スーパーロボット大戦Z 魔王の降臨   作:有頂天皇帝

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まえがき
思ったより文字数が伸びてしまったのでオオサカ租界での戦いは次回になります。流れはある程度できているので出来るだけ早く投稿できるように頑張るつもりなのでよろしくお願いします。


第十話 悪夢の始まり

「・・・ナナリー・・・」

 

ライとディゼル兄妹たちを筆頭に己の無知さと罪深さを叩きつけられ意気消沈としているナナリーに対してコーネリアは大丈夫か、と心配げに声をかけようとするもナナリーのあまりに痛々しい姿に言葉が詰まってしまい何も言えずにいた。そんな先程の会談で少なくない衝撃を与えられた二人に対して平然としているシュナイゼルは額に手を当てて大仰に溜め息をついた。

 

「参ったね・・・まさか、ここで思わぬ手札を突きつけられるとは。ペンドラゴンを制圧して私たちの力を見せつければ多少なりとも降伏の意志を見せてくれると思ってたんだけどね」

 

今シュナイゼルたちがいる場所には周囲に色とりどりの花々が咲き誇っていた。ここは先ほど、海中に待機していたところを空中へと舞い上がった《天空要塞ダモクレス》の頂上部に位置する艦内庭園。上級将校以上の者が入ることを許可された庭園だ。

空調機が吐き出す風にあおられ、ナナリーの車椅子の横で黄色い可憐な花が微かに揺れている。その名を《オンシジウム》────以前、C.C.がナナリーに相応しいと言っていた花に囲まれ、ナナリーは下を向いて、小刻みに震えている。

 

「・・・どういうことなのですか、兄上」

 

コーネリアが、刺すような眼差しでシュナイゼルを見据えてきた。

 

「兄上はペンドラゴンの住人は避難させたと我々に言いましたよね?ペンドラゴンの総人口は1億・・・全員がすぐに避難誘導に対応できるとは思えず、パニックが起こる可能性も有り得るものです。ですがあれは・・・!」

 

「────シュナイゼルお兄さま」

 

ナナリーが、コーネリアの言葉を遮った。それにコーネリア、そしてシュナイゼルが振り返ると、ナナリーの震えがいつの間にか止まっていた。

 

「私に、フレイヤの発射スイッチ(・・・・・・・・ )をいただけませんか?」

 

「ん?」

 

シュナイゼルがやや意外そうな顔になった。一方のコーネリアは黙り込んだままだった。

ナナリーは、続けた。

 

「私には、戦うことも守ることもできませんし、もはや守るという言葉を口にする資格すらありません。だからせめて、罪だけは背負いたい (・・・・・・・・・)んです」

 

その言葉に反応を見せたのは、言われたシュナイゼルではなかった。

シュナイゼルから逆側からコーネリアがすいとナナリーに近づき、やはり険しい瞳でシュナイゼルを見据え、剣幕をきかせた低い声でこう言った。

 

「・・・兄上。少し、よろしいでしょうか」

 

◆◆◆◆◆

 

エリア11、トウキョウ湾ブリタニア軍海洋基地。

復興中のトウキョウ租界上空には多種多様の大量の航空艦による艦隊が浮かんでいるが、トウキョウ湾にはその艦隊が霞んで見える巨大、いや、超巨大と言っていいほどの艦影が佇んでいた。

その超巨大艦の艦橋の上部で、固く扉が閉ざされた一室にて怒声が響き渡っていた。

 

「────C.C.!!なぜナナリーのことがわからなかった!?」

 

ルルーシュであった。毛足の長い絨毯の上をいらいらと歩き回り、ルルーシュはやり場のない怒りと焦燥感をすぐそばにいたC.C.にぶつけた。ちなみにこの室内には、C.C.の他にも、ライ、モニカ、ゼハート、ミリアルドそしてジェレミアがいる。

 

「・・・私は神ではない。ギアスによるつながりがない人間のことまでは把握できん。ナナリーの動向は、彼女に聞け」

 

C.C.がそう言って、何?と、ルルーシュが言おうとしたその時。同じく室内にいたライが、部屋の扉を振り返った。

 

「入ってくれ」

 

ライがそう言うと、部屋の扉がシャッと開いた。するとそこから、深淵騎士団の一員である月詠真耶と月詠真那の2人が運ぶ形で、介助式の車椅子に乗せられた咲世子が入ってきた。

 

「ルルーシュ様」

 

「咲世子・・・!?君も生きていたのか!」

 

咲世子の姿を見て、ルルーシュは驚きに大きく目を見開いた。

 

「何とかフレイヤの爆発から逃れる事が出来たのですが、身体が動かず、ご連絡が遅れたことをお詫びいたします」

 

「それで、ナナリーは・・・!」

 

縋るようにして聞いてくるルルーシュ。咲世子に代わり、ライがこう答える。

 

「・・・フレイヤに巻き込まれたのは、シュナイゼルが用意した囮だったそうだ。そして本物のナナリーは、グリンダ騎士団とノネット・エニアグラムによって保護されたが、シュナイゼルの手の者に連れ去られてしまい、あのようなことになったらしい」

 

「グリンダ騎士団・・・マリーベル殿下の筆頭騎士であるオルドリン・ジヴォンのいる部隊ですか。まさか、そのようなことになっていたとは」

 

かつて数度だけ戦場を共にしたことのある騎士団の名前が出たことに、モニカが神妙な表情になる。そして彼女の横にいたジェレミアが、思い出したようにこう聞いた。

 

「しかし、咲世子・・・君の直属の上官であるディートハルトは、シュナイゼルの下にいる。何故君は、危険を冒してまで陛下のところに?」

 

「・・・言われてみれば、そうですね」

 

咲世子はそれだけしか答えず、車椅子の上で少し考えるような仕草を見せただけだが、ジェレミアは咲世子の考えと理由がわかったらしく、

 

「フム・・・騎士道に殉じる、と言ったところかな。君も」

 

「・・・ふふ」

 

ジェレミアの言葉に、咲世子は頷いた。ジェレミアがルルーシュを主として認めているのと同じように、咲世子もナナリーを主として認めている。だからこそ、どんな危険な目に遭ったとしても、ナナリーと、彼女に捧げる信義のためならば、命は惜しくない。そういうことなのだろう。

 

「シュナイゼルめ・・・!この事実を今まで隠しておいたのか!?カードとして効果的に使うために!!」

 

さらに湧き上がってきた苛立ちをぶつけるかのように、ルルーシュはテーブルの上に置かれていたチェス盤と駒をひっくり返した。

 

「ならば、貴様のカードの切り方は絶妙だったぞ!!こんなにも・・・!こんなにもっ!!」

 

