今回はアルゼナルメンバーとダイヤモンドローズ騎士団の戦闘がメインとなります。要塞戦は今回で終わりを迎えるのでそろそろコーネリアやヴィレッタたちとの戦闘が近づいております。頑張って進めてフジの決戦にいかなくては・・・
道明寺要塞と茶臼山要塞が陥落し、天王寺要塞もまたそう時間も経たない内に陥落するとの報告を現在モニカたち第三機甲師団の攻撃を受けている天王寺要塞の司令室のオペレーターからの悲鳴混じりの涙声での報告によってオオサカ租界でライたちの進軍に備えていたコーネリア率いるコーネリア軍とヴィレッタ率いる純血派のブリタニア軍人たちの間に投降すら許さず皆殺しにするライとモニカたち《神殺の英傑》、そして彼らに付き従う兵士たちのあまりの徹底ぶりな殲滅する姿に恐れ、抵抗もできない兵士すら嬲り殺すことに怒り、まだ生きている彼らを助けるためにも撃って出るべきだと己の信じる正義の赴くままに叫び、そして彼らと敵対するのではなくここは一刻も早くシュナイゼルたちの元へと撤退すべきだと進言しようとする者までもが現れるなど部隊の指揮は完全に乱れきっていた。コーネリア軍も純血派もこれまで敵対国であるAEUや人革連、さらにレジスタンスなどの反乱分子など多くの敵と戦い勝利した確かな経験を持っている。しかしそのほとんどはコーネリアの気性もあってか彼らの方から攻撃を仕掛けるものであり自分たちが責められた経験はそれほど多くない。防衛戦ならば経験豊富のアンドレアス・ダールトンがいた頃は常戦無敗の戦歴を誇るが既に彼はルルーシュの策略によって命を落としており、コーネリア軍は彼のいない防衛戦を今回初めて強いられようとしていた。しかし末端の兵士たちがそのような慌てふためいた無様な姿を晒している中でも長年コーネリアに仕えているギルバード・GP・ギルフォードやダールトンの息子たちであるクラウディオ・S・ダールトンたちをはじめとしたコーネリアのことを信頼している古参の兵士たちは落ち着いており、コーネリアからの指示が出たらすぐにでも実行できるように待機していた。
ギルフォードたちがコーネリアを信じて待機している中、コーネリアはダモクレスにいるナナリーに援軍要請をかけていた。コーネリア側にも十分な戦力があるがそれは3つの要塞にいた戦力でライたちの戦力を削ったことを計算に入れた上で対処できると考えていたものであり、想像以上に敵の戦力が削れていないどころかライを含めた一部の戦力を温存している上でカーリーたちが壊滅させられたことを考えればとても出ないが今ある戦力だけでは厳しいと言わざるを得なかった。故に援軍を求めたのだが・・・
『────どうやら、まだ生きてらっしゃるようですね。コゥ姉さま』
「・・・ナナリー・・・」
[[rb: 天空大楼閣>ヘブンズハイパレス ]]の通信室で、映像が表示されないモニターから流れる音声のみの通信に、コーネリアはスッと目を細めた。 その静かで冷たい音声のみの通信────ナナリー・ヴィ・ブリタニアの声に、コーネリアはスッと目を細めた。
『どうされたのですか? あいにくと私も事を急いでいる身でしてね。こんな時に談笑している余裕はないのですが』
淡々として、空恐ろしいほど落ち着き払ったナナリーの声に背筋が冷えるのを堪えながら、コーネリアは言った。
「・・・ならば単刀直入に言わせてもらう。我々の元に・・・」
『援軍が欲しい、というのですか?』
最後まで言い終わらないうちに、先を言い当ててきたナナリーに、さすがにコーネリアの眉がぴくりと跳ね上がった。
『あら、何を驚いているんですか、コゥ姉さま。ひょっとして、私が
「・・・・・・」
コーネリアは、「あの屋敷」という単語で思い出した。それはあのカンボジアの屋敷で、シュナイゼルの指示でナナリーを焚き付けるためにゼロルルーシュの真実を次々と見せた時のことだ。
その後の
『そういうのももうやめたんです。私は。・・・それにしても、すごいですよね、フレイヤって。あれだけの力ならば、こんな私でもいくらでも敵を倒せるんですから』
「・・・・・・・・・」
『しかも1発じゃないんです。もっともっとたくさんあるんです。だから────』
そこでナナリーは、一度言葉を切った。
『話が逸れてしまいましたけど、私に通信をする暇があるのならコゥ姉さまはギルフォード卿たちと共にライさんたちを迎え撃つ準備でもしたらどうですか?8年前、私とお兄さまを見捨てて、その上でお父さまの御命令に従って私とお兄さまともども日本を踏み躙っただけでなく、ユフィ姉さまの復讐のために私を利用したコゥ姉さまのことなんですから』
「なっ・・・」
ナナリーの言葉に、コーネリアは頭が真っ白になった。
『そして私はお兄さまと同じようにどれだけ後ろ指を指されようとも、お兄さまを止めなくてはならないのです。そのためには3日後のフジでの決戦のために戦える人たちには多く残ってもらう必要がある。それに、もう決まったも同然な敗戦まけいくさでも、まだ希望がない訳ではない。そう────|魔女の二つ名に相応しい最期を魅せられる覚悟 《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》がありでしたらね、コゥ姉さま』
静寂が通信室に満ちる。やがて、コーネリアが低い声で訊ねた。
「なん・・・だと?ナナリー、お前・・・今、この私になんて言った・・・?」
『聞こえないほどの声で言った覚えはありませんよ、コゥ姉さま。私たちは援軍を送りません。そして、《ブリタニアの紅き魔女》として《最期の一兵まで戦い続けなさい《・・・・・・・・・・・・・・ 》と言ったのです。あなたに残された役目で、希望はそれ以外にありません』
