≪……ろ、あんた起きろ!≫
「…ん、ぅう」
「気付きましたか」
ツルギのプラーナを吸い取ってからの記憶が無い。聞き覚えの無い声に耳を澄まし起き上がる。微睡む目で徐々に見えてきたのは自分を取り囲みライフルを構える三人の軍服と、もさもさの赤毛に制帽を被った小柄なボロボロの少女。状況は把握しきれないが長く倒れていたらしい。
「君達は?それと状況は?」
「その前にあなた、アリウスの手の者でしょう?」
「…どうしてそう思う?」
「まず服装や装備からして私達の学園では無い、先程あなたを見付けた時には正義実現委員会の剣先ツルギとの戦闘の跡が見られたからトリニティでも無い、何より否定もアリウスは何?とも言わないなら間違いありませんよ」
「…ハハッ!そうだよ、ゲヘナの…もさもさだから君がイロハ?」
「……どこで聞いたんですかそれ」
「マコトさんはいる?ジャガーが来たって言えば伝わるよ」
「トドメでも刺すつもりですか」
「無理無理、すごく疲れたし、君達ガントレット取ったでしょ?今言うのもアレだけどマコトさんと個人的に約束してるから聞いてみて」
「……嘘なら容赦なく撃ちますよ?」
イロハは警戒の生徒を残しどこかに歩いて行った。その間は暇である。アリウスの襲撃中、銃を構えた相手に呑気に話は出来ない。それならマスクのネルと、せっかくプラーナを吸い取ったからツルギもマスクに入れてみる。先程の量からして20%吸収しただろうか。それでも満タンに近いが、漏れ出たのか思ったより少ない。ともかく頭に手を当ててプラーナを流し込む。
≪おい、なんか入ってくるぞ?!≫
≪……ぁ、うぁぁぁ?≫
マスクは自分のプラーナ吸収とは別口なのか、耳鳴りを起こさず取り入れられた。
≪おはよう、剣先ツルギさん≫
≪ここは?お前は?!≫
≪どうどう、落ち着いて。ここで暴れてもムダだから≫
≪……≫
ツルギはパニックを起こすと踏んでいたが、意外と素直に落ち着いていた。
≪よう、さっきやり合ったのはなかなかだったな≫
≪きえっ?!お前は!≫
≪ミレニアムC&Cの美甘ネル、詳しい事はあいつに聞け≫
≪……ここはどこだ≫
≪さっきの所からそんなに離れてないよ、じゃなくてボクのマスクの中≫
≪何故ミレニアムのC&Cがいる?≫
≪魂の一部をもらった、本人には内緒にね。だから君も魂の一部だ≫
≪……≫
≪本心が伝わる場所だから嘘は無いと思っていいよ、続きは後で≫
イロハがこちらにため息をつきながら戻って来た。
「着いてきてください、マコト先輩がお呼びです」
───
銃を突き付けながら連れてこられたのは幾つもの破片が流れ着いた別のほとりだった。
「キ、キ……来たか、ジャガー、これはどういう事だ?」
「…!!?」
「おい、……一体何に驚いている?」
「いや、てっきりアリウスに騙されたフリで何か仕掛けていると…大丈夫?」
その言葉は嘘では無いが、真っ先に目についたのは焦げた制帽の乗ったチリチリ頭だった。
「……」
「……はぁ、敵に心配されていますよ、マコト先輩」
「おのれアリウス!このマコト様の完璧な計画を台無しにしたな!」
「それはウチのボスに言ってね。で、呼び出したのは何の用?約束の頼み事?」
ボロボロでチリチリになりながらもマコトは怒りを
「……このマコト様を……虚仮にした代償を払って貰うぞ、うぐっ」
「無理しないでください。現在アリウスは両学園と交戦してます。半端な兵力を出した所で返り討ちになるだけですよ」
「黙れ!このマコト様を騙すどころかイブキも巻き込まれた!救急医学部も混乱の中答えない!黙って指を咥えるつもりか、イロハ!」
「イブキ…君の幸せだったね、マコトさん」
「貴様らが飛行船に仕込んだ爆発物のせいであの子は意識が戻らない、どうしてくれる!?」
ジャガーは少し考えて答えた。自分にはいざという時の力がある。
「…頼み事を使えば助けてあげられるよ?」
「本当か!」
「マコト先輩、彼を信用するんですか?また騙されますよ」