「陛下、落ち着いてください・・・!」

 

ジェレミアとモニカが慌てて宥めようと近寄った時、ルルーシュは呻きながら自分の胸を押さえ、椅子に座った。

その頃、ルルーシュがひっくり返したチェスの駒のひとつが、マリオの爪先まで転がっていき、そこで当たって、止まった。

そこで荒く息をついた後、マリオは俯いたルルーシュの前まで歩いていった。それにルルーシュが顔を見上げた途端、

 

「────しっかりしろ、ルルーシュ!!!戦略目的は変わらないっ!!!」

 

「・・・っ!?」

 

驚きを隠せないルルーシュに、鼻先がつくほど顔を寄せて、マリオは容赦ない叱咤を浴びせる。

 

「確かにナナリーが生きていたことには僕達も驚いた。だけど、それは立ち止まる理由にはならないだろう(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)!!」

 

「──────!!」

 

マリオの言葉にルルーシュが再び驚きに大きく目を見開いた瞬間、マリオはルルーシュを突き飛ばした。椅子が倒れ、ルルーシュは床に尻餅をついてしまう。

呆然とルルーシュが見上げた先で、マリオは突き放すようにさらにこう言い放った。

 

「顔を洗ってこい。そんな腑抜けた目をした男が、皇帝を名乗ることは許されない」

 

「・・・わかっている」

 

騎士が主君に向ける言葉としてはあまりに無礼な一言だったが、ルルーシュは反駁せず頷いてゆっくりと立ち上がり、出口へと向かう。そして去り際に咲世子とすれ違った時、

 

「・・・咲世子。君には今後、ライの指揮下についてもらう。ライならばディートハルトよりも期待はできるだろう。・・・委細はライに任せておくから、わからないことがあるならば彼に聞くといい」

 

「承知いたしました。ではライ様、今後ともよろしくお願いいたします」

 

「・・・はい」

 

車椅子の上から咲世子がそう会釈すると、ライは大きくゆっくりと頷いた。

それを見届けてから、ルルーシュは肩を落としたまま出ていった。少し遅れて、ジェレミアとモニカ、ゼハート、ミリアルドが無言でルルーシュの後を追うようにして出ていった。

 

「マリオ」

 

「兄さん・・・」

 

「マリオ、君は・・・」

 

ライはともかく、C.C.の人形めいた美貌とマーヤの可憐な乙女らしい可愛さのある顔にも多少、非難の色があった。少し口が過ぎるのではないか────と、表情がそう言っていた。マリオはそれに対して、淡々と言葉を返した。

 

「忘れたのか、ライ。僕は────いいや、僕たちは彼の『剣』だ。彼の敵も弱さも、僕たちで排除しなければならない」

 

「っ・・・」

 

マリオのその言葉に、ライがグッとなる。

 

「そしてマーヤ。僕たちは既にルルーシュと契約を交わしたはずだろ。その契約を果たすためにも、こんな所で立ち止まっている暇はない」

 

「・・・そう、ね」

 

マリオの言葉にマーヤはハッとなり、顔を下に向けながらその言葉に同意する。

 

「だから、C.C.・・・君は、『盾』になってくれ」

 

「・・・盾?」

 

そして、C.C.の眉がぴくりと動いた。

 

「────守るのは、君の役目だ」

 

さらに淡々とそう言ったマリオの顔を、C.C.はじっと見つめ、それから軽く吐息した。

 

「・・・勝手な言い分だな」

 

「ルルーシュは君の共犯者なんだろう?」

 

「共犯者、か・・・」

 

C.C.がその言葉を繰り返した時、《[[rb: 終焉の騎士> ナイトオブゼロ]]》として気持ちを入れ替えたライはマリオとマーヤに指示を出し始める。

 

「マリオ、マーヤ。《神殺の英傑( エインヘリアル)》全員に今回のこと全てを連絡しろ。各地に散っている機甲師団すべて・・・そして、マリーベル皇女殿下たちルルーシュの同盟勢力全員にも連絡を入れておいてくれ。《神殺の英傑》全員と全ての戦力が揃い、ルルーシュが落ち着き次第、一週間後の決戦に向けて軍議と準備を始める」

 

 「「イエス・マイ・ロード」」

 

マリオは頷き、マーヤと咲世子と共に、部屋を出ていった。ライもその後に続くように、部屋を出ていく。ただひとり残されたC.C.は、彼らの後を追おうとしなかった────。

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

帝都ペンドラゴン陥落。

シュナゼル軍及びミスルギ皇国を始めとした同盟軍による進軍によりジンクスIII、トーラス、ヴィンセント・ウォードを始めとしたルルーシュが支配する前までの地球連邦での最新鋭量産機を運用する帝都守備防衛隊はろくな抵抗も出来ず全滅。その先頭の余波によりペンドラゴンの住民が3割、さらに一部部隊の暴走により4割もの死者が出た。生き残った3割のペンドラゴンの住人たちもミスルギ皇国とディガルド武国によって戦利品扱いで連行された。

────これがナナリーが許可を出し、シュナイゼルが指示を出して行動を示した結果である。

 

「────兄上。どういうことか、洗いざらい話してもらいましょうか」

 

薄暗い小部屋で、青ざめた顔をして尋ねるコーネリアの前で、シュナイゼルは微笑んでいた。その彼のそばで息を呑んでいるカノン・マルディーニ以外、周囲に他の人影はない。

 

「────ペンドラゴンの被害は予定通りのものだよ(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

微笑みながらそう答えたシュナイゼルに、コーネリアは驚愕に目を見開いた。

 

「その方が幸せじゃないのかな?ルルーシュの恐怖に付き従うだけの人生を過ごすよりは・・・」

 

「ならば何故、ナナリーにあのような!?」

 

淡々と、微笑みながら告げてくるシュナイゼルに、コーネリアは頭が真っ白になりそうになった。

 

「嘘も方便だよ。まさかライとディゼル兄妹があのような掘り返しを仕掛けてきたのは予想外だったけど、ナナリーがルルーシュに立ち向かうと決意してもらうためには、余計な情報は入れない方がいいだろう」

 

憤りをついに禁じ得なくなったのか、コーネリアがきっと眉間に力を込めた。

 

「兄上は・・・そうやって人を操るのですか・・・!?」

 

常に自ら最前線に立ち戦場を駆け巡る烈女であり、他国からは《魔女》と呼ばれて恐れられていた妹に見据えられても、シュナイゼルは全く動じなかった。むしろ、やれやれとでも言いたげに首を左右に振った。

 

「ならばコーネリア、私からもひとつ聞かせてもらおう。人々の願いはなんだい?飢餓や貧困、差別、腐敗、戦争とテロリズム・・・。世界に溢れる問題をなくしたいと願いつつ、人は絶望的なまでにわかりあえない。それならばどうするべきか、答えはひとつしかないだろう?」

