スーパーロボット大戦Z 魔王の降臨   作:有頂天皇帝

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まえがき
今回からいよいよオオサカ租界編の終盤戦が始まります。もう少しオオサカ編は続きますのでよろしくお願いします。今回でダイヤモンドローズ騎士団との戦闘は終了しますので次回からはボスラッシュに入ろうと思います。


REBELLION STAGE15. 燃えるオオサカ

ついにオオサカ租界への進軍を始めたライ率いるルルーシュ皇帝軍。情けも容赦も慈悲もない彼らは最初から全戦力を投入していた。それに対してコーネリア軍と純血派そしてロゴスもまた対抗すべく全戦力を投入した。しかしライのバルムンクの一撃によって混乱状態に陥っている彼らではすぐに対処できる訳もなく第一陣であるグルンガスト肆式、ジンクスIV、ゲシュペンストMark-III、ヒュッケバインMark-III、サングリーズ、ギルベインの新型量産機を中心とした部隊たちによって先頭に立っていた8機のデストロイガンダム、15機のビルゴIII、24機のサザーランドたちが制圧され防衛陣の一角が崩されたことによりそこから敵の侵入を許してしまったコーネリア軍と純血派、ロゴスは次々と蹂躙されていくのだった。

 

『それでは予定通りここからは各々好きに暴れるということでよろしいですね』

 

モニカはフローレンス・フィオーレの握るグラムで接近してきたバビを両断しながらライ、ミリアルド、アレンに声をかける。本来ならばコーネリアとヴィレッタの首はライと桜花隊に任せる予定だったのだが、先程このオオサカ租界にZEXISとドライクロイツさらにはグリンダ騎士団、そしてファウンデーション王国から部隊が出撃してきたとトウキョウ租界に待機しているアンドレイから連絡があった。ZEXISとドライクロイツは予想していたがまさかのグリンダ騎士団とファウンデーションの参戦にライは思わず舌打ちした。別に彼らを相手取るならば今ある戦力でも十分可能であるのだが、フジの決戦を控えている今は無駄な戦力の消費を避けるためにも彼らとの戦闘を避けるために今回の作戦目標であるコーネリアとヴィレッタたちの首を早々に刈り取り撤退することとなった。故にここには今現在カレンや甲児たちと戦闘をしているシュヴァルツ・ハーゼ隊とサリアたちダイヤモンドローズ騎士団と戦闘を行っているパラメイル部隊とクレッセント・クーロン隊以外のオオサカ租界殲滅のために用意された全戦力が揃っていた。

 

『では武運を祈ろう』

 

『こちらは好きに暴れさせてもらう』

 

ミリアルドとアレンはモニカにそう告げるなり自らの親衛隊である《閃光の嵐》と《鋼鉄の野獣》も彼らに続いて左右に別れて進撃を開始する。当然それを妨害するようにロゴスのモビルドールであるデストロイガンダムが立ち塞がろうとするが

 

『退いてもらおうか』

 

ミリアルドはそう言いながらガンダムエピオンのヒートロッドでデストロイガンダムの右足を溶断し、バランスを崩したところをビームソードでデストロイガンダムを右肩から袈裟斬りに斬り捨て爆散させる。そのままガンダムエピオンはその爆炎を突っ切って立ち塞がるコーネリア軍のサザーランド、グロースター、ジンクスIII、トーラスたちをヒートロッドで薙ぎ払いながら突き進んでいく。

 

『邪魔だ』

 

アレンは目の前にいた純血派の2機のフラッグの頭を掴んで迫り来るデストロイガンダムのシュトルゥムファウストから放たれるビームを防ぐ盾代わりに投げつけて防御してガンダムアザゼルをデストロイガンダムの懐に潜り込ませると同時に胸部の3連装大口径ビーム砲1580mm複列位相エネルギー砲《スーパースキュラ》にサンダルフォンの砲塔を突き付けると同時にビームを放ちデストロイガンダムは胴体を融解され、動力炉に誘爆しながら爆散した。ガンダムアザゼルは爆炎の中を半壊したデストロイガンダムの残骸を踏み潰しながら目の前にいる純血派のマラサイ、バーザム、サザーランド、グロースターを蹂躙して進軍を続ける。

 

『ではライ申し訳ありませんがこの場の指揮は任せますね』

 

『問題ありませんクルシェフスキー卿。そちらこそお気をつけて』

 

『ええ』

 

モニカはライにこの場の指揮を任せてから自らの親衛隊である《純白の騎士団》とルルーシュの配下である《深淵騎士団》を連れて《天空大楼閣》へと進軍を開始する。ミリアルド、アレン、モニカが進軍を開始している姿を確認しながらライは空を見上げる。

 

(ZEXISとドライクロイツ、グリンダ騎士団が動きを見せるのは予想していたがまさかファウンデーション王国の新人類気取りの愚物たちまで来るとはね。あの新世代を導く女王気取りのイカレ科学者のことを考えれば例の兵器を使用してくるのは誰にでも分かることだ)

 

ライは進軍途中にとあるルートを通して知ったファウンデーション王国のことを考えながら最悪の事態を予想してそれに対処できるように後方で指示を出しながら警戒をしていた。

 

(本当ならば僕がエンブリヲを始末する予定だったがファウンデーションの動きを警戒するためにそれも出来ない。モニカたちもコーネリアたちの相手をすることを考えれば残る第零騎士団と深淵騎士団だけで相手取らせるにはエンブリヲの性格を考えれば不安だ。いやだからこそルルーシュも彼らを派遣してきたんだ)

 

ライは接近してくるジンクスIII、ウィンダム、ザクウォーリア、ヴィンセント・ウォード、ガレスをクラウソラスで両断しながらルルーシュの指示でオオサカ租界に向かってきているイングラムとマリーカたち租界に残していた一部の戦力のことを思い出しながら恐らくこの情報が届く前に行動を起こしていたであろう主にして親友のルルーシュの聡明さに思わず小さな笑みを浮かべる程だった。

 

『戦場では何が起こるか分からない。だけど僕たちの前ではどんなイレギュラーが起ころうと捻り潰すだけだ。それができるだけの力を僕たちは持っているのだからな』

 

ライは目の前まで接近しGNビームサーベルを振り下ろそうとしたジンクスIIIの腕を掴み捻り上げると抜き取った腕を捨て去ると同時にコックピットを踏み潰して誰に言うでもなくそう告げるのだった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

ライたちがオオサカ租界への侵攻を開始する1時間ほど前、ナナリーへの援軍要請を断られたことをギルフォードたちに告げたコーネリア。援軍が来ないことにショックを隠せなかったヴィレッタやギルフォードたちであったがルルーシュたちとの決戦が間近に迫っているのだから仕方がないと無理やり納得しようとした。しかし僅かな希望を込めてギルフォードがシュナイゼルに援軍要請をかけることを進言し、コーネリアは高い可能性で断られるだろうと思いつつも何もしないよりはマシだろうとその進言を許可した。そして先程ギルフォードがシュナイゼルから受け取った返答を答えるためにコーネリアたちは一同に集まった。

 

「・・・シュナイゼル皇子より伝令。ナナリー皇女と同じく、フジの会戦に備えて援軍は出せない。諸君らの武運を祈る、とのことです」

 

その場に現れると共に跪いたギルフォードは、(こうべ)を垂れて一同に報告する。

 

「そうか・・・」

 

「これでもう、我々の運命は決まったな」

 

ギルフォードの報告に、コーネリア、そしてヴィレッタやグラストンナイツをはじめとした、コーネリア軍の古参兵たちとヴィレッタの兄妹と純血派の一部の兵士たちなどその場にいる一同も一斉に重い表情となる。

コーネリアは先ほど、自分も通信回線越しに受けたナナリーからの援軍拒否がてらの訣別宣言を思い出して、誰よりも表情を重く悲しいものへ歪めた。

しかし、その重さと悲しさを振り切るようにコーネリアは首を横に振り、ギルフォードに言った。

 

「ギルフォード、お前も席へ着け。今しかこの機会はない (・・・・・・・・・・)

 

「・・・はっ」

 