愕然として、コーネリアは目を大きく見開いた。 それから、近くにある通信室の椅子のひとつの手に力を込め、体を震わせながら、コーネリアは低い声で言った。
「まさか・・・お前までもが、兄上と同じく・・・私に、死ねとでも言うのか・・・?」
怒りと愕然に震える声でのコーネリアの問いに、ナナリーは声の質を変えて、こう答えた。
『コゥ姉さま。あのカンボジアでの屋敷の時で、あなたは私に言いましたよね?目には目を、歯には歯を。自分の復讐にとってはあれが正しいものだったかもしれない、と。そして自分は私が思っているほど、きれいな剣を振るってきた人間じゃない、とも』
「・・・それが、なんだ」
『そしてあなたにとってユフィ姉さまは、私にとってルルーシュ兄さまがそうであったように、唯一無二の家族と呼べる存在だった。だからこそ、9年間私たちとお付き合いがあったのに、私たちを見捨てた。ルルーシュ兄さまの変化の理由を知ろうとしなかった。そして挙句に、ルルーシュ兄さまが先に滅茶苦茶にしてしまったとはいえ、ユフィ姉さまの復讐のためだけにシュナイゼル兄さまに協力し、私を利用した・・・』
「違う・・・!私は、私はお前を利用などしていない!確かにユフィの復讐もあるが、ルルーシュに騙され続けたお前を守るために・・・!!」
『それなら何故シュナイゼル兄さまに手を貸して、私を皇帝に仕立て上げたのです?』
コーネリアは言葉に詰まった。確かにナナリーの言葉と問いにも一理はあったからだ。
『・・・結局、あなたは私がルルーシュお兄さまの妹だったから、ルルーシュ兄さまの足枷にはちょうどいいと思ったんです。だから今の今までシュナイゼル兄さまと共に手を差し伸べないで、この時になってから私を利用した。《ブリタニアの紅き魔女》も落魄れたものですね』
「違う・・・聞いて、くれ! ナナリー!!私は利用なんかしていない!! ただ、お前を守ろうと・・・っ」
『守るため?まだそんなことを言える元気があるのですね。ならばもう一度聞きますが、どうして8年前、私たちを見捨てたのですか? 成人していたコゥ姉さまなら私たちを守れたはずなのに、どうしてカンボジアで会うまで放置していたのですか』
「だから、それは・・・!!」
何とか言葉を言おうとするコーネリアであるが、それに対しての答えが出ず言葉に詰まってしまう。そんなコーネリアに対してふっと嘲るようにナナリーが小さく笑った。
『ユフィ姉さまの方が大事だから、私たちの命が軽いものだから、お兄さまを倒すための道具として私を利用したんですか。あの時カンボジアでお兄さまの変化を見せてきたように、8年ぶりに会った時に優しくしてくれたのも、そして8年前のあの日まで優しくしていたのも・・・演技なんですね。全部、何もかも、嘘だったのですね。シュナイゼルお兄さまと同じ気休めの言葉でホッとしていた私を、陰で笑っていたんでしょう。ユフィ姉さまの汚名を晴らすための必要な道具が自分の掌の上で踊っていることに喜んで』
「違うんだナナリー!!私は、本当にお前を・・・!ヤケになるな!オオサカには私の他にもお前や兄上のために命を賭して戦っている者たちがいるんだぞ!?」
必死に訴えるコーネリアに対し、ハッ、とナナリーがさらなる嘲笑を返した。
『それで?だから一体なんだと言うんですか? 私よりも長く総督を務めた者として、戦いの場に立つ大将として、彼らを導き、彼らの命を背負う覚悟も持っていなかったんですか?だから《ブリタニアの紅き魔女》も落魄れたものだと言うのです』
「・・・ナ・・・ナ、リ・・・・・・」
『もういいです。目障りですから、せいぜいそこでギルフォード卿やヴィレッタ伯たちと共にもがいて私の視界から消えてください。私は是が非でもルルーシュ兄さまを止める。止めなければ怒りと憎しみが増えて、みんなが明日を迎えることができなくなってしまうんです。それだけは避けなければならないし、あなたはもはや私がルルーシュ兄さまを止めるのにほんの少し邪魔なようですから』
「────ナナリイイィィッ!!!」
無駄と知りつつも、コーネリアは腰の長剣を勢いよく引き抜いて、モニターに向けて突きつける。 その瞬間、ナナリーへの通信は一方的に相手側から切られた。
外の音が遮断され、静まり返ったダモクレスの艦内庭園でナナリーは身じろぎもせず、《ダモクレスの鍵》と呼ばれるフレイヤ弾頭の発射スイッチを握りしめていた。 ────これでまた、大切なものをひとつ壊してしまった。
(・・・覚悟、か・・・)
自分自身が口にしたその言葉を、胸のうちでもう一度繰り返した。 覚悟が足りないのは、自分のほう。だから、逃げ道は全て焼き払う。大切なものなど無くしてしまう。それでいい。心残りがあると、一歩も動けなくなってしまいそうになるから。これでコーネリアに対する気持ちにケリはついた。そしてついでに、返礼もだ。 残るは・・・。
『────ナナリー』
艦内通信を通じて、不意にシュナイゼルの声が呼びかけてきた。
『何かあったのかい? 先ほど、誰かと話していたようだけど・・・』
「シュナイゼルお兄さま・・・いいえ、何も』
ナナリーはついさっきまでコーネリアと話していた時は打って変わり、静かな口調で答えた。すると、通信の向こうでシュナイゼルは『・・・ふむ』と、呟いた。
『ナナリー、
「────シュナイゼルお兄さま」
言いかけたシュナイゼルをナナリーが遮った。
「余計な詮索はご無用にお願いします。それに、私たちにはやらなければいけないことがあるはずでしょう?