 

「理想としてはわかりますが、民間人を・・・!!」

 

「戦争を否定する民間人だって、警察は頼りにするよね? みんな、わかっているんだ。犯罪は止められないと・・・。人それぞれの欲望は否定できない。だからこそ、人は絶望的なまでにわかりあえない」

 

そう。今まさに戦いを止めようとしない自分たちやルルーシュのように。

 

「だったら、心や主義主張はいらない。システムと力で平和を実現すべきでは?」

 

シュナイゼルは、手元にあったコンソールパネルに手を置いた。途端に、ぱっと室内に光が灯る。

シュナイゼルとコーネリアが向き合った横にある液晶モニター。浮かんだのは、立体型になった世界地図と、その上空を飛行するシュナイゼル軍の切り札的存在である天空要塞ダモクレスの軌道。全長3キロにも亘る、巨大な空中要塞────。

 

「・・・っ・・・」

 

それらを見て我が目を疑うコーネリアに、シュナイゼルは優しげに、恐るべき[[rb: 目的>企み ]]を告げた。

 

「全長3キロを誇る、この鉄壁の要塞であるダモクレスは衛星軌道上まで上がり、世界中にフレイヤを撃ち込むことが可能だ。この戦いが終わってもまだ平和を拒む者がいるならば、フレイヤを使うしかないな」

 

コーネリアは、再び頭が真っ白になりそうになった。

 

「待ってください!!ルルーシュを討つためではなかったのですか!?これでは世界中が・・・恐怖で人を従えようというのですか!?」

 

「もともと父上もこうおっしゃっていたじゃないか。平和というのは所詮、幻想だと。戦うことが人の歴史、本性・・・その幻想を現実にするためには、躾が必要だとは思わないかい?」

 

「人類を教育するつもりですか!?そのようなこと、神でなければ許されない!!」

 

ついに本格的な感情を露わにしたコーネリアのその言葉を一蹴するかのように、シュナイゼルは声をあげて笑った。

 

「だったら、私が神になろう・・・人々が平和を私に望むのならば」

 

まるで朝の献立でも口にするかのように、あっさりとシュナイゼルはそう宣言した。

背筋を震わせ、吐き気を催す邪悪が口にするものといっても過言ではないシュナイゼルのその宣言に、コーネリアがギリッと奥歯を噛んだ。

 

「兄上・・・、あなたはっ!!!」

 

と、その時、不意にコーネリア、シュナイゼル、そしてカノンのものではない、場違いな拍手が辺りに響き渡った。

 

「────素晴らしいっ!!!」

 

コーネリアとシュナイゼルとカノンが、同時に振り返る。

開いた小部屋の扉。そこにふたつの人影が立っていた。ひとりはエンブリヲだが、もうひとり、その金髪でやや顎の張った長身の男がいた。ちなみに、拍手しているのはこの金髪の男だ。

 

「貴様・・・!ディートハルト!!それにエンブリヲも!!」

 

コーネリアが睨みつけた、拍手しているこの金髪の男の名は、ディートハルト・リート。生粋のブリタニア人でありながら、ライと共にあの黒の騎士団・ZEXISでゼロの参謀役を務めていた男だが、例のゼロ追放以降、いつの間にかシュナイゼルのところに身を寄せていた。

一応、名目上は黒の騎士団から派遣された外交使節という立場を取っているが、それは単なるお題目に過ぎず、要するに黒の騎士団に居辛くなったというのが変節の真相だ。ちなみに元々、この男のことを認めていたのはゼロ=ルルーシュとライくらいのものであり、他のメンバーからは招かれざる客として多かれ少なかれ白眼視されていたのだ。

 

「やはり、あなたについてきて正解でした!!ゼロのカオスをも凌駕する完璧なる虚無・・・多様なる変幻!!」

 

拍手を続け、感激しきったように叫び続けるディートハルトに冷たく鼻を鳴らしてから、エンブリヲがシュナイゼルとカノンに向かってすいと進み出た。

 

「シュナイゼル殿。黒の騎士団と連絡がついたとの報告がありました。フレイヤについては否定的でしたが、ルルーシュを討つためならば我々と手を組むと」

 

「それはそれは・・・。先のトレーズ達による報道によって崩されかけたとはいえ、まだそれだけの余力があったなんて」

 

カノンが感心したように言い、シュナイゼルも、感心したと言いたげな表情を見せた。

 

「これでこちらの役者(カード)は全て出揃いましたな。我々の御旗であるナナリー皇女がアキレス腱を思い切り抉られたとはいえ、ルルーシュの暴虐を経験した民衆はそのマシなアイデアとしてナナリー皇女とあなたに縋ってくることでしょう」

 

エンブリヲの言葉に、コーネリアはギクリと身を強張らせた。愕然として、再びシュナイゼルに向き直り、震える声でこう問いただす。

 

「あ、兄上・・・まさか、そのために今まで動かず (・・・・・・ )ルルーシュの行動を放置していたと (・・・・・・・・・・・・・・・・)!?」

 

シュナイゼルは否定しなかった。どこか冷たい笑みを浮かべて、カノンに言った。

 

「・・・カノン、コーネリアを別室に」

 

「かしこまりました。では、コーネリア様・・・」

 

カノンが遠慮しがちにコーネリアに向かって進み出て、その場から連れ出そうとする。

 

「お待ちください、兄上!!まだ私の話は終わっておりません!!」

 

「終わったとも。だから君はもう休むといい。後のことは私とナナリーに・・・」

 

「お考え直しを!!強制的な平和など、人の尊厳を奪うだけのものです!!」

 

「これが最も被害の少ない方法だよ。たとえ10億20億の命がなくなったとしても、恒久的な平和の代償だと思えばね」

 

「違います!!ただ強制されるだけの平和など、それはっ────!!!」

 

その叫びと共にカノンを突き飛ばしたコーネリアのマントが自らの手で跳ね上げられる。腰から引き抜かれたのは、剣と一体型になった銃。

さらなる叫びと共に、コーネリアはシュナイゼルに向けようとしたが、叫びは最後まで続かなかった。

なぜなら、コーネリアの銃が発したもの────ではない銃声が、その場に響いたからだ。

 

「・・・な・・・っ・・・」

 

四方に置かれていた、女神を象った石像。その内側から素早く銃身が伸び、一斉に火線を放ったのだ。前後左右からコーネリアを無慈悲に、無残に灼熱の衝撃が貫いた。

 

「君の出番(役目)なら、もう終わったんだよ。コーネリア」

 

