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「本当に問題無いだろうな」
「何だよ、そんなに信用出来ないの?」
「貴様を信用した事も信頼した事も無い」
「ひどいなー」
アリウスのとある部屋でサオリはジャガーオーグに鋭い視線を向けている。件の彼は戦闘用のファーのジャケットでは無く、サーバルを中心としたアウターで揃えている。どこから見ても軽い気分で来た観光客にしか見えない装いだ。
「作戦振り返り、観光客の堂々と見られる視線から大聖堂、図書館、遠目からの校舎、その他諸々を怪しまれない程度に写真に撮る。アズサちゃんに会っても必要以上関わらない。合ってる?」
「騒動には関わらない事も忘れるな」
「トリニティの最強がいても?」
「接触は許されない」
流石に正義実現委員会に関わる事態は不味いだろうとジャガーは考える。C&C以上に厳しく目を付けられ、顔が割れる危険もある。何よりベルトが目立つので取り外した。もしもの為にリュックサックに入れているが咄嗟の戦闘には対応出来ない。エネルギー源である以上はアリウスに伝えていないが、戦闘力のキーでもあると知られたら困る。ここは大人しく従う事にした。
「今回はボクだけなのは仕方ないよね、みんな楽しみ方を知らないんだし」
「正面から侵入する考えは悪く無いが得られる情報も限られる、トリニティを攻略するには足りないだろう」
「何か一つ分かるだけでもラッキーって事でいいでしょ」
相変わらずマイペース思考だが、怒りを納める。その存在が気に入らないが、寝返って敵になるよりかマシだと言う考えである。
「じゃ、行って来る。お土産に欲しいのは?」
「ただ任務を遂行しろ」
「真面目すぎて怪しく無い程度にねー」
───
カタコンベから怪しまれない場所に抜けて、バスを乗り継いだ先は、
「ネルちゃん、ここに来た事ある?」
≪ねぇよ、初めてだ≫
巨大な学校とは言え、他の学生は内部をほとんど知らない。適当なトリニティ生のプラーナを奪ってマスクに移しても敵のアリウスには情報を教えない。大まかな地形だけならマップアプリで見られるが、学園の情報には機密もあり詳しくは分からないと来た。自分の目とスマホのカメラで見るのが無難だろう。ひとまず観光客らしく人の流れに乗って大聖堂まで歩く。
そうして猫や犬、ロボットや休みだろう生徒に紛れ入った聖堂は派手な装飾は無いが荘厳にして清らか、『彼女』とよく行った日本の教会よりも当然巨大である。ただ、礼拝は長い事行って無いから作法やマナーがうろ覚えなのは心配だ。
「ちょっといい?ボクここに来るの初めてだけど大丈夫かな?」
「はい、この場所は生徒以外のどんな方にも開かれているので気軽に入れますよ」
「OK、ありがとね、尖ってるシスターさん」
「尖ってる?」
ベールの頭頂に何か入って尖ってる三つ編みのシスターに礼を言い、空いている長椅子に座る。両隣に座った猫と犬の人達と比べると、身長差が大きく違和感がとてもあるのは目をつぶる事にした。始まる前にシスターにもらったリーフレットで神の言葉を眺めて待つ。見覚えある言葉がある以上別の世界でも教えは変わらないようだ。
「皆さん、此度の礼拝にお集まりいただきありがとうございます。シスターフッド代表、歌住サクラコです」
しばらくして壇上に他と雰囲気の違う銀髪のシスターが現れた。牧師でも神父でもなくシスターが代表なのは管理しているのが『シスターフッド』だからか。それにしてもティーパーティーといい生徒の力が強いと思いながら、周りに合わせ讃美歌や教典の一節を読み上げ、祈りのポーズを取る。忘れていた事の方が多いが、何だかここは覚えてる、昔やったのを思い出したとか不思議な感覚がある。そうこうしてるとサクラコの説教が始まった。エデン条約締結から教典の一節を引用して、要約すると敵を愛して自分や周りを豊かに出来るという内容だった。長いので飛び飛びに覚えていたが間違って無いはず。退屈を感じたなら神父や牧師の道は自分には遠いだろう。そして祈りで締めてお開きとなった。