『・・・・・・』
「どうぞ、私のことなどお気になさらず、3日後の決戦の準備に専念されてください」
『・・・ああ、そうしよう。では、また後でね。ナナリー』
「はい────」
ナナリーの車椅子の周辺では、相変わらず色とりどりの花が咲いている。
一方、天空大楼閣の通信室でひとり、絶望と怒りに息を荒くするコーネリアを、戸口の陰から見ている者がいた。エンブリヲである。
「フフ・・・どの世界にもありがちな三文芝居同然の愛憎劇ではあるが、まあ、
ワイングラスを片手に、エンブリヲはコーネリアの後ろ姿を舐め回すようにして見つめていた。それからワインを少し啜り、そのグラスの中に半分ほど残ったワインをじっと見つめる。
「女の味もそうだが、酒の味もまた思いのほか化けるというものだったとはね。これほど美味と感じる酒ならば・・・是非、また飲んでみたいものだ」
エンブリヲは感慨深げに独り言ちた後、再びコーネリアの後ろ姿に目を戻して、舐め回すようにして見つめたのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
コーネリアがナナリーからの援軍を断られている頃、天王寺要塞にてダイヤモンドローズ騎士団がアンジュたちアルゼナルメンバーとクレッセント・クーロン隊戦闘を繰り広げており、その中の戦いの一つであるエルシャとステラ、ヴィヴィアンの戦闘に決着が着こうとしていた。
『ま・・・負けた・・・?』
ジンクスIV・Aとの激闘の最中、GNビームサーベルによる鋭い一撃を受けて戦闘不能に陥ったレイジアのコクピットの中で、エルシャが愕然となった。
『エルシャ・・・。確かにそのラグナメイルは強力な機体だわ。だけど乗り手の技量が未熟ではその性能を引き出すことができないわ』
そのジンクスIV・Aを操るステラは半壊したビルの屋上で倒れ伏しているレイジアのコックピットにGNビームライフルの銃口を突きつける。
『悪いことは言わないわ、投降しなさい。私はまともに戦えない人間を、ましてや敵対したとはいえ友人を斬る趣味はないわ』
『・・・・・・・・・』
ステラの勝利宣言を受けても、エルシャは微動だにしなかった。
その表情は、戦いを始めた時よりも
『エルシャ・・・!』
そこへレイザーを飛ばして、ヴィヴィアンが駆けつけてきた。 かつて自分が歳の離れた妹で、そして娘のように可愛がっていた幼き仲間の登場に、エルシャはハッとさせられた。それを見透かしてか、ステラが言った。
『エルシャ、いつまでそんな煮え切らない面持ちでいるの?戦場にそのような感情を持って戦うなんて自殺行為に等しいわ』
『・・・それでも、私は・・・エンブリヲさんを、信じるしかないんです』
エルシャのその言葉をさらに見透かしてか、ステラが言った。
『────
ステラの言葉に、エルシャは再びハッとさせられ、そして表情をさらなる
『私だってあなたと一緒にあの子たちの世話をしたことあるもの。あなたがどれだけあの子たちを思ってるのかわかってるわ』
『・・・・・・・・・』
────エルシャはかつて、自分と仲間アンジュたちの拠点であった対ドラゴン戦闘機関《アルゼナル》の襲撃事件にて火炎放射器によって焼き尽くされた、産まれながら周りを滅ぼす力を持つ忌子とされた《ノーマ》の幼子たちを時間操作で救ったエンブリヲに感謝し、子供たちを守るため彼についていくことを決めた。それ故に、リーダーのサリアも含めた他のメンバーと違って自分勝手な動機で行動しなければ、自らの命を捨てる覚悟も持っている。それこそ「あの子たちのためなら何だってやるわ。人間どもの抹殺だって、アンジュちゃんを殺すことだって」と狂気じみた声色で語ったこともあるくらいに。 しかし、この世界に飛ばされてなおもアンジュたちと戦い続けるうちに、自分を信じようとしてくれるアンジュやヴィヴィアンたちの熱い思いに触れるうちに、エルシャはいつしか迷いを抱くようになった。そしてその迷いを突かれた結果が、これである。
『・・・ノーマがノーマである限り、アルゼナルの幼年部の子供たちは、戦いの宿命から逃れられない。それを変えられるのは、エンブリヲさんしかいないから・・・』
『無理よ。例えあなたがどれだけ神に祈り、願い、縋りつこうともその想いが返ってくることはないわ。この世界に戦いが満ちている限り、そしてそんな世界を作り出す原因であるシュナイゼルたちのような存在がいる限り子供たちの戦いや苦しみは、未来永劫に続くことになる。そんな中で後に生まれてくる子供たちのために私たちができることは、戦いを無くすことだけしかない。そして・・・あなたが信じているというエンブリヲという男もまた、ナナリーやシュナイゼルと同じく戦いの元凶のひとつ。元凶を絶たない限り戦いは続き、そして戦いが続く限り、悲しみは終わらないわ』
『私は・・・』
ステラに容赦なく言葉で追い詰められるエルシャは、苦し紛れにこう呻いた。
『・・・私にはもう、帰るべき場所が・・・ない。いいえ、わからない・・・。そんな私に、一体、どうしろと・・・』
『何言ってんの!?』
エルシャの言葉を遮ったのが、レイザーからのヴィヴィアンの声だった。
『エルシャの帰る場所は、アルゼナル・・・私たちの所に決まってるじゃん!!』
『ヴィヴィちゃん・・・』
健気なヴィヴィアンの言葉にエルシャが胸を打たれる中、ステラもヴィヴィアンの健気さを認めたかのように、エルシャに優しく諭すように言った。
『エルシャ・・・。ヴィヴィアンちゃんは確かに幼いけれどあなたの仲間たちと同じように絆や希望を信じる気持ちに嘘偽りはない。あなたと同じ違う世界の住人だからこそ付き合いが浅いけれど、その言葉と眼差しを見て、私はそう言い切れるわ』
『・・・・・・はい』
『子供たちのことが心配なら私がルルーシュ陛下に保護を進言してみるから。陛下は確かに冷徹なところもあるけど力もない子供を断罪するような方では無いからね』
ヴィヴィアンによる嘘のない純粋な言葉とステラによる優しい声色で諭しをかけられたのが効いたのか、新たに覚悟を決めたエルシャは、モニターの向こうのジンクスIV・Aを見つめ、こう宣言した。
『その言葉を信じましょう、ステラさん。エルシャ・・・投降します』
◇◆◇◆◇◆◇
一方、テオドーラのモニター越しに、ジンクスIV・Aとレイザーを前にして戦いを止めたレイジアを見て、クリスが声を荒げる。
『エルシャ!?何をしているの・・・何で戦いを止めるっ!?』
