言い訳はしません。ごめんなさい。
「うむ!美味い!」
「スゴく美味しいわね!」
「……美味しい」
「ララ先輩が買ってきたこのチーズケーキって、トリニティの有名店のですよね?確か、完全予約制のお店だったと思うんですけど?もしかして、盗んできちゃいました?」
「おー、流石お嬢様。でも発想は蛮族すぎないかい?貰ったんだよ、仕事の依頼主にね」
休日最高!天裏ララです。はい、遂にユメ先輩とホシノちゃんに研究禁止を言い渡されました。そのせいでやることがないこと。
退屈過ぎて傭兵の仕事増やしたら見事、依頼数が増えて大忙し。に、なるかと思いきや、まさかのアカシアによってブロックされて、のんびりと二度目の学校生活を楽しく過ごすことになりましたとさ。めでたしめでたし。
……。
なわけないやろがい!危うく騙されるところだったけど、この状態は余りにもよろしくない。具体的には、鉄道敷設護衛の準備や秘密道具達の開発が一向に進まないのだ。別に、研究禁止は構わない。でも、何も行動していないと不安になるんだよね。
準備。それは、交渉、依頼、旅行、新生活、果てには、戦争。この世のありとあらゆる物事に必要なもの。そして、殆どの事象で準備段階が成否の半分以上を占めていると言っても過言ではない。正直、今の状態でも成功する可能性の方が高いと思う。でも、失敗する可能性もあるのだ。私は100%と言う数字以外は信用していない。
何故なら、1%でも可能性があるなら、私の『悪魔の偽眼』はその事象を確定させることが出来てしまうから。私に出来て他の人に出来ないと断言することは出来ない。従って、私は例え0.1%でも失敗のリスクを抱え込みたくない。とは言え、完璧なものなんて存在しない。だから、せめて僅かな可能性を確定させ得る選択肢を狭めて、私が対処するのは当たり前、その上で反撃まで織り込めるものにしたいんだ。リスクマネジメントは完璧に出来て当然だからね。
「だから、研究したんだけど――」
「ダメ」
「ダメよ、ララちゃん」
「ムリですね☆」
うーん、この。まぁ、休息が大事なのは分かるから甘んじて受け入れるんですけどね。どうせ、今日一日だけなんだしさ。
そんなことを考えながらフォークでチーズケーキの一角を削って口に運ぶ。いや本当に美味しいね。流石は、トリニティのティーパーティー御用達の名店。開店前から並んだ甲斐があるってものだよね。
さっぱりめなチーズケーキに合わせて、かなり甘めで作ったミルクティも飲む。うん、美味しい。
「それにしても、ララちゃんって本当に何でも出来るわよね。お茶を淹れるのもこんなに美味しいし」
「確かにそうですね。ララが
「え、ちょ、なになに?いきなりぶっ刺してくるじゃん!?もしかして私のこと仇敵か何かだと思ってる?」
確かに、あと一年で30の大台を踏みますけども!今は肉体だけぴっちぴちの17歳だから!高校生の名探偵が小学校に通ってるのと一緒だから!決して、私はアラサーで学生気取りしてるイタいババアではない!(アリウス生徒会長である赤い女への痛烈な暴言)
私が不満げにジト目をホシノちゃんに向けてみるけど、ホシノちゃんは全く気にしていなくてチーズケーキをもぐもぐして目尻を下げてる。かわいいからいっか。
「あの、前から気になってたんですけど~、皆さんの右腕に付けてる腕輪って何なんです?」
そんなことを考えてると、ノノミちゃんが放った言葉に私達は自分の右腕に付けてるブレスレットを見る。そのブレスレットは、私のは黄色、ユメ先輩は水色、ホシノちゃんはピンクと各々の髪色をしていて、少し透き通ってて肌がうっすらと見えてる感じ。
で、ノノミちゃんが聞いてるのはこれが何か?って話でしょ。どうやら、ホシノちゃんとユメ先輩は私の発明品であるこれのことを話しても良いのか分からない様子。まぁ、別にこれくらい話しちゃっても問題ないから話しちゃうんですけどね。
このブレスレットは簡単に言えばモンスターボールだよ。きっと、この説明で気付いた人も多いことだろうし、サクッと見せるとこんな感じ。
