オーグメントと青春   作:鳥鍋

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散髪描写について皆さんに感想などでアドバイスをいただければ幸いです


幸せのエール

 

『ジャガーオーグ、仕事だ』

『…何?』

『SHOCKERの作戦の目撃者をErmordung、始末しろ』

『何度目だよ、それ。亀野郎の手際が悪かったんでしょ。そっちで片付けてよ』

『そのカメオーグやお前のManagerは誰だと思う?私が纏め仮面Reiterと政府関係者を始末するのがDESTRON。従わないなら人工子宮装置を…』

『待った待った、殺るから待っててば!』

『それでいい、役割を全うしろ』

『はぁ…いつから幸せじゃ無いんだ、早く会いたいよ…□□』

 

───

 

オーグメントになっても生理現象は起こりうる。空腹はともかく身体は汚れ、体毛は伸び続ける。故に夜間のシャワーと朝の洗顔は欠かせない。冷水をマスクを外した顔に浴びせ、拝借したコンバットナイフを顎に当てる。カミソリやシェーバーを買わないのは失敗だったが、ジャガーの顔で所望すればドコに使うのかビビられる。この身体は丈夫なのでカミソリ負けしないのは幸いだ。一通り剃り終えて、ベルトを起動し、鏡を見ながら最強の宿るマスクを被ればDESTRONの誇るジャガーの戦士が目覚めた。

 

「おはようネルちゃん」

≪……見違えたなアンタ≫

「こう見えて生きてる人間、人間?だからね」

≪まぁあたしを吸い取ったからな、妖怪かよ≫

 

洗面所を出て今日も一日が始まる。いちご大福の化け物にお小言を言われるか、辛気臭い生徒達と訓練でもするのか、ネルとのイメージでの殴り合いか、いっそ合法的に外に出る情報部の手伝いを申請するか考えて歩くとサオリを見つけた。隣にはあまり見ない小柄な白い翼の生徒がいる。

 

「おはよーサオリさん。その子は?」

「……お前か、後にしろ」

「この前の別件ってヤツ?」

「答える義理は無い」

「サオリ、彼は?」

「初めましてかな、ジャガーだよ」

「……白州アズサだ」

 

件の生徒、アズサは少し警戒して返事をした。単なる人見知りか、自分の事を聞いてこの反応なのか。

 

「関わる時間は無い、行くぞ」

「ヒドいな、ボクを何だと思ってるのさ」

「マダムに悪態を着く愚か者だ」

「だって生徒じゃないし、それより何してんの?秘密事?」

「……聖園ミカが提言したトリニティへの転校準備だ」

 

答えてくれたのは意外だったが、隠す程の事では無いと言う訳か。

 

「何か手伝う?暇だし」

「お前に何が出来る」

「転校手続きなら…書類仕事と散髪を少々?」

「散髪?」

「人前に立つなら身綺麗にすると印象いいよ」

「ふむ……第一印象を変える事で他者への心象を良くする事は潜入において利に適っている。サオリ」

「……着いてこい」

 

面白そうで変わった事に一つ噛むのに成功した。

 

≪そういう所アスナみてぇだな≫

≪友達?≫

 

───

 

聞けばトリニティとアリウスの和解に向けて一人転校させて様子を見る、フリをしてティーパーティーを暗殺して崩壊させる計画、つまり鉄砲玉だ。先程はその計画に必要な武器を確認する所だったらしい。

 

「ここまで教えるなんて意外だな。敵を騙すなら味方からでだいたいウソだったり」

「そんな回りくどい方法があるか、アズサの行動を元に襲撃する計画を立てた以上機密でもない」

「トリニティを?あの子に下見させてから地形や警備の隙をって感じ?」

「それもあるな」

「そういうのボクもやりたいんだけど観光客のフリして、ドコに頼む?情報部?スクワッド?」

「ミレニアムでマダムに叱責されたのを忘れたか!」

「お咎め無しだからいいでしょ別に」

「マダムに従わない者に……」

「マダムマダムって言わないの、ボク食客で従う義務無いし」

「サオリ、ジャガー……」

 

ヒートアップしかけた時に横合いからアズサが声を掛ける。気まずい顔を見てジャガーは申し訳なさそうにして、サオリは重要事の為に怒りを一旦忘れた。

 

「終わったな」

「"爆弾"は受け取った。後は計画通りだ」

「次はボクの番だね」

 

待ってましたとばかりに散髪セットを取り出した。

 

「ここでするのか?」

「サオリさん、場所変えよう」

 

早速閉まった。椅子があって掃除しやすい場所がいいに決まっている。サオリはため息を吐くのを我慢して適当な部屋に案内した。

 

───

 

「お客さん、今日はどんな髪型にしましょうか」

「こう言うのは……よく分からない」

 

ノリノリでケープを掛けて美容師のマネをするジャガーに対してアズサは知識が無いので少し困惑していた。

 

