『■■、遊ぼ』『うん!□□』
『■■、一緒に来て』『はい、□□様』
『助けて!■■!』『待て!待てよ…』
『』『なんで、なんでボクは…』
───
悪い目覚めだ。ベッドはDESTRONの方が当然品質が高いし、枕が合わなかったのかもしれない。一張羅しかないけど着替えよう。そしてここでプラーナを取り込んでおく。順に教えると言ったし、これについて教えても面倒そうだ。風と力を宿し、ジャガーのマスクを被って準備完了。部屋から出ると、昨日のキャップの子がこちらに来た。
「おはよう、えっと…なんて呼ぶ?」
「錠前サオリだ」
「ジャガーでいいよ、朝食の準備してた?」
「レーションはある。食べたら来い」
本当は食べなくても平気だけど食べる事自体楽しいし、ジャガーだから肉が食べたい気分かも。
───
味気なさすぎる食糧を食べ終えて、連れて来られたのは訓練場。射撃のターゲットやアスレチックも真っ青な障害物が設置されている。SHOCKERは洗脳や改造の都合上本格的な訓練は必要なかった。DESTRONに配属されて対戦闘プログラムを組んでいたなと考えていると、複数の足音が近付いている。
「め、珍しい……ですね。動物の人が来るなんて……。最初の頃の私達みたいにボロボロにされちゃうのかなぁ……えへへ」
「リーダーが言ってたオーグメント……別に興味はない」
大荷物を背負ったマフラーの少女と、ロケットランチャーを抱えたボブカットで包帯を巻いた少女が覇気の無い反応を見せて、フードとマスクで顔の見えない少女がスッスッと手を動かす。
「何?おい、お前のそれはマスクか?」
「どうしてそう思う?」
「姫が後頭部に名前と番号を見つけた」
言っていなかったとは言えサオリに指摘されるまで時間が掛かったようだ。動物の人も気になるがこの状況だと言われるだろう事がある。
「マスクだけど、外さなきゃダメ?」
「いや、姫も着けている以上外す事は無い」
オーグメントの顔やプラーナ排出の面倒が無くて良かった。アリウスの生徒達はガスマスク、マダムさんも顔が隠れていたからマスクがここでの文化になっているかも知れない。生徒は構成員、マダムはオーグメントなんて考えながら本題に移す。
「ところで、ここで何する?テスト?入隊試験?」
「マダムの命令だ。お前の性能を把握しろとの事だ」
「了解。あとブレードある?昨日置いてきたの」
「技術部が預かっている。銃はここだ」
「それよりこっちがいいんだけど…」
量産バッタオーグのサブマシンガンを受け取らず、左腕の半ばで折れたブレードを伸ばして見せる。実際の任務にはこれが無いと戦術的に問題がある。
「必要か?」
「ジャガーの隠密能力、瞬発力と筋力を活かすなら最適な装備、って技術者が言ってた」
「……命令は遂行できるだろう」
「まぁね」
プラーナを無駄遣いしなければいいだけ。オーグメント同士殺し合うよりかなり楽で肩慣らしにちょうどいい。
サオリに左腕のガントレットを渡して、左手を当てながら右肩を回す。
「じゃあ、いっちょやるか!あと修理しといて!」
───
一般的な体育やスポーツより激しいテストだけど大体の訓練で好成績を修められた。射撃は可も不可も無かったけどオーグメントの力を活かすなら近接武器に限る。かつての先輩方も徒手空拳や刃物を並ならぬ力で扱い敵や目標を始末していた。同僚は重火器を馬鹿力でぶっぱなしていたがスタイルはそれぞれだ。
「な……何ですかアレ?筋力とスピード本当に人間離れしてますよ……」
「しかも余裕を残して他のテストをこなしている。疲れを知らないみたい」
何だか褒められるより恐れられてるが、非凡な存在なのは見せつけた。プラーナを無駄に出さないでよくここまで出来たと思う。
「次は何する?!ずいぶんやったけど?」
「最後だ。訓練場の中心に行け」
「アスレチックは遊び尽くしたよ?」
「アスレ…何だ?」
このタイミングでロケランとマフラーの少女がいないので嫌な予感がするが、およそ早歩きと言える速さでそれに従う。銃撃戦を想定しているのか壁や段差だらけで、いかにも此方を狙撃しそうな高台があるので体を左にずらす。