私はブレスレットを腕から外すと上に放り投げる。クルクルと宙を舞ったブレスレットは、私の肌を離れてから、その色を際立たせ光輝いていく。やがて、黄色が金色に変じたその瞬間に、眩い閃光を放出させる。『悪魔の偽眼』を持つ私に目潰しは効かないから見ていられるけど、ユメ先輩達は眩しそうに目を塞いでいる。
やがて、光が収まるとそこには我が愛しのペットことソルくんがぴぴぴっと電子音を出しながら浮いていた。ソルくんが出てきたのを見て、ユメ先輩達もブレスレットをポーンと放り投げる。閃光の色が各々のブレスレットの色に依存すること以外は変わらないから割愛ね。
『キュー!』
『Zzzz……』
ブレスレットから出てきたお風呂のおもちゃことクジラのキューちゃんはいつも通り元気一杯にホシノちゃんの元へ泳いでいって頬っぺた通しですりすりと擦り合っている。その後、ホシノちゃんがチーズケーキを一口分切り分けてキューちゃんにあげた。キューちゃんはお気に召したのか、よりスキンシップが激しくなって、ホシノちゃんも擽ったそうにしつつも嬉しそうに頬を緩めてる。かわいい。
スイくんの方は、こっちもいつも通りユメ先輩の髪の中に一瞬で潜り込むと眠りについた。密やかに聞こえる寝息と共に鼻提灯が髪の隙間から見えている。どうして割れてないのかとか気になるけど、かわいいからいっか。
「わぁ~!可愛らしいお友だちですね☆」
「でしょ?ノノミちゃんも欲しい?髪の毛くれたら造ってあげるよ?」
「う~ん、今回はお断りさせていただきますね」
あら残念。でも、どうやらノノミちゃんは私達三人の思い出に割り込みたくないんだってさ。何この子……元々知ってたけど、めっちゃいい子!よし、ノノミちゃんとも色々と思い出を作っていかねば!
なんて、考えていると、
――テロロン
「ん?この音は、黒服からかな?」
確か、今日はゲマトリアの『茶会』があるとかで連絡してる余裕はないと思うんだけどなぁ……。ま、取り敢えずメッセを見てみれば分かるか。どれどれ?
『3日後に、我々と共にアリウス分校まで来てくれませんか?貴女に会いたいとうるさい人がいます』
要約するとこんな感じ。会わせたい人って多分あれでしょ?ゲマトリア最後のメンバーにして、マエストロから嫌われ、黒服からは取引相手としか見られておらず無関心。そして、そいつが余りにも場を引っ掻き回すものだから、余計な心労を受けているゴルコンダ。うーん、今すぐお断りしたいぞ?なーんて考えていると、
「ララちゃん……」
「ララ」
よっぽど私の眉間に皺が寄っていたのか、私のことを心配そうに見てくるユメ先輩と、睨み付けるように見てくるホシノちゃん。まるで咎めるかのように鋭い視線に、ノノミちゃんは不思議そうにしている。あ、今更だけど黒服の名前だしちゃってたね。
悪魔の偽眼を使わなくても分かる。ユメ先輩とホシノちゃんは、言外に後で聞かせろって言ってる。多分、ノノミちゃんがいるから、巻き込まない為の圧力なんだろうね。
まぁ、私としては二人にも余り関わって欲しくないんだけどね。大人の世界は汚くて醜いものばかりだからさ。特に、このアリウスってのは本当にまずいと思う。
だってさぁ、
黒服に教えて貰った限りだと、アリウスって、
行きたくねぇ……。
――――――――――――
黒服がララへと連絡を送る30分程前、ここはキヴォトスでも
「天裏ララの何が貴様の興味を得た?」
「クックック……確かに、ララさんの何がマダムの琴線に触れたのかは私も気になりますね」
「そんなの、貴方達の成果物が以前に増して飛躍的に優秀となっているからに決まっているでしょう?ゲマトリアの協定では、『崇高』へと至るために必要である限り技術や各々の成果物の貸与が認められている。だから、私は『天裏ララ』と言う技術を寄越しなさい。と言っているんですよ?分かります?」
本来であれば音一つ立たなそうなこの空間に幾つかの声が響く。若干、いや、かなりギスギスした空気が流れているが気のせいであろう。
この真っ白な空間には一つのテーブルを囲むように4つの椅子が並べられている。いつもは、二人であったり、三人であったりが殆どだが、珠に一人の時もあれば、3ヶ月に一度程度の頻度で四人が集まる。今回は、四人全員が各々の席に座している。