シュナイゼルが冷然と呟く中、コーネリアは床に倒れ伏した。

床に伏した皇女は、もはやぴくりとも動かない。それをディートハルトは嬉々とした目で眺め、カノンは複雑そうな眼差しで見ている。そこに、シュナイゼルの声がかけられた。

 

「カノン。ナナリーは今どうしている?」

 

「艦内庭園に留まられたままです。戦いの時も、あちらにいたいと。・・・ところで、本当によろしいのですか? フレイヤの発射スイッチの件は」

 

「ふむ・・・まだナナリーに利用価値があるのは確かだが────」

 

そこで初めて、シュナイゼルも真剣な顔になって小首を傾げた。

 

「ゼロ・・・いえ、ルルーシュの一手を遅らせられる可能性はありそうですな」

 

ディートハルトが割って入ってきたが、シュナイゼルはその言葉はもちろん、彼の方に見向きもしない。そんな反応に冷たく鼻を鳴らしながら、エンブリヲが言った。

 

「ルルーシュたちにアキレス腱を抉り取られて、ヤケになっている態度のこともあるでしょうが・・・同時にルルーシュたちは、彼女の退路を自分で焼き払ったも同然でしょう。自分でフレイヤを撃ってしまえば、もうナナリー皇女も後戻りはできません。後は勝手にルルーシュたちを撃ってくれるようになります」

 

「エンブリヲ卿・・・しかし、それは・・・」

 

「そうだね。それにどの道、ナナリーにできることなど何もない。もし、いざという時にまだ躊躇うようなら、改めてこちらで対応すればいい。そうだろう、カノン、エンブリヲ?」

 

「・・・・・・」

 

共に笑い合うシュナイゼルとエンブリヲ(ついでに蚊帳の外のディートハルトも)に、カノンが納得できない顔で沈黙する。ただ、それ以上はカノンは何も言わなかった。

そんなカノンに、シュナイゼルが思い出したように言った。

 

「じゃあとりあえず、コーネリアのことは任せるよ、カノン」

 

「は・・・はい。Bラインで処置いたします。ファランクス卿が消えたとはいえ、このダモクレス内にもまだコーネリア殿下に心を寄せている者はいますから・・・許可いただけますでしょうか?」

 

「ああ。それで構わない」

 

すでにシュナイゼルは、目の前で倒れている用済みの妹のことなど眼中にない様子だった。その一方でエンブリヲは、

 

(・・・しかしまあ、可哀想な皇女様たちもいたものだね。妹は虐殺者という汚名を被せられたまま死んで、姉は用済みとして処分される。ナナリー・ヴィ・ブリタニアといい、これは世も末というものだ)

 

その倒れた用済みの妹を見て、不穏な笑いを浮かべて、自分にしか聞こえない程度の声で独りごちていた。

 

(ちょうど黒の騎士団に匿われていたという(例のマダム《・・・・・ )も、あの浅間山での一件の後で追放されたと聞いたし、彼女もこの皇女と同じく戦いの腕と合わせてまだそれなりに価値があると聞いた。フフッ、この美しき魔女とあの赤い女狐と共に新たな騎士(下僕)として、私の花嫁として迎え入れるのもいいかもしれんな・・・)

 

コーネリアを舐め回すように見下ろしながら、エンブリヲがさらにそう独りごちたのに、ディートハルトはもちろん、シュナイゼルとカノンは気づく由もなかった。

 

(ヴィレッタ・ヌゥと、コーネリア・リ・ブリタニア。そしてカーリー・ディゼル(・・・・・・・・・)。彼女たち強く美しき獣たちが私の手に入るのであれば、もうそろそろあの子たちも潮時というものかな・・・。エルシャ、クリス、サリア・・・フフフ・・・)

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

浅間山でかつての戦友にして頼れる黒の騎士団参謀であったライとの再会を果たしてから、黒の騎士団では疑心暗鬼の空気が広まり、さらにZEXIS・ドライクロイツの同盟からの離脱からほんの数度程度に起きていた小さな小競り合いが幹部や団員たちが衝突するほどの内紛にまで膨れ上がっていた。その凄まじさはライとトレーズの策略によってゼロ(ルルーシュ )の追放の真実を知った皇神楽耶ら超合衆国評議会、ゼロに次ぐ位置である黒の騎士団総司令・黎星刻、超合衆国に協力しているMJP機関の司令官シモン・ガトゥ、ヴァース帝国第一皇女アセイラム・ヴァース・アリューシアなどZEXIS・ドライクロイツを通して協力的な人々からも黒の騎士団に対しても危惧と強い制止の声が挙がるほどのものだった。

そして昨今、ブラックリベリオン時にブリタニアの軍人であるにも関わらず、扇が匿っていたヴィレッタ・ヌゥを巡って、スメラギやラクスたちと繰り広げたのと同じくらいに激しい論争が勃発していた。

 

「それって本当なの!?扇さん!私たちの弾圧を率先して行なっていたブリタニア純血派の軍人である彼女を拘束せずに支部に入れるなんて、どうかしてるわよ!!」

 

「要するに、痴情の縺れってやつだろ!?ほとんどあんたの自業自得じゃないか!!」

 

「なんであの時、僕たちにブリタニア人の女が来ていることを言わなかったんですか!?」

 

「そういえば、ブラックリベリオンで敗北したのはゼロが戦場離脱しただけでなく、支部を担当していた副司令のあなたが敵であるあの女に撃たれて、そのせいで混乱したからじゃないんですか!?それはつまり、あなたが敵を懐に入れたせいで、私たち黒の騎士団は負けたというんですか・・・!こんなくだらない痴話喧嘩で!!」

 

「くだらないだと・・・!?お前ら、扇をよく知りもしないでそんなこと、よくも言えるな!!」

 

「そうだ!扇は優柔不断なところがあるが、レジスタンス時代に俺たちやカレンを引っ張って、その上でずっと面倒見てくれたんだ!!」

 

「だいたい、負けたのはゼロが騙し続けて逃げやがったのと、お前らが弱かったせいでもあんだろ!?」

 

「なっ!?なんだよそれは!!俺たちだって必死に戦ってたんだ! それを杉山、南、玉城・・・お前らと扇とゼロがぶち壊したんだろ!!」

 

「そうよ!!あの時は、扇さんは怪我を押してでも自分のやるべき事を果たしているんだと尊敬したのに・・・!なのに、撃たれた理由がこんなことだなんて、こんな人の命令を聞いた私が馬鹿だった・・・っ」

 

「藤堂さん、あんたまでこいつらの味方なのか!? だいたい、藤堂さんがあの時みんなを連れて撤退し、ZEXISかドライクロイツと合流するなりなんなりしていれば、いくらでも態勢の立て直しようがあったのに・・・それを棚に上げて俺たちやゼロばかり責めるな!!」