ギルフォードはコーネリアの言葉に一瞬抗弁しようとしたが、自分もコーネリアたちと共に置かれた状況を思い出し、今更抗弁しても何も始まらないと覚悟を決め、席へとついた。

コーネリア、ヴィレッタ、ギルフォードたちが集まったのは、天空大楼閣の食堂。宴会場とも見て取れる広さと装飾、設備が置かれたこの食堂で、コーネリアたちが集まった宴会場中央の長いテーブルの上には、非常用のものも含めたありったけの食糧を使って作った多くの御馳走が大小異なる大きさの皿にそれぞれ盛られ、それに見合う豪華な酒がグラスやゴブレットともに並べられていた。

 

「まさか、ナナリー皇女が援軍要請を完全に拒否されるとは・・・」

 

要塞 (とりで)は3つとも落ちて・・・我が軍の兵力は半分にまで減らされた。イオクやジャスレイ、そしてカーリー・ディゼルも倒され、エンブリヲの騎士どもも、そして黒の騎士団もロゴスも、あてにできん・・・」

 

「こうなれば・・・我々の持てる全ての(ちから)を以て、( オオサカ)を枕にして果てる覚悟で戦い抜くしかない」

 

上からクラウディオ、エドガー、バール。そしてデヴィッドとアルフレッドも、筆頭と他2人の義兄に続くように覚悟を決めた顔で頷いた後、

 

「しかし、フジでのルルーシュとの決戦を控えた今では、ナナリー皇女もおそらく苦渋の決断であっただろう」

 

「ならば我々もコーネリア皇女と共に、祖国と先帝、そして我らが義父上 (ちちうえ)であるダールトンの為に命を(なげう)つのみだ」

 

気休めと激励の言葉を、それぞれ口にする。それにギルフォードとヴィレッタら、他に集まったブリタニア騎士や軍人たちも右に同じだと言いたげに頷いた。

その様子を見た後、コーネリアは再び俯きながらもギルフォード、ヴィレッタ、グラストンナイツらこの場に揃った一同に言った。

 

「・・・この戦で、そしてシュナイゼルに手を貸して、ナナリーを暴走 (たきつけ)てしまったが為に、私はトウキョウの戦いでダールトンたちに続き、また多くの者たちを死なせてしまった。全ての責めは、私にある。(ルルーシュ)伯母(マリアンヌ)、そして父上・・・シャルルの真意も含めた帝国の真実(あり方)に目を向けようとせず、ただ(ユフィ)の復讐という私怨に奔り続けた私にな。あの世でユフィやダールトンに合わせる顔はもちろん、詫びの言葉すら、ない・・・」

 

「姫様・・・!」

 

「そんな、コーネリア殿下が自分を責められることはありません!殿下はただ、ご家族である妹君のために・・・」

 

ギルフォードとヴィレッタが慌てて激励の言葉をコーネリアにかけたが、それはもういらないとばかりにコーネリアは再び首を横に振って、酒が注がれた杯を手に取った。

 

「だが、そんな愚かな道化に成り下がった私にも意地というものはある。ブリタニアの第2皇女としての意地を貫き、ブリタニアの騎士としての本懐を貫くこと・・・それだけだ!」

 

コーネリアは顔を上げて、ギルフォードとヴィレッタたちに言った。

 

「この後、我々はルルーシュ軍を攻撃する。我々の全力を以てしてでも、おそらく勝てないかもしれないだろう・・・だから、無理についてこいとは言わぬ。死にたくない者はここに残り、私が死ぬのを見届けてからどこへなり共逃げて、生き延びるがいい」

 

するとギルフォードが、コーネリアに向かって大声をあげた。

 

「何を言われます、姫様! このギルフォード、死ぬ時は姫様と共に思っております! それに、あのような逆賊ども、我々はもちろん姫様の敵ではありませぬ!」

 

ヴィレッタやグラストンナイツら他の騎士や軍人たちも声を張り上げ、ギルフォードの意見に賛同した。

コーネリアは僅かな間を置いた後、杯をグッと握りしめてから言った。

 

「・・・お前たちの気持ちはよくわかった。私も、負けるための戦をする気はない。だがそれでも、あのルルーシュが信を置く右腕にして最強の騎士であるライ、裏切り者ではあるが元皇帝騎士(ナイトオブラウンズ)のモニカ・クルシェフスキー、元OZの閃光の伯爵(ライトニング・カウント)のミリアルド、皇族殺しのアレンをはじめとして敵は精兵揃いで、兵力の差は否めん。そこで、我らは差し違えてでもでルルーシュ軍に突撃をかけ、ライの首だけを狙う。ルルーシュの筆頭騎士であるライさえいなくなれば、奴らは翼を失った鳥も同然だ。そうなれば、もし我々がこのオオサカに散華(ぜんめつ)したとしても、後は兄上やナナリーたちに任せればいい。それこそが、全てを失った我々が、祖国や父上・・・シャルル皇帝陛下の為にできる、最後にひとつだけの奉仕だ」

 

「「「御意・・・!」」」

 

コーネリアの言葉に、ギルフォードとヴィレッタたちは声を上げて、それぞれの杯を手に取る。

 

「これが最後の晩餐(うたげ)となる。間もなく始まる最後の決戦に備えて、思う存分に食って飲んで力をつけておけ。さあ────共に征こうぞ、皆の者!!」

 

「「「イエス・ユア・ハイネス!!」」」

 

杯を高々と掲げて宣言するコーネリアに、ギルフォードとヴィレッタたちもそれぞれの杯を高々と掲げ、一斉に叫んだ。

こうして、最後の宴会で心ゆくまでの飲食をしたことから、コーネリアたちの士気は十分に上がった。

 

─────自らの選択が過ちだったことにようやく気づいたコーネリア。しかし今更その選択を悔やむことも出来ずその過ちを認めて償うにしてもコーネリアには自分を慕ってくれる部下たちやこれまで散っていった同胞たちのこともありそれを受け入れることは到底できなかった。故にコーネリアはこの道が過ちであり愚かな選択をしているとわかっても今更変えることもできず最後まで抗うことを決めたのだった・・・

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

全ての防衛施設が破壊され多くの機体や兵器などの残骸が辺りに転がり各所で炎と黒煙が上がっている天王寺要塞の上空にてサリアたちダイヤモンドローズ騎士団とアンジュたちアルゼナルのパラメイルたちが天空を舞うように激しく戦いを繰り広げていた。

 

『とっとと落ちなさい、よ!!』

 

鈴音の激号と同時に放たれた神龍の双天牙月が振り下ろされ、エイレーネの両腕に直撃し火花を散らしさらに追撃としてその胴体に強烈な踵落としを決めることで両腕にダメージを負ったエイレーネは勢いよくタワーに叩きつけられた。

 

『こんな・・・バカなっ!?』

 

イルマはナイトメアフレームである神龍如きに為す術もなくやられた事実を認められず驚愕の表情を浮かべながら上擦った声で叫ぶ。イルマはすぐさまラグナメイルの力で両腕のダメージを再生させると同時に神龍に飛び掛ろうと剣を構えて斬りかかるが

 

『そんなおっそい攻撃が、通じる訳ないでしょ!!』

 

『舐めるなぁ!!』

 

反撃を試みようにも、神龍による連続斬撃を繰り出され、エイレーネは防戦一方になっていく。その近くで、

 

『さぁエンブリヲなる愚かな猿に媚びを売る雌犬さん。我がブルーティアーズの前で無様に踊りなさい!!』

 

『この・・・!エンブリヲ様の素晴らしさを理解できないクソ女風情がっ!!』

 

セシリアのセレスティアルフリーダムガンダムによるスーパードラグーン《ブルーティアーズ》から放たれる縦横無尽のビームを前に、ターニャのヴィクトリアも防戦一方となっていた。

 

『さすがはルルーシュ皇帝の選んだ親衛隊の騎士たちか・・・!俺もアンジュの騎士として、負けてられない!!』

 

『ああ、やるぜテオドーラ!セシリアたち(あいつら )に負けてらんねーぞ!!』

 

接近してきたゴーヴァンをアーキバス:バネッサの凍結バレットで粉砕しながらタスクが息をのみ、同じく接近してきたコーネリア軍のアヘッドをビームライフルで撃ち抜いて、ヒルダが嬉々として叫んだ。

