書きたいから書いた自己満作品ですが…それでも見ていただけたら嬉しいです。
…霧深い森の奥深くにあると言われる古い家。
その工房に、一匹の黒猫が徘徊していた。
「にゃーにゃー」
工房に並んでいるのは、どれもこれも特注の器具ばかり。
しかもほとんどが年代物なので、ひとつでも壊れれば賠償金額は洒落にならない。
それを知ってか知らずか、前足で小さなフラスコを転がして遊んでいた時だった。
「…おい」
そんな黒猫をフラスコを片手に睨むのはモノクルを付け、鈍く光る銀髪をショートボブにカットした妙齢の女性。
見るからに安物のシャツの上からだぼっとしたローブを身につけている。
「退屈なのは構わないがな…遊びたければヨソヘ行け」
「にゃーん♪」
そんな彼女に、黒猫は寝転がって媚びるようにひと鳴きする。
「…ぶりっ子をするような歳でも無いだろうに」
その言葉に、黒猫はシッ!!と威嚇すると憎たらしげに女性を睨む。
「にゃーん。だぁれが未熟者の命令なんか聞くかにゃ」
あかんべぇ、と舌を出す黒猫。
そんな黒猫を見て、女性は「はぁ」とため息をひとつつく。
「…そもそも、アンタは母さんの使い魔だろう。使い魔ってのは契約者がいなくなったらとっとと消えるもんなんじゃあ無いのか?」
構ってもらえなかったからか、不貞腐れたようにそのまま寝転ぶ猫は、顔だけ女性の方へと向ける。
「はぁ!?ンなもん知らんにゃ。アタシはアタシのしたいようにするのにゃ」
「…あと、そのわざとらしい語尾のにゃはやめろ。普通に腹立つ」
「相ッッッ変わらず年長者に失礼なヤツだにゃ〜!!」
「少なくとも、今やってる作業の大切さは分かるだろう。私から飯の種を取り上げるつもりか」
「ンなモン断ればいいにゃ!!この森は魔素で満ち満ちてるんだから、魔女であるおみゃーは死ぬことなんてないにゃ!!」
「別にいいだろう。研究には資金が必要なんだから」
「それこそ錬金術で黄金を大量に生産して、テキトーな国に売りつければいいんだにゃ!!」
一丁前に二足歩行をしつつ、そんなことを宣う黒猫。
「いや、そんなことしたら国が混乱するだろうが…」
「ふんっ!!世を乱し、人々の尊敬と恐怖を集めてこその魔女なのにゃ!!それなのに…おみゃーもおみゃーの母親も…なぁんでその辺の野心がまるっきり無いんだにゃ〜…」
自分で言って落ち込んだのか、黒猫はガクリと項垂れる。
「つくづく、そりがあわないな…っと、よしできた」
魔女と呼ばれた彼女は、できた薬を小瓶に詰めると、それを木箱に並べ始める。
「…ちなみに、それで幾らになるんだにゃ?」
「今まで特に聞いてこなかったくせに…そうだなぁ…この一箱まるまる売れれば…二千万は固いかな」
「にせっ…」
魔女からの発言に驚いた様子で、わざとなのかそれだけショックだったのか、足元がふらついている。
「はぁぁ…情けなや情けなや!!」
「…この森でいくらでも取れるもんで二千万は上等だろうよ」
魔女は鬱陶しそうに黒猫を見遣る。
「安売りしすぎだにゃ!!かつて魔女の霊薬といえば国一つでやっと対等と言われる程に希少で、魔女は国王ですら頭の上がらぬ存在であったと言うのに…」
過去の栄光を爛々と輝く瞳で語る黒猫に、魔女はまたもため息。
「そんな大昔の話を持ち出されてもな…そもそも、アンタだって実際に見たことがない伝承の話だろそれ」
魔女はそんな話をしつつ、木箱に蓋をして魔物や盗賊避けのための札を貼り、魔法で浮かべる。
「実際にそうだったんだにゃ!!」
「はいはい…っと、あとはコレを西の街まで魔法で飛ばすだけだ」
窓を開けて浮かせた木箱を宙に待機させる。
合図に煙突から煙を出して運び屋の到着を待つ。
やがて、窓の外から風が強く吹くのが分かる。
「聞いてるんにゃ!?」
「…おっ、きたきた」
つっかかられる前に、魔女は窓からさっさと外に出ると、そこには青く細身で、しかし美しい魔法生物がいた。
「んお、ドラゴン…ってことは、教授か」
そう言うと魔女は、木箱をドラゴンの持参していた袋と交換で預ける。
「あいよ。お代は…うん。ちゃんとあるね」
受け取った袋の中身確認したのを見届けると、ドラゴンは再びやって来た西の方へと飛んでいくのだった。
「さて、これでやっとアレとアレを新調出来る」
「はぁ〜…偉大なる魔女の末がこれとは…」
研究費を手に入れてルンルンな魔女とは対照的に、今度は黒猫がため息をつくのだった。
魔女…研究大好き。今の発見が重要な彼女にとって昔とかどうでもいい。
黒猫…一応上級使い魔。魔女の野心を力に変えるため、度々魔女に野心をくすぐるが…効果は薄い。
通貨…大体日本円の単位で考えて頂ければ。