オーグメントと青春   作:鳥鍋

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今回は次回のつなぎみたいな話


楽園はあるか

 

「ねぇネルちゃん、復讐ってハッピーエンドはあるのかな?」

≪知るかよ≫

「いきなり終わらせないでよ…」

 

人気(ひとけ)の無い廃墟の一室にてジャガーオーグはプラーナのネルと問答を一方的に切られた。

 

≪聞かないとは言ってねぇ≫

「…前に巌窟王って話を読んだんだ」

≪なんだそれ≫

「結婚間近の青年が幸せ全て奪われて、その犯人を皆殺し、じゃなかった頭脳プレーで悪事を暴いたり失脚させる話だったかな」

≪……それで最後はどうなるんだよ?≫

「マクシミリアン…だったかな、恩人の息子とその恋人に財産を分けて、エデ、悪事の証言者が主人公に恋をして?そのエデと一緒に旅に出ました、とさ」

≪へぇ、ぶっ殺して終わりじゃねぇんだな≫

「ただ殺すんじゃなくて同じ様に奪うのが目的だからかな。そこに未来があるからハッピーエンド、だろうね…」

 

途端にジャガーは気付いたかの様に、最初から気付いていたのか押し黙る。その意図を気付けるのは本心で触れ合っている彼女だけ。

 

≪あいつらに未来はあるのかってこったろ?≫

「トリニティが幸せを奪ったって言うには原因が悪事臭く無いし、大勝利しても楽しむ余裕すら想定してない、マダムオーグすら勝利して得するとも思えない、こんな気持ち悪くてつまらない復讐知らないよ。逆恨み?」

 

頬杖にため息でそう吐きこぼす。モチベーションが下がりに下がって簡単な敵でもあっさり負けそうだ。

 

≪それでもやるんだろ?巡航ミサイルを古聖堂にぶちこんでETOってのを横取りってヤツを≫

「勝っても幸せになれないってはっきり否定されるまでは仕事するよ…」

 

───

 

「準備は?」

「……問題無し」

「あの人形との接触の方は?……なら問題無さそうだな。全ては整った」

 

「巡航ミサイルは?」

「すでに発射済み。これから5分後に、ターゲット地点に着弾する」

 

「ミサキとチームⅡはトリニティを、ヒヨリはチームⅢとゲヘナの方を頼む」

「了解」

「チームⅡの方はツルギを警戒しろ。チームⅢの方はヒナに気を付けて動け」

「は、はい!分かりました!ひ、ヒナさんですね……!」

「ボクはどうする?強敵と戦っていい?」

「……ジャガーオーグ、チームⅡに追従、ツルギを抑えろ」

「一番槍は譲ってくれる?」

「好きにしたら?」

 

「他に厄介な相手は?」

「シャーレの先生、マダムからは処理しろとの事だ」

「…処理、…そっか」

 

「私は他に用事がある。それが終わり次第チームⅤに合流予定だ。では、散開」

 

その一言に合わせてジャガーオーグはミサキよりも先に出口に歩く。その行動を怪しむ彼女がその背を追ってみれば何かが弧を描いて投げられ、それを片手でキャッチした。それはバイクのヘルメット、キヴォトスにおいて不可欠では無いが運転に重要な物であった。

 

「乗ってく?」

「カタコンベでは不向き、必要無い」

「歩くより速いよ?」

「他の戦力が足並みを合わせられない」

「…」

 

バイクから気を落とした様に降りてミサキの後ろを歩き、その後ろをカルガモよろしくサイクロン号がゆっくりタイヤを回して追従するのだった。

 

「ミサキちゃん、いつも無意味って言うけどこの作戦も無意味って言わないんだね」

「トリニティが崩壊する時が来た。その役割を私達が担うだけ」

「ハハッ、都合いい無意味だ」

「……」

 

いつかサオリに銃を向けられた時と同じ視線が自分に刺さった。アリウスの兵力と合流するまで無言が続いた。

 

───

 

燃え墜ちるゲヘナの飛行船をクレーンから見つめ、サオリは宣言する。

 

「トリニティ、そしてゲヘナよ……これまでの長きに渡る我らの憎悪、その負債を払ってもらう時だ。我々アリウスが楽園の名の下に……貴様らを審判してやろう」

 

地下のカタコンベをミサキを乗せてタイミングを待ち、ジャガーは呟く。

 

「楽園はある。緑川イチローの見つけた嘘偽りの無い世界、トリニティもゲヘナもミレニアムも、幸せにいられるのかな、憎しみはそこでは消えないのかな」

 

───

 

「これは一体どういう……」

「っ!!」

 

唐突に響くエキゾーストに身構えた正義実現委員会の二人の横合いから銀色の脅威が飛び込み、剣先ツルギは二丁の銃で火花を散らし受け流した。下手人は6本のマフラーが火を吹く大型バイクにブレーキを掛け、前輪を中心に回転、いわゆるジャックナイフで彼女らに振り向いた。

 

「作戦地域に到着、正義実現委員会の残党を発見。いや、訂正。残党じゃなく、真髄だ」

「いやはや、一発で仕留められないとはさすがトリニティの最強。ミカちゃんといい勝負じゃないかな」

 

右手から凶器を伸ばしバイクに跨がるのは荒々しきジャガーの戦士、その後部には黒いマスクと包帯を虚無感と退廃的な空気と共に纏った少女がロケットランチャーを構えていた。その反対側にはガスマスクの集団が冷たい目線をツルギ達に向けている。

 

「アリウス分校……!?それにティーパーティーが警戒したジャガーも……!」

「やっ、また会ったね、正実の人」

 

抜き身の刃を構えながらバイクから降り、気軽にジャガーは声を掛ける。まるで友達の家に来たかの様な気軽さだ。

 

「……許しません。その代償、今ここで……っ!」

「……ハスミ」

「……!」

「落ち着け」

 

怒り頭に血が上がるハスミをツルギが諌める。それをジャガーは意外そうに見ていた。

 

「暴れるのは、私の役目だ」

「胸を借りるよ、剣先ツルギ」

「くひひひひっ……さぁ。相手してやるぜ、虫けらども!かかってきなぁっ!!!」

「奇遇だな…一番勝ちたい相手がその虫けらだ!」

 

赤黒い狂人と殺意持つ獣は戦場の中心に躍り出て、互いの得物を振り下ろした。




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