すると、ヒルダの闘志に応えたようにテオドーラのボディが赤く輝きだし、パワーが上がっていった。

 

『気に入ったよ、テオドーラ!あたしに応えてくれるのかい!?』

 

テオドーラがパワーを上げたのをコクピット越しに感じ、ヒルダは声を喜びからくる興奮に震わせた。

 

『元々はあたしの機体なのに・・・』

 

『自分でヒルダに渡したんじゃねえかよ!?』

 

『まあまあ・・・口論は後にして、早く決着をつけに向かいましょう』

 

しょんぼりするクリスを叱咤するロザリーを、エルシャが微笑ましそうにたしなめた。

 

一方、都市部に場所を移してジルとレイジアと激闘を繰り広げていたサリアとクレオパトラだが、アイリスディーナのヒュッケバイン・シックザールたちによって受けたダメージ、そして精神的動揺で敗色濃厚となっていき、

 

『うぐっ・・・!!』

 

ジルの予告通り、3分でサリアのクレオパトラは戦闘不能となり、多くの機体や兵器たちの残骸たちが転がっている街路に片膝をついた。

 

『どうしたのよ、クレオパトラ!?私に応えなさい!!』

 

焦りと怒りで操縦桿を激しく動かしながら、サリアが八つ当たりでもするかのように叫んだ。そんなサリアの見苦しい姿をモニター越しに見て、ジルが言った。

 

『ラグナメイルをもらって強くなったつもりか、サリア?その力を以てしてでも私に勝てないようじゃ、アンジュにもヴィルキスにも届かないぞ』

 

『黙りなさいよっ、アレクトラ・・・!!』

 

サリアはさらに八つ当たりの喚きを発しながら、操縦桿を必死に激しく動かした。

 

サリアたちダイヤモンドローズ騎士団との戦闘はジルたちが有利に進めている中、アンジュはこの戦闘をどこかで覗き見しながらほくそ笑んでいるであろうエンブリヲを探していた。しかし迫り来るゴーヴァンの群れを捌きながらであるため思うように行かないでいた。

 

『このっ!鬱陶しいのよこのデカブツども!!』

 

アンジュはラツィーエルでゴーヴァンの装甲を斬り捨てながら苛立ち混じりの罵声を吐き捨てるもいつの間にか増援としてやって来た追加のゴーヴァンにアッシマー、バイアラン、アビゴル、デナン・ゾンたちモビルスーツの大群を前に思うようにエンブリヲの捜索が出来ないでいた。そんな各機が戦闘を繰り広げている中、突如戦場に似つかわしくない穏やかな音楽が流れ始めた。

 

『♪♪♪♪〜〜♪♪♪♪・・・♪♪〜♪♪♪♪〜♪♪♪♪・・・』

 

『戦場で、歌・・・?』

 

『一体誰が・・・』

 

鈴音とセシリアは突如聞こえてきた音楽に疑問を抱きながら戦闘を続けていた。その事に疑問を抱くのは鈴音やセシリアたちだけでなくタスクたち同盟メンバーだけでなくサリアたちダイヤモンドローズ騎士団も同じだった。そして音楽は鈴音たちを歓迎する、もしくは嘲笑うかのように音楽のボリュームは高まっていく。

 

『♪♪♪♪〜〜♪♪♪♪・・・♪♪〜♪♪♪♪〜♪♪♪♪・・・』

 

(なんだ?一体この音楽になんの意味が・・・)

 

タスクは突如流れてきた音楽に対して訝しげになりながら周囲を見渡す。その時音楽の発生源らしき場所に目を向けるとその場所の地面が盛り上がりながら膨大な光が放たれようとしていた。

 

『────っ!?全員逃げろォォォ!!』

 

タスクはその光景に悪寒を感じオープンチャンネルで全員にその場から離れるように叫んだ。しかしタスクの声も虚しくアンジュたちに届くよりも先に地面を砕きながら閃光の柱が空へと放たれた。

 

『な、なんだよ今のは!?』

 

ロザリーとクリス、鈴音、マルギッテと共にイルマを追い込みにかかっていたヒルダは空の雨雲を消し去るほどの膨大なエネルギーを持った閃光の柱に驚きのあまりその場に止まってしまうが、そんなことは許されないと言わんばかりに地上からビームや実弾の嵐が上空にいる全ての機体に向けて放たれるのだった。

 

『これは、一体・・・!?』

 

『何が起きてるっての!?!!』

 

セシリアと鈴音も想定外の事態らしく、通信回線の最中で驚きの声を発っしながら襲い来るビームや実弾の嵐を防ぐ。

 

『なに・・・きゃあああっ!!』

 

さらにそのビームと実弾の嵐の直撃を受け、エイレーネの装甲を砕かれ翼を溶解させられたことで飛行能力を失い、イルマとエイレーネが悲鳴と共に墜落していく。

 

『イルマっ────!!』

 

墜落していくエイレーネを見た途端、荒れ狂う空気や巻き起こる土石の嵐を突っ切る形でヒルダはテオドーラを走らせていく。

 

『ヒルダ!イルマっ!!』

 

『危ねえっ────!!』

 

それを見たクリスとロザリーも、ハウザーとグレイブをそれぞれ走らせてヒルダとイルマの後を追いかけた。

 

『これは!?まさか、エンブリヲ様・・・うわあああっ!!』

 

同じく地表から巻き起こるビームと実弾の嵐による空前絶後の衝撃に、ターニャとビクトリアも巻き込まれ機体を半壊しながら落下していく。

 

『ターニャちゃんっ!!』

 

そのターニャに迫る危機を見て、エルシャが自らのハウザーをビクトリアへと走らせる。

 

『エルシャ────!!』

 

『待ちなさい、何をっ!?』

 

『危ないっ・・・!!』

 

ヴィヴィアン、アイリスディーナ、カティアもそれぞれの機体を飛ばし、エルシャの後を全力で追った。

 

『えっ!?ちょ、ちょっと・・・』

 

「っ────!!」

 

突然の、そして更なる事態の急変に驚きを隠せないサリアのクレオパトラを反射的に抱きかかえ、ジルとレイジアが勢いよく空を飛ぶ。

 

『今のは一体・・・!!』

 

アンジュはビームと実弾の嵐を放ったであろう存在の正体を探るべく地面に目を向けるとそこには14体の機械仕掛けの獣が地面の中から姿を現した。

 

『あれは改造ゾイドの《ムゲンレックス》!?ペンドラゴンで開発途中だったあのゾイドたちが何故・・・』

 

『盗まれているのは分かってたけどまさか開発に成功させていただなんて・・・』

 

セシリアと鈴音はあの眼科にいる機体がルルーシュたちが開発していたタルボサウルス種のゾイド《ムゲンレックス》でありその重火力と巨体を活かした戦闘を前提とした設計を施されたムゲンレックスはベイルの元で運用される予定であったが、開発に難航していたのと完成間近の所でシュナイゼルたちによるペンドラゴン襲撃によってシュナイゼルたちに強奪された機体の一つであった。

 

『オルコット卿、あの機体は・・・!』

 

『全員気をつけなさい・・・!あの機体は下手なスーパーロボットよりも頑丈な上に多種多様な武器を持っています!!舐めてかかれば私たちが全滅しますわ・・・!!』

 

カナメはムゲンレックスたちの無機質ながらも獰猛な唸り声を上げる姿に恐怖を抱きながらもセシリアの声を聞いて気を取り直す。それはアンジュたちも同じであり彼女らはこちらに背中の巨大なビーム砲《インフィニティキャノン》の砲塔を向けてくるムゲンレックスたちを睨みながら何時でも行動できるようにしていた。

 

 

──────そして攻撃を受けていたのはアンジュたちだけではなかった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

