オーグメントと青春   作:鳥鍋

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何も考えてなくて口調が特徴的なキャラは再現しやすい


羽沼マコト

 

「キキッ、お前達がアリウスか!その冷たい視線と殺気、まさにトリニティにぶつけるにふさわしい!」

「何の用だ、ゲヘナ」

 

アリウスの外れで角の生えた軍服の生徒がサオリと巡回の生徒達の前に尊大な態度で立っている。その様子を廃墟の陰から便乗してやって来たジャガーとその同居人が見ていた。

 

≪あれ誰?≫

≪知らねぇ、どっかで見た気がするけどな≫

 

わざわざここに来るなら此方を舐めているか、調べ挙げた上で余裕な態度を取っているか。

 

「お前達はトリニティを憎んでいるのだろう。それはゲヘナの生徒会長たるこの羽沼マコト様も同じだ」

「……」

≪ゲヘナの生徒会長?≫

≪あたしも初めて知ったよ≫

「敵の敵は味方と言うだろう?近々行われるエデン条約の調印式で姿を見せるティーパーティー、それを我らで力を合わせ叩き潰そうじゃないか……!」

「……マダムに判断を仰ぐ、しばし待て」

 

サオリが連絡を取っている間も態度は変わらず堂々としている。自分でさえアリウスとのファーストコンタクトでは実力と内情が分かるまで警戒していたのに、銃を向けられても余裕の表情である事は見習うべきか。一応この場に出ていいか手話一覧を見ながらサオリに合図する。

 

≪これで…『姿』『現れる』≫

 

通信を終えた彼女は返事として首を横に振った。

 

「答えは振るわなかったか?」

「いや、その協力に応じろとの事だ」

「ふむ、今のは誰に向けた合図だ?このマコト様の目は誤魔化せないぞ」

 

気配はともかく自分の存在は悟られたか。第三者がいる時点で合図をするのは不味かった。それならいっそ開き直って会話に入り込み、ついでにゲヘナ生徒会長の実力を試してみる事にする。

見様見真似だが刃は直前まで閉じる居合い、直線的にルートを取る。一度こちらに振り返って貰う為に近くの小さな瓦礫、石かもしれない、それをアンダースローで自分と相手の半分の距離に、軽く投げた。空中を飛ぶ間構えを取り、長い一瞬に集中を込める。ガキャ、と硬い物同士ぶつかる音がして制帽と角の生えた頭で相手は振り向く。自分を認識するかしないかと言った所で地面を蹴り、目標で刃を伸ばし、背後1mの距離で止まった。自分でも不思議な程上手く行った、まるで相手が全く対応出来ていない様に。

 

「な、何だ?」

「振り向け、後ろだ」

 

言われた通り振り向くのと、羽織ったコートの左袖がハラリ、と落ちるのは同時だった。途端に左側が軽くなり、先程話した相手との間に謎の人物、この状況に取れる対応は限られていた。

 

「は?」

「ご無沙汰でした。合図した誰かです」

 

目を点にするマコト、刃を閉じるジャガー、独断行動に目付きに怒りが表れるサオリ、混乱の中命令を待つ生徒達。時間が凍結し、沈黙した空間で我に返るのが一番早かったのはサオリ、しかし発言の早さでは二番手に甘んじた。

 

「何だ?!急に出てきたお前は何だ!というかコートが台無しじゃないか!」

「……誰が姿を現せと言った!」

「ちょっと実力を試そうかと…君強く…無いね、ごめん」

「当たり前だ!このマコト様の力は風紀委員会の様な腕っぷしじゃない、そもそもあんな速さ空崎ヒナでも反応できるか!」

 

先程の余裕な態度はどこへやら、焦りと困惑が見え見えだ。

 

「ゲヘナ最強でも反応できない、いい事聞いた」

「そもそもお前は何者だ?!アリウスの生徒か?」

「ボクはジャガー、アリウスの食客だよ」

「……キキッ、食客か。単体での戦力が並ならない存在をここで雇えるとは」

「スカウトなら一応受け付けるよ?」

「ヒナら風紀委員会やトリニティを降せるならば待遇を考えようではないか、キキキッ」

 

焦りと困惑は消えて、戦力に期待を持ち不敵に笑う。ジャガーの背中に銃を向けられるまでの話だが。

 

「勝手に抜け出すな」

「喋っていい?」

「やめろ、許可しない」

「じゃあいいや、えっとマコトさん?」

「マダムの命令を忘れたか」

「アリウスの生徒じゃないからいいでしょ?」

「……」

 

サオリは突き付けた拳銃を下ろした。マスクの下では口元を歪めている事だろう。

 

