開発者少女は最善な未来の夢を見る   作:タニコウ

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7/15まで投稿しない予定だったけど、結構お気に入り増えてたから流石に悪いなと思ったので急遽番外編を書きました。因みに、黒服回です。

未成年喫煙の描写がありますが、未成年喫煙を推奨する意図はありません。それに、そもそもララの精神年齢は29のアラサー間近だから許して下さい。良い子のみんなは20歳になるまで待ちましょう。


番外編 一服

 

「ここをこうして――うん、いい感じに纏まったんじゃない?」

「ええ、いいと思います。しかし、未だ改善点は多く出てくることでしょう」

「だろうね、まぁそこら辺は対処療法を取るしかないんじゃない?」

「クックック、そうですね。今すぐ改良をしますか?」

 

 今日は黒服と共にこんにちは、天裏ララだよ。今、何をしていたのか説明すると、前アリウス行った時に使った黒服の神秘を増やす薬分かる?再生促進剤と併用したら心臓止まったアレだね。

 で、私ってば再生促進剤が無いと戦えないじゃん?いや、別に戦えないわけではないんだけど、ただでさえ耐久低くてケガしやすいんだからそこのケアは必須。しかも、黒服の薬がないと私は神秘を録に扱えないクソザコだし、使ったら使ったで身体を動かせないレベルで痛みが出る。で、この痛みを抑えるために再生促進剤が必要。

 だから、どうしてもこの2つの薬を併用しないといけない。でも、2つの薬はビックリするくらい相性が悪い。だったら、その薬を改良して、ある程度使えるようにしてから今度の戦いで使おうって話になったわけ。ついさっきまでやってたのは、何を改善したりするのか。とか、何の成分を足すのか。とかの、そう言った構成を纏めてたんだよね。

 

「うーん、休憩する?」

「では、そうしましょうか」

「コーヒー、砂糖入ってるけどいい?」

「構いませんよ、ありがとうございます」

 

 私とは長い間座って作業していた凝り固まってパキパキと鳴る肩を立ちながら解して、黒服に缶コーヒーを渡す。黒服が缶コーヒーを開けるカシュッという小気味いい音を聞いて、私も近くの壁に寄りかかりながら缶コーヒーのプルタブを開け、飲む。舌に残る仄かな苦みに顔を顰めつつ、微かに感じる砂糖の甘さに集中して苦さを打ち消す。

 大人(阿部花子)の時とは違って、子ども(天裏ララ)の身体になってから、コーヒーを苦く感じるようになっちゃったんだよね。結構好きだっただけに、ちょっと残念。

 

「んむ、チョコ、食べる?」

「遠慮なく……と、言おうと思ったのですがここはお言葉に甘えましょう。……なので、指で弾く構えは解いて貰えると助かります」

「ちぇーっ、口に放り込むのやってみたかったんだけどなー」

 

 そう言って私は、羽織ってるパーカーのポケットから渋々と今自分の口に入れた一口チョコと同じものを黒服に投げ渡す。

 

「そういうことは普通マシュマロとかでやるのでは?それに、ララさんは上手く扱えないとは言え神秘を持っているのですから、投げるのがチョコレートでも最悪私の顔の罅が増えてしまいますよ」

「ふっ、確かに。でも、その顔の罅って、端的に言ってめっちゃカッコいいよね。割れ目から青白い光が漏れてるのとか、その頭から出てるモヤとか正体不明の悪役っぽさが出てる。しかも、言葉遣いが丁寧だから最近人気なカッコいい悪役って感じがする!正直、私は黒服の見た目どちゃくそ好き」

「……クックック、なるほどなるほど。もしかして、今ララさんに口説かれてます?」

 

 いや、口説いてないけど?

