オーグメントと青春   作:鳥鍋

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今回のエピソードの修正ができました


幸せじゃない報告

 

『ねぇ□□、退屈じゃない?』

『だめ、最後まで話を聞いて』

『□□もあくびしてるし』

『…してない』

『いっしょに行こう?』

『こら、今は我慢しなさい。あなたがお兄ちゃんなんだから』

『□□のお母様、後で遊んでいい?』

『牧師さんのお話とお祈りが終わってからですよ?』

『□□、何したい?』

『…公園。大きいあそこ』

『いいね、池見よ池』

『また■■だけはしゃぐんだから』

『送ってあげるから静かにね?』

 

───

 

「……ろ。起きろ!ここで寝るな!ジャガーオーグ」

「ん、ぅん…。くぁ…」

 

自分は何をしていたんだったか。確か、公園にこの後遊びに、その前に報告書を書く?と思考して目が覚める。

 

≪あんたにもあんな時期あったんだな≫

「…寝てた。今何時?」

「他のメンバーは報告書を終わらせた。後はお前だけだ」

「ボクだけ多いのおかしくない…?」

「貴様の書く物は文章量と正確性は優れている」

「これ位普通だよ?」

「……私達が教育された以上に報告書としての質が高い事は認める。SHOCKERで身に付けたのか?」

「君達の報告書こそ…小学生が頑張ったレベル?もっとマダムオーグに正しい書き方教えて貰った方がいいんじゃないの?」

「貴様が考える事では無い、手を動かせ」

 

机に突っ伏した状態からサオリに促されて渋々空いている欄に続きを書き始める。

 

「にしても、以外だな。寝ている間に縛り付けるとか脳天ぶち抜くとか」

「必要以上の会話は禁止だ」

「はい質問」

「今は受け付けない」

 

つまらない作業の途中にはくだらない話をしながら続けるに限る。その相手がつまらないなら続けるモチベーションも無くなるが。

 

≪じゃあネルちゃん、報告書ってどうしてた?≫

≪あん?そんなのテキトーにぶっ壊したって書いといた。いっつもセミナーのユウカが怒っていたけどな≫

≪苦労してるんだね、ユウカって子は≫

≪あんたを見てるとつくづく思うな≫

≪どういう意味さ≫

 

古いペンを握る手を緩めて沈黙の中会話する。思考だけで話すのも慣れるようで慣れない。思い付いて言葉になれば何でも伝わってしまう。

 

≪最初は変な事考えるとそのまま伝わって引かれると思ったっけ、エロい事とか≫

≪もう伝わっているっての、血生臭せぇ事が≫

≪ボクをどう思ってる?≫

≪復讐のツケにまた言いなりになって殺すなんてバカのやる事だろ?≫

≪あの子にまた会うのにボクも我慢してたのに≫

≪あんた、一途なのはいいけどよ、そいつ含めて周りのヤツ考えた事ねぇだろ≫

≪目覚めた時にはまたイチから幸せな人生を送らせてあげたいってずっと考えてた≫

≪だからってあんなの……アレは、人を殺すってのにも限度があるだろ!どうしたらあんな風にしちまえるんだ!≫

≪どの時かな?≫

 

四肢をみじん切りにしてそれらやくりぬいた目玉を食わせた時?医学の本を読みながら痛みが一番大きい方法を実験した時?それの家族を目の前で三枚下ろしにしてから…。

 

≪やめろやめろやめろ!!もう見せんな!≫

≪彼女は人の尊厳を奪われた。あのカス共には当然の仕打ちだ。エージェントの仕事をしているなら見た事無いの?そんな悲劇を≫

≪……ねぇよ。そんな事できちまうヤツなんていてたまるかよ……≫

≪アリウスならやってもおかしく無いかもね…≫

 

目を閉じて見られるネルの表情と声がしおらしい。自分の様な屍を作った事はミレニアム最強でも無いのか。前に見たニュースで死亡事件のしの字すら無かったからヘイローを持った人は死ににくいらしいがこれ程とは。

 

「おい、手を動かせ」

「質問に答えたらねー」

「この……早く言え」

 

虚空を見つめて再び手が止まったジャガーにイラつきながら質問を待つ。

 

「もしもだけど、目の前に縛られたトリニティ生がいたらどうする?復讐?拷問?」

 

虚を突かれた様にサオリは目を見開く。

 

「……そんな状況罠に決まっている。監視、狙撃可能な範囲を捜索して敵を排除だ」

「そういうのが全部終わったら?」

「……ひとまずマダムに判断を仰ぐ。私の一存で決める事ではない」

「復讐したいんじゃ無いの?」

「利用価値があるかも知れない」

「公開リンチとか?」

「トリニティに向けてか?」

「血と断末魔見たくない?トリニティの全部奪って飢えさせたく無いの?」

 

表情と感情をリセットさせてこの一言を放つ。

 