クリスはテオドーラをレイジアの方へ向けて突進させようとしたが、そこをヒルダのアーキバスとロザリーのグレイブが回り込み、攻撃を仕掛けて妨害してくる。
『おい! 余所見してる暇があるのかよ!?』
『お前の相手は、あたしらだろうがっ!!』
『うるさい・・・!邪魔するなっ!!』
行く手を阻んでくるヒルダとロザリーに、クリスの表情が醜く歪んだ。
『エンブリヲくんが見ているんだ!! 負けられないっ!! ゔゔううう・・・ああああああああっっっ!!!』
噴き上がるクリスの殺気。幾度目かわからない戦闘機動に入るテオドーラから溢れ出るドス黒い何かのオーラ。
『クリス・・・!?』
『すごい根性!?』
その様子は、襲い来るゴーヴァンたちを迎撃しているステラ、ヴィヴィアン、エルシャにも見えていた。
『何なのアレは!何かの力が、あの黒い機体に流れ込んでいる!?』
『おそらくはエンブリヲの仕業です!ラグナメイルの次元制御技術を使用していると思われます!!』
いつしかナーガ、カナメと共にそれぞれの龍神器に乗って、鈴音とタスクに加勢していたサラマンディーネが叫んできた。
『チッ・・・!要するにクリスは不死身ってわけかよ!?』
『完全に機体を消滅させれば、別でしょうが・・・』
『駄目だっ! そんなことしたら、クリスが死んじまう!!』
サラマンディーネの言葉にヒルダが舌打ちし、ロザリーが悲痛な声で叫んだ時、クリスは醜い表情で吠えた。
『うざい!!うるさい!!何が友達だっ!!!私はロザリーもヒルダもあんたたちも、誰ひとり友達なんて思っちゃいないっ!!! ロザリーとヒルダは・・・あたしを捨てようとしたんだぁっ!!!』
『誰もそんなことしてねえだろうが!?』
癇癪を起こした子供のように暴れ回るクリスとテオドーラを、ヒルダと共にふたりがかりで押さえつけながらロザリーが叫んだ。
『だってふたりとも、あたしよりアンジュの方が好きでっ・・・』
『はあ!? また、ここでもイタ姫かよ!』
『ちょっと!?勝手に私を巻き込まないでよ!!』
『クリス、何を遊んでるの!? 早くそいつらを・・・!!』
巻き込まれたアンジュがそうツッコみ、そこで異変に気づいたサリアが通信回線越しにクリスに向かって叫んだ。
『クリスっ!友達への好きとアンジュへの好きは、別なんだよっ!!』
『!?でも・・・でも!!』
ヒルダに叫ばれてハッとなるクリスだが、三たび、そしてさらに表情を醜くして大声で喚いた。
『ああああああああっ!!みんな、嫌いだあぁぁっ!!』
狂気に満ちた叫びと共に、テオドーラ越しにクリスの殺気がさらに噴き上がる。 ────かつて、クリスはアルゼナル襲撃事件にて出撃途中に銃撃されて墜落し、瀕死の所をエンブリヲに助けられたことと、歪んだ仲間意識を抱くほどの見捨てられる恐怖につけこまれ、エンブリオだけを本当の友達だと思い込むようになってしまった。だが彼の言うがまま騎士団に入ってアンジュたちと戦った結果、悪友で相棒の間柄だったロザリーが軽蔑しきるあまりに「あんなの友達でも何でもねーよ」と吐き捨ててしまうほどにすれ違いを起こしてしまった。 そして挙句には、かつての後輩であるマリカの機体を平然と撃墜して殺害してしまうという暴挙の中の暴挙に及ぶほど、クリスの心は捻れ切ってしまっていた。
『クリス!?』
『何をしていると言っているのよ、クリスっ!!』
『クソ!面倒なやつ!!』
ヴィルキスに抑えられながら、クレオパトラの中からサリアが叫んでくる中、かつてギアス教団によって体を改造されたジェレミアに負けず劣らずの狂乱のままに、クリスはテオドーラを大暴れさせる。 しかしその大暴れゆえの無茶苦茶な攻撃を、アーキバス:ヒルダとグレイブはなんとか掻い潜り、テオドーラを押さえつけた。
『!?し、しまった・・・!!』
『あたしたちの勝ちだ、クリス! もう逃がさないよ!?』
我に帰り、慌てるクリスに、勝ち誇ったようにヒルダが叫んでくる。
『ちょっと、何してんのよあいつら!?』
『ったく、どいつもこいつも・・・!エンブリヲ様が見ているってのに!!』
ここで異変に気づいたイルマとターニャが、エイレーネとヴィクトリアを向かわせようとしたが、そこへ鈴音の神龍とタスクのアーキバス:バネッサが立ち塞がった。
『どきなさいよ、あんたたちっ!』
『どかないよ、ダイヤモンドローズ騎士団!』
『アンジュたちの元へは死んでも行かせない!』
エイレーネが神龍、ヴィクトリアがアーキバス:バネッサに食い止められ、そしてそこへサラマンディーネたちの龍神器が加わり、5対2の激しい空中戦ドッグファイトが再び繰り広げられる。
天泣の空に響き渡る言葉と銃声と砲声。そしてその天泣の空を舞台に激しく動き回る複数の機影を、ウェールズのブリッジから見て、第三機甲師団の参謀であるフローレイティア=カピストラーノが溜め息をついた。
「やれやれ。もう混乱の極みだわ」
その様子をフローレイティアが座る指揮官席のそばでモモカと共に見ながら、補佐官であるシャーロット=ズームがマリーベルに話しかけた。
「それにしても、ここまでの状況になっても援軍が現れる気配が一向にないとは・・・フローレイティアこれは」
「ええ。ライ卿が予測した通り、黒の騎士団、そしてシュナイゼルとナナリーの零落は間違いないようね。・・・まあ最も決戦まであと3日だから、ただ単に戦力を回す余裕がないだけかもしれないけど」
フローレイティアは指揮官席から立ち上がり、ブリッジの各席に座るオペレータたちに向かってこう高らかに命じた。
「マーヤ卿、マリオ卿、フォルネウス卿、ピースクラフト卿と深淵騎士団も含めた要塞を落とした各部隊に伝えなさい。これよりオオサカ租界壊滅のための準備に取り掛かると。先行しているライ卿たちと協力してナナリーとシュナイゼル、黒の騎士団からの援軍が来るまでに早くオオサカ租界を陥落させなさい!」
「「「イエス・ユア・ハイネス!!」」」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『変わらないね、そういうとこっ・・・!あたしのこと、弱くて使えないゴミ人形くらいにしか思ってないんでしょう!?』
テオドーラで激しく抵抗しながら罵倒するクリスに、テオドーラをヒルダのアーキバスと共に押さえつけながらロザリーが叫んだ。
『待ってくれ、クリス!!何であたしたちが殺し合わなきゃいけないんだよ!?』
『あんたたちはいつもそう!あたしの気持ちなんて、お構いなしだ!!7年前も、そうだった・・・!』