≪ネルちゃん、何か祈った?≫
≪あん?そうだな……あたし含めて
≪ボクは楽しく見て回れますようにかな≫
≪呑気なヤツ≫
「はいはい、さっきのシスターさん、ちょっといい?」
「はい、何でしょう?」
「ボク、トリニティ来たの初めてだけど面白い場所ってある?」
「え?そうですね……トリニティ・スクエアと図書館には行かれましたか?」
「これからだけど、知られていない穴場的な所とか」
「そう言われましても……公園などはいかがでしょう」
「公園?」
「外郭に景観が良く休める場所があります。そこなら気に入られると思いますよ」
「なるほど、ありがとう」
ともかく校舎に近い場所や時計台など高い建造物で地形確認に向かい、後で公園に行く事にした。
───
時計台は校舎から離れた場所にあり、ロンドンのそれよろしく内部を登る事もできる。見渡せる範囲で写真を撮ればいいのだが問題がある。貸し切りか何かなのか入場出来なかった事だ。入場可能な高い場所は多くないので他の場所を見回って写真を撮る。堂々と撮っても案外声を掛けられず続けていたら、横から近づく気配があった。
「ごきげんよう、少々お時間よろしくて?」
「何の用?ティーパーティーの人達で合ってる?」
白い制服にベレー帽の生徒二人が声を掛けて来た。聖園ミカ達と似た衣装で下調べの内容と一致してる以上間違いなさそうだ。
「貴方はジャガーですか?」
「そうだけど?」
≪素直に答えんなオイ≫
「百合園セイア様からの指示です。私達に同行して頂けますか?」
「任意同行ってヤツ?忙しいからヤダ」
「っ!大人しく……」
「ダメ!相手を怒らせてはいけない!」
話しぶりから夢の内容が脅威として伝わっている。本気でそう思われる以上その信憑性が高く正直舐めていた。このまま長居しても面倒なので退散する。
「じゃあ失礼するよ」
「ちょっ、待っ……」
シスターに教えられた公園が丁度いいとそこまで逃げるよう立ち去り、その数分後にはガゼボのベンチで壁にもたれて座るジャガーの姿があった。
≪あんた、あそこは違うって言えよ≫
「なんかつい、ごめん」
≪ナントカって組織にいたのに呑気すぎだっての≫
「気を張らなくていいからね、大事な物も無いからだけど」
≪大事な物の為なら真面目にやるみてぇな言い方だな≫
「そうだよ、一番嫌な時期」
景観を見ながら黄昏る様にジャガーは休む。流れる雲、そびえる時計塔、歩く人々、まだ見ていない場所はあったかと考えてみれば銃声が静けさを破壊した。
「どけどけどけー!」
「今からここはウチらの縄張りだ!」
マシンガンやミニガンを態度の悪そうなスケバン共が撃ちまくって、楽しんでいた一般人が逃げ回る。彼女らの武器は立派だが実力はスクワッドに遠く及ばない、鎮圧も可能だが正義の味方をする為に来た訳では無い、咄嗟に取り出したベルトでプラーナを飲み込んだがどうした物か。
「オイてめぇ、そこをどきな」
「今なら有り金全部くれれば見逃すぞ、あ?」
と、考えている内にこちらまで来ていた。そんな状況にため息が出る。
「あのねぇ、君達猛獣舐めすぎ、そっちこそ痛い目見たくなかったら帰れば?」
「ギャハハハ!何だコイツ、猛獣だってよ!」
「ウチらに囲まれてハッタリもほどほどにしろよ!」
「…試してみる?」
ガゼボを囲む連中に一撃ぶちかまそうと立ち上がり、スケバンの一人が引き金に指を掛けた瞬間、彼女の背中から衝撃音が響いた。
「ギャッ!」
「何だ?!」
「狙撃だ!」
狙われた事に気づいた彼女らは隠れ逃げようとするが、また別の方向から射撃されミニガン持ちが倒れた。
「正実が来たぞ!」
「ウソだろ、巡回ルート確認したのに?!」
