オーグメントと青春   作:鳥鍋

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ジャガーオーグ2+00号爆誕!
二人で一人の強みを生かせるか?


日だまりと散髪

 

ショキショキと音を立てながら黒い頭髪が落ちていく。台の上に乗ったそれを左右に動いて直ハサミと櫛で細部を整え、毛先を揃える。そうして理容師見習いジャガーの手により綺麗なボブカットが完成した。

 

≪意外と器用なんだな≫

「刃物の扱いには自信ありだよ」

 

ビニールシートに落ちた毛を包んだ後に、マネキンを高く掲げて感想を呟いた。余った物資の空箱を積み上げて作った台座は訓練場の中では目立つので声を掛けられる事だろう。

 

「そこで何をしているの?」

「えっとミサキちゃん?カットしてく?今なら見習い料金でタダ」

「それに意味はある?」

「機能的に整えた方が仕事しやすいよ」

 

戒野ミサキは自分の前髪と一番長い横の毛先に触れた。話しぶりからして自他や物事への関心が薄そうだが、髪の毛を摘まむ様に確認してこちらを向く。

 

「伸びた分切れる?」

「どれどれ?」

 

流石に仕事に関わる事象には注意を向けるらしい。散髪用のケープを袋から出してミサキに掛けようとすると、通信機から連絡が来たので無造作に取り出す。

 

「もしもし」

『ジャガーオーグ、任務だ。至聖所に侵入したトリニティを自治区外まで気付かれず監視しろ』

「了解、すぐ行く」

 

通話を切ってケープやハサミを箱にしまって閉じる。散髪道具一式の箱をミサキに持たせた。

 

「無くさない様に預けていい?時間作って切るから待ってて」

「分かった、貴方の部屋の前に置いておく」

 

そうして慌ただしそうに訓練場から飛び出して行った。ミサキの隣の積んだ空箱とマネキンだけが存在感を残していた。

 

───

 

落ち合ったサオリ曰く、トリニティ生がアリウスと和解がしたいと申し出た事、その事をマダムに報告するとの事、対象を監視しやすいポイントはどこそこにあると言う事だった。そうして双眼鏡を借りて、今まさに自治区の出入口であるカタコンベに向かう白い翼の少女を観察していた。

 

「こちらジャガー、対象はカタコンベの方へ移動、気付かれない様追跡する」

『了解』

 

高所から少しずつ音を殺して段差を移動する。潜入と暗殺がかつての仕事、忍び足など夜間だが朝飯前である。おまけに彼女の足跡や足音どころか香水らしき特徴的な匂いがあれば、見失うなど万に一つも有りはしない。

 

≪匂いで見つけるってアンタ犬かよ≫

≪ジャガーだし。SHOCKERの改造様さまだよ≫

 

まるでコンビニから自宅に帰る様な足取りですいすい進む相手を追い続けるが、地下に入ってからが難しい。SHOCKERでも用意しないレベルの複雑な分かれ道やギミックの通路を迷う事なく進むトリニティ生に二人は驚く。

 

≪もしかして、あの娘メチャクチャすごい?≫

≪あたしも分かる、アイツはただ者じゃねぇ≫

 

直接視界に入らず彼女と同じ道を辿り、足音が止まれば息を殺す事を繰り返し、埃っぽい匂いが薄くなった頃には辺りに光が差して迷路が終わりを迎えた。対象の足音や気配が遠のくのを感じて出口を通ると、いつの間に夜明けを迎えたのか柔らかい朝の日射しで照らされていた廃墟が周りにあった。

 

「こちらジャガー、対象は見送った。不審な動きは無かったよ」

『了解、そこで待機しろ、回収する』

「お迎え?元来た道辿れるよ?」

『指定した経路に従え』

「はーい」

 

アリウス生オペレーターへの連絡を切って、日の当たる部分で腰掛ける事にした。朝の日射しをゆっくり浴びるのも久し振りだ。

 

≪にしても、マスクの中でも暖かいってのは分かるもんだな≫

「五感は共有するみたいだねー。味覚はまだ分からないけど」

≪食わねぇで平気か?≫

「プラーナで食事はいらないよ?味気ないアレはこっちから願い下げ」

≪よくわかんねぇ体だな。エンジニア部の連中が黙ってねぇだろうな≫

「科学者じゃないけど、生物学とエネルギーの範囲が大きいと思うよ?」

 

身体を伸ばしながらマスクの中のネルと会話を続ける。不意にジャガーはある事が思い浮かんだ。

 

「ところで、あのいちご大福マダムってどう思う?」

≪いちご、あの女?無駄に高圧的でいけすかないヤツ≫

「正直、ボクはアリウスには馴染めて無いんだよね」

≪言われりゃ確かにな≫

「アリウスの子達はトリニティの憎しみで動いているけど、ボクは幸せが欲しくてちょっと好きにやってる。意識の違いかな?」

≪買い物とか散髪とかは流石に気まま過ぎねぇか?≫

「SHOCKERの技術が欲しいのと教育を受けて無いから扱いにくい分縛られないのかも。全部教えたら良くて使い走り、悪くて処分?簡単には負けないつもりだけど」

≪へぇ、簡単に言うじゃねぇか≫

「それにトリニティ憎しって得する為の都合いい思想でしょ、従わせるだけでマダムオーグの意志も何も無い。きっとアリウス自体を使い捨てる」

≪じゃあどうする?アイツをぶちのめすのか?≫

「それで解決する問題じゃないよ。説得や政治やらでどうする事もボクには出来ない。アンチSHOCKERや政府みたいに優秀な大人がいないのを漬け込んで彼女は来たんだ。他に大人が来るか、タイミングで見限るかどっちかかな。面倒見切れないし」

≪んな都合よく行くかよ≫

「それまで大人しくするよ。さっきの和解で何か動くかも」

 

そう答えた後に小さくあくびをしてオーグメントにも訪れる眠気に耐えるのだった。

 

「それとあの娘、すごく恵まれてるニオイがしたけど大丈夫かな…心配」

≪心配するタマかよアンタ≫

「ハハッ、自慢じゃないけどボクの人生半分は後悔で出来てるからね」

≪……それどう反応すりゃいいんだよ≫

 

───

 

「毛先と長さはきっちり揃えたよ」

 

ケープを畳みながら椅子に座ったミサキに声を掛ける。任務の後に改めて彼女を捜し、しっかりと椅子などの準備をして散髪を始め、2cm程切り揃えた。シャンプー、リンスなどの手入れが行き届いてないのか少し手触りがガサガサだった。

 

「視界は良好になった。ありがとう」

「お代は他の子も散髪させてね?」

≪楽しんでんなアンタ≫

 

アリウスには娯楽はほとんど無いので意外と熱を入れていたらしい。雑談を挟んでも「別に」や「興味ない」しか返って来なかったので、その分手元に集中したかも知れない。仕事が欲しいとベアトリーチェには言ったが、これを仕事にカウント出来るかダメ元で聞いてもいいだろう。でもお小言や情報でうるさそうだと思いながら散髪道具を片付けるのだった。

 

「そういえば頭のマネキンはどうした?」

「箱と一緒、廃棄した」

「え…、まあいいけど」




その頃ミカは違和感と視線を感じながら帰っていた?

ジャガーオーグならサクラコの覚悟礼装を先に発掘(発見)する展開はあり?

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