『7年前・・・?』
突然意味深な言葉を叫んできたクリスに、ヒルダとロザリーは一瞬キョトンとなった。
『やっぱり、覚えていないんだ・・・!!あの日、プレゼント交換でくれた髪留め、あたしは二つ縛りのお下げだったのに、ひとつしかなかった!!』
『そういえば、そんなことがあったような・・・』
『ヒルダ!その時になんて言ったか、覚えてる!?』
『えっ・・・?』
クリスの声が、ここで初めて悲哀かなしみを帯びた。
『二つ縛りの髪型は自分と被ってるから、おさげをひとつにしろって言ったのよ!!この髪型、気に入ってるのに!!それからあたしは、ずっと髪を一つ縛りにしてきた!! 好きでも何でもないのに!!』
『それが今さら、何だって・・・!?』
『それだけじゃない!! ずっと・・・ずっと我慢してたっ!! 何でも受け入れようとしてきた!! あんたたちのわがままも、自分の立ち位置も・・・友達だと、思ってたから・・・っ』
ひとしきり悲哀に吠えた後、クリスは大きく項垂れた。
『・・・わかるわけないか、あたしの心なんて。人の気持ちもわからない女と・・・何も考えてないバカに』
『っ・・・!』
『あ・・・』
ようやく自分たちが、クリスにしてきたことを理解したかのように、ヒルダとロザリーが揃って息を呑んだ。
『でも、エンブリヲくんは違うっ!!エンブリヲくんは、あたしの友達になってくれた!!そして、このテオドーラをくれたんだ!あたしを信頼して!!』
そんなクリスの言葉に、なんとアイリスディーナが割って入った。
『・・・フン。友達、か』
『何か文句あるの、アイリスディーナ!?』
鼻で笑われたことに気色ばみ、食ってかかるクリスに、アイリスディーナが冷たく鋭い言葉を投げかける。
『だったら、この絶体絶命のピンチに・・・お前の友達のエンブリヲくんとやらは、何をしているのだろうな?』
『っ!?』
『私の目には、今こうしてここに現れないエンブリヲよりも、身体を張って君を止めようとするロザリーとヒルダのほうが友達に相応しいと思うがな。そうじゃないと言うのならば、その根拠をはっきりと、一言一句、わかるように言ってみたらどうだ、クリス?』
『クリス、惑わされないで!!エンブリヲ様の仰る通り、痛みを伴う言葉は跳ね除けるのよ!!』
容赦なく現実を突きつけるアイリスディーナの言葉に、クリスは胸が抉られる何かを感じ、言葉を返すことができなかった。それを察してか、サリアがそう叫んできた時、クリスは顔と声を震わせてエンブリヲがいるであろう天空大楼閣のあるオオサカ租界の方角を振り返った。
『嘘・・・嘘だよね、エンブリヲくん・・・?また捨てられた・・・?また・・・裏切られた?』
『ザマぁねえな、クリス!』
ヒルダが再び、勝ち誇ったように笑ってきた。
『自分から友達だって名乗る奴が、本物の友達なわけねえだろ!騙されやがって。バカはお前の方だよ!』
『何を・・・!あんたたちが、あたしを見捨てたからでしょ!?』
クリスは悲鳴に近い叫びをあげて、自分の中で一欠片ほどのものまで削られたエンブリヲへの想いに縋り付いた。
『よってたかって、あたしのことをバカにして…・・・!あたしはこんなにも辛くて、苦しんでるのに!!どうしてわかってくれないの!?』
クリスのさらなる悲鳴の如き叫びと共に、テオドーラが最後の抵抗とばかりに一気にパワーを上げてくる。それにテオドーラを押さえつけているアーキバス:ヒルダが振り払われ、そして必死になってさらに押さえつけるグレイブの腕が悲鳴をあげそうになった。
『無茶するな、クリスっ!?そんなことしたら・・・!』
『だ、ダメだ・・・!高度が、維持できねえ!!』
苦しげにそう叫んでくるヒルダとロザリーに、クリスが吠えた。
『は、離せっ!! このままじゃ、ふたりとも落ちるっ!!』
『ああ、いいよ!一緒に死んでやる!あたしは、あんたがいなくちゃダメなんだ!!』
迷うことなくそう叫んできたロザリーに、クリスはハッとなった。
『ロ・・・ロザリー・・・?』
『あたしは・・・あんたが好きなんだよ、クリス!! あたしたちだけじゃないか!?あんたの胸のサイズも、弱い所も、へそくりの隠し場所も、全部知ってるってのは!!』
『ロザ・・・リー・・・』
『もう一回、信じてくれよ!?もう一回、友達になってくれよ、クリス!!』
ロザリーが悲痛に叫んだ時、テオドーラとグレイブの出力が限界に達し、スラスターから光が消えた。そして、揃って2機がガクンと雪の積もった地面へとフリーフォールの速度で落下していく。
『ダメっ・・・機体が落ちちゃう!!』
『うおおおおおお────っ!!!』
シャーリーが悲鳴をあげたと同時に、ヒルダが吠えて、アーキバスをテオドーラとグレイブめがけて突進させた。
その瞬間、ズズゥゥン・・・と、雪が派手に巻き上がる。アイリスディーナ、アンジュ、タスク、鈴音、サラマンディーネ、ナーガ、カナメが息を呑んだ。3人が、まとめて地面に落ちて機体ごと潰れたと思ったからだ。 ・・・しかし、3人は無事だった。見ると、アーキバス:ヒルダがテオドーラとグレイブに伸し掛られる形で、地面の上に倒れ込んでいた。生体反応を確認すると、ヒルダ、クリス、ロザリーは無事だった。
『ナイス、ヒルダっ!!』
『ああ・・・ったく、2機分の重量を受け止めたおかげで、せっかくのアーキバスがおしゃかになっちまったけどな』
『・・・・・・』
声を輝かせるロザリーに対し、半壊し、行動不能になったアーキバスのコクピットから出て、ヒルダが頭をかいて溜息をついた。 そしてロザリーも、グレイブのコクピットから出て、テオドーラのコクピットブロックへと近づいた。それにつられてか、クリスがコクピットブロックを開けて顔を出し、ロザリーを見る。
「ごめん・・・ごめんな、クリス・・・」
泣きそうな顔になって謝ってくるロザリーに、クリスも泣きそうな顔になる。
「許さない・・・新しい髪留め、買ってくれるまで・・・」
「い、一番いいのを買ってやる!」
「ゲームする時、ズルしない・・・?」
「しない・・・!」
「お風呂の一番、譲ってくれる・・・?」
「ああ!」
クリスとロザリーは、つられて揃って涙を落とした。
「バカみたい・・・決戦だっていう時に、何してるの、あたしたち・・・」
「そんなカタいこと言いっこなしさ。仲直り、ってやつだろ?」
ヒルダが微笑ましそうにそう言った時、クリスがロザリーに飛びついた。ロザリーも、クリスを抱きしめ返した。