 

「おい!いくらなんでもその言い方はないんじゃないのか!? 藤堂さんは・・・」

 

「いつまで自分たちの感情や正義に拘り続けてるんだ、扇たちは・・・これじゃ日本解放に届く気もしないな」

 

「ゼロといい、担ぐ大将(リーダー)を間違えたということなの?だったら私の目も節穴だったと諦めるしかないのね・・・」

 

「もう駄目だ、どうにもならねえ。扇さんも藤堂さんもあんな調子じゃ先が見えてるようなもんだ」

 

「あーあ、何が《厳島の奇跡》だっての。ただの時代遅れの堅物オヤジじゃねえか」

 

「なんだと!? 貴様ら、我々ならまだしも藤堂さんに向かってよくもそんなことを・・・!」

 

ライがシュナイゼルへの当てつけも兼ねて投下した爆弾の効果は、絶大だった。

 

ライがシュナイゼルへの当てつけも兼ねて投下した爆弾の効果は、絶大だった。

神楽耶、天子、星刻、周香凛 (ジョウ・チャンリン )洪古 (ホン・グ )、万丈、マグバレッジ、鉄也が何度も強い声で宥め、諭そうとしたが、そのゼロ(ルルーシュ)を追放した張本人である扇、玉城、杉山、南、藤堂、朝比奈、千葉と、他の黒の騎士団幹部と一般団員の罵り合いは全く収まる様子を知らなかった。いったい何がそこまで彼らをこうも激しく内紛(争わ)せるのか、神楽耶たちにはよくわからなかった。そんな中、ただひとりカレンのみが、あの追放の日にヴィレッタ、そしてシュナイゼルの口車に扇たちが乗せられたのと、ライがどこかで見つけてきた、ヴィレッタの真実も含めたブラックリベリオンでの敗戦の裏に隠されたものがあるに違いないと推測していた。

だからこそカレンも、あの日伝えられなかった自分のゼロ(ルルーシュ)]への気持ちや真実を伝え、その上で皆を落ち着かせようと懸命になったが、誰も相手にしなかった。そしてあろうことか、藤堂と朝比奈と千葉はもちろん、昨日まで兄を通して自分を家族同然に可愛がってくれた扇、杉山、玉城、南までもが頑なとしてカレンを受け入れず────より正確に言えば、扇たちはあの浅間山での一件以来、カレンとの接触を拒むようになっていた。

 

「扇さん・・・どうして、どうして私の言葉はなしを聞いてくれないの・・・?これ以上みんなで仲間割れをすれば、ルルーシュやライと戦うどころじゃなくなるというのに・・・」

 

「・・・お前には関係のない話だ。ゼロ(ルルーシュ)の力で掴む日本の平和なんて、俺たちが望んだ平和じゃない。俺たちは俺たちのこの手で平和を掴むんだ」

 

カレンの心からの悲痛な訴えも、扇たち、そして他の幹部陣や団員たちには届かなかった。

そんな中、エンブリヲを通してナナリーを正当な第99代ブリタニア皇帝として担ぎ、切り札である天空要塞ダモクレスとフレイヤ弾頭を用いて、引き続きルルーシュ討伐に臨もうというシュナイゼルからの要請(取引)があった。これに扇たちが、全ての原因はゼロ=ルルーシュ、そしてこの現状を生み出したライにあり、もはやその原因をまとめて倒すしかないと強行同然に決めたこと、さらには扇が独断でヴィレッタ・ヌゥを逃がしたという事実が明るみに出たことが、内紛を激化させる一途となった。そして脱走者も毎日のように出て、黒の騎士団の内部崩壊が時間の問題となったのを危惧した星刻、万丈、マグバレッジ、神楽耶、ミオリネたちがさらに声を強くして、他の幹部や団員たちへの説明と謝罪、ZEXISへの和解を優先するべきだと説いた。しかし、信じていたものにずっと裏切られていたことへの私憤と、もう後戻りできないところへ来てしまったという歪んだ覚悟に囚われた扇たちにそれが聞き入れられることはなく、内紛の激しさが増すのに比例して黒の騎士団の空気は日に日に最悪さを増していくようになった。

 

「扇さんたち・・・完全にカレンや神楽耶様、マグバレッジ艦長たちを無視しているわね。藤堂さんや四聖剣も諌める感じじゃないし・・・」

 

「このまま黒の騎士団は破滅(終わり)に一直線・・・なのかしら・・・?」

 

「藤堂さんたち四聖剣もだけど、扇さんたちはゼロと並ぶ黒の騎士団の創始メンバーなんだよね?もっとやりようはなかったのかな?」

 

カーム・クラフトマン、ライエ・アリアーシュ、網文韻子が力なくそれぞれ呟いた。その3人の呟きを聞いていた界塚伊奈帆にも、語るべき言葉はなかった。

 

 

─────エリア11関西エリアの中央都市として存在し、他国との貿易が盛んで、貿易商はもちろん酒保商人や武器商人も集まっている為にブリタニア・ユニオンにおける戦力や物資の輸入拠点として重要視されている《オオサカ租界》。

この総督府はかつて1500年代後半のエリア11において建造された当時のエリア11で最も強い権力を持っていた豊臣秀吉の拠点である《大阪城》と呼ばれていた。

台地北端を立地とする大坂城では、北・東・西の3方は台地上にある本丸から見て低地になっている。そのために北の台地下には淀川とその支流が流れており、天然の堀の機能を果たすとともに、城内の堀へと水を引き込むのに利用されており、大阪城は輪郭式平城であり、本丸を中心に大規模な郭を同心円状に連ね、間に内堀と外堀を配する。秀吉は孝高に築城に際しての指示、大坂の市街から天守がよく見えるよう天守の位置、街路などを工夫したとも伝えられている。これにより大阪城は高くそびえたつ巨大な天守閣とその周りを天然の内堀と高く積み上げられた堅牢な石垣による外堀と広大な城郭をしていたことで日本一攻めにくい城と言われていた。

 

そして1600年代にて起きた当時天下の覇権を握っていた《徳川家康》が当時の大阪城を拠点とする豊臣家との合戦の舞台ともなっており、《大阪冬の陣》と《大阪夏の陣》と2度に及ぶ長く続いた合戦として語り継がれている。