「じゃあ毛先を揃えて、長さは変えない感じにするよ?」

「……任せた」

 

毛先に櫛を通してみると思った以上に固く、枝毛が多い。訓練が多い割に福利厚生が考慮されずシャンプー、ドライヤーなど美容用品が無いんだろう。衛生面を考えると全く使わない訳では無さそうだが。

 

「サオリさん、シャンプーとかドライヤー無い?」

「……姫が時々使っている」

「後で貸して」

「ダメだ」

 

そもそも美容室の洗面台が無いからセルフサービスにしかならないので、見習い美容師からの成長は厳しい。

 

「切ってくよ」

「……」

 

少し身体が強張っている。この様子を表すなら後ろに立つ自分を警戒しているのか。

 

「大丈夫、取って食わないから。医者に掛かるみたいに思って」

「そ、そうか……」

 

直ハサミと櫛で頭髪を真っ直ぐ整えながら枝毛や毛先を切り落とし、世間話も交えてみる。

 

「アズサちゃん、アリウスはトリニティぶっ壊すんでしょ?神聖アリウス帝国作って幸せになれるかな。シャンプーリンス使い放題だよ?」

「口を慎めジャガーオーグ」

「違った、ベアトリーチェメガロポリス?第三マダム帝国?ハイルマダム!なんちゃって」

≪そんなのあるだけで気味悪りぃな≫

「貴様!」

「落ち着けサオリ。彼の発言に悪意は無い……はず」

 

サオリの怒りは収まったが馬鹿にしたように聞こえたのか、いまいちジャガーは納得行かない。

 

「ごめんごめん。じゃあ楽しい事無い?誰かは暇な時にこれやってるとか」

「私は……特に思い付かない。時間があれば銃器のメンテナンスや射撃の訓練はしている」

「他の子は?後ろ終わったから横と前ね」

 

椅子は回転しないので自分から動き作業に取り掛かる。

 

「スクワッドなら少し知ってる。ヒヨリは雑誌を集めているし、姫は花に興味があると言っていた」

「ふんふん、じゃそこのご機嫌斜めなサオリさんは?」

「私か?特に無いな」

「暇な時間は?」

「訓練に充てている」

「アズサちゃんと一緒に?」

「私はサオリに訓練を受けた」

「……」

 

途端に無言になったサオリを尻目に前髪を七割切り揃えた。

 

「…これでヨシ。終わったよ」

「ありがとう、ジャガー」

 

ブラシで残った毛をケープに落とし、シャンプーハットの形のそれを慎重に外す。見違えると言うよりかアズサの髪型は軽やかな印象になった。

 

「サオリさんもどう?」

「必要ない。自分で切れる」

「まさかナイフで切ってるとか?」

「そうだ」

「えー…」

≪人の事言えねぇだろ≫

 

生活用品を整える事を妖怪いちご大福に抗議しようと決めた瞬間だった。

 

「…まあいいや、準備は終わった?」

「荷造りが終わり次第、指定された日に登校するだけだ」

「そっか…アズサちゃん、アドバイスしていい?」

「何?」

「トリニティに、世間に出たら幸せになれる物を見つけるのをお勧めするよ」

「幸せ?」

 

アズサはキョトンとした様子で聞く。

 

「普通の人はどんなカタチでもそれがある。これが好き、趣味は何って言えたら怪しまれない、と思うよ」

 

好きな人、楽しい事、落ち着く時間、これはと言うのがあればいい、と付け加える。

 

「あ、トリニティぶち殺す時間が楽しいのはナシね」

「さすがにそれは無い」

「良かった、ボクも一度通った道だから気をつけて」

「ジャガーオーグ」

「何だよサオリさん、マダムさんの事だから敵を八つ裂きにするのは幸せって教わらなかった?」

「マダムを何だと思っている貴様」

「妖怪虚しい女、だったら言わないね、ごめん」

≪あたしでもそこまでしねぇ≫

 

同僚や宿敵よろしく敵を肉塊に変える妖怪の姿を想像したが、あくまで軍隊、必要以上はしないと言う事か。

 

「幸せなど求めるな。全ては虚し……」

「これからアズサちゃんはトリニティ生になるんですー。郷に入っては郷に従えー!」

「……教義は忘れるな」

 

マスクで分からないが歯ぎしりする程嫌そうな顔に見えた。同僚と同じニオイ、彼女との相性は良くない。

 

「そう言う事で、殺しに行っても幸せにはなれるから応援するよ」

「そ、そうか。トリニティ生との円滑なコミュニケーションの為に幸せ……を探してみる」

 

DESTRONと言うより実にSHOCKER的なエールは送った。彼女の動向でアリウスや自分の運命は変わると思いながら道具一式を片付け始めた。




サオリって実は忙しい苦労人ポジション?

ジャガーオーグならサクラコの覚悟礼装を先に発掘(発見)する展開はあり?

  • あり
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