「ロザリー・・・っ!!ごめん・・・ごめんね・・・」
「あたしの方こそ・・・ごめん・・・」
抱き合うふたりの熱く優しい涙が、雨と共にふたりの体を滴り落ちていった。
しかし、その感動の一幕を、サリアがクレオパトラのモニター越しに冷め切った表情で見据えていた。
『・・・なんともつまらない結末だったわ。クリス、あなたもエンブリヲ様を裏切るつもり?』
クレオパトラはその一瞬、ベディヴィエールとヴィルキスを振り切り、一気にクリスたちの元へと迫った。
「「っ!?」」
「サリアっ・・・!」
感動の一幕に気を取られていたアンジュが、しまったとばかりに目を瞠り、ヒルダとロザリーがクレオパトラを睨みつけた。クリスが、戸惑った表情でクレオパトラ越しにサリアを見る。
「う、裏切るって・・・あの人は、あたしたちのことを・・・」
『見返りを求めていることが既に浅ましいのよ!! 私たちはダイヤモンドローズ騎士団! その生命も魂も、エンブリヲ様に捧げたはずよ!!』
「てめえ・・・!そこまで腐り切ってやがったのかよ!?」
ヒルダが怒鳴ったが、サリアは一瞥もくれなかった。
『・・・もう安い芝居はここまでよ。ヒルダ、友情に免じてクリスより先に葬ってあげる』
クレオパトラが、ビームライフルを構えた。
「逃げて、ヒルダっ・・・!!」
「だ、駄目だ・・・!アーキバスが動かねえ!!」
『さようなら・・・』
サリアはそれだけ冷たく言い放つと、生身のクリスたちめがけてビームライフルを放とうとした。しかし、その瞬間。
『────させません!』
サリアが引き金を引くよりも先にクリスたちとクレオパトラの間に割って入っていたカティアのゲジュペンスト・エンデが大型シールドを構え、クレオパトラのビームライフルを防いだ。サリアはたかが量産機のカスタム機にラグナメイルであるクレオパトラの一撃を防いだことに驚愕を隠せないでいたが、そんな暇を与えないかのようにアイリスディーナのヒュッケバイン・シックザールとマルギッテのレギンレイズ・ヤークトがクレオパトラに攻撃を仕掛ける。それに気づいたサリアはビームライフルをしまい剣でレギンレイズ・ヤークトのブレードトンファーによる斬撃を防ぎ、レギンレイズ・ヤークトの胴体を蹴り飛ばしてヒュッケバイン・シックザールにぶつけることで距離をとることに成功した。
『っ!?深淵騎士団・・・!』
『悪いが邪魔させてもらおうか』
サリアはまた量産機のカスタム機風情にまたもや邪魔されていることに苛立ちながらクレオパトラの剣でヒュッケバイン・シックザールに斬りかかるが、アイリスディーナは大型シールドで剣を受け止めながら反対の手に握るソードライフルで反撃を仕掛けるが既のところでサリアはクレオパトラを後退させることで回避する。しかし回避したところをレギンレイズ・ヤークトの脚部に増加されたブレード装甲による蹴りとゲシュペンスト・エンデのチェーンソーブレードが襲いかかるが近くにいたゴーヴァンを呼び寄せて盾にすることで時間を稼ぎ2機から距離をとるともアイリスディーナは逃がさないと言わんばかりにヒュッケバイン・シックザールをクレオパトラに接近させる。
『どうした?騎士を名乗るにしては随分と腑抜けた攻撃しかできないな?お前たちの愛しのエンブリヲ様が見ているかもしれないというのだからもう少し本気を見せてみたらどうだ?』
アイリスディーナの冷たい声音による挑発を聞いたサリアはくっ、とクレオパトラのコクピットでうめいた。
『アイリスディーナ!サリアとの決着は、私にも残しておいてよ!』
アンジュがヴィルキスの通信パネルを通して、アイリスディーナに呼びかけた。
『殺さないことも含めて最善はする。だが、彼女次第ではその余裕もなくなるかもしれないな』
『バカにしてるつもりなの!?』
アイリスディーナの回答ついでの挑発に気色ばんだサリアとクレオパトラが剣で斬りかかるが、それを読んでいたとばかりにアイリスディーナは大型シールドでクレオパトラの胴体を弾き飛ばしてバランスを崩したところをゲッター合金製の日本刀《リュウオウブレード》で斬りかかり右腕の装甲の一部を切り飛ばす。それに対してサリアも抵抗しようと剣を振るうが、ヒュッケバイン・シックザールの返す刀で剣を弾き飛ばされる。
『な、何なの!?これだけのパワーとスピードが、通常の兵器にあるはずが・・・』
さらに驚きを隠せないサリア。というより、クレオパトラの反応がヒュッケバイン・シックザールに追いついていない。確かにクレオパトラは、他のラグナメイルと同じようにパラメイルも含めた通常の兵器ですら凌駕しているが、それはサリアとアンジュたちがいる世界での話だ。
対するアイリスディーナのヒュッケバイン・シックザールは新型量産機であるヒュッケバイン・Mark-IIIをアイリスディーナ専用にカスタムされた専用機体であり、武装や装甲、動力炉はスーパーロボットと比べても遜色内ほどの優れたものばかり使用されており、さらにそれを開発したのがこの世界でもトップクラスの技術者・科学者であるビアン・ゾルダークや敷島博士、ビリー・カタギリ、ロイド・アスプルンドなど多くの天才たちなのだからその性能は《神殺の英傑》たちの機体には及ばないもののそれでもアイリスディーナたちの機体は間違いなくこの世界でもトップクラスであると断言出来る。その証拠にさっきまでの戦いでも、クレオパトラの攻撃を全く物ともせず、逆に矢継ぎ早の反撃を繰り出すことで圧倒していた。
「す、すげえ・・・。まるで、一方的じゃねえか・・・」
「これがルルーシュの親衛隊《
『敵に回すと恐ろしいですが、味方となるとなんと頼もしい』
地上からロザリーとクリス、そして近空からサラマンディーネが、サリアとクレオパトラを防戦一方に追い込むアイリスディーナとヒュッケバイン・シックザールの鋭くも華麗で圧倒的な戦いぶりに息を呑んだ。
かろうじて、サリアは致命傷はもちろん武器の損失だけは避けていたが、いつまでもこんな戦闘を続けていたら、
『お、墜とされる・・・!』
ヒュッケバイン・シックザールが、背中に装備しているグラビトン・ライフルIIの銃口を開いた。そこから放たれる重力を纏った砲撃が地面をえぐりながらクレオパトラを襲う。クレオパトラはできる限りの回避運動でやり過ごしきったが、 ヒュッケバイン・シックザールが、もう終わりか? とばかりに手招きで挑発してきた。その不敵さに再び気色ばんだサリアが、クレオパトラをヒュッケバイン・シックザールに突進させようとしたが、
