オーグメントと青春   作:鳥鍋

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作戦が穴だらけなのを先に知ったらジャガーはボイコットしていたかミレニアムかトリニティに寝返ったかも


目の当たりにした青春

 

「ふぅ…落ち着いたよ」

 

アリウスの主力が集まる廃墟の中、ジャガーオーグはアツコの手を握りながら姿勢を正していた。その中でもサオリのアズサに対する怒りはくすぶり続けている。

 

「そうか……なら出発だ。次こそアズサにこの世界の真実を教え込む」

「その前に聞いていい?」

「……早くしろ」

「爆弾を喰らってアツコちゃんが死ぬかと思った感想は?」

 

サオリは多少悪意ある質問に怒りの矛先を変える程では無いが、不機嫌に答える。

 

「……姫を、アツコを、私の家族を傷付けた事は許さん。その報いを与えるべきだ」

「……そんな風に、ボク含めてだけどティーパーティーを爆破したりミサイルぶつけたり、相手を傷付ける事はよかったのかな?」

「トリニティとゲヘナ、今まで奴らが与えた苦痛を精算した。それだけだ。マダムの教え通りの何がおかしい」

「自分はよくて相手はダメって割と勝手だね。それホントは逆恨みじゃない?ボクの言うセリフじゃないけど」

「貴様っ!」

 

サオリは拳銃に手を掛けようとするが、反対側の手に力が加わる。アツコが両手で包む様にサオリの手を握りながら首を横に振った。

 

「ごめんごめん。逆恨み教育とか馬鹿馬鹿しいから勝っても負けても退学しない?山ほど報酬がもらえるなら別として」

「私達に居場所など……」

「あるよ。だってボクは君達と違って人殺しだけど別の場所の目星はあるし。それに探したら懐のある場所の一つ位あると思うよ?」

「……ふざけるな!貴様と私達は違う!飢えも寒さも地獄も知らぬ者が私達に騙るな!」

「…そうだね。終わってから考えようか…。勝ったら全部手に入るといいね」

 

ジャガーオーグは寂しくサオリの方から出口へと顔を向けて、アツコを立たせる。そのまま手を繋いで一緒に歩く事にした。

 

「……アツコ。ミサキ、ヒヨリ、行くぞ」

 

サオリは彼女の手を途中で離した。しかし、作戦の指揮を取るのは自分だと忘れる訳にいかずジャガーとアツコを追う様に歩いた。

 

───

 

白州アズサはアリウススクワッドを止めるべく、かつて古聖堂だった瓦礫の山の前に立っていた。ゲリラ戦によってダメージを与えたが、時間と共に体力を取り戻した四人に先程はいなかった実力が未知数の食客、ジャガーオーグもやる気が無さそうに瓦礫に座っている。それでも彼女は止まる訳に行かない。

 

「よくも、よくも姫を……!絶対に許さない……!」

 

「……私は、人殺しになる」

「アズサぁっ!!」

「……たとえもう、あの世界に戻れないとしても」

 

≪どこの世界でも、裏切り者に人は厳しくなるよね…≫

≪補習授業部、コハル含めてその理由を改めて理解した……≫

≪あんたは見ているだけでいいのかよ?≫

≪致命的な所で止めるつもり。あの爆弾を誰かが使った時とか。…はぁ。幸せはトリニティに入る建前に過ぎなかったのかな…≫

 

アズサとサオリの怒りと憎しみのぶつけ合いをため息をしながらジャガーは見届けていた。アズサはトラップや兵器を使い尽くしている。サオリとは己の地力で撃ち合うのみ。仮にもお互いスクワッド、すぐに決着は着かないとジャガーは踏んでこの後どう動くかの算段を組み立てている。同時にツルギはアズサの血に濡れた事情を悟り、ネルからは『胸くそ悪りぃ』との本心が伝わる。

 

「……たとえ虚しくても、足掻くと決めた」

「そこに、何の意味がある!!!」

 

最初に気配に気付いたのはジャガーオーグだった。何人かの人影がアズサの方に近付いている。その先頭に立っていたのは、変わった鳥のリュックを背負ったトリニティの生徒だった。

 

「……なんだ、お前は?」

「普通の、トリニティの生徒です」

 

「でも!!!アズサちゃんは一つ、大きな間違いをしています!!!」

 

「私の正体、それは……」

 

ジャガーは少し驚いた。普通を自称する少女が仮面を被り、もう一つの姿に変身した事を。

 

≪紙袋だろあれ≫

≪マスクのプロデュースしようかな?≫

 

「『覆面水着団』のリーダー、ファウストです!!」

「……え?」

 

アズサは呆然とし、スクワッドは無言になった。ヒヨリも驚いている風に見える。

 