激しい破裂音と共に壁の一部が弾け飛んだ。思った通りの実戦テストらしい。合格条件は知らないけど突っ立っても終わらないのは確か、とりあえず狙撃手の方向まで移動する。その正体はきっとマフラーの彼女だろう。
銃撃戦に詳しくないけど隠れながら進めばいい事だけは知っている。普段よりぎこちないけど遅すぎないペースで進む。高台まで半分と思ったら真横から殺気を感じ、その方向に飛び付き貫手を放つのと銃声が響くのはほぼ同時だった。
瞬間的に跳んだとは言えアサルトライフルの連射数発を喰らいながら、心臓を狙った右手はサオリの右肩を掠めた。返す刀で右水平に振るえば銃で防がれバックステップで逃げられる。追い掛けようとすれば4時の方向から足元に何かが転がり、スプレー缶のような音と共に白い煙が舞い上がり辺りを包む。目眩ましによって一瞬足を止めたら狙撃とは別の方向から噴射音が響いて来る。空中で弾けた幾つもの弾頭が煙の中に飛び込み、辺りを燃やしながら吹き飛ばした。
『リーダー、対象は?』
「弾頭の着弾を確認。沈黙を確認後回収する」
油断する事無く銃を構えたまま煙が晴れるのを見ているが、中心部に気配が無い。まさかと思いスモークが投げられた方向を見れば、一つの大きなもとい二つが一つになった人影を見つけた。気付いた時にはもう遅かった。
「人質取ったよ、ボクの勝ちでいい?」
「姫っ!」
フードの少女に馬乗りになりながら左手で銃を持つ手を押さえて、右手で首筋に爪を突き立てる。相手は強く抵抗する様子も見せない。
「殺し合いじゃなくてテストなら充分でしょ?」
何事も無かったかのように人質から離れて両手を上げる。そこに銃を此方に向けたままサオリがマスクの少女の手を取る。
「で、戦った感想は?」
「なぜスモークの中で姫を捕まえられた?」
「ジャガーの夜目舐めんなよ。あと質問いい?」
「何だ」
「姫って何?それと全員呼んで?勝者特権」
「……分かった」
───
「改めてジャガーオーグ、正確にはDESTRON機械改造型オーグメント、ジャガーオーグ第2号。ハサミジャガーってトコかな。サオリさんは知ってるけど君達は?」
「ア、アリウススクワッド、槌永ヒヨリです……」
「戒野ミサキ……」
「彼女は秤アツコ、私達の姫だ」
「姫って言うと偉い人?人質にして正解だった?」
「……ロイヤルブラッド、マダムにも目を掛けられている」
ちょっと空気が重くなった。原因は分からないが気に触れたらしいので話題を変える。
「なるほど、ボクの戦いはどうだった?正直、アレを無視されたら泥試合だったよ」
「反応速度は尋常では無い。戦闘を見るに奇襲向けなのも納得した」
「武器が無いから本調子じゃ無かったけどね。殺さない手加減も大変だし」
「さ、さっきの刃物……リーダーを狙ったスピードで振り下ろされたら、気付かないまま死んじゃいそうですね……」
「ミサイルは一発も命中しなかったの?」
「判断が遅れたら危なかったよ…。とにかく戦えるのは納得したでしょ?」
「私達アリウススクワッドとの戦闘結果はマダムに報告する。命令には従う事だ」
「はいよ。あとアツコちゃん、馬乗りするのはダメだったよ、ゴメンねー」
「……何を言っている」
「デリカシーの話だよ」
頭の中まで戦闘一色だと考える余地が無いみたいだ。4人がどこかに行ったので考え事をする。アリウスにいるほぼ全員は絶望とは違う感じで暗かったけれど、アツコは姫と言われているだけあって、大事にされているというか、懐かしい気分になる。まるで自分が目指す幸せの様な…。今はキヴォトスどころかアリウスの内情すら知らないから、足掛かりの次は帰る手掛かりを探す事を決めたのだった。
銃撃戦描写勉強した方がいい?
ジャガーオーグならサクラコの覚悟礼装を先に発掘(発見)する展開はあり?
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あり
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なし