現在の状況は、黒服とマエストロが共同して、対立者である赤い肌の女――ベアトリーチェと争っていた。原因は、我らが主人公こと天裏ララについて。
何故、このような事態に至ったのかは途轍もなく長いため、簡潔に纏めさせて貰うと、この茶会が始まってすぐのこと、各々の四半期での成果物を確認し合う場でのこと、黒服はララとの共同で開発した『悪魔の偽眼』。それを黒服が解析したララの神秘を扱うことで数段性能を落とした数秒先の未来を見れる義眼を開発することに成功。
マエストロはララの協力のもと手に入れた『聖徒の交わり』から生み出した『アンブロジウス』とまだ途中段階ではあるが『ヒエロニムス』の製作目処が立ったこと。
ゴルコンダ&デカルコマニーはララのアイデアノートから発想を得た幾つかの道具をアレンジを加えた上で製作し、更には一部のキヴォトス人に熱狂的なまでに信仰されているモモフレンズを元に生み出した成果物も発表した。
そして、件のベアトリーチェなのだが、彼女の成果はアリウスの統治がベアトリーチェに反抗する者を教育と言う名の暴力で弾圧することで
以上。
まぁ、要するに彼女のみ、何の成果も得られませんでした。と、どこかの調査兵団長みたいな状況になっているのだった。
そして、プライドだけは天を突き抜け太陽すらも貫通しても勢いは衰えない程高く強固であり、この上なく面倒臭いベアトリーチェにはこんな状況を耐えられる筈もなく、自身よりも劣っている奴らに負けるなんてあり得ない。などとナチュラルに自身を過大評価し周りを見下し、自身を客観視出来ていない的外れなことを考えた結果、黒服達が大きな進歩を遂げる理由となった天裏ララと言う協力者を引き込もうとしたのだ。
もちろん、ベアトリーチェが穏便に交渉をしようとする筈がなく、ララを圧倒的な力で捩じ伏せようと考えている。そして、そんな考えが見え透いていたが故に、色々と恩義があるマエストロが噛み付いた。と、こんな感じの流れだ。
「そもそも、貴方達は子ども一人に随分と甘い対応をしていますね?そんなに彼女に絆されたのですか?」
「「…………」」
「……マダム、一つ忠告させて頂きます。ララさんは、ただの子どもではありませんよ」
『そういうこった!』
「ふん、幾ら優秀とは言え、たかが子ども。私の教育で恐怖を植え付ければ直ぐに従順になるでしょうね」
そう言って、ベアトリーチェは嗤う。その様を見て、他の三人は胸の内で憐れみの念をベアトリーチェへと送る。何故なら、彼らはベアトリーチェへと伝えていないことが幾つかあった。
まず一つは、天裏ララが彼らと同じ外の世界から来た存在であること。
二つ目は、ララの身体がキヴォトスに来た時に変質して子どもの姿へと変わり、元々は、若くはあるが彼らと同じ成人したれっきとした大人であること。
三つ目は、彼らと渡り合える程の知性と理性を兼ね備えていること。
そして――
――ララが子どもを害する大人には一切の容赦がない。と言うこと。
Q「もしかして、ララへの黒服の好感度って結構高い?」
A「クッソ高い。理由は黒服、マエストロ、ゴルコンダの三人での会話を今度書く予定だからその時に。
因みに、ララへの好感度が高い順に並べると、黒服>=マエストロ>>ゴルコンダ>>>>ベアトリーチェ。
ララからの好感度が高い順に並べると、マエストロ=黒服=ゴルコンダ>>>>>>越えられない壁>>>>>>>>越えられない壁>>>>>>>>越えられない壁>>>>>>>ベアトリーチェ」
次回は今週中に上げます。ちょっと最近忙しいので、週2を絶対目標として、出来れば3話投稿していく。と言う感じにしていきます。
アンケートは今回もなしです。では、また。
ベアおばに何を要求する?
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ヒト!
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モノ!
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カネ!