うちのジャガーなら確かにやらかす気がする
アリウスの情報部はクロノス報道部のニュースやSNSを閲覧する為にスマートフォン、タブレット類が置かれている。ジャガーオーグは常識を覚えるのは自分の仕事と言う理論の
その内容の一つについ先日、トリニティとゲヘナの間で『エデン条約』と言う両者の紛争をETOなる中立機構が解決する構想ができたそうだ。これを期に手を取り合うとでも言うのか。
「トリニティとゲヘナが一つになったら太刀打ち出来ないかもね…」
「その為のアズサだ。ティーパーティーを内側から崩し、トリニティを立ち行かなくさせる」
「あ、サオリさん、とその他大勢」
情報室の前なのにアサルトライフルやサブマシンガンで身を固めたサオリ達アリウス生がジャガーを取り囲んでいる。自分に物騒な用がある事は火を見るより明らかだ。
「…勝手にスマホ見てごめん?」
「違う、マダムがお呼びだ」
「ボクなんかした?」
「数日前にミサキ達に爪を突き付けある事無い事吹き込んだそうだな」
サオリは怒りを孕んだ口調でわざとらしい程呑気に見えるジャガーオーグに答える。
「……いちご大福?」
「大人しく着いて来い、さもなくば撃つ」
「はいはい、どんだけ本気なのさ。マダムさんの部屋ね」
おもむろにスマホをアリウス生の一人に押し付けようとするが銃から手を離さない。やれやれと言いたげに床にゆっくり置いて両手を地面に、左足をつま先立ちになるよう伸ばす。
「待て、何のつもりだ」
「先行くよ」
「撃て!」
クラウチングスタートの体勢を取ったジャガーを見て何もしないサオリではない。
「……マダムの元へ急ぐぞ」
「了解!」
───
ステンドグラスの部屋に砲弾か暴走車の様に何かが突っ込んで来た。走る音もブレーキ音も無く、部屋の主の2m前で急停止する。
「お待たせ、早かった?」
「……サオリ達はどうしたのですか」
「置いてきた、遅い。と言うか簀巻きに運ぶとか首輪でも着ける気だったんじゃないの?」
疾走の後なので背を後ろに反り、右腕を左腕で押さえながら体の左に伸ばす、所謂ストレッチしながら答える。相手は口元が見える分表情が分かりやすい。想定外にも怒りで歯を食い縛る様にも見える。
「で、何の用?説教?」
「……先日スクワッドに殺人経験が無いと抜かしたそうですね」
「意志があるから人殺しってそれこそ寝ぼけてる。せめて捕虜をナイフでめった刺しするとか無いの?」
「私が彼女達に居場所と存在意義を与えた、故に私の教育こそが正しい、口答えしてはいけません」
「マジで殺す時大丈夫?手間掛からない?と言うか殺した実績ある?」
「……ヘイローを破壊する爆弾があります。例え相手が強かろうとその一発で仕留める事が可能です」
「…それをトリニティにポンポン投げたら軽く地獄になりそうだね」
銃よりも一度に相手を多く巻き込んで殺せるだろう武器である。それなら感触は違うが真の人殺しには成れそうだ。
「殺せないのに粋がってるアホじゃないのは納得した。でもここのモチベ大丈夫?殺すのが楽しいとか喜びって教えた方がいいんじゃないの?戦って死んだらヴァルハラ的な?」
「Vanitas vanitatum. et omnia vanitas.喜びも悲しみも虚しく意味が無い。戦闘に栄誉すら必要ありません。ただ憎悪をトリニティに向け、私の為に動けばいい」
ジャガーオーグはSHOCKERとの違いを改めて理解した。SHOCKERは上も下も幸福に包まれ、上級構成員の幸福の為に動いている。しかしアリウスはベアトリーチェと生徒は意志を共有していない。構成員が捨て駒なのは似ているが、彼女の目的が見えない以上いくら働いても誰の幸福にも繋がらない。
「最終目的は?」
「ジャガーオーグ!」
ようやくと言うべきか、サオリ達がこちらに追い付いた。短い時間でほとんどの生徒が肩を上下させてないのは地味にすごいとジャガーは思っている。
「後にして、今説教中」
「マダム、本来この場に同席しジャガーオーグを尋問するべき所を取り逃がしてしまい、大変申し訳ありません」
「別に謝る事ないよ、ボクはちゃんといるから」
「貴様には言っていない」
サオリは銃を握る力を強くした。先日の件と合わせて怒り心頭になるのに十分過ぎた。
