オーグメントと青春   作:鳥鍋

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アリウススクワッドの個別の話が作れない…
エデン条約終わらないと書けないかな…


復讐者ですら無い

 

数日前に連邦生徒会の作り出した連邦捜査部『シャーレ』に『先生』が就任したとの事だ。学園問わず部員を集め、各地の問題を少しずつ解決しているらしい。そうなれば混乱のどさくさに紛れた略奪や工作と言ったアリウスの活動を縮小せざるを得ない。任務は有るには有るのだが、ジャガーオーグに現在必要な技能は無い。詰まるところ、食客である彼は暇をもて余していた。

訓練場で走り回るのは飽きたし、アリウスの生徒がしている『勉強』も、殺し方だの戦術だの兵器の使用方法だのと同僚のマスクの顔がちらつく事ばかり、自分と相性悪い。買った本も読み飽きた。せいぜい適当な場所であくびをして、他人に知られてない同居人と話をする位だ。

 

「ネルちゃん、面白い話無い?」

≪いきなり振ってくんなよ≫

「で、どうなの?」

≪任務でブッ潰した話しかねぇぞ≫

「じゃあそれで…誰か来たっぽい」

 

独り言にしか見えない会話を続ければ不審、切り上げて後ろからの足音に振り向く。

 

「…なんだ、アツコちゃんか」

 

ジャガー以外誰もいない礼拝堂に一人で来たのか、彼女だけだった。彼を認識したからか数秒足を止めるが、そのまま少し離れた席に座った。

 

「…」

「……」

 

座ったまま十秒経っても何も始まらない。二十秒、三十秒、何も話し掛けて来ない。ただ座りに来ただけなのか。一分半の沈黙に耐えられず、ジャガーオーグは口を開く。

 

「何しに来た?」

 

こちらに首を向けるが、返事は無い。こんな時の為に手話を勉強したが、会話出来る程語彙が覚えきって無い。それなら何も話さない方が楽だ。

 

「必要以上は会話禁止…だったね。…ここからは独り言、返事はいらないしただ喋るだけなら会話じゃない、いいね?」

 

返事は無く肯定とも否定とも取れない。止める素振りも立ち去る様子も無い以上遠慮はいらないだろう。

 

「前から思ったけどさ、ここはトリニティ憎しで復讐するって言うよりマダムさんの言う事が絶対って感じだよね、ボク関係ないけど」

≪あんたはもう、どうでもいいって思われてるんじゃねぇか?≫

≪失礼な≫

 

返事は無いが、こちらを向いたままだ。

 

「それでトリニティなんてどうでもいいって人もいないよね、かと言って殺したい、血を見せろって人も」

≪いいか、あいつらに根っからの殺る気なんてねぇ、あの女に従ってそうしてるだけだ≫

「なんかヘイローを壊す爆弾があるらしいけど実験でもしたのかな?トリニティの生徒を誘拐したとか、前にあった内乱で捕まった捕虜とか?」

≪そりゃねぇよ、そうだったらもっとトリニティは殺気立ってる≫

「調べたら本格的にマダムさんに狙われそうだから今のはナシで」

 

相手の表情はマスクで読み取れない。幸運なのか地雷になる一言はまだ言ってない様だ。

 

「元々トリニティ殺す、マダムが邪魔してもマダムを殺してトリニティも殺してやる!って所じゃないんだよね、なんと言うか…制御されてる?殺意を?」

≪そんな奴らあたしでも会いたくねぇ≫

「マダムさんの思い通りに動かされてる?そしたらアリウスで何がしたいのか分からん…絶対アリウスが得する事じゃ無いと思う」

 

念の為に匂いや音で他に誰かいないか確認したが気配は無く、()()()()聞かれていないと見た。

 

「虚しいって言ってるけど、モチベーションどうなの?楽しみ無いと続かないでしょ?…トリニティ生公開処刑ショーとか、は完全に蛮族だね、今のナシ」

≪……ねぇよ、んなモン完全に戦争だろ≫

 

同居人にドン引きされてしまった。人を憎んで殺すのはそういう事では無いのか。自分ならそうした。気が済むまで、いや気が済まなくて一族郎党を本気で実行したが。

 

≪……マジかよ≫

≪マジだよ!…そのツケで関係ない汚れ仕事もしたけどね≫

 

SHOCKERからDESTRONに編入されたのが運の尽きだった。でなければただ『彼女』に会うのを待つだけの日々だったのに。

 