 

「全部、本当のことだけど。口説く云々は黒服が男だから生理的に無理。ごめんなさい」

「…………」

 

 私は、黒服に謝ってからチョコの甘さで一杯になった口をコーヒーの苦みでリセットさせる。黒服も、何か言いたそうな顔をしつつもコーヒーを一口飲んでから、苦言を呈すように口を開く。

 

「余り、大人をからかっていると痛い目を見ますよ?ララさん」

「知ってる。私も大人だからね。それにしても、黒服が反応するなんて思わなかったよ。もしかして、私に気があるのかな?」

「はぁ……」

 

 私が黒服をニヨニヨとした表情を浮かべて見つめると、黒服はタメ息を吐いてスーツの胸ポケットに手を突っ込んで手の平サイズの箱を――って、それは。

 

「タバコじゃん。吸うの?」

「ええ、嗜む程度ですが」

 

 そう言いながら、黒服はスラックスのポケットから取り出したジッポライターで口に咥えたタバコの先へと火を着ける。ジリジリとタバコを燃やす音が聞こえ、黒服はライターをポケットの中へと戻した。そのまま黒服は反対の手に持っていたタバコの箱を私へ向け一言。

 

「ララさんも一本どうです?」

「おい、今の私は未成年だぞ?未成年者に喫煙勧めんじゃないよ」

 

 それに、私はタバコは嫌いなの。臭いし。

 

「おや?ララさんはつい先ほど『私も大人だ』と言っていたので大丈夫だと思ったのですが……もしかして、私の思い違いでしたか?」

「……一本だけだからね?」

「クックック、どうぞ」

 

 何かハメられた気がしなくもないけど、私は黒服からタバコを一本だけ受け取って、そこで気付く。

 

「あれ?火は?」

「ああ、それでしたら私が」

 

 黒服がスラックスのポケットに手を突っ込んで、口の端からは紫煙を燻らせながらこっちに歩いてくる。私は、タバコを口で咥えながら待つ。黒服が近づいてきたタイミングでタバコをクイッと上に向ける。

 

「ん」

「では、失礼します」

 

 私の側に来た黒服が更に私の方へと顔を近付けてくる。ポケットから出した手にはライターは無く、空の手は黒服が咥えたタバコに添えられた。そのまま、近付いてきた黒服の燃えてるタバコの先端と、私の咥えたタバコの先端がくっ付き、私のタバコに黒服のタバコの火が燃え移る。

 

「ちょ、おま……シガーキスって」

「クックック、これが先ほどの質問の答えです。ご満足頂けましたか?」

 

 さっきの質問って言うと、黒服が私に気があるのかってことかな。て言うことは……え、マジ?

 

「いやいや待て待て待って!え!?何!?黒服ってマジで私のこと好きなの!?」

「クックック、さて?どうでしょう?」

 

 黒服は私の顔から離れ、隣に並び立ちフーッと紫煙を吐き出しながらそんなことを宣う。タバコ同士とは言え、シガーキスは間接キスに含まれる行為だ。流石に無理がありすぎるでしょ。

 

「その言い訳は意味ないでしょ。あからさますぎる」

「それもそうですね。では、本当のことを言いましょう。もし仮に、異性に対して『特定の人物のことを隅から隅までの全てを詳しく知りたい』という感情が好意であるとするならば、確かに私はララさんのことが好きである。と言うことになりますね」

「…………」

 

 私は、黒服の言葉を聞きながらタバコを吸い、随分と懐かしく感じる不味い煙が口の中を支配する気持ち悪い感覚が広がる。その気持ち悪い感覚をぷふーっと吐き出しながら思考を回す。

 その感情は普通に好意に分類してもおかしくはないと思うんだけど……。てことは……いや、待て。

 

「確かに、普通の人だったら好意に入るんだろうけど、黒服にそれを言われると寒気が凄いんだけど!?私に何をするつもりなの!?」

 

 つまり、私のことを研究対象として調べ尽くしたいと?マジで一瞬にして全身に鳥肌が立ったんだけど!?