アンジュたちがムゲンレックスたちの襲撃を受ける数分前のこと。

ラウラたちシュヴァルツ・ハーゼ隊と激しい戦闘を繰り広げていたカレンと甲児たち元黒の騎士団に協力していたZEXIS・ドライクロイツメンバーは援軍としてZEXIS・ドライクロイツ本隊からやって来たエターナル級MS運用専用母艦《エターナル》、スペースノア級万能戦闘母艦二番艦《ハガネ》、ソレスタルビーイングの宇宙輸送艦《プトレマイオス2》、ドライストレーガー級万能戦闘母艦1番艦《ドライストレイガー》の4隻を中心にモビルスーツとスーパーロボットたちの部隊が加勢したことによって形成は逆転し追い詰められたラウラたちは撤退していった。

 

「────零番隊の生き残りは?」

 

「負傷者が25名、重傷者18名です。それと、先程間宮少尉を始めとした12名が息を引き取りました・・・」

 

「そう・・・」

 

プトレマイオス2のオペレータールームでスメラギはフェルト・グレイスからの報告に目を伏せていた。現在ドライストレイガーに生き残っていた零番隊メンバーを運び込み治療を行っていたがそれでも自分たちの到着が間に合わなかったせいで救えなかった多くの命があったと心に重くのしかかっていた。

 

「なんでラウラちゃんたちはこんなことを・・・」

 

「それだけ許せなかったんだろうさ。自分たちの主を裏切った連中をな・・・」

 

フェルトと同じ戦況オペレーターであるミレイナ・ヴァスティはかつて同じ組織に所属し共に多くの戦闘を潜り抜けてきたはずの仲間同士で争い殺しあっていることに悲しみを抱くも操舵手兼砲撃士であるラッセ・アイオンはそれに対してそう答えるもラッセ自身もかつての仲間同士でこのような命の奪い合いをする事に悲しみを抱いていた。

 

「だからこそ私たちが彼らを止めるのよ。それが彼を信じきれず行動しなかった私たちにできる唯一のことだから」

 

スメラギはラッセたちの会話を聞いて改めて自分たちが成すべきことを理解しそのためにすべきことをするために行動に移そうとした。

 

『スメラギさん。負傷者の収容及びカレンさん達の機体の補給と整備が完了しました。何時でも出撃できます』

 

『こちらも何時でも出撃可能です』

 

『スメラギ艦長、号令を』

 

ドライストレイガーの艦長であるミツバ・グレイヴァレー、エターナルの艦長ラクス・クライン、ハガネの艦長ダイテツ・ミナセはオープンチャンネルでスメラギに声をかける。スメラギはふぅと小さく息を吐きながら気持ちを入れ替えてソレスタルビーイングの戦術予報士としての顔つきになった。

 

「私たちはこれよりオオサカ租界を進軍しているライ率いるルルーシュ皇帝軍に攻撃を仕掛けます。彼らにも譲れぬ信念と誇りがあるように我々もまた世界の平和を願うものとして彼らの行動を黙って見過ごす訳にはいきません」

 

スメラギの言葉にミツバたち艦長たちだけでなく刹那やキラを始めとしたパイロット、イアン・バスティ、メイヴィー・ホーキンスを始めとした整備士などのメンバー全員が静かに聞いていた。それは誰もがスメラギと同じ想いを抱いていることの証拠であり、そのために自分たちが何を成すべきなのかを理解していたのだった。

 

「各員、出撃開────」

 

スメラギが出撃の号令を出そうとした瞬間、プトレマイオス2にどこからか放たれたミサイルが直撃した。GNフィールドが張られていたことでプトレマイオス2自体のダメージは軽傷で住んだものの突然の奇襲にすぐさま全員が警戒態勢をとると同時に襲撃犯は姿を現したがその姿を見てZEXISとドライクロイツメンバーは驚愕のあまり目を見開いてしまった。

 

『デュナメスにティエレン、ブリッツガンダム、それにガイアガンダムだと・・・?』

 

ダブルオーライザーのコックピットの中で刹那はこちらに攻撃を仕掛けてきた存在たちの先頭にいるガンダムデュナメスサーガ、ティエレン全領域対応型、ブリッツガンダム、ガイアガンダムを見て思わずそう呟いてしまった。さらにデュナメスサーガたちの周囲にはメカザウルスやモビルドールなど多種多様な兵器たちがぞろぞろと現れており今にも刹那たちに襲いかかろうとしていた。それに対処すべく刹那たちも迎撃しようと機体を前に出そうとした瞬間、デュナメスサーガたちから聞こえてきた声に思わず足を止めてしまった。

 

『ニール・ディランディ・・・。目標を狙い撃つ・・・』

 

『セルゲイ・スミルノフ・・・。目標を制圧する・・・』

 

『ニコル・アマルフィ・・・。目標を貫く・・・』

 

『ステラ・ルーシュ・・・。目標を切り裂く・・・』

 

『『『『なっ・・・!?』』』』

 

デュナメスサーガたちのパイロットたちの名と声を聞いた刹那、ソーマ・ピーリス、アスラン・ザラ、シン・アスカを筆頭としたメンバーはあまりのことに驚愕の声を漏らしてしまった。何故ならば彼らの前にいるのはかつて命を落とした苦楽を共にした同胞であり、尊敬する上官であり、そして守ることが出来なかった存在なのだから・・・そのあまりに現実離れしている目の前の存在に動揺してしまった刹那たちは対処することが出来ずデュナメスサーガたちの攻撃を受けてしまった。

 

『『ぐあああっ!?』』

 

『中佐!!どうして・・・!?』

 

デュナメスサーガのGNライフルの一撃を受けて仰け反るダブルオーライザーのコックピットの中で声を上げる刹那と沙慈・クロスロード、ティエレン全領域対応型による200mm×25口径長滑腔砲より放たれる砲弾を回避しながらGNアーチャーのコックピットの中でセルゲイに声をかけるピーリスだがその声は届かないでいた。

 

『どうして邪魔をするんですかアスラン・・・。これは僕たちコーディネーターの未来のためなんですよ・・・』

 

『シン・・・邪魔しないで・・・』

 

『止めてくれニコル!!俺はお前とは戦いたくないんだ・・・っ!!』

 

『ステラ・・・っ!!』

 

ニコルとステラを前にろくに戦えないでいるアスランとシンは性能差では圧倒的に劣るはずのブリッツガンダムとガイアガンダムに押され、インフィニットジャスティスガンダムとデスティニーガンダムは少なくない傷を負っていた。

 

死者であるニールたちが目の前に現れさらにメカザウルスを始めとしたAI搭載兵器たちによる猛攻を前に劣勢を強いられていた。突然の奇襲を受けたことも原因であるが何より一番の劣勢の原因は刹那やシンを始めとした一部のもの達がニールやステラたち死者を前に精神的に追い詰められていることだろう。そして攻撃を仕掛けてくる死者はニール達だけでなくアークエンジェル級強襲機動特装艦・2番艦の《ドミニオン》のナタル・バジルール、惑星強襲揚陸艦《ミネルバ》のタリア・グラディス、ディスティニーガンダムのハイネ・ヴェステンフルス、ヴァルシオン改のテンザン・ナカジマとテンペスト・ホーカー、ラピエサージュのオウカ・ナギサなど死者たちが現れZEXISとドライクロイツに攻撃を仕掛けてきた。

 

(死者の魂を弄ぶ・・・相変わらず反吐が出るような手段を取るな、エンブリヲ・・・!!)

