自称『普通』は魔物だらけの崩壊世界でも普通を貫く 〜ただし、彼の辞書には『普通』の二文字がありません〜   作:アリアンロッド=アバター

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プロローグ
第1話 『普通』の日常の崩壊


俺は俺のことを、『普通』のヤツだと思っている。

 

成績は平均的、運動神経は悪くない。友人は数人いるし、極度のコミュ障ってわけでもなし。モテたことはないが、彼女がいたことはある。なんと言うか、極度にいいところもなければ、悪いところもないと言う、非常にネタにしにくい存在である。

 

正しくモブキャラ。エキストラの一員か、もしくは背景に顔なしで描かれるタイプだ。

 

かと言って、それが嫌かと言われればそんなことはない。いいじゃん普通。変に突き出ていたり凹んでいたりするよりも、絶対に生きるのは楽だろ? 物語の主人公みたいな特別は、紙面で読む程度が丁度いいんだ。

 

普通に生きて、普通に死ぬ。波乱万丈なんてお断り。無事故無事件な平和な一生こそがなによりも尊いのだ。

 

……まぁ、俺の友人どもは俺が自分の事を『普通』と言うたびに、なぜか鼻で笑ってくるんだけど。アイツらはパラメータグラフがトゲトゲしいタイプの異常者だからな。『普通』の感覚がわからないんだろう。可哀そうなヤツらめ。

 

そんな感じで、箸にも棒にもかからない、日常モノと銘打っても漫画には出来ないような日々を送っていた。きっと俺は、死ぬまでこんな風に生きていくんだ。

 

そう、思っていたのに。

 

 

「どうしてこうなったんだ……」

 

 

夕暮れが照らす学校の屋上にて。

 

屋上で弁当を掻っ込み、そのまま昼寝としゃれこんだ昼休み。どうやらスマホのアラームを付け忘れたようで、完全に寝過ごしてしまった。気が付けば、空は茜色に染まりカラスが『アホ―』と泣いている。誰がアホやねん。

 

午後の授業を全ブッチするという不良生徒ムーブをキメてしまった俺は、しかしそんなことがどうでもよくなるほどの衝撃と共に、眼下の校庭と街並みを見つめながら、乾いた笑みを浮かべていた。

 

吃驚仰天、驚天動地。いや、天変地異か?

 

普通な俺が暮らすにふさわしい、都会でも田舎でもない地方都市が、燃えていた。

 

広くもなくそれなりの大きさの校庭には、地獄が広がっている。

 

建物は倒壊し、火の手があちこちから上がって、絶えず悲鳴や絶叫が響き渡る。

 

どうやら、俺が寝こけていた数時間の間に、世紀末が訪れたらしい。

 

いや、そうはならんやろ。

 

 

「なっとるやろがい。……って、言ってる場合じゃねぇな。つーか、校庭でウチの生徒襲ってるのってなんだ? 犬?」

 

 

わんわんお! にしては、凶暴というか、真っ黒な体毛とかジャーマンシェパードよりもデカいところとか。おかしな点は山ほどある。それに、数も多い。二十匹くらいいるんじゃないだろうか? ペットが逃げ出して……という線は消えたな。

 

つーか、人間食い殺し……殺してるよな、アレ。血とかメッチャ出てるし、腕とかポロポロしてるし。グロ耐性高めの俺でもリアルゴア描写はキツイものがあるな。目ぇ逸らしとこ。

 

さて、目を疑うような光景から目を逸らし、ついでに現実からも若干目を逸らしたところで、一体全体何がどうなっているのか確かめねぇとな。

 

スマホをポチポチして、SNSに目を通す。すると、出るは出るはグロ満載の投稿が山のように。

 

あのでっかい犬以外にも、ファンタジーゲームでお目にかかったことがあるような化け物残って画像が大量に出てきた。

 

世界規模のドッキリでも、ハロウィンの先取りでもないとすれば、今現在、進行形で世界は大変なこと(直球)になっているらしい。

 

……うわー、まじか。どうすればいいんだ、これ。

 

軽く絶望的な気分になりながらも、俺は突破口を探そうとSNSを高速で漁っていく。下から聞こえてくる悲鳴がいい感じに焦りを加速させてくれるな……!

