アリウスの生徒やアリウススクワッドと訓練しながら話をして分かった事がある。この場所はかつて内戦があった事、それをベアトリーチェが終わらせた事、彼女がここを支配して生徒達に戦闘技術や思想の教育をした事。モットーは『vanitas vanitatum. et omnia vanitas.』要するに全て虚しいんだと。そして何処からか不明だが自分が自治区に侵入していた事。
「アリウスの子達に聞いたけど大体合ってる?」
「えぇ、内容に相違はありません」
ステンドグラスの部屋で顔を覆った異形達は会話をしている。幾つか言いたい事はあるが、向こうも質問と意見が待っているので我慢する。
「そもそも、貴方は何処から自治区に侵入したのです?」
「敵と戦って死んだと思ったらそこにいた。量産型の装備も落ちてたから、なんかワープとか転移したかも。ウチには高度すぎる技術は無いから原因は知らないよ?」
「ロイヤルブラッドを人質に取った貴方を下した相手がいたのですか」
「組織の裏切り者、通称仮面ライダー。アンチSHOCKERが参考に造った3人目。性能のいいとこ取りに改造元が優秀だからスペックで負けたよ…。量産型はその仮面ライダー、バッタオーグの量産品、何人も幹部がオリジナルにやられたから性能は折り紙付き」
「用途不明なベルトとバイクは?貴方にも同様の物がありますが」
「量産型の装備、バイクはバッタオーグとセットの仕様。ベルトは…説明がめんどい」
途端にやる気を失い、気の抜けた声になった。
「それより…サイクロン、バイクとブレードの修理は出来たの?」
「待ちなさい、話は終わっていません」
「質問はこっちの番」
「……バイクは外装の修理を終え、刃物は溶接と研磨を施しました」
「じゃ、試運転かな。ツーリングするからお小遣いくれない?」
「……ふざけているのですか。ここを抜け出す事が許されると思っているとでも?」
「だから許可が欲しいんだけど。着た切りスズメだから新しい服着たいし。あと新聞とか情報も」
「必要ありません。服などはこちらで手配します」
「マスクでどれだけ外歩けるか知りたいけどなー。おつかいすら出来ないヤツに仕事任せるのかよー」
「私の言葉を聞けない者に与える物などありません」
「じゃあ監視を付けるのは?2人乗りで行けばいいし。それでミレニアム方面行けば因縁も無いし」
気だるそうなジャガーとイラついた声のベアトリーチェとの間で冷たい空気が広がる。外様というか食客みたいなのにそこまでムキにならなくても、と考え始めた頃に相手の方が折れてくれた。
「貴方の行動は逐次報告させます。日付が変わるまでに自治区に戻る事。そして先程の説明を最後まで続けなさい」
「サンキュ、マダムさん」
少しの準備時間の後、言われた通りに自治区の出入口に向かえば件のバイク、サイクロン号が見違える程ピカピカになり停車されていた。そこに数歩離れた所に待っていたスクワッドのサオリがこちらを見つけた。
「来たか、受け取れ」
「これは?」
「クレジットだ、一日に必要な分はある」
受け取った端末のアプリを開けば、ショッピングに充分な金額が表示されていた。
「名義をジャガーに変えていい?」
「ダメだ。ここに戻った時に返却しろ」
「ブレードは?」
「任務外で武器を与えると思ったか」
案外制限が多いと思いながらハンドルを握り、後部座席に彼女を乗せる。量産型バッタオーグを指揮する為にバイク運転を習得したが、技術は免許取りたてと大して変わらない。それでも日帰りには問題無いだろうとエンジンを吹かせた。
───
少し時間を掛けてに到着したそこは近未来な建築物が立ち並ぶ、かつての世界でも見たことの無い場所。さすがにスタディーエリアに用は無いので付近のショッピングエリアを見回る事にする。歩道を見渡すとヘイローを宿した生徒、箱やカプセルの様な頭部のロボット、そして2本足で歩く犬や猫、なるほどジャガーがいても違和感は無い。適当な駐車場に停めてマップを確認、ショッピングエリアを少し離れると傘下の学校も幾つかある。その中の一つに服以外に買いたい物がありそうだ。