開戦当時は堅牢な大阪城に立て篭り籠城戦を仕掛けることで徳川家と互角に渡り合っていた豊臣軍であったが、徳川家康の狡猾な心理作戦によって翻弄され講和条約を結んでしまいそれによって大阪城の堅牢な防壁を担っていた外堀と内堀が埋め立てられてしまい丸裸にされてしまった。籠城は不可能だと判断した真田幸村は寝返りの虚報を流布して徳川軍の動揺を誘うなどして、徳川家康本陣へ接近し先鋒・次鋒、本陣など数段階に区分された真田隊は、3回にわたって突撃を繰り返した。これによって徳川本陣は大混乱。武田信玄率いる武田軍に敗退した《三方ヶ原の戦い》以後倒れたことのなかった徳川家康本陣の馬標が倒された上に、徳川家康は騎馬で逃げる事態に陥りました。このとき、徳川家康は2度、自害を覚悟したと言われている。

 

当初、豊臣軍が優位に戦局を展開していた最終決戦は、思わぬところから風向きが変わりました。真田幸村と大野治長は豊臣秀頼の出馬は今しかないと相談の上、大野治長が大坂城に帰り、豊臣秀頼への上申を決定。このとき、大野治長が豊臣秀頼の馬標を掲げたまま帰城しようとしたため、豊臣軍の兵は大野治長が撤退したと勘違いして戦意を喪失してしまった。

これに加えて大坂城に火の手が上がったことで、さらに動揺。徳川軍は、これに乗じて攻撃を仕掛け、豊臣軍は総崩れとなり、一気に決着がついてしまった。

真田隊も決死の突撃で死傷者が増加。数が減ってしまったことで追撃不能となり、徳川家康を追い詰めながら、撤退せざるを得なかった。

そして真田幸村は、四天王寺近くの安居神社で傷つき疲弊した身体を休めているところを松平勢の西尾宗次に発見され、討ち取られました。

そして徳川軍は、真田隊を壊滅させ、一番乗りした松平忠直率いる越前勢を筆頭に、続々と城内に侵入。本丸台所で徳川軍の内通者によって放たれた火は瞬く間に天守閣をも包み込み、ついに大坂城は落城した。

豊臣秀頼は、籾蔵の中で母・淀君と共に自害。豊臣秀吉以来の豊臣宗家は滅亡したという逸話が、エリア11がブリタニアの支配下に置かれた今でも有名となっている。

その後大阪城は徳川家の手によって豊臣色払拭する再築工事が行われたが、ブリタニア侵攻の際に半壊してしまった。

 

そんなオオサカ租界と、オオサカ租界の中心に聳え立つ、総督府という名のブリタニアの支配の象徴として生まれ変わった大阪城改め《天空大楼閣(ヘブンズハイパレス)には各地でルルーシュ軍からそれぞれ敗走してきた旧皇帝派のブリタニア軍と地球連邦の残党部隊、はてはブラックリベリオンや浅間山での戦闘から敗走し、本隊と逸れて流れ着いた黒の騎士団の分隊が集結・結託し、歴代皇帝陵と浅間山以来の大規模な抵抗勢力を組織しているという情報がもたらされた。

 

そしてその天空大楼閣に集結した黒の騎士団の分隊の中に、自分が隊長を務めている零番隊の隊員たちの数人、さらにはギアス嚮団殲滅戦で(温情から来た行動だが)ゼロによって追放同然に脱退された朱城ベニオと加苅サヴィトリがいるという情報をカレンが知ったのは、五稜郭の分隊から密かに送られた援軍要請を斑鳩のブリッジで聞いた直後だった。その援軍要請が求められた理由として、オオサカ租界にライを総指揮官とし、モニカを作戦参謀とした大規模な征伐軍がブリタニアから派遣されたことにあった。

ライとモニカもだが、征伐軍の中にはアレン、ミリアルドとその傘下の各師団にルルーシュの親衛隊である深淵騎士団、同盟勢力である鉄華団とタービンズ、パラメイル部隊、《マクギリス・ファリド》率いるギャラルホルン革命軍、マリオとマーヤを始めとした戦士たちが参戦しているとのことだった。そのため抵抗勢力は数こそ上で、要塞と化した五稜郭も含めた地の利もあるが、ナイトメアも含めた将兵の力はマリーベルとライの征伐軍が大きく上回っている。その上で軍略に優れたマリーベルとライの力も合わさる形で攻め込まれたら、長くは持たないのは明白だろう。しかし────。

 

「どうしてなんですか、扇さん!?オオサカの仲間たちを見殺しにするつもりですか!?」

 

詰め寄るカレンに、扇は暗く、そして苦しげな表情で答えた。痛いほど握りしめられたその両の拳には、血が滲み出ていた。

 

「・・・わかっているはずだろう。決戦までもう3日しかない。その決戦に全てを賭けるしかなくなった今、これ以上兵力を割ける余裕は俺たちにはない・・・」

 

オオサカ(あそこ)には私の部下(仲間)たちがいるんです!!今ここで彼らまで見殺しにしたら、扇さんたちは騎士団の中で信頼を完全に失ってしまう!!」

 

「うるさいな、俺だってできれば助けに行きたいんだよ!! あそこには千草・・・ヴィレッタが・・・っ・・・・・・」

 

「扇さん!!」

 

「・・・とにかく、もう俺たちには余裕がない。わかったら部屋に戻れ」

 

扇との話し合いを終えた後、カレンと同じように扇にオオサカにいる仲間たちを救出すべく行動を起こすべきだと進言した伊奈帆たち黒の騎士団に残っていたZEXIS・ドライクロイツのメンバーたちと共にデューカリオンに機体を載せたカレンたちが強行出撃したのは、その直後のことだった。

 

 

同時刻。

カンボジアのブリタニア軍基地に待機しているグランベリーの艦橋にいるノネット・エニアグラムとグリンダ騎士団の元に、1本の通信が入った。

 

「・・・あたしたちを孤立させておいて、頼みとは上等だね」

 

指揮官席で腕を組みながら、ノネットがモニターに映る通信の相手に話しかける。その彼女の周りから立ち昇る剣呑な雰囲気に、オルドリン、ソキア、レオンハルト、ティンク、マリーカ、オペレーター席のエリシアとエリスも緊張した面持ちになっている。

 

「それで?今度はなにかい。あたしらの粛清の手順でも決まったのかい?」

 

ノネットに剣呑とした言葉をモニター越しで投げつけられるその通信相手────カノン・マルディーニは、弱々しい表情でこう言った。

 

『コーネリア皇女殿下が・・・撃たれたわ』

 

その言葉に、ノネット、そしてオルドリンたちは一斉に大きく目を見開いた。

 

「え────」

 

「「な・・・・・・」」

 

「コ・・・今、なんて・・・?」

 

ソキアが呆然とした表情でそう呟いた時、ノネットは目を見開いたままカノンに問うた。その眉と頬が、驚愕と怒りにピクピクと微かに震えている。

 

「何だって・・・?カノン、お前今・・・なんて言った?」

 

