わせたと同時に、シュナイゼルは元の穏やかで不敵な表情に戻った。

 

『・・・なるほど。まあ、君たちのその言い分も概ね間違ってはいないし、先ほどの事実についての否定はするつもりはない。だからこそ残念だよ。君たちは友のため、平和のために戦ってくれると思っていたのだがね』

 

「座興はもう十分だと言ったはず。それに・・・残念な想いは私も同じだよ、シュナイゼル殿下」

 

そこで今度は、ライと入れ替わるようにトレーズが会話に割って入った。

 

『トレーズ・・・』

 

「思想は違えど、君も所詮はシャルル・ジ・ブリタニアの血を引く子供。つまり君も、他の貴族や皇族たちと同じように敗者になることを是としない・・・。やはり、私は君と真の友になることはできなかった」

 

『そのようだね。認めるのも癪だが、血は争えないとはよく言ったものだ』

 

トレーズの不敵な挑発を、シュナイゼルはいつもと変わらぬ笑みを浮かべながら受け流す。そこでトレーズは後ろのルルーシュを一度振り返ってから、一呼吸おいてこう言った。

 

「────僭越ながら、陛下と筆頭騎士に代わって私が宣告させてもらうとしよう。1週間後だ (・・・・・ )

 

トレーズはそれだけしか言わなかったが、シュナイゼルは彼の言葉の意味が理解できたようだった。

 

『それが、決戦の時か?』

 

「ああ。そこで雌雄を決しよう。エリア11のフジで、君を待っている。もしもこれからの48時間のうちにその気を出すのなら話は別となるが・・・どうせ最終通告に従うつもりは毛頭ないのだろう? 君も、そしてナナリー皇女とコーネリア皇女も」

 

『・・・無論だとも。ここで大人しく引き下がったら、何の為にここまでのお膳立てをしてきたのかわからなくなるからね』

 

シュナイゼルは、不敵に笑って頷いた。

 

『いいだろう、1週間後だね?了解した、それでは1週間後に会おう。無論、ナナリーも連れていくよ』

 

『シュナイゼルお兄さ────!』

 

ナナリーが制止を叫んだ時、通信は唐突に切れた。シュナイゼルの返事を受け取った後、トレーズによって切られたのだった。

その時、ライとディゼル兄妹は、ナナリーの手が通信画面に向かって差し出されるのを目にした。しかしその手に応えてくれるものは、先ほどのルルーシュの訣別の言葉と、無慈悲な雑音を奏でる灰色の画面だけだった。

 

「・・・・・・・・・」

 

「ルルーシュ・・・」

 

「帰るぞ、ライ、トレーズ、モニカ」

 

「「「イエス・マイ・ロード」」」

 

「承知した」

 

通信を切ってしばらくの間、内心が様々な感情でごちゃ混ぜになりながらも必死に耐えながら険しい目付きになっているルルーシュを心配するようにライは声をかけるが、ルルーシュは何とかその言葉を絞り出すとライたちを伴ってシュナイゼル達との戦いに備えるため会談場から退出しようとする。

 

「ゼロ・・・!」

 

スメラギが、ルルーシュを思わず呼び止めた。

そこでルルーシュは会談場の出入り口の前で立ち止まり、ゆっくりとスメラギ、そしてアムロとクワトロたちZEXISとミツバ、オプティマス、エッジ、獅子王凱を振り返った。

 

「ミス・スメラギ・・・世界を総べる資格はなんだと思う?」

 

スメラギを真っ直ぐに見据えてそう問うてくるルルーシュの双眸は、美しく、鋭く、そして冷たかった。まるで研ぎ澄まされた刀のようなその瞳に見据えられ、一瞬気圧されそうになりながらも、スメラギは一呼吸置いてからこう答えた。

 

「私はそれに答える資格はないわ」

 

「なるほど。ソレスタルビーイングの戦術予報士らしい返しですね」

 

「あなたの答えは?」

 

スメラギの答えを肯定するルルーシュにスメラギは驚くが、スメラギはルルーシュに対して自らはどのような答えを持っているのか尋ねると、ルルーシュは一度目を閉じてからゆっくりと瞳を開けて答える。

 

「壊す覚悟・・・世界を!自分自身すら!」

 

ルルーシュはその瞳にゼロとしてZEXISとドライクロイツの仲間たちと共に戦っていた頃では決して見せることのなかった世界に対する激しく燃え盛るような煉獄の炎のような怒りやどこまでも冷徹な魔王としての絶対零度の如し冷たさを宿しながらそう答えた。そのルルーシュの姿に、スメラギとロジャーは今のルルーシュ、そしてライたちを言葉だけで止めることなどできないと理解させられてしまった。

 

「世界と自分自身を壊す覚悟・・・」

 

「君の決意・・・聞かせてもらった」

 

スメラギが息を呑み、ロジャーが静かにそれだけその決意を讃えると、ルルーシュは一度だけ視線を机の上に置かれている折り鶴に向けてから踵を返した。

 

「さらばだZEXIS。またいつか会おう」

 

ルルーシュはスメラギ達に短くそう告げると、ライ達を伴って生徒会室を退出していくのをスメラギたちは黙って見ることしか出来ないのだった。

 

「・・・・・・」

 

「決戦は1週間後か・・・」

 

「それで世界の覇者が決まるのか・・・」

 

ジェフリーとF.S.は眉をしかめながらルルーシュとシュナイゼルの決戦に対してZEXISとしてどう動くべきかをかんがえるのだった。

 

「ですが、それを静観する訳にはいきません」

 

「ミス・スメラギ・・・」

 

スメラギはこの場にいるZEXISのメンバーに対して聞こえるようにそう言う。彼女の表情は静かで力強い決意に満ち溢れており、それはジェフリーたちも同じであり全員がこの会談によって確かな決意を固めたのだった。

 

「─────私はソレスタルビーイングです。ならば、それに相応しいやり方をするだけです」

 




あとがき
いかがだったでしょうか?今回はナナリーに厳しめな展開となりましたが今後もスザクやユーフェミア、扇たち黒の騎士団など一部のキャラたちにとって厳しめな展開をするかもしれませんのでどうかお願いします。次回では前々からやろうと思っていたオリジナル展開であるオオサカ租界を舞台にした戦闘になります。ガンダムSEEDFREEDOMからオルフェたちファウンデーション組、クロスアンジュからダイヤモンドローズ騎士団などを登場させたりしようと思ってます。フジの決戦前にそれぞれの陣営の思惑を語らせ合ったりとかしたいなって思ってます。(メガトロンたちディセプティコンとメキボスたちインスペクター、オルフェたちアコードとリボンズたちイノベイダーたちなど)それではまた次回もよろしくお願いします!!
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