「もたもたしている時間は無い、早く買い物を済ませろ」
「分かってる、そんなカッカしないの」
急かされながらまずは幾つかのブランドの衣料品店を選ぶ事にした。そうして一時間程でサーバルのブランドを中心に揃えて早速着ようと思ったが、外の騒ぎが店内に響きジャケットのまま外に出た。銃声にガラスの割れる音、怒号が響きながらパニックが広がる。
遠くを見てみれば、ヘルメットの生徒達が乗った軍用車が群衆を退かすべくマシンガンを連射しながら爆走している。さてどうしようかと一瞬考えると、反対側からこちらに向かう気配を感じる。それはメイド服にスカジャンを羽織って走る小柄な少女。鎖で繋がったサブマシンガンを持っている以上伊達や酔狂で来ている訳では無さそうだ。そんな彼女と目が合い、車両より速く来ると計算した時には、サオリに荷物を押し付けて車道に立ち、手のひらを開いたレシーブの姿勢を取っていた。その意図に気付いたのか獰猛な笑みを持って地面を踏みしめる。小さくジャンプをして掌、手首と上腕の間を踏みつけると大きな跳躍へと変わり、屋根の無い車両に飛び込み運転席に綺麗に着地した。
「逃がさねぇぞ、テメェら……!」
「や、やめろ!ぐわっ!」
「メイド部め、ギャッ!?」
サッと右横に逸れて1メートル単位で車を避けたら、エンジン音に負けない打撃が人数分以上聞こえ、それらが止んだ時には座席上は一人残して死屍累々。意識が無いとヘイローが消えると聞いたが、自分が手伝ったとはいえ派手にやった物だ。
「おい」
「うん?」
「さっきのヤツ、よく出来たな」
「んー、これは!って思ってつい?ダメ?」
「いぃや、助かった」
「そりゃ良かった、噂のC&Cの人?」
「美甘ネルだ」
「ジャガーでいいよ。またね」
そのまま群衆に戻り、手さげ袋を持った連れとどこかに消えていった。
「ぶちょー!ターゲットは?」
「ほら、この通りだよ」
「意外ですね、車両ごと破壊してしまうかと……」
「ジャガーってヤツがあたしをレシーブして車の中入れたんだ」
「一発勝負でネル先輩を移動する目標に跳ばしたの……?」
「でもジャンプしただけなのに何か疲れたんだよな……」
───
「勝手な行動をするな!」
「ゴメンて、ほっといたら余計巻き込まれたかもだけど」
「口答えもよせ」
駐車場で先程の行為を怒られてしまった。キヴォトスでは銃撃戦やトラブルが日常茶飯事だから多目に見て欲しいがアリウスの存在に繋がれば一大事だ。
「それにさっきの子、ミレニアム最強の美甘ネルでしょ?会えて話せて戦いも見れたからラッキーだよ」
「身軽さに機転の効かせ方、近接攻撃力は目を見張る物があった。この事は全てマダムに報告する」
「『問題を起こさずミレニアムの最強に出会えてラッキーでした』って言ってね」
「『問題に巻き込まれてミレニアムに知られてしまった』だ馬鹿者!」
定時報告前に軽く騒いで危うく銃を向けられる所だった。
───
「何だ、どこだよここ?」
美甘ネルは状況が分からなかった。妙な猫がレシーブのポーズを取ってそれに乗ったのは覚えているが、そこからの記憶が無い、と言うよりいきなりこの状況だった。辺りは優しい乳白色、天国や死後の世界をイメージさせる空間。
「あたし、死んじまったのか?」
「違うよ、美甘ネルの分身さん」
「テメェは……!」
地面の概念は不明だが、そこに立っていたのは件のジャケットを着たキヴォトスの住人には珍しく背の高い猫。
「さっきの猫!」
「ジャガーだよ」
「何したんだ!?」
「詳しい説明跳ばして言いたいのは…協力して?」
高圧的でも恭しくも無く、妙に気が抜ける物言いだった。
次回、シン・仮面ライダーネタバレ注意
多分マダムオーグはアリウスに対抗できる教育してない相手には無理は言えないと思う
ジャガーオーグならサクラコの覚悟礼装を先に発掘(発見)する展開はあり?
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あり
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なし