 

ゲシュペンスト・タイプRのコックピットの中でギリアムはニールたちを操っているであろう存在に気が付き、攻撃してくるモビルドール・トーラスをニュートロンビームで撃墜しながらあまりに悪辣な手段を取ってきたエンブリヲに対して強い殺意を抱いていた。

役目を果たし永遠の眠りについたはずの死者を現世へと蘇らせあまつさえその意志を奪って自分の意のままに動かす駒へと弄ぶその所業は禁忌の領域であり、決して許されるべきことではないのだった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

アンジュたちアルゼナルメンバー、ZEXIS・ドライクロイツそれぞれが激しい戦闘を繰り広げていたのと同じ頃、グリンダ騎士団の旗艦《グランベリー》では。

 

『間もなくオオサカ租界に到達します!現在、オオサカ租界ではコーネリア軍と純血派がライ卿率いるルルーシュ皇帝軍と戦闘中!』

 

『ライ卿たちの激しい侵攻によって既にコーネリア軍は全体の20%の戦力が壊滅このままいけばそう時間がかからないうちに・・・!』

 

ブリッジのモニターというモニターに次々と映し出される戦況に、エリシアとエリスが慌ただしく叫ぶ。その報告を聞きながら気を引き締めていたオルドリンたちの視界にとうとうオオサカ租界の防衛の要である天空大楼閣が見えた。

 

「見えました、ノネットさん!7時の方向────天空大楼閣です!!」

 

「その周辺に、第一・第三機甲師団、第一混成師団並びに、深淵騎士団と第零騎士団の部隊も確認されました!租界内でコーネリア軍及び純血派と交戦状態に入っている模様です!!」 

 

「《神殺の英傑(エインヘリアル)》ということは、《終極の騎士(ナイト・オブ・ゼロ)》も!?」

 

「ルルーシュ皇帝の直属騎士たちと親衛隊に加えて、《終焉の騎士(ナイトオブゼロ )》も・・・本当、大盤振舞いいたれりつくせりすぎだにゃあ」

 

オルドリンとソキアが呻き、レオンハルトとティンクも顔を青ざめさせる。

一方のノネットは、指揮官席からブリッジの窓の向こうに見えるダモクレスを見据えると、マントを翻して大声で叫んだ。

 

「ブレイズルミナス全力展開────このままオオサカ租界に突っ込みな!ルルーシュ皇帝軍より先に、コーネリア殿下を見つけ出して保護するよ!!!」

 

しかしその時、グランベリーの通信パネルから壮年な男の声が流れてきた。

 

『────エニアグラム卿、何をしている?貴卿にはシュナイゼル皇子らの藩屏となり警護に努めよと言ったはずだ』

 

その声を聞いて、ノネットはもちろんオルドリンたちも表情と体が引き締まるのを感じた。

声の主はオルドリンたちブリタニア騎士にとって最も憧れを抱く存在にしてノネットたち《皇卓の騎士 (ナイトオブラウンズ)》の筆頭である《第一席(ナイトオブワン)》ビスマルク・ヴァルトシュタインだったからだ。

しかしノネットは、迷うことなく通信パネルに向かってこう返した。

 

「ヴァルトシュタイン卿・・・あなたと他のラウンズたちこそ、この状況を前にして一体何をされている? その藩屏として警護するべきコーネリア殿下と、同じブリタニアの騎士たちが助けを求めているというのになぜ動こうとしない」

 

『言ったはずだ。我々にもシュナイゼル皇子にももう一刻の猶予も許されていないと。それにコーネリア皇女は自らの意思でシュナイゼル皇子や我々と袂を分かたれた。誠に遺憾ではあるが、コーネリア皇女らには後に残った騎士や臣民たちを勇気づける為の神話となって頂く他にはない』

 

「そんな理屈が罷り通るとでも貴卿まで思っておいでなのか!?それではコーネリア殿下らに人柱になれとでも仰っているのと同じだ!そんな人柱を作ってまで推し進める聖戦 (戦い )に、騎士ラウンズとしての誇りがどこにある!!」

 

怯むことなく声を張り上げるノネットに、オルドリンたちは息を呑んだ。

そして僅かな間の後、ビスマルクが大仰に溜め息をついた。

 

『・・・所詮はモニカやアレンと同じく感情で動く気質というものか。もう少し考える頭があるかと思っていたが、やはり貴卿も大した器の持ち主ではなかったようだな』

 

「ヴァルトシュタイン卿・・・は騎士として、友として、人として、コーネリア殿下を救いに向かう。そしてシュナイゼル皇子にこれだけ伝えておいてくれ。私たちは、あなたの人形でも駒でもないと」

 

ノネットがそう言い切った直後だった。

 

「「「っ!?」」」

 

不意に、グランベリーの艦橋を襲ったのは強い衝撃。途端に全ての戦略パネルに真っ赤な警告表示が浮かび、警報が鳴り響く。後方を映し出していた艦外カメラが捉えていたのは、黒黒とした敵ナイトメアとモビルスーツ、浮遊航空艦の編隊だった。先頭に紺を中心としたカラーリングで染め分けられた1機の重装型ナイトメアが飛翔していた。その後に続くように、横から黒と黄色をメインにしカラーリングのモビルスーツが一隊を率いて接近しつつある。

 

「《パロミデス》、《ギラーガカスタム》・・・!!」

 

「チッ・・・!エルンスト卿にガレット卿、お前たちかっ!!」

 

その先頭の紺の重武装型ナイトメア《パロミデス》のコクピットから、《 第四隻(ナイトオブフォー )》ドロテア・エルンストが外部スピーカーを通じて言い放った。

 

 

『エニアグラム卿・・・そしてグリンダ騎士団。誠に遺憾ではあるが、シュナイゼル皇子への不敬罪と反乱罪により、お前たちをこの場で処断させてもらう』

 

 

直後、グリンダ騎士団と、ドロテア・エルンスト、そして《第十一席(ナイトオブイレブン )》デシル・ガレットと、ふたりが率いるナイトオブラウンズ直属部隊の交戦が始まった。

 

『私たちとエニアグラム卿はただ、死地に置かれているコーネリア殿下を、同じブリタニアの騎士たちを助けたいだけなのです!どうか剣を納めてください!!』

 

襲い来る直属部隊のナイトメアを跳ね除け、オルドリンが叫びながらランスロット・グレイルのシュロッター鋼ソードでパロミデスめがけて打ちかかる。

その叫びに込めた思いはレオン、ティンク、ソキア────彼らも思いはノネットと同じだった。しかし、その思いはアレオスはもちろん、ドロテアにも届かない。

 

『我々ラウンズと同じシャルル陛下に忠誠を誓った騎士であるお前たちが、この状況で勝手に動くことがどういう意味なのかわかっていないようだな』

 

ドロテアの言葉と共に、ランスロット・グレイルのシュロッター鋼ソードの剣戟をかわしながらパロミデスが肩部バインダーのハドロン砲を起動させる。

 

『この一件についてはヴァルトシュタイン卿とシュナイゼル皇子だけでなく、ナナリー皇女も処断は止む無しと苦渋の判断を下された。エニアグラム卿ともども、ナナリー皇女に詫びて死ぬが良い!!』

 

『エルンスト卿っ────!!』

 

ランスロット・グレイルがシュロッター鋼ソードを薙いだと同時に、パロミデスのハドロン砲が火を吹いた。

 

 

一方、ビスマルクのギャラハッドのエクスカリバーに並ぶ聖剣としてシャルルが命名した触れればどんなものでも斬り避けそうな細身の長剣《カラドボルグ》を主武装とした蒼と銀のカラーリングの白兵戦型ナイトメア《ボールス》で、ノネットはデシルが操る細身な龍を彷彿とさせる黒いモビルスーツ《ギラーガ・カスタム》に戦いを挑んでいた。

 

『デシル!お前やドロテアたちまで殿下を見殺しにするとでも言うのかい!? これじゃ、何の為にナイトオブラウンズが存在するのかわからないじゃないか!!』

 

『ブッ、ギャッハハハハ……!』

 

ノネットの叫びを、デシルは笑いを抑えきれないと言わんばかりに小馬鹿にするように一蹴した。

 

『何を勘違いしてんだよノネット。俺たちが守っているのはシャルルのジジイが残した強者が弱者を支配する帝国そのものさ。コーネリアのババアみてぇな皇族のひとりやふたりがいなくなっても、どうだっていいじゃねぇかよ』

 

『何だいそれは!?あんたそれでも、誇り高き帝国の騎士か!!ナイトオブラウンズは帝国と臣民を守り、救うためにあるんじゃなかったのか!?』

 

ボールスが勢いよく唸らせるカラドボルグをかわしながら、ギラーガ・カスタムが主武装である槍型の武器《ギラーガスピア》を構え、ボールスに対して激しい槍裁きで攻撃を仕掛ける。

 

『もちろん救ってやるさ!帝国と臣民を。あんな時代遅れの過去の遺物と、チンケな租界 (街一つ )を一緒に消し去ってでもなぁ?』

 

『なんだと!?』

 

『だが、コーネリアのババアが雄々しく人柱になってくれりゃあ、俺たちの結束はさらに高まる。悪いことは言わねぇ・・・考え直して、お互い頑張ろうじゃないか。なあ?』

 