「落ち着きなさいサオリ」
「しかしマダム、この者はスクワッドやマダム自身にも……」
「二度はありません」
「……はい」
サオリ含めてアリウス生達が一歩下がる。
「で、どうする?余計な事を言ったから懲罰ならめんどい、また逃げるよ。殺せるのには納得したから終わりにしていい?」
「私の教育を愚弄した者に示しを見せないで済むとでも?」
「その時はボクの話を聞いて造ろうとしているナニカをブッ壊してトリニティに鞍替えする。」
「それが貴方ごときに出来ると?ただの強化兵士の分際で」
「逃げ切る位余裕。じゃなきゃ今頃ホントに簀巻きになってるでしょ?」
「大口を叩いた所でアリウスの包囲を逃れられる筈がありません。大人しく懲罰房に入るのなら……」
「それを宝の持ち腐れって言うの。今度は潜入任務とかやりたい。堂々と観光客のフリしてトリニティの地形見るとか」
「貴方の勝手な行いの為に与える仕事はありません」
つまらなそうにジャガーはサオリの方を向く。
「じゃあサオリさん、トリニティのどの辺の情報があると助かる?」
「黙れ。私に話し掛けるな」
「残念、結果出してトリニティに貢献できるのに。気が変わらない内に仕事くれないと寝返っちゃうなー」
「……サオリ、スクワッドとジャガーオーグの作戦を共有させなさい。」
「良いのですか?」
「代わりにジャガーオーグ、生徒との必要以上の会話を禁止。違反すれば貴方の購入した物品を全て処分します」
「マジかー。普通に喋らなきゃいけない時は遠慮しなくていいよね」
「その分には構いません」
「普通のジャガーのフリして何処かに潜り込む時は?」
「作戦行動時には必要に応じた行動を取りなさい」
サオリは忌々しそうに反論を飲み込み、ジャガーオーグはこれから楽しくなりそうと言わんばかりに浮き足立っている。
「貴様、何を考えている」
「ミレニアム以外も散歩したいしついでに役立てばいいかなと」
「ふざけるのも大概にしろ」
「じゃなきゃこんなつまらん所に居られないよ、ふざけてんの?」
サオリは銃を握る手をさらに強くするがベアトリーチェの前で勝手な行動は出来ない。それにジャガーが気付いたのか浮わついた態度を納める。
「…じゃあ失礼するよ」
これ以上刺激しない様にそそくさと立ち去る事にした。
「待て!」
「放っておきなさい」
「あの様な者を好き勝手させて良いのですか」
「サオリ、スクワッドに彼を排除する力はありますか?」
「……難しいかと。奴の機動力、瞬発力、空間識別力、ヘイローが無いにも関わらずある程度の耐久力、数を揃えての戦闘ならば排除の可能性はありますが逃走に徹すれば追う
サオリは己の不甲斐なさに歯噛みする。彼の話をする度に爪を突き付けられるアツコの姿がリフレインしてしまう。
「排除するなれば簡単な方法があります。彼と同じ存在、オーグメントを作りぶつける。不十分ではありますが彼の装備の構造、エネルギーの理論は把握済み。それを適当な生徒数人に施術すれば能力の差を埋めて一方的に対処可能でしょう」
その理論にサオリは驚いた。彼程の戦力を量産可能な事実とそのような部隊があれば戦闘を有利に進められる将来に。しかしそこまでの能力を再現する技術はアリウスにあっただろうか。その疑問はマダムを疑う事になる為飲み込んだ。
───
何処とも知れぬ部屋の中、手術台に横たわる物、いや者があった。人型ではあるが特殊部隊の様な服装にプロテクターを纏った胸部、黄色のネックカバーにその頭部は髑髏とも昆虫とも取れるフルフェイスの黒いマスクを被っている。全身にはチューブや電極など繋がれて末期の病人にも見える。何より奇妙なのは、腹部には前方のみ千切れて無くなったベルトが巻かれ不自然なスペースが広がっている。その人型は赤い複眼でただ虚空を見つめている。
不意にピクリ、と右手の指が動いた。が、更なる動きに繋がる事は無かった。
ベアトリーチェがこんなに下手に出るのが書いてて不安になったのでアドバイスのある方は感想をどうぞ
一旦話数を貯めたいので次回の更新をしばらくお待ちください
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