公園入口近くには遠くから見える程大きな翼の生徒が、こちらを狙い撃ちしたのが見えた。それに続き黒いセーラー服の生徒達が一斉掃射で残りを片付ける。そうして猛獣を仕留めるどころか何も成さずに全てが終わった。ガゼボに隠れていたジャガーは様子を見ながら外に出て、スケバンを連行する正義実現委員会達に顔を向ける。
「なんか助かった、ありがと」
「いえ、ティーパーティーの方から伝言があります。危害を加える気は無いから安心して欲しいと」
長身の委員の一人の一言に驚く。ティーパーティー経由で委員会に目を付けられるとは思わなかった。
「…もしかして時計台貸し切りにしたの君達?」
「何故それを?」
「狙撃の方向からね、ずっと見てた?」
「それは……」
スケバンが哀れな目に合った理由が分かった。最初から同行を監視されていたからだ。帰りのルートは考え直しだが、それはそれとしてやりたい事がある。
「時計台入りたいけどいいかな」
「……少々お待ちください」
───
何処かに連絡を始めて数十分後、時計台の展望部分に登る事が出来た。先程の公園が見えるなら腕のいいスナイパーが一人ずつ撃ち抜く事も可能だろう。ヒヨリには戦闘時に有利な場所を確保してサポートする事を考える。それでも何でこんなに手厚く助けるのか、めちゃくちゃ働かせるのかと泣き言を言われそうだ。
「いい景色だね」
≪なぁ、あの正実とかティーパーティーのヤツら、あんたを狙っていたのに気抜いてんじゃねぇよ、今までよく生きていたなオイ≫
「多分、真面目な人が一緒じゃないと生きていけないんだよボクは」
≪それであたしにお
「サオリさん達もいるし、マダムさん…あれはおちょくるぐらいが丁度いいね、うん」
カシャカシャと写真を撮りながら答える。呑気でも仕事はこれまでも真面目にこなして来た。今もそこは変わらないと思っている。
「君こそ真面目なの?自分の事に」
≪……遅刻とかしょっちゅうだよ悪りぃか≫
「やっぱり?」
≪何だよ舐めてんのかコイツ!≫
「思った事全部出してごめん?」
≪なんだこの呑気ジャガー野郎!≫
ともかく任務は達成している。いつでも賑やかにいられる楽しさとトラブルに遭遇したスリルを胸に飽きるまでここにいる事に決めた。
───
トリニティの敷地を見渡せる長い机の置かれたテラスに幾人かがいる。
「申し訳ございません、セイア様」
「いや、君達の判断は間違って無い。強硬手段に移ればここで報告する事が出来なかっただろう。それだけ危険な相手と認識した方がいい。それと、ミレニアムのC&Cについては?」
「はい、美甘ネルを始めとして全エージェント欠ける事無く活動しています。これと言って不審な様子も見受けられません」
「そうか……。事は重大だ。彼はトリニティに関わり大きな影響を及ぼす。その事は何なのか言えないが、十分に気を付けたまえ」
「承知いたしました」
日の沈むテラスにおいて、百合園セイアは時計塔の方向を憂いを帯びた表情でじっと見ていた。
実はマシロが監視の為に時計塔でスタンバっていました
キヴォトスの人は銃で死なないけど、プラーナを奪われるのに耐性は?チョウオーグが暴れたら…
アリウス生徒は戦闘後の報告書はどれだけ書けそう?
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学習してないから無理
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そもそも報告書を書かなくていい
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小学生の作文レベルで書ける
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新卒社員レベルで書ける
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しっかりした報告書を書ける
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