『ふざけんなっ!!』

 

コーネリアを「遺物」と侮辱されたことにノネットは色めき立つが、デシルは動じずに攻撃を続けながらノネットに語りかけ続けた。

 

『怖ければ部下の可愛い騎士たちと一緒にこのまま逃げ出したってもいいんだぜ?全て忘れてどこか他所の土地で暮らせば、お前たちだけでも生き残れるかもなぁ?』

 

せせら笑ってくるデシルに、ノネットは本気で怒りを滾らせた。

 

『私は逃げない・・・!! ルルーシュたちもだが、お前らやシュナイゼルの好きにはさせないっ!!』

 

『へえ?本気で反逆はむかうつもりなのか?俺らラウンズと、シュナイゼル皇子に』

 

『たとえいかなる大義名分があっても、そのために平気で同志なかまを犠牲にするなどやり方を間違えてたら意味なんてあるものか!・・・今にしてやっと分かったよ。ルルーシュが作る新たな帝国も、この世界の危機も。お前たちなんかに任せておけない!!』

 

カラドボルグを突きつけて啖呵を切るノネットに、デシル嘲るように不敵な笑みを浮かべた。

 

『なるほどなぁ・・・じゃあお前も、ルルーシュやZEXISと同じく俺たちの敵ってことでいいよなぁ?』

 

『上等だ!!』

 

ノネットは吠えて、勢いよくボールスをギラーガ・カスタムへと突進させた。

そしてカラドボルグの突きをかわしてから、ギラーガ・カスタムは鞭型武器である《ギラーガメガテイル》を装備すると同時にボールスに向けて振り下ろした。

 

『嬉しいぜぇノネットぉ・・・。やっとお前を大っぴらにぶっ殺せるんだからよぉ( ・・・・・・・・・・・・・・・・・・)!!』

 

『なんだと!?』

 

挑発と見てとれるその一言にノネットが色めき立った後、デシルはギラーガメガテイルでボールスの盾を弾き落とすとそのまま胸部の高出力ビーム砲からビームバスターを放った。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

こうしてZEXIS・ドライクロイツはニールたち死者の軍団と無尽蔵に湧くメカザウルスやモビルドールの大軍と、グリンダ騎士団がナイトオブラウンズと交戦を開始したのと同じ頃、天王寺要塞で戦闘を繰り広げていたアンジュたちの戦況も変化が起きていた。

ムゲンレックスたちが現れたのを皮切りに重武装に増加ブースターを装備した改良型ザクII───《パーフェクトザク》、V.V.がギアス嚮団での戦闘時に使用していたナイトギガフォートレスの改良機《ジークフリートII》、ビアン・ゾルダークの愛機であるヴァルシオンの改造機である《ヴァルシオン改》がそれぞれ10機ずつ現れアンジュやサリアたちに無差別攻撃を開始してきた。その無差別攻撃を前に僅かばかり生き残っていた天王寺要塞の守備軍の兵士たちは既に戦意を喪失していたためにパーフェクトザクたちと戦う気力も起こらず指揮を執る人間もいないからか勝手に動き回って散り散りになり、悲鳴を上げて襲い来るパーフェクトザクたちから逃げ惑う。一方のアンジュ、セシリアたちも、突然の奇襲に驚きはしたものの混乱から素早く回復し、態勢を立て直しては全戦力をもって迎撃しているが、エンブリヲによる改造が施されているのか、パーフェクトザクたちは身軽にヴィルキスたちの攻撃をかわすか、集中砲火を受けてダメージを負っても全然止まる様子がなく、そして炎に突っ込んでも怯むことなくヴィルキスたちに対して縦横無尽に暴れ回る。

 

『このっ・・・!ナメるんじゃ、ないっての!!』

 

突っ込んできたジークフリートIIをかわしざま、アンジュがヴィルキスによるビームライフルとブレード型の接近戦兵装《ラツィーエル》の同時撃ちをジークフリートIIに叩き込む。

その横で、セレスティアルフリーダムガンダムがクスィフィアス3レール砲で右腕の鉄爪《アイアンクロー》を振りかぶってきたムゲンレックスの顔面に対してレールガンを放つことで顔面に直撃しその衝撃で仰け反らせることに成功したセシリアは周囲を警戒していた。

 

(奪われたムゲンレックスだけでなくこれほどの戦力・・・。今このオオサカにいる敵のことを考えればこれらの機体を操っている黒幕は恐らく・・・)

 

『エンブリヲ!!』

 

突然、通信パネルを通して飛び込んできたサラマンディーネの声に、セシリアはハッとなった。

そこでセレスティアルフリーダムガンダムを右へ反転させると、焔龍號、蒼龍號、碧龍號が、上空のある一点を揃って睨みつけているのが見えた。その視線を辿ると、ヒステリカが腕を組んで平然と佇んでいるのが見えた。

 

(あれが、《ヒステリカ》・・・それに、あの機体に乗っているのが・・・)

 

『先ほどから何度も現れているこの人形たちは、あなたの戦力(差し金)ですか?』

 

サラマンディーネの問いに、紫紺のラグナメイル《ヒステリカ》の中から、金髪の美青年・エンブリヲは鼻を鳴らして答えた。

 

『その通りだ。かつてV.V.が戦力()として密かに量産していたものと君たちの主であるルルーシュには勿体無い優れた兵器を私の手で有効活用させてもらったのさ。そしてその素体(乗り手)として前の世界でエルシャを口説く際に小道具として利用した子供たちで事足りたよ』

 

『っ!!?』

 

ヒステリカの外部スピーカーから聞こえてきたエンブリヲの言葉にセシリアたちは息をのみ、そして付近でアイリスディーナ、カティア、ヴィヴィアンと共にヴァルシオン改の猛攻を凌いでいたエルシャが、ハウザーごと驚いて振り返った。

 

『子供たち・・・。まさか、これらの機体には・・・』

 

『え、エルシャ・・・』

 

カティアとヴィヴィアンが、揃って声を愕然に震わせる。

そう。エンブリヲが用意したムゲンレックスたちには生体操縦部品(パイロットユニット )として繋げられているノーマの子供たちは、かつてエンブリヲがエルシャを利用して引き込む為だけに蘇生させられていたもの。さらにゲイムシステムやリユース・P(サイコ)・デバイス、阿頼耶識システム、薬物投与など多種多様な人体改造を施されたことで一人一人がエースパイロット並の実力をもたらされた。

そのエンブリヲの言葉をすぐには受け入れられなかったが、エンブリヲの周りに集まっているジークフリートII、パーフェクトザク、ヴァルシオン改そして近くで破壊された機体の残骸の中から感じている、悲しみと苦しみからの解放を願う声にも似た波動にエルシャは言葉を失った。

 

(・・・まさか、あの子たちが、私を騎士団(下僕)へと引き入れるための口実で・・・しかも、駒として使うための偽りの生命で、蘇らせられていたとは・・・。私は、なんて・・・)

 

なんということをしていたのか。そして、なんて道化を演じさせられたのか・・・。

エルシャを襲った激しい後悔と自責の念は、すぐに失望と赫怒の念へと変わった。

 

(エンブリヲ・・・。罪のない子供たちを、生命をこんな形で弄ぶあなたを、私は絶対に許しません・・・!)