「でも、私のためにそんな嘘を言ってくれたところで……」

「誰が嘘だって!?」

 

また後方から4色の覆面の生徒達が来た。ニオイと立ち振舞いからしてただ者でもおふざけでも無いと見た。

 

「ファウスト!ファウスト!!ファウスト!!!」

 

おふざけでは無いはずだ。多分。結局ファウスト、ヒフミと呼ばれた彼女は紙袋を外したが。

 

「ひひひひひひ……」

≪私だ……あの程度なら立てるからな……≫

≪スゴいねツルギさん≫

 

トリニティの正義実現委員会にゲヘナの風紀委員会、学園の戦力が集まっている。さすがのオーグメントも無策で突っ込めば100%ジャガー挽き肉の完成だ。

 

「『ユスティナ聖徒会』の前では等しく無意味。この場の全員に知らせてやれ。この世界の真実を……殺意と憎しみに満ちたこの世界で、あらゆる努力は無駄なのだと」

≪そんなやる気無くす事言わないでよ…。君達自身も無駄になるでしょ≫

 

サオリは全てを聖徒会で押し潰そうとする。ジャガーは彼女のわざわざマイナスに突っ走るスタンスにげんなりしていた。

 

「私には、好きなものがあります!」

 

「苦しいことがあっても……誰もが最後は、笑顔になれるような!そんなハッピーエンドが私は好きなんです!!」

 

「終わりになんてさせません、まだまだ続けていくんです!私達の物語……私たちの、青春の物語(Blue Archive)を!!」

 

奇跡が、起こった。空を支配していた雨雲から光が差し込み、青い空がヒフミの言葉に、意志に答えるべく切り開かれた。スクワッドはこの光景に気圧され、そして獣は…。

 

「流石だ…」

≪普通って割には言うじゃねぇか≫

≪コハル、いい仲間ができたな≫

 

瓦礫に座ったまま少しゆっくり手を叩き、称賛の拍手を贈った。憎しみと殺意、希望の無い毎日を見続けた中であの様に見栄を切ったなら感動せずにはいられなかった。その本心は同居人も受け取り、ヒフミを一目置いている。

 

「ここに宣言する。私達が新しいエデン条約機構(ETO)

 

そこにサオリが処理と言ったはずの大人、『先生』がヒフミ達の近くで高々と宣言をした。すると控えていたミメシスの動きがおかしくなった。彼女らのエネルギーの流れも混乱、混線して見える。

 

≪いや、プラーナじゃないのになんで見えてる?!≫

 

そもそも何故自分にその流れが見えるか疑問が沸くが後回し。それ以前に聞き忘れた事がある。

 

「サオリさん、あの人殺したんじゃないの?」

「いや、弾丸を腹に撃ち込んだがゲヘナの邪魔が入った!」

「そっか…」

「そんな事はどうでもいい!ハッピーエンドだと!?ふざけるな!そんな言葉で、世界が変わるとでも!?それだけでこの憎しみが、不信の世界が変わるとでも言うつもりか!?何を夢のような話を……」

「案外、変わるのかもよ?ボクもそれを求めている、あの子達は多分諦めないでそれを掴んだ。君達は虚しい教えと逆恨み以外何も無い。それだけで世界の見え方が違うでしょ」

「……」

 

よいしょ、と言いながら立ち上がり品定めする様に軍勢を眺める。ツルギのプラーナを手に入れて、いや聖徒会から何か吸い取った時から見えて感じる物が増えた。彼女らの底力と言うか別のエネルギーが分かる。

 

≪ひょっとして、これが噂の神秘?≫

≪じゃねぇの?≫

≪私から奪ったのか……きひひ≫

 

一人一人の大きさの違いはあるが、元覆面水着団達のメンバーに特に大きい者と見覚えある者がいる。特に後者は、強いていえば緑川イチローの遺品と同じニオイだろうか。興味が沸いたので気配と視線を飛ばす。

 

≪行ける?ネルちゃん、ツルギさん≫

≪はっ!誰に言ってんだ?クソみてぇな連中にムカついてたんだ、暴れなきゃ気が済まねぇよ!≫

≪きぃぃぃぃ!アリウスの方に立つのは許せない。だが暴れる事は同感だ!≫

 

負け戦は決まったが、楽しみは増えた。死なない程度に体を張ろう。内側から渦巻く神秘と戦いを求めるプラーナと共にジャガーオーグは戦場へ駆け出す。混乱して動けないミメシスを切り裂きながら最短経路で、仮面と盾越しに目が合った青と橙の大きな神秘に刃を振り下ろした。




ホシノの単騎の強さはネル達キヴォトス最強格にどれだけ届く?
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