「Vanitas vanitatum. et omnia vanitas. どこまで行っても、全てはただ虚しいだけだ。そんな物に意味は無い」

「…やる気ある?復讐の。ボクはそれでSHOCKER入ったけど」

 

安全装置を外す音が聞こえる。ジャガーの反応の範囲内だが、拳銃を素早く構えられるならアリウスの実力者なのも納得だ。

 

「黙れ!トリニティこそ全ての元凶、のうのうと暮らしている奴らを引きずり下ろすべきだ!」

「はいはい、報告書ガード。虚しいと憎悪と復讐が噛み合わないのもその後どうしたいが無いのも中途半端。どうせなら奪った有り金でスクワッドみんなで豪遊…」

 

全てを言い出す前に銃声と報告書越しでも見える青いマズルフラッシュが会話を中断させた。二発目からは紙面の右側に空いた風穴で直に見られる事だろう。

 

「…顔かすった。その銃は友達に向けるモンじゃ無いよ」

「貴様を友と思った事は無い」

「じゃあ…最低限仲間として言っとく。だいぶ復讐に意識の差があるよ、足並み揃えなくて平気?」

「マダムに従え」

「マダムさんはトリニティ恨んでる?それこそ足並み外れてない?」

 

サオリは報告書だった紙切れを奪い取り、ジャガーのマスク額部分に銃口を突き当てる。そこから引き金に力を加える。

 

「リーダー!」

 

発砲に至る前にミサキの声でその指を止めた。スクワッドの三人がこちらに走って来る。

 

「うわぁぁぁ!ジャガーオーグさんを撃たないでください!ここで撃ったら苦しみながら暴れて手が付けられません!」

「アイツは言動はともかく厄介。敵に回す位なら手を出さない方がマシ」

 

ヒヨリがサオリの手を横から掴み、ミサキが冷静に脅威を告げる。アツコはジャガーの前に割って入る様に立つ。

 

「なんか…無駄に刺激してごめん」

「……今はアズサの件もある。表立って行動には起こせない」

「結局…血を見て殺したい?YESかNoで」

「……どうだろう」

「二人は?アツコちゃん以外」

「私は……痛くて苦しいんだろうなってだけで……それ以上考えた事は……」

「作戦ならそうする。それ以外ならわざわざやる意味は無い」

≪ネルちゃんは?≫

≪あたしはこれに関係ねぇだろ!≫

 

スクワッドの意思は理解した。何を捨ててでもという自らの狂気を抱えておらず、実行より先に支配されているのも自分と違う。かと言って引き止める理由も無い。幸せのおこぼれをもらえる可能性も絶無に等しい。

 

≪ダラダラ続けてあの赤いのの言いなりになるってのか?≫

「せめて、君達がどうなるか関わった以上見ておきたいかな」

「知った事か」

「あと、全部終わってもマダムオーグが最終的に何もくれなかったら、幸せ見つける手伝いしてくれる?」

「幸せを騙るな!」

 

サオリ達にとっては幸せは忌むべき言葉である。知ってか知らずか怯まずに続ける。

 

「ボクの幸せだから君達と関係ない、今の、だけど」

「あの、幸せって何ですか……?」

「どうしても会いたい子に、そこに帰れば絶対幸せになれる」

「帰る?」

「言って無かった?ボクはキヴォトスの出身じゃないって」

「それが何だ」

「退職金の代わりに協力して?」

「退職……マダムに聞け」

「そう…騒がせてごめん」

 

食客に退職金はあるのか自分でも引っ掛かりながらその場を離れる。

 

「待て」

「ん?」

「報告書を最後まで書け」

「…穴の空いたそれを?」

 

自分が書いた物は盾にしたせいでサオリにメチャクチャにされた。提出すればアリウスの残虐非道らしさをよく現せる事だろう。そもそも生徒によっては文章としての体裁を保って無い物をあの妖怪いちご大福が読んでくれる物か。利用したいのならせめて使える道具にするべきだろうに。

 

「新しい物を出す」

「そのまま出したら報告増えちゃうしね…」

「黙って書け」

 

結局お互い不必要な苦労をして、仮面の下でつまらない表情のままペンを握り続けた。

 

≪楽しいけど、幸せじゃ無いね≫

≪余計な事言うからじゃねーか≫

 

───

 

「ふぅ、終わった…最後はバイク部隊の申請も…銃弾薬と一緒にしてくれるかな…」




アズサはミカが来るまではスクワッドに入って戦ってたはずだけど皆さんあまり気にして無いんですね

このままアズサはジャガーをそんなに知らない事にします

アズサのスクワッド在籍時期とジャガーオーグの初対面に違和感・矛盾はある?

  • 違和感あるので書き直しして欲しい
  • 違和感あるけどそのまま続けて
  • 違和感は無い
  • その他は感想でどうぞ
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