リメイク版:白兎は理想を抱え、幻想へと走る   作:幻桜ユウ

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第二話 それはきっと希望の道標(アリアドネ)

 

 

 

 

 

 ◾️◽️◾️◽️◾️

 

 

 

 「ふぅ、こんなもので良いでしょう」

 

 

 ベルは襲ってきた闇派閥(イヴィルス)達を(ゼウスをお仕置きするために常備している)縄で纏めて縛り上げた。ご丁寧に全員分の四肢の関節を脱臼させて。途中、脱臼の痛みに気絶から目が覚めた闇派閥(イヴィルス)もいたが、すぐに「()()()いです」と理不尽に頭を殴られてまた気絶していた。暴虐の化身である。ヘルメスとその眷属達はその様子を見て、ずっとドン引きしていた。

 

 ベルは縄で締め上げた闇派閥(イヴィルス)達を大破した馬車から簡易的に作った台車に乗せた。『乗せた』と表記したが、実際は「よいしょ」と言って、台車の上に放り投げたのである。間違いなく数人の顔が潰れた気がするが、最早ヘルメス達は気にしない事にした。気にしたらキリがないのことを早くも悟ったのだ。

 

 そんなヘルメス達とは対照的に、ベルはいい汗かいたなぁと若干輝いた顔で満足していると、空から声が降りてきた。

 

 

 「ヘルメス様!」

 

 

 右手に漆黒の兜を持ち、靴からはニ翼一対の羽を広げ、水色の髪に銀縁の眼鏡を掛けた理知的な雰囲気の女性が、その雰囲気とは正反対に切羽詰まった様子で空から降りてきた。

 

 

 「良かった、ご無事でしたかヘルメス様! 私が持っているヘルメス様にお渡しした魔道具の番の魔道具が反応したのを見て急いで飛んできましたが、ご無事に何よりです!」

 

 「おお! アスフィ、よく来てくれた! 念の為、救難信号を送ったんだが、敵にレベル4がいたから流石に無理だと思ったよ」

 

 「レベル4ですか!? えっ、一体どうやって生き延びたんですか!?」

 

 「まぁ、そこは彼が……」

 

 

 そこで、眷属の1人が彼──ベルの方に目を向ける。それに釣られて他の眷属やヘルメス、アスフィもベルに目を向けた。

 

 ベルは「ん?」とコテンと首を傾げる。

 

 アスフィはまさか本当に?と思い、いやいやと顔を横に振る。ヘルメス達を見て、再度問う。

 

 

 「こんな時に冗談を言うのはやめてくださいよ。あの子はどう見たって、5歳かそこらですよ? まさか、小人族(パルゥム)でもあるまいし」

 

 「ただのヒューマンで、間違いなく5歳なんだよなぁ」

 

 「……マジですか?」

 

 「マジマジ」

 

 「すぅ…………なんですかそれぇぇええええええええ!?」

 

 

 天界にまで届くであろうアスフィの叫びは、されど誰にも届く事はなかった……

 

 

 

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 「コホンッ、失礼、取り乱しました」

 

 

 アスフィは少し頬を赤らめながら、咳払いをして話を戻す

 

 

 「とりあえず、状況は理解しました。納得は少々しておりませんが……。それは兎も角、この闇派閥(イヴィルス)達をこのまま【ガネーシャ・ファミリア】に引き渡すの良いのですが、少年──ベル・クラ「ベル君って呼んであげなよ、副団長」──コホンッ、ベルの事はどうするのですか?」

 

 

 流石にかなり年下の子とは言え、君付けはレベルが高かったアスフィ。

 

 ヘルメスはそんなアスフィを面白がりながら、アスフィが持っている兜を指差す。

 

 

 「アスフィが持ってきてるソレ──『漆黒兜(ハデス・ヘッド)』を使って、ベル君を()()()()()()()()()【ロキ・ファミリア】まで連れていく」

 

 「……門を通るだけなら姿を消す必要はないでしょう。わざわざ姿を消してまでベルの存在を隠そうとするのは何故ですか?」

 

 「絶対にベル君の存在を知らせるわけにはいかないヤツが何人かいるからだ」

 

 「……ヤツ?」

 

 「まず、大前提にベルの存在を()()()()()()2()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その時点で大体のファミリアが候補から消える。勿論、俺のファミリアや【アストレア・ファミリア】は除外される。俺のファミリアは探索型ファミリアじゃないから、レベルアップすると嫌でも目立つ上にファミリアの等級も上がる。アストレアの所は言わずもがな、女性だらけのファミリアに男の子を入れると嫌でも目立つ。とすると、あとはロキかフレイヤ様なんだが、肝心のフレイヤ様にベル君の存在が気づかれるとアウト。後2年を待たずにオラリオが崩壊する」

 

 

 アスフィ達は、ヘルメスの言葉の真意は読み取れずともその声と表情の真剣さから、事の重大さを認識した。

 

 

 「オラリオが崩壊するとまではいかなくても、ヤバいのはチラホラいる。アポロンを筆頭とした美少年好きの男神達、アイツらはベル君を見つけたら即行で騒ぎ出すからアウト。それでフレイヤ様に見つかれば崩壊待ったなし。ということで、そいつらから間違いなくベル君の存在を秘匿しやすい力と名声を持っているのはロキの所しかない」

 

 「まぁ、百歩譲って神ロキに所に連れて行くのは良いんですが、何故2年の間存在が知られてはいけないんですか?」

 

 「残念ながら俺も詳しいことは分からない。何となく予想はつくが、()()()()()()()()()?と()()()()()()()()()()()()?が解決できなくて、俺も何とも確証に至れない。ベル君の事を秘匿する以上、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()っていうのもあるけどな。だが、()()()()()()()()()()()()であと2年はオラリオの状況を動かせない、()()()()()()()()()()()ことが分かった。レベルアップとか、ベル君の姿を伴わない情報はベル君自身が()()できるから、そこは気にしなくて良い。問題なのは、()()()()姿()()()()()()()()ただこの一点にだけある」

 

 

 「だから、この『漆黒兜(ハデス・ヘッド)』が必要なんですか……」

 

 「そういうことだ。だから、ベル君をロキのところに連れて行った後、お前に頼みがあるんだ、アスフィ」

 

 「……ベルがすぐに身を隠せるような魔道具を作れということですか?」

 

 「ああ、頼めるか?」

 

 

 ヘルメスがいつになく優しい顔で言うもので、アスフィは少し面食らってしまった。アスフィは少し逡巡すると、ため息を吐いた。

 

 

 「いつもはそんな風に聞かないくせに、何を一丁前に誠実ぶっているんですか殴りますよ?「えっ、理不尽」まぁ、やる事は漆黒兜(ハデス・ヘッド)の延長線です。特に難しくありません。とは言え? その間は作業にかかりっきりになって、書類仕事に手を回せなくなるので、貴方とリディス(団長)にぶん投げます。良いですね?」

 

 「エッ、それは……」

 

 「良、い、で、す、ね?」

 

 「……ハイ」

 

 

 アスフィに笑顔の圧をかけられて肩を落とすヘルメスと、その様子を見て笑う眷属達とベル、「そうです、貴方はそれぐらいが貴方らしい」と誰にも聞こえない声で呟くアスフィ。

 

 暗黒期と呼ばれるこの世の中でも、この7人の間には楽しさに満ち溢れた空気が広がっていた。

 

 

 

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