『────悪いなアイリスディーナ。決着は私にも残させてもらいたいものだな』
通信スピーカーを通じて聞こえてきたその声に、クレオパトラとヒュッケバイン・シックザールの双方が動きを止める。サリアがクレオパトラごと振り返ると、ウェールズのデッキから、1機のパラメイルが発進してきたところだった。
『レイジア!?一体誰が・・・』
ステラとジンクスIV・A、ヴィヴィアンとレイザーとの戦いで敗北したはずのエルシャのラグナメイル・レイジアが、なぜ敵艦であるウェールズから姿を現したのか、その驚くべき光景に思わずサリアは自身の目を疑った。 そして、先ほどの戦いのうちにフローレンス・セイバーとヴィヴィアンによってエルシャ共々ウェールズに一度回収されたレイジアに乗っている女性で、モニカ率いる第三機甲師団の客将最後のひとりが、悠然と答えた。
『────つれないものだな。私だよ、サリア』
その最後の客将である女性の名前は、ジル。本名は、アレクトラ・マリア・フォン・レーヴェンヘルツ。 アンジュたちの世界に存在していた国家であるガリア帝国第一皇女にして、アンジュと同じ忌子ノーマゆえに王位を剥奪されて、アルゼナルへと送り込まれて総司令官を勤めた女性だ。 そして、ジルは地上にいるヒルダたちに向かってレイジアの通信パネルで叫んだ。
『ヒルダ、ロザリー! お前たちはクリスと一緒にアヴァロンに下がれ!!』
「って言うけど、こっちは動けねえんだよ!?」
ヒルダが叫び返すと、クリスが意を決した表情で叫んだ。
「ヒルダ!あたしのテオドーラを使って!!」
クリスに叫ばれたヒルダは、テオドーラを振り返った。
「・・趣味じゃねえけど、この際文句は言ってられねえ!」
ヒルダは悪態をつきながら、テオドーラへと乗り込んだ。続けてロザリーもクリスを抱えてグレイブへ戻る。
そしてテオドーラとグレイブが同時に動き出し、ウェールズへと向けて飛び立っていく。
『フ・・・。最後に少しは司令らしいことができたようだ』
『アレクトラ・・・!!』
サリアが、まるで仇敵にでも会ったかのような憎しみを込めた眼差しでレイジア越しにジルを睨みつける。
『久しぶりだな、サリア・・・。シュナイゼルとナナリー、そしてエンブリヲの騎士というからどれほどのものかと思えば、期待外れだったよ。そればかりか、三下同然と見下していたルルーシュの親衛隊である深淵騎士団の1人にここまで追い詰められるとは』
『何しに来たのさ、今更っ・・・!?』
かつて、ジルの側近であったサリアは、彼女を信頼すると同時に彼女のかつての乗機であったヴィルキスに執着していたが、ジルはあろうことかヴィルキスをアンジュに与えた。そればかりか、アンジュがある時、やむを得ない事情で一度はアルゼナルをヒルダたちと共に脱走した際、タスクにアンジュの追跡・送還を依頼しており、帰還後は財産等を没収しながらも、再びヴィルキスのライダーに任命した。これらの過度なひいきはサリアに深い失望と憎悪の種を植え付け、彼女が暴走し、離反と裏切りを招く要因にもなったのだった。
『・・・会いに来たのさ、
『えっ!?』
『聞いてないのか? 私が
『っ・・・・・・!!』
サリアは息を呑んだ。 そう。ジルはかつてエンブリヲに籠絡されたことで、タスクの母親も含めた仲間たちを死なせ、さらにはかつて自分の乗機であるヴィルキスを使いこなすことができない非力っぷりを発揮した。この「女としての弱さ」に負けてしまった屈辱にジルは血の涙を流し、エンブリヲに関しては憎悪をむき出しにしているが、時折「エンブリヲさま」と寝言を呟いてしまうほど、エンブリヲに籠絡されてしまった呪縛に逃れられずにいた。
『本当なら密会を楽しもうかと思ったが、あまりにお前が痛々しくてな・・・。それに、アンジュたちと並ぶ私の契約先であるクルシェフスキー卿と、その主のルルーシュ皇帝の目的の延長線上にあの男がいる以上、計画を変更せざるを得なくなったわけだ』
『何を戯言を・・・!あなたの言葉は、もう信じないわ!!』
サリアの憎しみのこもった叫びが、既に半壊している天王寺要塞の空と大地に響き渡った。
『私はエンブリヲ様の騎士!!ダイヤモンドローズ騎士団の団長、サリアよ!!あの方の元へは行かせないっ!!』
『────サリアっ!!』
そこへまた、新たな叫びが天王寺要塞の空と大地に響き渡る。 サリアが振り返った先で、ウェールズのデッキから4機のパラメイルが戻ってきた。そのうちの1機で、先ほどの叫び声を発したのは、テオドーラに乗ったヒルダだった。 そして後の3機はロザリーが引き続き乗っているグレイブ:ロザリー・カスタム、ヴィヴィアンが引き続き乗っているレイザー、あとの2機は砲撃戦仕様のパラメイルである《ハウザー》で、オレンジのハウザーに乗っているのはエルシャ、黄緑のハウザーに乗っているのはクリスだった。
『ヒルダ!?』
『突っ張るのも、そこまでにしな!!』
テオドーラから引き続き叫んでくるヒルダに、サリアが叫び返した。
『テオドーラから降りなさい、ヒルダ!ラグナメイルはエンブリヲ様の騎士の証よ!?』
『仕方ねえだろ!? 乗るパラメイルがないんだから!!』
その時、クリスがロザリーに訊ねた。
『ロザリー・・・。このハウザーは・・・?』
『ああ。お前が帰ってきた時のために用意しておいたのを、クルシェフスキー卿に頼んでウェールズに載せてもらったのさ。エルシャのと一緒にな』
『だったら、もっと装備を買い足しておいてくれればよかったのに・・・』
『何か言ったか!?』
『い・・・いや、別に・・・・・・』
『まあまあ。こういう時なんだから贅沢は言わないの。それよりも、[[rb: 団長>あの娘 ]]がお待ちかねよ』
ロザリーに通信パネル越しに凄まれてしょぼくれるクリスを、エルシャが優しく宥める。その様子を見て、サリアがギラリとした光を瞳に宿らせ、モニターに集まったテオドーラ、グレイブ、ハウザー2機を睨みつけた。
『あなたたち・・・!!』
『心配するな、サリア。お前の相手は私がしてやる』
ジルはそう言いながら、通信をアイリスディーナのヒュッケバイン・シックザールと繋げた。
『アイリスディーナ。クルシェフスキー卿たちと共に天空大楼閣へ向かってもらえるか。ここは私が引き受ける』
数瞬の間をおいて、ヒュッケバイン・シックザールからこんな返答が戻ってきた。
『・・・いいんですね?』