 そう言えば、黒服とは私の身体を使った実験をやるって話もあったよね。身体の隅から隅までってそう言うこと……だよね?別に私の身体を使うのは良いんだけど、今更ながら何をやるのかが気になり始めた。それに――

 

「黒服がこうなら、マエストロ達もこうなの!?」

「いえ、貴女の身も心も欲しているのは私だけですのでご安心を」

 

 ご安心出来る訳ないんだが?え、何?キミ、私の心も奪う気なの?身体目当てじゃなくて?言い回しが完全に少女漫画の王子様なんだけど、如何せん発言者の性格がアレだからただただ恐怖でしかない。ナニをされないのは確かなんだろうけど。マジで私は何をされるのだろうか?

 私は、そこはかとなく感じる不安から逃げる様に、久しぶりに味わったタバコの味に集中する。やっぱりまずい。そんな私の態度を見た黒服が何を思ったのか、すかさず言葉を発する。

 

「ララさんはどうやら1つ大きな勘違いをしているみたいですね。我々は、研究者である以前に探求者です。どうやら、私が求める崇高は強引な手段で手にすることは出来ないようなんです」

 

 そんなことを言った黒服と私の視線が交わる。妖しく輝く白い眼窩が私の視線を捉えて放さない。私が気付いた時には、既に黒服の黒い手袋に包まれた右手が私の顎を持ち上げている所だった。白い眼光がより近くに迫り、私の赤い瞳を覗き込む。

 

「貴女が持つ2つの力は奇跡……いえ、神秘的なまでに完璧なバランスで成り立っています。本来であれば、1つまでしか力を持つことが出来ません。しかし、ララさんはその定義を壊した。実に興味深い。是非とも調べ尽くして我が物としたい。……ですが、どこまでも神秘的な奇跡に手を加えるなど、最上級の宝石をゴミ未満の価値へと成り下げる愚かで恐ろしい行為にしかなり得ません」

 

 何かペチャクチャとよくわからん持論を展開する黒服。いや、本当に何言ってんのか分からない。バランスがどうとか、宝石がゴミだとか言われても理解不能なんですけど。私の神秘が凄いってのは何となく分かったけど、余りにも私が持つ神秘の知識が少ないからどれくらい凄いのかが良く分からない。私は目の前にある黒服の顔面目掛けて紫煙を吐き出して言葉を発する。

 

「ふーっ……それで?結局黒服は何が言いたいの?」

「そうですね、簡潔に言うのであれば――以前の発言を訂正するようで申し訳ないのですが、私がララさんの肉体を用いた実験を行うことはないと言うことですね。ですが、時々ララさんの神秘の採取とモニタリングは続けていきますよ」

「そ、じゃあ逆に私は何をすればいいの?」

 

 私はそのまま黒服に向けてすぱすぱとニコチンを接種しがてら紫煙を吹き掛け続ける。流石に近いねん、離れろや。なんて念を込めながら睨んでたら漸く黒服が離れる。

 

「クックック、ララさんの好きな様になさって下さい。私に利があることでしたら、何でもお手伝いさせて頂きましょう。それが私が崇高へと至る一番の近道なのですから」

 

 ニヤリと効果音の付きそうな悪どい笑みを見せながら黒服が答えた。私はそんな黒服を尻目に作業台の方へと歩いていく。

 

「んじゃ、そろそろ休憩止めて作業に戻るよ。手伝ってくれるんでしょ?」

「えぇ、勿論です」

 

 私がそう言うと、黒服が私の隣まで歩いてきてさっと灰皿を出してくれる。私は、タバコを灰皿に押し付けて火を消す。……と言うか、灰皿あるなら早く出せや。黒服が灰を床に落としてたから、ここ別次元っぽいし大丈夫なんだろうなぁって、私も床に落としちゃってたじゃん。

 

「クックック、私は悪い大人ですので」

「オイコラ、それだと私も悪人になるじゃねーか」

「未成年で喫煙しといてよく言いますね?」

「ほー?喧嘩か?買うぞ?」

「クックック……止めて下さい死んでしまいます……」

「ふふっ…冗談だよ」

 

 

 

 久し振りのタバコの味は案外悪くはなかった。

 




シガーキスっていいよねってお話。
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