「それじゃあ、どうすれば……」
「そう慌てなさんな。つまるところ、宝具っていうのは英霊の本能、本質ってもんだ。お嬢ちゃんが未熟であろうとなかろうと、サーヴァントである以上は問題はないって事さね」
「でも、それでは……!」
「まぁ聞け」
ーーー解決策を求める様に口を開いた藤丸に対して、まるで問題ないと言わんばかりに語るクー・フーリンだが、当の本人であるマシュ自身はそんな気休めでは納得できない。
カルデアとしての責務。戦力では隣に並ぶ英雄達の足元にも及ばない事への歯痒さ。自身のマスター、藤丸立香への信頼に応えられないかもしれないという不安。
戦場に赴くには余りに幼く、無垢な精神。その揺らぎにも似た静かな動揺を、百戦錬磨の英霊2人は見逃さない。
だからこそ。
「確かに宝具なんてのは大抵強力なもんだ。リスクだろうが弱点だろうが、並大抵な事なら天秤にかけたそれ以上の
「ですが、やはりそれなら……」
「でもな、結局は『それだけ』だ」
「……それ、だけ?」
クー・フーリンの言葉になおの事食い下がるマシュだったが、続けられた言葉を聞いて息を呑む。
「さっきも言ったが、宝具は英霊の本能だ。だからこそ、その本能を制する
「…………」
過ぎた力を身を滅ぼす。その身に宿した宝具が如何に強力であろうとも、力任せに振りかざしたならば、その反動は必ずその身に降り注ぐ。
焦燥感は心を惑わせ、定まらぬ力に信念は曇り、濁った慢心はその身を狂わせる。
「与えられた力をただ使う……それじゃ戦車や大砲と何が違う? 闇雲に力を求めて使った所で、行き着く先はその重さに溺れて潰れるってのが関の山だ」
そんな英雄達を数え切れぬほどその目で見てきた。だからこそ、先人たる存在は後に続く者達へ告げる。先を進んだ英雄達の過ちを。
後悔はない。だがお前達はそうなってくれるなという身勝手とも言える願いと共に。
「それに、そんな力よりもっといいモンをお前さんは持ってんだろ?」
「……ぇ?」
「さっきランサーと戦う前に見せたあの意思さ」
そして、何より大事なものがある。力を持つ、持たないも関係ない、何より大切な物を。
「テメェのマスターを何がなんでも守る、そうやって前に立つあの心構え、それがあるんなら英霊としては十分だ」
勇敢、あるいは無謀。だとしても、護るべき者達を背負い、震える足で眼前の恐怖に飛び込んだあの心こそが英雄たる資格なのだと。
「お嬢ちゃんの持つその意思に心が追いついた時、自ずと宝具は使える様になるだろうよ」
力を求める者達の多くが持っている、そして時に見落としてしまう眩いばかりの心の在り方を。
「……驚きました。貴方がまさかその様に誰かを導こうとは」
「キャスタークラスの影響かねぇ? 理屈っぽいのはガラじゃねぇってのはわかってるがな、どうにも放っておけねぇのさ」
「……はい、そうですね。そう言う事にしておきましょう」
ーーークー・フーリンの言葉に誰もが耳を傾け、黙って聞き入っていた。
先程までに焦りを抱いていたマシュは勿論、マスターである自分達2人も。
「マシュ」
「はいっ!?」
「何も難しく考える必要はありません。貴方の抱える思いは、今を生きる貴方だからこそのもの。その上で彼の言葉をどう受け取るのか。自分の心に寄り添いながら、ゆっくりと考えればいい」
「心に……寄り添って……」
隣にいるセイバーも、固まっていたマシュに優しく語りかける。安心させる様に、また先ほどのクー・フーリン同様、まるで導くかの様に。
「……それにな、お嬢ちゃんが宝具を使えようが使えなかろうが、こっちにはオレとセイバーがいるんだ。大船に乗ったつもりで気楽に行こうや」
「……はい!」
思い出したかの様に付け加えたクー・フーリンの締めの言葉に、マシュの顔に余裕が戻る。
「……俺達も頑張らないと、だね」
「あぁ、そうだな」
その様子を見て、自分達もしっかりせねばと思わされる。前に立つ彼女があれだけ悩んでいるんだ、何が出来るかはわからないが、自分達に出来る事を、出来るだけ。
「全く、こんな時に、それもこんな場所でご高説なんて。流石はサーヴァントってところかしら」
「所長……」
「嫌味よ、気にしないで」
マシュを見ながらそう言って腕を組んでいる所長さんも、言葉とは裏腹に口元には優しい笑みを浮かべている。
……なんとなくだけど、これまでの威圧的な態度の方ではなく、こっちの方が素なんじゃなかろうか。所謂組織のトップ、締めなければいけない部分も当然あるだろうし、無理してあんな態度とってたのかも。
「と言うか藤丸! そもそもあんたがちゃんとしたマスターなら、マシュに宿る英霊のスキルを含めた詳しい
「そ、そんな事言われても……」
「言い訳しないッ!」
あ、やっぱりこっちの方が素かもしれない。
「さて、そんじゃ肩の凝る話もここまでだ。色々と道草食った分、いいかげん本丸に向けて動き出すかね」
その言葉を聞いて、ベンチから立ち上がる。
大聖杯の元に向かうだけと思っていたが、随分と回り道をした気がする。だが少なくとも、自分達にとっては意義のある遠回りだったと思える時間だった。
Q.なんであの無防備なところに敵の襲撃がなかったの?
A.セイバーとキャスター、喋りながらですが警戒心マックスです。どっからでも来いや状態です。
書きたい事、ちゃんと書けたかな……少しでも伝わればいいんですが。はい。
それと私事ですが、セイバーの宝具レベルが5になりました。いぇい。