リメイク版:白兎は理想を抱え、幻想へと走る   作:幻桜ユウ

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第五話 『試練』(笑)

 

 

 

 

 

 ◾️◽️◾️◽️◾️

 

 

 

 「さぁて、お楽しみの『神の恩恵(ファルナ)』の時間やでー」

 

 「お願いします」

 

 

 フィンとの手合わせをした後、リヴェリアに身体の隅々まで洗われたベル。二重の意味で生まれた熱が冷めた頃、いよいよ、『神の恩恵(ファルナ)』を授けられる。

 

 背中を出すために上半身だけ服を脱ぎ、長椅子でうつ伏せになるベル。風呂から出てすぐということもあってか、ベルの肌はまだ微妙に赤く色づいており、元々が白い事もあってその赤みはよく映えている。外見年齢5歳のくせにちょっとした色気を発する白髪の少年は、無自覚のまま無防備に肌を晒しうつ伏せのまま呼吸を続ける。

 

 ロキはそんなベルの背中の上に(またが)り、あまり体重をかけないようにベルの臀部(でんぶ)に座る。針で自身の人差し指を少し刺し、そこから滲み出る血をベルの背中に垂らす。すると、直ちにベルの背中から光が生まれ、そこに『道化』の『刻印』が刻まれる。

 

 すなわち、【ステイタス】の獲得である。

 

 

 

 ベル・クラネル Lv.1

 

 『力』I 0

 『耐久』I 0

 『器用』I 0

 『敏捷』I 0

 『魔力』I 0

 

 《魔法》

 【ファイアボルト】

 ・速攻魔法

 

 【メモリア・フレーゼ】

 ・召喚魔法

 ・詠唱式『既に英雄神話は紡がれた。されど、汝の中に未だ色褪せぬ理想があるならば。今一度この手に昔日の栄光を』

 ・召喚対象は使用したことがある武具

 ・召喚対象の規格(スケール)に応じ、消費精神力増減

 

 《スキル》

 【英雄追想(アルゴノゥト)

 ・能動的行動(アクティブアクション)に対するチャージ実行権

 

 【英雄試練】

 ・特定条件下において、対象者に『試練』が課される

 

 【英雄運命】

 ・早熟する

 

 【──の器】

 ・不死

 ・──を救済時発動

 

 

 

 「……エグない?」

 

 「なんか、色々変わってますね……」

 

 

 一応、ベルは【神聖文字(ヒエログリフ)】を勉強したため、読み書きはできるが、それはそれとして背中にある文字は読めないので、共通語(コイネー)に翻訳して写した羊皮紙をもらう。

 

 【ファイアボルト】や表記こそ変わってはいるが、【英雄追想(アルゴノゥト)】は()()のままである。しかし、それ以外は見たことない《魔法》や《スキル》で、中には【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)】と似たような効果があるが、色々変わっているとしか言いようがない。中々に因縁のあった【闘牛本能(オックス・スレイヤー)】とかも無くなっている。なんだかちょっとした寂しさを感じる。

 

 そこら辺は置いといて、新しく追加された【メモリア・フレーゼ】、【英雄試練】、【英雄運命】、【──の器】の四つである。

 

 【メモリア・フレーゼ】は召喚魔法であるらしい。召喚魔法と言えば、やはりレフィーヤが思い出す。同胞(エルフ)限定ではあるものの数々の《魔法》を扱うための召喚魔法(サモン・バースト)

 

 それに対して、【メモリア・フレーゼ】の召喚対象は武具。過去、前世や()()()で用いた武具を召喚できるらしい。多分、『神造武器』もいける、と思う。『矢』も出せそうだけど、間違いなく精神力(マインド)が足りない。一瞬で精神枯渇(マインドゼロ)行きだろう。

 

 【英雄試練】は……正直よく分からない。特定条件が何かも分からないし、対象者が誰を指すのかも分からない。自分か、それ以外か。その上、『試練』がどんなものかも分からない。謎だらけである。

 