「これからトリニティ生を殺す作戦があるんでしょ?人殺しの先輩がここにいるよー」

≪……ヘラヘラ言うんじゃねぇ≫

「相手の命乞いは怒りと憎しみのスパイスになるよ!殺すの大好きとかじゃなきゃいきなりサクッと殺るのがオススメかな、トラウマになるかもしれないしね」

≪てめぇいい加減にしろ!≫

「それで『殺した』を実感したら良くも悪くも意味を思い知るよ。…それとアツコちゃん以外の誰か聞いていると思うけど感想はいかが?」

≪は?≫

 

マスクの中のネルはすっとんきょうな声を上げた。彼の思考と言動に感情が定まらない。

 

『ジャガーオーグ、私の教育にふざけた事を抜かさないでください』

「どこがふざけてる、マダムさん?」

 

アツコの持っていた通信機から立体映像が飛び出した。その横から聞いていた正体はベアトリーチェその者だった。機械の駆動音は聞こえていたのに口が止まらなかったが、まぁいいだろう。

 

『殺す事はあくまで手段でしかない。そこに楽しみを見いだし、勝手な行いに移る事は許しません』

「…喋っていい?」

『何です?』

「結局ボク含めてアリウスに何して欲しいのさ?」

『ただ憎悪のまま動きなさい。そうしてトリニティに復讐すればいいのです。人殺しの貴方もここ以外に居場所など無いでしょう』

 

それを聞いて急に思った事がある。

 

「マダムオーグも人殺しだから他に居場所が無いの?生まれながらの殺意を持ってて?」

『……それは必要な情報ではありません。ただ私の命令に従いなさい』

「ははは、食客にはそんな義務なーし。人殺しでも幸せになれるのがSHOCKER、見習ってみたら?」

『不要です、幸せなど彼女らにはいらない』

 

SHOCKERとアリウスでは与えられる物が違うらしい。

 

「マダムさんも幸せになりたく無いの?」

『幸せとは搾取するもの、その意味なら私の為にアリウスが働く限り幸福です』

「…給料にその幸せくれない?」

『食客にそれを渡す義務も私にはありません』

「こりゃ一本取られた」

≪はっ、なんだそりゃ≫

 

わざとらしく肩をすくめる。自分が相手に適当なら、向こうから敬意を払われないのも当然ではある。

 

『ジャガーオーグ、敵を殺したいと言うのならば作戦に従いなさい。楽しむ事は許しませんがトリニティやゲヘナを殺す事なら出来るでしょう』

「殺し自慢なんかしてない、罪の無い人を手にかける瞬間は嫌だった。マダムオーグもそんな事命じるつもり?」

『トリニティはアリウスにとっては罪深い存在。邪魔な相手であれば当然の事でしょう』

「それ元の上司みたいでヤダ!食客に恨み関係ないし、労働環境の改善を求めまーす!具体的には時々遠出してツーリングとショッピングの自由を!」

『却下します。C&Cと正義実現委員会に接触した時点で単独行動に信用が置けません』

「じゃあ早くキヴォトス統一してベアトリーチェ王国でも作ってマダムロードとかマダムハイウェイでも建設してくれない?」

『……貴方は何を見据えているのですか』

「え、天下統一するんじゃないの?それが幸せじゃなくて?」

 

雑に目的を決め付けて見たがそうでも無いらしい。野望は思ったより大きくなさそうだ。

 

『いいえ、今あえて目的を言うなれば『崇高』へ至る事、とでもしておきましょう』

「それがマダムさんの幸せ?」

『大人の義務です』

 

トップが幸せを重視してない上に、目的を共有していない。それでは自分と行動指針が噛み合わなくて当然だ。

 

「めんどくさいね…SHOCKERの方が十倍楽だよ」

『そのSHOCKERも個人に力を与え好き勝手にさせる組織としての体裁も取れない唾棄すべき物では?』

「DESTRONはより権力があるヤツが幹部(ボクら)を適当に組ませて命令してるから纏まりはあるよ!」

 

敵に組織を食い荒らされたからこそ編成され、こき使われた。仮面ライダーも恐るべき敵だが、上司の命令に従わざるを得ない状況が一番嫌な時期だった。

 

