オーグメントと青春   作:鳥鍋

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ハビダットかハビタットか分かりづらい


偽り無き共存

 

「以上がジャガーオーグのミレニアムにおける行動記録です」

「いい子にしました」

「……」

 

サオリはベアトリーチェに騒動も含めて全てを報告した。大きく感情を見せない分、思考が底知れず恐ろしい。

 

「ジャガーオーグ」

「不可抗力、治安悪けりゃどこかで巻き込まれるよ」

「情報網の発達したミレニアムにおいてエージェントのC&Cに接触、これがアリウスの情報を曝す以外の何だと言うのですか」

「ただの一般ジャガーとして追及されずに行動できたから素晴らしい潜入結果です」

≪あたしも猫かと思ったもんな≫

「そもそも私の言葉に逆らいアリウスを離れるのが間違いだったのです。今後一切クレジットの提供、キヴォトスの住民との会話を禁止します」

「そもそもトラブルに巻き込まれない作戦なんかありません。しっかり準備しても想定外で負けた幹部もいるし、帰って来れただけ上出来でしょー。だからヤダ」

「……」

 

怒りで声色が変わるベアトリーチェに対して、言ってる事は分かるけど器が小さくないかとジャガーオーグと頭の中の声は考えた。

 

「ご自慢のアリウススクワッドが100点の行動が取れるなら罰でも何でもどうぞ」

≪あのサオリってヤツもなかなかだと思うぞ≫

「私が教育した者達が間違いを犯すはずありません」

「お目付け役の目の前でレシーブしちゃってゴメンなさい」

「サオリ、貴女が付いていながら何たる体たらくですか」

「わー責任転嫁」

「お前は黙っていろ!」

 

主に彼の発言でベアトリーチェのボロが出ている。それに気付いたのか立ち振舞いを直す。

 

「……此度は盗聴、監視も確認されず帰投した為、大目に見るとします。次に逆らえば貴方のアリウスでの自由を奪う事、ゆめゆめ忘れる事なく」

≪あたしは知っちまったけど≫

「…あくまで仕事が欲しいだけで命令に従う義務はなし、食客みたいな物だからそこんとこよろしく」

 

ジャガーオーグは彼女の怒りの沸点と器の小ささを勝手に知り、サオリはジャガーの何も恐れぬ発言に驚愕と怒りを覚えた。

 

───

 

ミレニアムのおつかいで手に入れたのは部屋着、下着、スポーティーな服、最新の新聞、子供用の科学雑誌、美容学校で散髪用マネキンとヘアカット用ハサミセット、カットモデル雑誌、何よりの収穫は美甘ネルのプラーナ10%だ。理由はよその学区に潜入するならと戦闘ジャケットより楽な格好、キヴォトスやミレニアムの情報、自分の武器がハサミだから何だか欲しくなり役に立つと思った。最後はアリウスの情報部の下調べ、SHOCKERの人工知能の報告で思い付いた。

仮面ライダーは一人は死亡したが、プラーナをマスクに移す事で生き延びているそうだ。同僚と共に二人で一人の彼らと戦ったのは記憶に新しい。彼らに匹敵する戦力を自分にも移植できるかと考え、かつての世界では叶わなかったオーグメント以外の強者を調べ上げた。トリニティ正義実現委員会の剣先ツルギ、ゲヘナ学園風紀委員会の空崎ヒナ、予行演習に行くミレニアムはC&Cの美甘ネルを見付ければラッキー位に思ったが、まさかの棚からぼた餅、鴨が葱を背負って来た所をレシーブで体に触れて一瞬の内に手に入れた。

 

「と言うわけ」

「つまりあたしは元のあたしじゃねぇのか?」

「生命力だけの分身だよ」

「ふざけんな!じゃあ『あたし』はどうなっちまったんだ?!」

「献血で一度の採血は200か400ml、多くて血液の十分の一前後だから何とも無いんじゃないかな」

「だろうな。あたしはどうすんだよ、C&Cに帰れるのか?」

「逆にあなたの生命力奪ったからお返ししますって言われて信じる?」

「……じゃあなんだ、このままずっとコイツのマスクの中から出られないってのかよ」

 