 【英雄運命】はさっきも触れたが、【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)】とほぼ同じのようだ。ただ、早熟の程度が分からなくなっている。【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)】は懸想(おもい)がある限り持続し、その上その丈によって早熟の幅が上下していた。【英雄運命】は特にそんな表記は無く、つまり無条件で永続ではあるが早熟の幅は一定と見て良いっぽい。

 

 さて、一番意味不明なものがこれ──【──の器】である。そもそも大事な部分が『──』で伏せられており、よく分からないのが本音である。しかし、その効果が凄まじい。不死性。それは、神のみぞ許されている天の理。それを実現する《スキル》は、最早レアなんていう枠に収まらない。でも、どうやらまだこの《スキル》は発動していないらしい。わざわざ、発動条件が書いてあるという事はこの『──』に該当する誰かを助けなければこの《スキル》は発動しないらしい。

 

 といったところで、ベルの【ステイタス】の説明は終わりだろう。何にせよ、ベルの【ステイタス】は破格のものであり、それは彼の()()を如実に表しているとも言える。

 

 

 「さて、ベルたん。まだ、ヘルメスん所から魔道具は届いてないし、色々あって疲れたやろ? さっきリヴェリアに教えられた部屋でゆっくり休むとええ! ベルたんのことやから大丈夫だと思うけど、他の団員にはなるべく見つからんようにな」

 

 「はい。ありがとうございます」

 

 

 ベルはその部屋から退出し、自分の部屋へと足を進める。ほとんどの団員がダンジョンや街へ出掛けているとは言え、もう時間的に人が戻って来ても良い頃である。隠密技術を働かせて、できるだけ素早く部屋に戻ろうとする。

 

 戻ろうと……したのだ。

 

 唐突に後ろから殺気を感知し、ほとんどの人が避けられないであろう刺突が繰り出される。

 

 ベルはその謎の襲撃者からの刺突を避けるために、身体を90度回転させてギリギリ回避する。その時、自分の目の前を通り過ぎる金色の長髪が見えた。さらに言えば、目の前という事は相手はほぼ同じ身長をしている。

 

 そんな特徴を持つのは僕は一人しか知らないが、こんな苛烈な行動するのは……

 

 

 「まさか……姫……ですか?」

 

 「ええ、大正解よ。アル、本当に久しぶりね」

 

 

 大人が持つような、子供の身体に合わない長剣を持ち、金髪をたなびかせ、淑女足らんとする笑顔を浮かべる。そんな仕草はアイズにはあまりできていなかった、つまり、目の前にいるのは、まさに王国の姫であったアリアドネの方なのだ。

 

 うーん、この苛烈さも今ではちょっと懐か「アル?」──おっと。

 

 

 「今、何を考えていたのかしら?」

 

 「イエ、ナンデモアリマセン」

 

 「そう? それなら、良いのだけれど」

 

 

 アイズは一瞬浮かべた黒い笑顔を消し、『デスペレート』を鞘へと収める。

 

 その様子にベルはふーっと安堵した。

 

 

 「ところで姫よ、今はベル・クラネルと名乗っているから、アルと呼ぶのはちょっと……」

 

 「あら、そうなの? じゃあ、ベルと呼ぶことにするわ。それなら、あなたも私のことを『姫』や『アリア』じゃなくて、ちゃんとアイズって呼んでくださいね。『アリア』だと、私のお母様と同じになっちゃうし……」

 

 「……ああ、うん、そうだネ」

 

 

 嫉妬……だろうか。『アリア』の名前に触れた瞬間、笑顔が黒くなった。

 

 えっ、これ、前世でも見たよ。付き合っている時のアイズも中々にヘラることが多かったからなぁ。主にヘラ様に影響されて。おじいちゃんと一緒に逃げまくった記憶があるなぁ。そしていつもやるだけやって発散して終わってたんだよなぁ。その上起爆剤もどこかよく分からないし。何で、アステリオスさんと戦っているだけで爆発するの?

 

 そんな過去を思い出し、遠い目をするベル。

 

 ああ、もしかして、これは【英雄試練】の『試練』なんですか?

 

 つい、そんな事を思って現実逃避をするベルであった。

 

 

 

 

 

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