 

声には出さなかったその思いを込めて、エルシャはヒステリカ越しにエンブリヲをキッと見据えた。

 

エンブリヲはそんなエルシャを無視して、眼下の一角に聳える2機のラグナメイルを見やった。

 

『え、エンブリヲ、様・・・?』

 

そのエンブリヲの視線が注がれた先にいた2機のラグナメイルのうち1機で、クレオパトラの中からサリアが震える声をかけてきた。

 

『先ほどのヴァルシオン改たちの攻撃は・・・セシリアとアンジュはおろか、なぜ私たちまで攻撃するような真似(・・・・・・・・・・・・・・ )をしたのですか!?』

 

『何故だって?』

 

エンブリヲは、喉の奥でクックッと冷たく笑った。

 

『答えは単純さ。エルシャやクリスと同じく、使命を果たせなかった無能極まりない騎士たちに罰を与えただけだよ。そしてターニャ、イルマ・・・サリアと並ぶ君たちの代わりとして>(・・・・・・・・・・ )、ちょうどいい人材と兵器が見つかったところだからね』

 

『っ・・・!!』

 

おそらく初めて向けられたであろうエンブリヲの冷酷なる言葉に、サリア、そしてターニャとイルマは頭が真っ白になった。

 

『ターニャ、イルマ!今ならまだ間に合う! 戻ってこい!!』

 

テオドーラのスピーカー越しにヒルダが、ターニャに叫んでくる。

 

『う・・・ウソ・・・・・・』

 

しかしターニャは、混乱していた。

今まで心酔、もとい洗脳を受けてエンブリヲの下僕ハーレムとさせられていた矢先、この言葉で洗脳を打ち切られ、同時に真実に気づいたことへの愕然と恐怖による混乱だった。

 

『か、代わりって・・・どういう意味なんです!? あたしたちを、ここで見捨てる気なのですか!?エンブリヲ様!!』

 

それに対し、エンブリヲはククッと喉の奥で嗤いながら言ってきた。

 

『ご苦労だったね、ターニャ、イルマ。君たちもクリスやエルシャと同じく、もうそろそろ好きにすればいいさ。そしてビクトリアとエイレーネも用済み。後に残るそのエネルギーは、私のヒステリカが有効に使わせてもらうよ』

 

『エンブリヲ様っ・・・!?』

 

『ま、待ってください! 私たちはまだ・・・』

 

必死に縋り付くターニャとイルマだが、エンブリヲは一瞥もくれなかった。

 

『所詮、君たちはラグナメイルを動かすための部品のようなものだからね。そして時計の中に錆びるなど悪くなった螺子(部品)が1つでもあれば、正確な時間を測ることなどできはしない』

 

『そんな・・・!!』

 

『エンブリヲ様!私たちは・・・っ』

 

『鬱陶しいな。早く消えたまえ』

 

冷笑を込めてそう言い放ったエンブリヲ。

同時にヒステリカが両手をそれぞれビクトリアとエイレーネに向かって振るった瞬間、ビクトリアとエイレーネの上空に赤い光が迸る。

 

『『ああああああっ────!!』』

 

『ターニャちゃんっ!!』

 

『イルマぁぁぁっ!!』

 

エルシャとロザリーが絶叫した。

そしてエイレーネとビクトリアは、ヒステリカの横に並び立つヴァルシオン改から放たれるクロスマッシャーの餌食となり、ターニャとイルマ、それぞれの乗り手を呑み込んで跡形もなく消し去る。

────はず、だった。

 

『─────何?』

 

ヴァルシオン改のクロスマッシャーがエイレーネとビクトリアに当たる直前、突如2機の前に割り込むように現れた黒い翼を持った機体が撒き散らした緑色の羽の防壁によってクロスマッシャーは防がれてしまい拡散したクロスマッシャーは周囲を破壊した。

 

『────随分と調子に乗っているようだな。調律者気取りの女好きの変態』

 

黒い機体───R-GUN・ヴェヒターのコックピットの中でイングラム・プリスケンはエンブリヲを見下しながら現れた。さらにトウキョウ租界からの援軍である新条アカネとアレクシス・ケリヴ(ニューオーダー)、ムジナとブラックダイナゼノン、ジェレミア・ゴッドバルトとサザーランド・オランジュを筆頭に一個師団の部隊が到着した。

 

『因果律の番人か。その象徴たる機体()を使えないというのに随分と調子に乗っているものだ』

 

『貴様ごときにはこの機体でも十分だ。最もアイツを恐れその妨害に力を入れている貴様に言ったところで無駄だろうがな』

 

『貴様っ・・・!!』

 

イングラムの挑発に対してエンブリヲはその顔を怒りで顰める。突然現れたイングラムに対してどうすればいいのか分からず右往左往してしまうヒルダとイルマたちだが、そんな彼女たちに対してジェレミアは鋭い声で言った。

 

『今のうちだアルゼナル隊!! 君たちの仲間( ターニャとイルマ)を連れて下がれ!!クレッセント・クーロン隊は彼女らの援護にまわれ!!』

 

『ジェレミア卿・・・!!ありがとうございます!!』

 

『へっ!ありがとうなオレンジ卿!!』

 

『これでみんなで、アルゼナルへと帰れるんだ・・・!』

 

クリスとヒルダ、ロザリーとエルシャとヴィヴィアンは、ジェレミアに礼を言いながらターニャとイルマをそれぞれの機体ごと抱え、夜空へ飛び立つ。

その護衛をジェレミアの命令通り、クレッセント・クーロン隊の一般団員たちが引き受けて共に飛び立つ中、エンブリヲがさらにこうも言ってきた。

 

『勝てると思っているのかね?援軍が来たところで君たちと私では覆せない差があるのだよ。君たちの主と私の格の差があるようにね?』

 

『そうですわね、あなたのように女性の意志を奪う事でしか振り向かせることが出来ない変態の猿と微笑み1つで虜にしてしまう偉大なる皇帝たるルルーシュ様とでは雲泥の差がありますものね』

 

エンブリヲは自分が圧倒的有利な立場にいるとほざくがそれに対してセシリアは小馬鹿にするようにエンブリヲに対してそう蔑む。

 

『そうね。あんたとルルーシュには月とすっぽん、いや人々を照らす太陽と露呈の石ころの差がある』

 

『まぁ女を身体だけしか見てない性根が腐りきったクズだから言っても分からないだろうがな』

 

『むしろなぜ自分を優れていると思い上がっているのか理解できないな。その用意した戦力も他人から盗んだものでしかないくせに』

 

『男として情けないって思わないのかしらね?』

 

『口だけは達者ですよねこの人』

 

『それだけが取り柄しかない男ってことでしょ』

 

鈴音、アイリスディーナ、マルギッテ、ステラ、カティア、崔亦菲はセシリアに続くようにエンブリヲに対して罵倒を繰り返す。エンブリヲは麗しい見た目の女性たちに罵倒されていると言う事実に頭の血管がブチ切れそうになり、それを見たアカネとムジナはプークスクスとエンブリヲを笑い、戦場だというのにあまりな調子でジェレミアは呆れてたりする。

 

『ハッ!いいこと言うじゃないアンタら!!』

 

セシリアたちの啖呵に気分を良くしたアンジュはヴィルキスでヒステリカに切りかかってくる中、エンブリヲはヒステリカを上昇して回避させる。

 

『・・・やはりあの男の存在は不要であり、実に不快な存在だな』

 

『なに─────』

 

意味深なそのセリフにイングラムが聞き返そうとし、ヴィルキスが横っ面からラツィーエルをヒステリカに叩き込もうとした刹那。

ヒステリカの姿が、ボッ、と空気を爆ぜるような音と共に消えた。

そしてヒステリカに直接叩き込まれるはずだったロシェ・ブレード、ラツィーエルは同時に空振りした。アンジュともどもイングラムが辺りを見回した時。

 

『まあいい。ターニャとイルマはもちろん、君の始末は後でつけるとして────まずはこちらだ』

 

ヒステリカが、クレオパトラの目前に姿を現した。

それに気づいたジルが、レイジアを反転させた時だ。

 

『い、いや・・・っ・・・・・・』

 

サリアが反射的にクレオパトラのスラスターを吹かし、一気にヒステリカの視界から逃れようとした。

ヒステリカはそれを察したように後を追ってきて、あっという間にクレオパトラの前へと再び回り込んできた。

 

『駄目だよ、サリア。君は、もう逃げられない。さあ、お仕置きだ・・・それとも罰と言うべきかな』

 

『逃げなさい、サリアっ!!』

 

アンジュが叫んだ瞬間、ヒステリカは右手に召喚したビームライフルをクレオパトラめがけて連射してきた。

クレオパトラとサリアは、愕然と恐怖のあまりその場から動けなかった。

そしてビームが、クレオパトラごとサリアを貫こうとした、その瞬間。

 

『────ハァッ!!』

 

ジルとレイジアが割り込んで、剣による一閃でそのビームを薙ぎ払い、爆発うちけした。

それにサリアは我に帰り、ジルに向かって叫んだ。

 