 

過去最高速の指捌きでスマホをいじった俺は、一つの投稿で指を止めた。

 

動画付きのそれは、一人のなんの変哲もない男性が、手のひらから火の玉を飛ばして化け物を退治している場面が短く切り取られていた。

 

『【朗報】三十歳を迎える前に魔法使いになれたったwww』とイラッとくる文章が添えられた投稿には、様々な反応がある。こんな時にふざけるなと怒り、はなから投稿を信じていない者。俺もやってみたいと興味をあらわにする者。

 

そして――自分も同じように、特殊な力が使えるようになったと語る者。

 

見れば、怪力や念力、中にはテレポートなんていう強力な力に目覚めた者もいるらしい。

 

これだ。

 

直感的にそう思った俺は、急いで特殊能力への目覚め方を探った。幸い、最初のむかつく投稿の主が連続して能力の覚醒方法を書いてくれていたので、時間はかからなかった。

 

だが、問題はその覚醒方法である。

 

 

「……魔物を倒す? はぁ?」

 

 

おいおい、どうなってやがる。化け物……魔物を倒すための力を得るために、その魔物を倒さなくちゃいけないだと? 本末転倒にも程があるだろ。

 

魔物って……今も校庭で元気に生徒の踊り食いをしているあのわんわんおとかのことだろ? あいつを特殊な力なしにぶっ殺せってか? 無理ゲーじゃん。

 

はぁ、つっかえ。突破口が見つかったと思ったらコレだよ。身体から力が抜けて、俺はどさりとその場に寝っ転がった。

 

死ぬのとか嫌だし、何とか生き延びようと思ったんだけどな。やっぱり、モブの俺はここで死ぬのが相応しいってことなのかね。

 

このまま屋上でふて寝していれば、校内に入って来た魔物に殺されるんだろう。わんわんおに食い殺されるのかな。犬っころの餌は嫌だなぁ。できれば死に方ぐらい豪華にしてほしいぜ。

 

つーか、牙で噛まれるとか絶対痛いじゃん。俺、死ぬときは畳の上で家族に見守られながら老衰でって決めてるんだけどー。

 

だから…………ここで終わるわけにはいかねぇんだよなぁ。

 

よっこらせ、と立ち上がって、屋上の隅に近づく。校庭を見下ろせば、動いている存在がだいぶ減っていた。要するに、生徒たちがわんわんおのご飯になっているってことですね。

 

だいぶパーツ単位になってしまっている生徒たちを見ながら、再確認。うん、やっぱりああはなりたくねぇわ。絶賛餌になっている彼ら彼女らには申し訳ないけど、魔物の餌になるなんて『普通じゃない』死に方なんざ、真っ平ごめんだね。

 

それじゃあ、やりますか。いや、殺りますか、だな。

 

魔物がなんだ。見たところ生き物の範疇を超えてねぇ。よーするに強めにぶっ叩けば普通に死ぬだろ? 脳天に石ころを勢いよくぶつけても死ぬだろうな。

 

そら、こんな風に。屋上の隅に転がっているコンクリの欠片を思いっきり振りかぶって……そぉいッ!!

 

 

「…………なーんて、当たるわけないか」

 

 

苦笑いを浮かべ、コンクリ片の行方を見る事すらせず、俺は屋上から見える地獄絵図に背を向けた。

 

今のはアレだ。景気付けというか、願掛けというか……決意表明? まぁ、そんな感じ。

 

知らないうちに世紀末になっちまった世界に向けての、俺からの宣戦布告ってところだな。

 

 

「さて、足掻かせてもらうぞ世界。俺は老衰以外で死ぬ気はな」

 

 

《綾部玲士は[ブラックウルフLv3]を倒した!》

《綾部玲士のレベルが上がった!》

《綾部玲士は特殊行動:『初めてのレベルアップ』を達成!》

《報酬としてスキル:【土魔法Lv1】を獲得!》

《綾部玲士のレベルが上がった!》

《綾部玲士のレベルが上がった!》

《綾部玲士のレベルが上がった!》

《綾部玲士のレベルが上がった!》

《綾部玲士はLv5になった!》

《綾部玲士はSPを10獲得!》

《綾部玲士は特殊行動:『棚から牡丹餅』を達成!》

《報酬として称号:【幸運】を獲得!》

《称号:【幸運】の効果で獲得SPが倍になった!》

 

 

「…………い?」

 

 

突然、頭の中に響いた声。同時に、目の前に現れた半透明の板。

 

俺はちょっとイタいドヤ顔をアホ面に変えて、思いっきり首を傾げた。

 

……………………なにが起こったの?

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