僻郷の魔女の末   作:ガラクタ山のヌシ

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第二話投稿。


第2話

この街の東の森には魔女が住んでいる。

 

それがハルフ魔導王国が誇る学問の都、アレッサに於ける常識だ。

 

モンスターを狩って生計を立てている血なまぐさい冒険者達も、わざわざ切り立った山の上に広がるこの都市に用もなく訪れることはほとんど無い。

 

移動手段も専用の魔法陣でしかやって来ることもできない程に限られた此処は、プライドの高い魔導士達にとって天然の魔素に満ち満ちた楽園のようなところである。

 

そのお陰か…この街は治安に於いて非常によく、そして他ならぬ魔女本人が製作したポーション類によって安定した利益を齎されていた。

 

ゆえに、この街に於いて東の森に住まう魔女は言わば福の神のようなもの。

魔導士達は魔女の加護を強く信じる者達であり、それ故に見つかれば面倒は避けられない。

 

中央に聳え立つ巨大図書館は王国一の蔵書量を誇り、その図書館に隣接する魔道学院は近隣諸国に知れ渡る大魔導士を幾人も輩出する実績を持つ名門中の名門と言って差し支え無い。

 

そんな学院は今、とある一人の偉大なる人物を迎えていた。

 

在籍する生徒数四十人程の円形のクラスルームの壇上に立つ白衣を纏った老年の男は、学生服を着た生徒達に自身の持つ知識を与えていた。

 

十代前半と思しき生徒たちは皆、黒板に書き記されたそれをまるで床に散らばった取り放題の金貨をかき集めるように一心不乱に手元のノートへと書き留めているが、それはそれだけこの老人の授業が優れていると言うことの証であり、文字通り値千金の価値があるだろうことが窺える。

 

「え〜…で、あるからしてぇ、魔法生物とは文字通り術者の魔力によって構成された生物のことを言い、これはその術者の魔力の質、或いは量によって様々な形態を取るものでありぃ…」

「はい教授」

 

そんな最中、一人の眼鏡をかけたポニーテールの生徒がピシッと挙手した後質問する。

 

「なんだい?」

 

教授と呼ばれた老人が振り返ったのを確認するや、学徒は質問を投げかける。

 

「数百年前から今に至るまで、大海峡のリヴァイアサンや古代都市ジウスドラの守護竜などは未だに現存していますよね?それって術者の死後に残る魔法生物も存在すると言う解釈でいいのですか?」

「うむ…一説には術者の執念や信念が影響しているようだねぇ…。竜を例に出すなら、邪な考えの元作り上げられた竜は邪竜となり、逆に国家や街を守護せんとする尊い祈りは聖竜となる。というのは有名な話だねぇ」

 

とは言え、竜を編める程の魔力量を有する魔導士は現代ではかなり限られるが。

 

「では教授、その魔法生物のモデルとなった生き物は実在したのでしょうか?」

 

今度は別の生徒が挙手して質問する。

 

「ん〜…」

 

老人は、眼鏡の縁を直しながら少し困ったように思案する。

 

「黎明の魔女様があらゆるモノの原型を形作った…と言うのが真実であるならば、或いは実在したのかも知れないがねぇ。生憎と我々にはそれを確認する術は今の所は無い。ただ…」

 

リンゴーン…♪

 

そう言う教授が自論を話そうとするのと同時に、授業終了を告げる鐘が鳴る。

 

「さぁて、今日の授業はここまで。各自課題はきちんと済ませるようになぁ」

「え〜…そりゃ〜ないぜ〜」

「まぁ…この人はいっつもこうだから、気にするだけ無駄だと思うけどな〜…」

 

授業を終え、自室に戻ろうとする教授は生徒達に囲まれ質問責めに遭う。

それというのも、彼が授業をするのは月に一度きりと言う契約を学院と結んでいるからだが。

とは言え…教室の生徒達の大半が質問をしに押し寄せていることからも、彼の知識と人徳の程が伺える。

 

「はいよぉ。投げかけられたきちんと答えるが…一人一つずつにしておくれ。今日は客人が来ているのでなぁ」

「はい教授!!」

 

そうして、丁寧に質疑応答に時間を割いて小一時間。

教授が自室に戻ると、そこには既に彼の呼び立てた来客が来ていた。

 

「よっ教授。いきなり呼びつけて何の用だよ?」

 

教授の椅子にどっかりと腰掛け、紅茶を啜り茶菓子を食らう鈍く光る銀髪の妙齢の女性。

 

彼女は魔女ベルカ。

東の森に住む偉大なる魔女の末であり…彼の友人でもある。

 

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