『言葉通りの意味よ・・・皇女殿下が、撃たれた』

 

「「「っ────」」」

 

オルドリンたちが、絶句させられる。ノネットは大きく俯いて、怒りを懸命に抑えているかのような低く重い声でさらに問うた。

 

「・・・撃ったのは、どいつだ。どこのバカがやった?」

 

『聞いて、ノネット。あなたたちには・・・』

 

「どこのバカがやったって聞いてるんだ。答えろ!!」

 

ノネットは吼えて、肘掛けを思い切り殴った。それにオルドリンたちがびくりとなり、カノンもモニターの向こうで目を伏せたが、

 

『・・・コーネリア皇女は、ギルフォード卿らと共にエリア11のオオサカ租界まで脱出させた。そこであなたたちグリンダ騎士団には、コーネリア皇女をさらに安全な場所までお連れして、手当てをしてほしいの。ダモクレスでは応急処置程度しかできないし、オオサカ租界もじきに安全とは言えなくなるから・・・』

 

まるではぐらかすように、カノンはそれだけしか答えなかった。しかしノネットはそのカノンの態度で、コーネリアを撃った犯人に、見当がついてしまった。

 

「カノン・・・お前は・・・」

 

さらなる怒りと愕然に声を震わせるノネット。オルドリンたちは、事実への愕然とノネットの怒りへの畏怖に震え、絶句しながら、この様子を見守っていることしかできない。

 

『お願いよ、ノネッ────』

 

カノンが言い終わらないうちに、ノネットは通信パネルに手を伸ばすや否や、彼との通信を一方的に切った。

 

「え、エニアグラム卿・・・」

 

エリシアが恐る恐る呼びかけると、ノネットは自分の胸元をギリギリと握りしめ、深く俯いていた。

 

「あの・・・男は・・・。一度ならず、二度までも・・・どこまで我々を、バカにすれば、気がすむってんだ・・・」

 

一般市民を巻き込んでのペンドラゴンの制圧いい、ナナリーを駒として担ぎ出したことといい、シュナイゼルの我が物顔の振る舞いには、ノネットは我慢の限界を感じてならなかった。

そして今、親友にして後輩であるコーネリアの銃撃という事態に発展した今、そのシュナイゼルへの怒りが一気に湧き上がり、ノネットの理性を吹き飛ばした。

 

「おのれ────シュナイゼルゥウウウウッ!!!」

 

指揮官席から勢いよく立ち上がり、ノネットは魂の底から咆哮した。

オルドリンたちも、魂の底からびくりと大きく震え上がった。そして二、三息を荒くした後、ノネットはオルドリンたちに向かって叫んだ。

 

「おらぁ!!なにボーッとしてんだ!!さっさと準備を整えろお前たちっ!!!」

 

「えっ!?」

 

「じゅ、準備って・・・何をですか!?」

 

レオンハルトとマリーカが戸惑いながら聞き返すと、ノネットはラウンズの称号である紫のマントを大きく翻して、再び魂の底から吼える形で命令を下した。

 

「グランベリー緊急発進────コーネリア皇女の保護に、あたしらも今すぐエリア11へと向かうよ!!これ以上、シュナイゼルの好き勝手にさせてたまるかぁっ!!!」

 

◆◆◆◆◆

 

─────オオサカ租界攻略作戦が始まる前日の夜。

ユグドラシル級万能戦闘艦《クロノス》と呼ばれる超巨大戦艦の艦橋にある自室で、天井から吊り下げられてきたモニターに向かって、ルルーシュは大声で呼びかけた。

 

「──────マリオ・ディゼル。マーヤ・ディゼル。いるか」

 

ルルーシュが呼びかけたと同時に、モニターの電源が自動的について、そのディスプレイに揃って敬礼したマリオとマーヤの姿が映し出された。

 

(マリオ・ディゼル、御身の前に』

 

『マーヤ・ディゼル、御身の前に』

 

マリオとマーヤはルルーシュに対して畏まった態度を取りながらルルーシュの次の言葉を待つ。その様子を一瞥した後、ルルーシュは続けた。

 

「ライとモニカからから既に話は聞いていると思うが、明朝からのオオサカ租界の攻略にはお前たちの力を存分に奮ってもらう。そのためのお前たちの新たな剣たち>(・・・・・・)だが、問題はないか?」

 

『ハッ。ロイド博士とビリー博士ら陛下が御用立てしてくださった技術陣の尽力によって、次期主力機たち(・・・・・・・ )同様完了しております陛下の御下知さえあれば、いつでも』

 

「そうか・・・それは良かった」

 

マリオの言葉に満足げに頷きながら、ルルーシュはさらに言った。

 

「これはライとモニカたちにも伝えるつもりだが・・・お前たちの機体はようやく開発に成功したために本格的な実践での運用は今回の戦闘が初めてとなる。お前たちの実力を疑うつもりは無いが、念には念を入れる形で伝えておく」

 

『何でしょうか』

 

「つい先日、オオサカ租界に、シュナイゼル・エル・ブリタニアと並ぶもうひとりの反乱の首謀者が手勢と共に逃げ込んだとの情報が入った」

 

ルルーシュは遠回しに言ったが、マーヤはその一言で首謀者が誰なのかすぐにわかったようだった。

 

『・・・第2皇女コーネリア・リ・ブリタニアですか』

 

「そうだ。どうやら先のアッシュフォード学園でのナナリーとシュナイゼルの宣戦布告以来、あの女は奴らと内紛を起こし、オオサカ租界へと落ち延びたと聞いている。奴は《ブリタニアの魔女》の異名を持っている通り、侮ることはできん」

 

『ということは、コーネリアはオオサカの反抗勢力をまとめあげて・・・?』

 

「十中八九、そうだろう。そしてこれは俺の推測の域を出ないが、敵の敵は味方ということでZEXISとドライクロイツと手を組む可能性もある。しかしそうなる前に、ヴィレッタ・ヌゥとカーリー・ディゼルら抵抗勢力ともども奴を粛清するのが今回の攻略作戦の目標であり、お前たちの役目だ。そのために、お前たちふたりの全ての準備が終わったのなら・・・これ以上は、何も言わなくてもわかるまい?」

 

ルルーシュが不敵な笑いを浮かべて告げると、マリオとマーヤは獲物が来たことを察したかのような肉食獣の如き獰猛な笑いを浮かべた。

 

『ご心配無用・・・ルルーシュ陛下は、どうぞごゆっくりそちらで御観戦ください。陛下の騎士として全力を尽くし、必ずやブリタニアの魔女を、そしてあの女狐どもを・・・!』

 

『ルルーシュ皇帝の敵に、死を・・・!』

 