≪一応あんたも苦労してたんだな≫

「まぁね、最後に一つ許可して欲しい事があるけど」

『自治区を抜け出す事は許しません』

「違う違う、訓練場でサイクロン、バイク走らせていいか聞きたいだけ。D.U.とか百鬼夜行を覗きに行きたい訳じゃ無いよー」

『バイク走行は許可します。作戦行動外で抜け出せば罰則を下す事を忘れない様に』

「暇潰しが他に無いのはどうすりゃいいのさ?」

『真面目にスクワッドの行動に従事しなさい。でなければ時間をもて余すなど有り得ません』

「報告書とか書くの飽きた」

『……自分の役割を果たしなさい。何の為にアリウスにいるのですか』

≪言われてんぞオイ≫

「…偶然拾われたから?気が向いたらサオリさんのとこに行くよ」

 

後半怠けるなと言う正論に聞こえるのは気のせいだと自分に言い聞かせる。

 

『……これ以上アリウスに悪影響を与え邪魔をしない様に。さもなくばただの罰則では済まない事を肝に銘じなさい』

 

歯ぎしりを見せながらベアトリーチェは通信を切った。残ったのはため息をして立ち上がるジャガーとその様子をつぶさに見ていたアツコだけだ。彼女に通信を担当させたのは自分の発言を引き出す為だったのか。

 

「ふぅ、お目汚し失礼しました。ちゃんと通信切れてる?…このいちご大福!全身更年期障害!顔半分吹き出物!」

「……なんで彼女の前でそんな態度が取れるの?」

 

唐突にアツコがマスクを外し、通信機に罵倒したジャガーに神妙な表情で問い掛ける。

 

「…喋れるんだ」

「あなたに答えてもらうならこうしないと」

「ざっくり言うと教育は受けても意味無いし、何かされても倍にして返せるからかな」

「……ちょっとズルい」

「流石にアリウス全部が本気で殺しに来たら死ぬよ、逃げ切れるか不安」

「トリニティに行くんでしょ?あなたには他に居場所が作れる、なのに何でここにいるの?」

 

顎に手を当て5秒してから答える。

 

「不安、だからかな。戦争でも復讐でも否定しないよ。でも関係ない人も巻き込むのは最悪。SHOCKERの技術でやらかそうともしている。そうしたらボクも君も幸せになれない、今更だけどね」

「止められるの?」

「無理。トリニティ壊して神聖アリウス帝国でも作って幸せに暮らしました、って出来ればいいけどあのいちご大福にそんな気が無いなら辞表でも叩き付ける。そもそもあんなのの所で働いて何かくれたの?」

「今の私に、サッちゃん達に会えた。その事は感謝している」

「…似てるのかな、ボク達。サオリさんみたいな仲間はボクにいなかったけど」

「……」

≪似てるってどこがだよ≫

≪変な奴に不幸に漬け込まれて洗脳喰らって戦う力を手に入れた事≫

≪その割に呑気すぎだろ≫

≪今は人質も弱味も握られてないしね≫

≪そしたら本気で殺るってか?≫

≪ノーコメント≫

≪……殺るんだな≫

 

アツコが思い詰めてる前で、器用にマスクのネルに共通点を答える。

 

「それと、殺すのを楽しみにするって聞いてどう思った?」

「私は、そうはなれない。他の人もただ言われたらするだけで、わざわざ楽しんだり遊んで殺そうとは思わない」

「ボクも楽しんでた訳じゃ無いけど、楽しく無いのに殺したら断末魔と返り血がこびりついて…虚しいと思う。必要な時以外は誰でもを安易に殺さない方がいいよ」

「……楽しかったら殺していいの?」

「幸せだと思っていた先輩方がいた。だけど元々条件が違う、同じになる必要はないしボク達にはなれない」

 

そう言ってジャガーオーグは出入口に進み、一度だけ振り返る。

 

「話をして分かった。君達は憎悪があるだけ、ただの兵士で道具だ。仕返しする欲望や元の幸せを知らないから復讐者ですら無い。仮に君の仲間が殺されても何も感じなかったら大義名分はもう無いよ」

 

じゃあね、と一言そのまま通路に向かって歩く。去って行くその背中をアツコはマスクを外したまま見送っていた。




アズサのスクワッド在籍時(ミカが来るまで)とミカ来訪、セイア爆破(本編一年前)の時期ミスしたかも…
ジャガーのアズサ初対面のタイミングあそこで良かったのか…

アズサのスクワッド在籍時期とジャガーオーグの初対面に違和感・矛盾はある?

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