光の空間でネルは頭を抱えた。仲間の前では見せない姿だが、どうしても感情が隠せない。

 

「ある程度の願い事は聞くから協力して欲しいんだ」

「協力だぁ?」

「ボクはどれだけ強い?」

「そうだな……あたしら(C&C)といい勝負できるんじゃないか?」

「ここのエリートのスクワッドとは一人を人質にして勝ったけど同じ手は喰わないだろうし、何よりボクと同格でキヴォトスの戦いを知ってる相手の経験が欲しい」

「はっ、それで虚しいだかトリニティは敵だって奴らを助けるんならお断りだ!」

 

プラーナだけとはいえ、意思と矜持を持っている彼女はただ頷く事は無さそうだ。しかしジャガーオーグは憎しみの傀儡ではない。

 

「違う、いつかアリウスを抜けてもやっていけるように、ここに愛着は何も無いよ」

「本当か?」

「ここは魂の世界、嘘偽りは出来ないよ。何より…」

「何だ?」

「あのいちご大福の化け物に付いていても利用されるだけ、どうせなら迷惑掛けまくっていいと思う」

 

パワーワードに軽く笑い、ネルは表情を変えて答える。

 

「ハハっ、言えてるな。で、アンタは結局どうすんだ」

「元々この世界の住人じゃない、向こうに残した物を取り戻したいけどまた殺されるかもしれない、失敗して浦島太郎になる事だって有り得る。なんちゃって人殺し組を穏やかに抜けて、手掛かりを見付けられるよう調べ物や何処かに協力できる立場が欲しいかな」

「あたしは何するんだ?」

「キヴォトスの常識があるまともな感性の話し相手兼訓練相手を頼んでいい?」

「だったら暇しない様に暴れるのに付き合え。てめぇを殴りたくて仕方無ぇ」

「銃は無いけど平気?殴り合い慣れてる?」

「C&Cのダブルオー舐めんな。あたしの間合いでの戦いでは負けねぇんだ」

「殴り合いだけならもっとすごいのを知ってるけど…君ならその次くらい歯応えあるかも」

「褒めてんのかそれ?」

「彼と殺し合って負けた。他にパンチがすごい人は知らない。ほら」

 

ジャガーオーグは右手の平を前につき出す。ネルは今までの話で貯まっていた鬱憤を晴らす如く、彼より小さな右拳を引き絞って中心にぶつける。精神だけの空間に一発乾いた音が響き、開いた手が軽く奥に動かされた。

 

「…うん。いいパンチだ。どちらかと言うと魂の強さかな」

「そうかよ。まぁ多少やれるみてぇだな」

「力だけはあるからね。納得したら今後ともよろしく?」

「あのよ、最後に聞くけどよ……、アンタは一体何なんだ?」

「そうだな…」

 

イメージの中で被っているジャガーのマスクを外す。その目には細長い瞳孔があり、その鋭さは正に獣のそれだった。

 

「やることに飽きた人殺し?今の生活は楽だよ?」

 

───

 

「あっ…」

 

つい実際にマスクを外してしまった。彼女は不良らしいが、昔の漫画の主人公のみたいに曲げない芯はあると見た。緑川イチローのハビタット世界ではないが嘘やごまかしが無いのは己を覆い隠さないので楽であり苦しい。それでもいつか慣れるのかもしれない。そこでの感覚に現実でも飲み込まれない様にしよう。彼女が入っているのでマスクを丁寧に置くのだった。




イチロー兄さんとルリ子が出会ったのはマスクの中でハビタット世界そのものでは無いと判断しました

ジャガーオーグならサクラコの覚悟礼装を先に発掘(発見)する展開はあり?

  • あり
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