「キキッ、ぞんざいな扱いだな。先程の様な力を持ちながらなんともったいない。その力をゲヘナで生かす気は無いか?」

「暗殺と多少の事務作業と幸せがあるなら喜んで」

「幸せか、とびきりの幸せがゲヘナにはあるぞ!自由と混沌、何よりイブキといられる事だ!」

「散髪習っているけどゲヘナで出来る?」

「許可しよう!イロハのもさもさは切り甲斐がある、空崎ヒナは全部刈り上げにでもするがいい!」

「美味しい物食べられる?」

「キキッ、給食部の料理はいいぞ、期待しておけ」

「大事な人に会いたいけど…」

 

どんどん移籍の話が進む中、ブレーキを掛けたのは一発の銃声だった。サオリは廃墟の壁に新たな弾痕を作り出した。

 

「……」

「…この話は無しって事で」

「……おう、そうか」

「その代わり、次会ったら一つだけ頼みを聞くから許して?」

「何でもか?」

「手間が掛からない範囲ならある程度」

「キキキキッ、アリウスの協力だけで無く食客に命令出来る権利も手に入れるとは何たる僥倖!これでトリニティを滅ぼす事間違い無しだ!」

≪ここはゲヘナと共存できないって言ってなかったっけ?≫

≪別に言わなくていいだろ、バカに何言っても聞こえねぇよ≫

≪そうだね、アリウス(ここ)も報復バカだしね≫

 

アリウスすら手玉に取る策略があるかと思いきや計画が単純、いや穴開きすぎる。間抜けと嗤うべきか、一周回って警戒するべきか。

 

「じゃ、細かい話し合いはよろしく。終わったらボクとも面白い話してくれる?」

「良いだろう、このマコト様の偉大さからイブキの可愛らしさまで何でも聞かせてやる!」

「……早く本題に移れ」

 

───

 

「へぇ、温泉もグルメも堪能できて好きに暴れられる場所か…」

「キキッ、このマコト様の地位ならもっと楽しめる、冷蔵庫のプリン食べ放題だからな!」

 

サオリとマコトの話し合いと情報交換が終わり、ジャガーオーグはゲヘナ学園についてを聞き、マコトは権威をひけらかしながら答えた。

 

「プリンだけじゃなくてまんべんなく食べたいかな、いちご大福以外」

「いちご大福?嫌いか?」

「知ってる?アリウスのボスの顔はいちご大福なんだよ、もしかしたらカプレーゼの化け物かも」

「ほう、そんな面白い顔ならば是非ともお目にかかりたい物だな、キキキッ」

「…もしもアリウスを怒らせたい時はいちご大福をグチャグチャにして動画にしていいよ?」

「ふっ、このマコト様のカリスマがあれば奴らも思う通りに動く事だろう。怒らせようなどとは思わないな」

 

仮面の下でジャガーとネルはおバカを憐れむ目で彼女を見ていた。

 

「…だといいね。もしもボクがゲヘナに行ったらどんな仕事をさせる?」

「風紀委員会の空崎ヒナは万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)にとって目障りだ。暗殺が得意と言うなら奴を始末するといい」

≪空崎ヒナさんにネルちゃんは勝てる?≫

≪正面からは分からねぇ、間合いに持ち込む前にどれだけ近付けるか≫

「本気?」

「キキッ、そうだ。怖じ気づいたか?」

「この前七囚人のワカモと引き分けたけど行ける?」

「本当か!ならばますます期待できる、あのスピードで何も出来ないままただ斬られるのを見るのが実に楽しみだ!キヒャヒャヒャヒャッ!」

「まぁサオリさん見てるから程々にね?」

 

流石に過大評価は煩わしいが、自分を高く買っているなら後々役に立つだろう。

 

「いいとも、この劣悪な環境に我慢出来なくなった時はゲヘナへ来い。この羽沼マコト様が万魔殿をもって歓迎してやろう」

「クビになった時はよろしくねー」

 

そのしばらく後にマコトはアリウス生徒に連れられゲヘナ学園の方向に帰って行った。徒歩では無理な距離、カタコンベをどう突破したのか。巡回の生徒に声を掛けたと見たがどうなのだろう。

 

「ハイ、結局あの人どうすんの?」

「ゲヘナと共存など出来る物か。利用するだけ利用してその後はトリニティと共に殲滅するのみだ」

「トリニティと両方敵に回して勝てる?」

「その武器と策はマダムが用意している。食客が考える事では無い」

「空崎ヒナさんとか最強にも勝てる?」

「無論だ」

「直接戦う作戦があったらボクに戦わせて?」

「……命令には従え、いいな?」

「ハイハイ」

「返事は了解だ、二度も言わせるな」

「りょーかい」

 

同じゲヘナ学園の生徒でも敵対関係なのはかつてのSHOCKERや内紛したアリウスを思わせる。緑川イチローが作り出した現在の環境、自分もその戦列に加わればどう戦ったのか、幸せは掴めたのか、その日の想像が尽きる事は無かった。




最初からゲヘナやトリニティだとツルギとか最強と自分から戦いにくいからジャガーの所属はアリウス

活動報告で語彙力の募集をしています(主にベアおばに対しての罵倒や煽り)
ご協力してくれたら採用するかもしれません
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=303932&uid=236764
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