「フッ、頼もしい限りだな。期待しているぞ・・・では、行くがよい!!』

 

『『イエス・ユア・マジェスティ!!』』

 

獰猛な笑いを浮かべながらマリオとマーヤが揃って敬礼した後、通信は切れ、モニターはひとりでに天井へと格納されていった。

 

「っ!?ぐ、ああ・・・!?」

 

それを見届けた直後、ルルーシュは右目を抑えて突然苦しみ出し、後ろにあったベッドへともつれるようにして倒れ込んだ。

 

「うぐっ!!が、ぁああああっ!!」

 

ギアスの紋様が浮かぶ両目を赤く輝かせ、そして両目を中心に全身を鋭い痛みや燃えるような熱さなど、言葉に尽くしがたいほどの苦痛がルルーシュを襲う。その苦痛に耐えるようにルルーシュは血を吐くような呻きを漏らしながら必死に耐えていた。 

 

「ルルーシュ・・・」 

 

その隣で、ベッドの上で先ほどの一幕を見ていたC.C.が、ベッドの上に倒れてきたルルーシュの左手を握る。苦痛に苦しむルルーシュをただ見守ることしかできない自分を歯痒く思いながら、C.C.は辛そうにルルーシュを見ていた。

 

「がはっ、ぐううっ・・・。はあ、はあ、はあ・・・」

 

しばらくしてようやく落ち着いたのか、ルルーシュは右腕で目元を覆いながらベッドの上に身を起こし、荒い深呼吸をして息を整える。

 

「大丈夫か、ルルーシュ」 

 

「あ・・・ああ。問題、ない・・・・・・」

 

C.C.は、ルルーシュを心配そうに覗き込む。しかしルルーシュの額からは、玉のような汗が流れ出していた。 

 

「やはり、《黒の英智》に触れたのが原因か・・・」

 

「恐らくな。まさか俺のギアスにまで影響を及ぼすとはな・・・」

 

シャルルとマリアンヌとCの世界で決着をつけた時、過去から未来、全ての知を集めた太極の欠片とされる《黒の英智》に触れたルルーシュはパーソナルトルーパー、カタクラフト、ゾイド、ヴァリアンサー、パラメイルなど様々な世界の技術を、エルガン・ローディックが恐れていた災厄の一端を知った。しかしその際に別世界で自らが身につけた《絶対遵守》のギアスとは異なるギアスを手に入れ、そこで自らの姿を知ったことで、Cの世界から帰還して以来、ルルーシュは苦痛に苛まれる日々が続いていた。

 

「・・・だが俺たちに立ち止まってる暇などない。ナナリーがあのようなことになってしまった以上、何より失ったものたちのためにも、俺に歩みを止める時間などない。そうだろう、C.C.・・・」 

 

ルルーシュは決意の籠った瞳をしながらC.C.に言ったが、C.C.はそれに対して何も答えられなかった。ただ悲痛そうな顔でルルーシュを見ることしかできなかった。ルルーシュとギアスの契約を交わした当初、C.C.はルルーシュを自らの目的のために利用しようと近づき、ギアスの力を与えた。しかしルルーシュの隣で、妹であるナナリーの望む世界を叶えるために多くのものを犠牲にし自らの心を壊しながらも歩みを止めないルルーシュを見続けた彼女は、憐憫か、それとも罪過か、とにかく何時しかルルーシュに対して情が湧くようになり、気がつくと互いに惹かれ合う感情となっていた。そして中華連邦にてギアス教団を壊滅し、直後にシャルルと対峙したあの時にルルーシュが言ってくれた言葉がC.C.のルルーシュへの思いを理解するきっかけとなった。 

 

 

『そんな顔で死ぬな、C.C.!!最後くらい笑って死ね!!必ず俺が笑わせてやる!!だから・・・っ』  

 

 

不老不死という呪いを受けて永い時を生き続け、魔女として忌み嫌われ、その上で様々な拷問を受けて永劫とも見て取れる苦痛を味わっていたC.C.にとって、そのようなことを言われたのは初めてだった。だからこそC.C.は無意識に、自分を苦しめ続けていた不老不死からの解放を願っていながら、その解放を与えてくれるはずだったシャルルの手を払い、ルルーシュに手を伸ばそうとした。しかし、その時のC.C.にはまだその手を取るのに躊躇いがあったために、ルルーシュの手を取らず自らの記憶を奥底に封じ、ギアスを得る前の奴隷だった頃に戻ったのだ。そして深層意識の奥底からルルーシュを見守り、Cの世界でシャルルとマリアンヌとの決着をその目で見守ったC.C.は、自らがルルーシュに対して抱いている想いを理解してしまった。だが、その想いをC.C.はルルーシュに伝えることはできないと思っている。今のルルーシュは母の死の残酷な真相を知り、守りたかった最も大切な存在である妹のナナリーもシュナイゼルの籠絡とはいえ、敵に落ちてしまった。今、ルルーシュが戦う理由は、《ゼロ・レクイエム》によってルルーシュが願う完全なる優しい世界を実現するためだからだ。その為ならば、自らを犠牲にする覚悟を決めたルルーシュを止めることなどC.C.にはできない。・・・いや、そのような資格が自分にはないと思ってさえいた。 

 

(全てを知っていながらそれを黙り、ルルーシュを利用していた私に、想いを伝える資格など・・・)

 

 ルルーシュに気づかれないように、悲しげな顔を下に向けながら彼の手に被せるようにC.C.はそっと手を乗せる。そうしてしばらくの間、その部屋ではもの悲しい沈黙が続いていた。

 

─────自らの願いのためにかつての仲間と世界を騙し、その身が傷つき朽ちることも顧みずにその命が尽きるまで戦う道を選んだ黒の魔王。終わりなき生を終わらせることよりも愛しき魔王と共に歩む道を選ぼうと願いながらもその想いを隠し続ける道を選んだ黒の魔女。2人がこの先どのような選択を続け未来を進んでいくのかは神や悪魔などという存在ですら分からないことであろう。だが、それでも魔王の騎士を始めとした彼らを知るもの達は魔王たちの幸せを願わずにはいられないのもまた彼らの偽らざる本音でもあった・・・

 




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あとがき
今回は戦闘までいけませんでしたが次回から戦闘に入る予定です。色んなキャラたちを出す予定なので混雑しないように気をつけて書いていこうと思います。先日復活のルルーシュが地上波で放送されましたね。自分は見れなかったので今夜ブルーレイで久しぶりに見て懐かしい思い出に浸ろうと思います。4DXとか激しくて興奮したのを今でも覚えてます。それと質問ですが、今現在できているキャラたちや機体などの設定を投稿した方がいいですかね?
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