アイリスディーナの言葉はそれだけだったが、ジルはその言葉から問いの意味を察した。このままひとりでサリアを任せてしまってもいいのか、と。 ジルは表情を変えず、通信パネル越しにライに告げた。
『構わない。まだ我々には本命である天空大楼閣にいるコーネリアたちの殲滅が残っている。故にそろそろシュナイゼルとナナリー、黒の騎士団の援軍が来るかもしれないからこそ、モタモタしている暇はないのだろう?それに、3分で勝負をつけてみせる』
『・・・委細承知です』
『ジルさん、気をつけてください』
アイリスディーナ、そしてカティアがそれぞれ返答した後、ヒュッケバイン・シックザールが背中のフライトユニットのブースターを噴かせて天空大楼閣へと向かっていく。それにゲシュペンスト・エンデ、レギンレイズ・ヤークト、グルンガスト炎式、ジンクスIV・Aそしてクレッセント・クーロン隊の機体たちが続いた。 後を追おうとしたクレオパトラだが、そこへレイジアが立ち塞がった。
『アレクトラ・・・!!』
『昔の女と今の女の対決か・・・、この舞台と合わせて、あの男の喜びそうなシチュエーションだな!!』
ジルの言葉と共に、レイジアが専用武装である剣を引き抜き、最上段に構えた。
『来なよ、サリア。あんたの未熟っぷりを教えてやるよ。皇女だとか歌だとか関係なく、お前が実力でアンジュに劣っていたこともね』
『ならば、私はあなたを倒して証を立てる!! エンブリヲ様に最も相応しいのか誰であるかをっ!!』
『ハッ!その発想が子供なんだよ、サリアっ!!』
その2人の言葉を合図にしたかのように途端に、レイジアが加速した。
先ほど、ステラのジンクスIV・Aとヴィヴィアンのレイザーとの戦闘によって出力が半分近く落ちたとはいえ、かつてはヴィルキスの
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
アンジュたちとサリアたちが戦闘を繰り広げている間に天王寺要塞もモニカたちの手によって壊滅しこれによってオオサカ租界の防衛の要であった3つの要塞全てが陥落したことによって第二・第三機甲師団、第一混成師団、深淵騎士団、マリオとマーヤ、
コーネリアたちとの戦いに向けてそれぞれ準備を行っている中、ライ、モニカ、アレン、ミリアルドたちはそれぞれの愛機に乗って先陣を切っていた。
『それでは手筈通りに、まずは僕からいかせてもらいましょうか』
ライはそう言うと同時にアーサー・イルジオンの主武装であるルルーシュ自らが名付けた蒼き大剣《デュランダル》を構えると同時にアーサー・イルジオンの動力源であるGNドライブ[A]、ゲッター炉心、光子力エンジン、ブラックホールエンジン、DEC反応炉、ユグドラシルドライブをフル稼働させ始め、機体を金色に輝かせ始めデュランダルの剣先を巨大なビームサーベルの刀身が覆い始めた。そしてアーサー・イルジオンから流れ込まれるエネルギーを用いてデュランダルのビームサーベルが300mほどの刀身を形成させると、アーサー・イルジオンはそのカメラアイを紅く輝かせる。
『────我らが覇王の輝かしき
ライは淡々と感情が篭っていない声で告げながらアーサー・イルジオンの両手でデュランダルを握らせ上段に構える。アーサー・イルジオンの周囲をビームサーベルの熱と6つの動力炉がフル稼働したことによって発生した熱によって陽炎が発生し、機体から発生するプレッシャーは歴戦の戦士であるモニカたち《神殺の英傑》ですら押しつぶさんばかりの勢いで放たれており、ブレイズルミナスの内側でライの行動を見ていたブリタニア軍の兵士たちが後ずさりするほどのものであった。
『全てを砕け!!蒼天破撃・バルムンク!!』
アーサー・イルジオンがバルムンクを振り下ろすと巨大なビームサーベルの刃がオオサカ租界全体を覆う巨大ブレイズルミナスとぶつかり合う。それは銀河のように美しくどこか恐ろしさを感じさせる蒼き光の帯となって膨大なエネルギー量ゆえに放たれたそれは対象となった存在を消滅させる光の波となって襲い、その一撃に対して要塞都市と自負するだけあって戦艦以上の強度を誇るブレイズルミナスはバルムンクの一撃を一瞬ではあるが拮抗状態を作り出すことに成功したが、しかしその程度で防げるほど《終焉の騎士》の一撃は軽くなく、アーサー・イルジオンがグッと腕に力を込めてバルムンクを前に押し出したことでビームサーベルの刃が触れている箇所からブレイズルミナスにヒビが入り始めそれはクモの巣状に広がり、数分も経たないうちにブレイズルミナスは崩壊し限界を迎えたブレイズルミナス発生装置もまたいっせいに爆発したのだった。そのあまりに現実離れした出来事にコーネリア軍と純血派の兵士たちは言葉も出ず唖然としていたがそのような隙だらけな姿を見逃す訳もなくライはこの場に集う全ての戦士たちにたった一言だけ命令を下す。
『────蹂躙しろ』
『『『『『『『『────イエス・マイロード』』』』』』』』
───これより始まるは圧倒的な力による蹂躙劇。これまでブリタニアがろくに戦う力を持たないナンバーズやレジスタンスを一方的に殺戮してきたように、彼らはその身をもって自分たちがやってきたことをその身をもって味わわされるのであった。これから数時間の間にオオサカ租界はこれまでの戦闘の規模とは比較にならないほど多くの血で大地を濡らしていくことをコーネリアとヴィレッタたちはまだ知らないのであった・・・。
あとがき
はい今回もありがとうございます。恐らく次回でダイヤモンドローズ騎士団との戦闘は終了しエンブリヲとの戦闘になりますが予定としてはこの時にも女性陣に罵倒させようと思ってます。セシリアとかに『あなたなんてルルーシュ様と比べて月とスッポン、いいえ太陽とゾウリムシですわ!』みたいなルルーシュに比べてエンブリヲがどれほど劣っているかのようなセリフを言わせたいな思ってます。ダイヤモンドローズ騎士団は今のところ原作アニメと同じ3人は救う予定ですが、イルマとターニャはどうしましょうか?原作のように最後までエンブリヲの人形となるか、それとも生存させるか・・・。そして話は変わりますがこれからは小説投稿期間をあまり開けないよう心がけ1週間以内に本編か設定、短編のいずれかを最低でも1本上げるようにしていこうと思うのでどうかよろしくお願いします!!これから転スラとスパロボをメインに進めつつ他の小説もネタが息詰まった時とかに進めますのでこれからも長い目で見てもらえると嬉しいです。どうかよろしくお願いします!!