「他に方法があるか!?イブキを救うならこれしか無い!」
「ここに来たのは剣先ツルギとの戦いでたまたま、ゲヘナにトドメを刺せとか命令されて無い。そんな事したら次の就職先が無くなるからね」
「それなら早く…」
「その前に聞いていい?」
遮る様にジャガーは疑問を吐き出した。
「何です?」
「ボクと戦ったツルギはどうなった?」
「……一応こちらで手当てしています。そちらにトドメを刺したいならどうぞご勝手に」
「ガントレットは?」
「刃物を仕込んだアレですか?」
「救助のお代で返してくれる?」
「……それを私達に向けたら撃ちますよ?」
「しないしない。食客としてアリウスに口利きする。だから安心して?」
「……こちらです」
「マコトさんも連れていい?その人の力が必要なんだ」
イロハは半信半疑の表情でこちらを見つめる。納得したか分からないが、数秒して口を開いた。
「……分かりました、あなたが運ぶのなら好きにしてください」
言われてすぐに米俵の様、肩に抱えて運ぶ事にした。
───
「じゃあ始めるよ」
イロハよりも小さく低学年にしか見えない少女、イブキの左横にマコトを仰向けに寝かせた。彼女は息はしているが反応はしない。そこにお互いに近い方の手を重ねて、握らせる。
「これで何が出来ると言うんですか?」
「まぁ、見てて。マコトさん、イブキちゃんにがんばれって心の中で強く思って」
「キキッ、当然だ!」
重ね合わせた両手にジャガーオーグは右手をさらに乗せて、プラーナの操作を始める。
≪正直初めてだけど、要領は分かる。マコトさんの10%をイブキちゃんに移す、献血と違って血液型は無いから問題は無い…と思う≫
≪デタラメじゃねぇか≫
作業だか施術だかを慎重に、1分間続けた所でジャガーはその手を離した。
「…ふぅ、終わったよ」
「イブキっ!イブキ!」
マコトはボロボロで消耗した身体でイブキに抱きつく。
「……ん、マコト、先輩?」
「ごめんな、イブキ!このマコト様がアリウスに騙されたばっかりに!」
「落ち着いて、今はそっとしてあげて」
ジャガーは二人を丁寧に引き離して、イロハの方に振り返った。
「頼み事、確かに終わらせました。武器は返してくれる?」
「先程目覚めた場所で他の議員に持たせます。この状況で襲われればたまりませんから」
「そっか…。もしアリウスが負けたらここで、
「イブキを助けられた恩があるとはいえ図々しくないですか?マコト先輩……」
マコトとイブキは疲れ果てたかの様に寝息を立てていた。その姿を表すならば無防備と言った所か。
「アリウスが勝っても幸せになれなくてつまらなそうだし、あと恨み辛みはいちご大福で晴らしてってマコトさんに言ってね」
ジャガーは立ち上がり、元の方向に歩いて行った。警戒されながら遠くなる背中をイロハはいちご大福?と疑問を持ちながらただ見ていた。
───
「もしもし?」
『ジャガーオーグ、今まで何をしていた!?』
自分がいた方向に救急車が走って行くのを見送りながら、通信機を開いたらサオリの怒りがこもった声が響く。
「ツルギと戦ってぶっ倒れた!状況は?」
『そろそろトリニティへの進撃だ。お前に追及するべき事はあるが、まずは持ち場に戻れ』
「はいはい」
『返事は了解だ』
「りょーかい」
サイクロン号に乗り風を受けながら待機場所に戻る。土埃や硝煙、爆薬の混じった風は爽快感とは程遠い。途中で見える怪我人、両学園同士の争いと言った惨状も自分の幸せを削り取る。それでもその先にスクワッドの幸せはあるのだろう。そう思わないとやってられない。この作戦に彼女らの助命がかかっているとも聞いたから友達、そうでなくとも仲間の命位は頑張ろう。そう決めてアクセルを回した。
マコトがこの時点で話ができる状態だったのは独自展開という事で
ジャガーが担いで運ぶのをイロハが気にしなかったのは人質に取られてもまあいいやくらいに思ってた?
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