『っ・・・今更何なの、アレクトラ!?私の生命を救って、恩に着せるつもり!?もうあなたなんて、必要ない!!エンブリヲ様は、私に全てを与えてくれたわ!!強さも、愛も、全て!!』

 

『愛だと・・・?』

 

ジルは振り返らず、レイジアの背中越しに言った。

 

『さっきも見たはずだろう・・・あれがエンブリヲだ。奴は誰も愛したりしない。シュナイゼルと同じように、既得権益目当ての元貴族や元皇族どもと同じように利用するために餌を与え、可愛がるだけだ。私もそうやって奴に弄ばれ、全てを失った・・・!目を覚ませ、サリア!!』

 

『言ったでしょう・・・!?あなたの言葉は信じないって!私を利用していたのは、あなたよっ!!』

 

サリアは目から涙を溢れさせ、血を吐くような叫びをジルにぶつけた。

 

『私には何もなかった・・・!!皇女でもない!歌も知らない!どんなに頑張っても選ばれなかった!! ヴィルキスにも、あなたにもっ!!そんな私をエンブリヲ様は選んでくれた!! だから、アレクトラ!!あなたなんて、もう要らないのよっ!!』

 

『・・・そうだな。確かに私はお前がそう言い切るだけのことをした。しかしそれでも、私にはお前が必要だ』

 

『駒として使うために!?』

 

『そうじゃない・・・!!』

 

初めて悲痛な叫びをあげた後、ジルは声のトーンを落としてこう言った。

 

『サリア・・・あんたを、放っておけるわけないじゃないか・・・』

 

『アレクトラ・・・』

 

心なしか、ジルの声が震えていることにサリアは気づいた。

 

『初めて会った時から、ずっと思っていた。あんたは、私そっくりだって。ああほんと・・・鏡でも見ていて、そして憎たらしくなると思えるくらいに、そっくりだよ。それこそまるで、妹みたいに・・・。真面目で、泣き虫で、思い込みが激しい所から・・・男の趣味までね。だからこそ、巻き込みたくなかった・・・ごめんね、今まで、辛く当たって・・・』

 

『アレク、トラ・・・』

 

今の今まで抱えていたサリアへの本当の思いを、ジルは吐き出すように語った。

それにサリアが胸を打たれた時、ヒステリカの中から再びバカにする響きの拍手が聞こえてきた。

 

『美しい姉妹愛だ。最後にいいものを見せてもらったよ』

 

『エンブリヲ・・・!』

 

エンブリヲは、ジルとレイジアを冷たく見下ろした。

 

『まさか君がここまで起ち上がってくるとはね。これだからノーマはしぶとい』

 

『絶望の記憶よりもお前への怒り・・・そして、何より皆が見せてくれた希望が勝ったのさ』

 

『フッ、それはそれは。だが、その健気で純粋な怒りも終わりだ。サリアと共に旅立つがいい』

 

ヒステリカは、右手のビームライフル、左腕に召喚したビームシールド、頭部の女神を模したオブジェに内蔵したビーム砲に同時にエネルギーを集中させ始めた。

その3つのエネルギーの中にはコーラルも含まれているのか、赤い陽炎と孤電の如き揺らぎと煌めきが踊っている。

 

『サリア・・・私がエンブリヲに仕掛ける!その間にお前もここから離脱しろ!!』

 

『いや・・・っ。そんなの嫌よ!!』

 

サリアがクレオパトラの中で首を横に激しく振ると、ジルはレイジアの剣をエンブリヲに向けて構えたまま、

 

『・・・サリア。これが私から、最後に言ってやれることだ』

 

ひと呼吸おいて、こう言った。

 

『お前は戦え!そして────生きろ!!』

 

『生き、る・・・』

 

心からの思いを込めたジルの言葉に、サリアは再び胸を打たれた。

 

『アレクトラ・・・!古い女に、もう用はないんだ!!』

 

同時にエンブリヲが、3つのビーム砲からコーラルも含めた集中砲火をレイジアへ向けて放とうとする。それを見て、サリアの中で何かが弾けた。

 

『────アレクトラあああぁぁぁっ!!』

 

サリアの魂の叫びと同時に、クレオパトラが水色に強く輝いた。

その瞬間、クレオパトラの姿が消えて、そしてヒステリカの真横に現れた。

 

『!?なに・・・』

 

ジルが目を瞠り、エンブリヲが思わず砲撃を中断したと同時に、強い輝きを纏ったクレオパトラの機体カラーが黒から青へと変化する。

直後、クレオパトラは連続で瞬間移動でもするかのようにヒステリカの周りを高速移動しながら、剣とビームライフルでの乱舞攻撃を叩き込み、ヒステリカを吹っ飛ばした。

 

『これは・・・次元跳躍!?先ほどのテオドーラと同じように、クレオパトラの力を引き出しただと!?』

 

驚きを隠せないエンブリヲ。

一方で、先ほどのヒルダと同じように、力が上がっていくのをクレオパトラ越しにサリアは感じていた。

 

『クレオパトラが・・・私に応えてくれた。ありがとう、私の気持ちを形にしてくれて』

 

思わぬ展開に驚かされたエンブリヲは、初めてその顔に不快の色を浮かべた。

 

『アンジュ!アレクトラにサリア揃いも揃ってあくまで私に刃向かうというのか!』

 

『その問いに今更意味などあるのか、エンブリヲ』

 

『この世界を影から支配しようとする者・・・!』

 

『あんたは存在するだけで、色んな意味で迷惑だとわかったからね。ルルーシュの為にもこの舞台から退場してもらうわよ』

 

その言葉にイングラム、サラマンディーネ、ムジナが答える。

アカネ、ジェレミア、アンジュ、タスク、ナーガ、カナメも、右に同じとばかりにそれぞれの武器をヒステリカへ突きつけた。それからジルとサリアの大立ち回りの隙にターニャとイルマをアヴァロンへと運び込んだヒルダ、ロザリー、クリス、エルシャ、ヴィヴィアンも戻ってきて、臨戦態勢へと入る。

 

『下郎どもが・・・!お前たちに現実というものを教えてやる!!』

 

エンブリヲが勢いよく言い放つと同時に、先ほど彼の周りに集まったパーフェクトザクたちが一斉に動く。それぞれの武器を、狙いをライとアンジュたちに向けた。

 

『笑止。貴様もV.V.と同じように、自分が見下してきた存在にやられるのだよ』

 

『あなたがこの世界の全てを壊す前に、私たちがあなたの企みの全てを破壊する・・・!あなたの好きにはさせない!! 世界を、何より私自身をっ!!』

 

これに対して、ジェレミアはサザーランド・オランジュの武装を展開させ、ヴィルキスがビームライフルをヒステリカに突きつけて。

 

『サリア!態勢を立て直すよ!!』

 

『了解!ふたりで、派手にやってやりましょう!!』

 

レイジアとクレオパトラも、揃って剣をヒステリカとパーフェクトザクたちに突きつけた。

戦闘によって破壊された機体たちの残骸と燃え上がる炎が広がる朽ち果てた大地と鉛雲のように黒く重い空の中で調律者気取りの男とそして天王寺要塞での最終決戦が終わりを迎えようとしていた。




あとがき
同じスパロボ×コードギアス小説書いているユーザー様の小説に影響されて早めの投稿が出来ました!次の投稿も出来るだけ早くなるよう頑張りますので今後ともよろしくお願いします!!ちなみに今回出てきたムゲンレックスのイメージはデジモンシリーズのムゲンドラモン、パーフェクトザクのイメージは見た目サイコ・ザクMk-IIで性能はパーフェクトガンダムになります。エンブリヲの罵倒は今回軽めにしましたが本格的な罵倒は今後に控えてますのでスパロボVのように大勢の女性陣から罵倒されたようにエンブリヲは大勢のキャラから罵詈雑言を浴びてもらおうと思います。オオサカ租界もエンブリヲ、コーネリア、ヴィレッタそしてまだ明かしていないオオサカ租界でのラスボスたちの戦闘で終わりを迎えられそうです。オオサカ租界が終わっても物語はまだまだ続きますのでよろしくお願いします。


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