人理修復の旅でアルトリアを引いたマスターの話   作:薄茶

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今回のイベントも楽しかったな。

本当に、楽しかったんだ。


大聖杯の入り口にて

神社っぽいところを抜けてたどり着いた目的地、大聖杯へと続く洞窟。遅れを取り戻すかの様に突き進んだ自分達は、ようやくその入り口にたどり着いた。

 

 

「ここが大聖杯に続く道だ」

 

「なに、これ……この魔力、普通じゃない……っ」

 

 

横で顔を顰める所長さんを見ながら、自分達もその洞穴に広がる闇を見つめる。魔力云々は未だに理解できないが、この洞窟から溢れ出る様な変な雰囲気という点では同意出来る。

 

空気が淀んでいるというか、そういう嫌な感じが漏れ出ている様な……言葉にしにくい独特な物という事が、なんとなく肌でわかる。

 

 

「この先に冬木のセイバーが?」

 

「あぁ、脇目も振らず魔力の発生源に向かって突き進めば、すぐに目的の場所に辿り着けるだろう」

 

 

藤丸の問いにクー・フーリンが頷く。要するにこの魔力の大本に向かって突っ走ればいいと言う事か。自分達マスター組では察知する事は出来ないが、幸い周りにはその方面のスペシャリストばかり。道に迷うこともないだろう。

 

やるべき事はわかりきってる、ここまでくれば一直線だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーッユウト、伏せてっ!」

 

 

 

 

そんなんだから、こうして油断する。

 

声に反応して後ろを振り返ると、超速でこちらに接近する飛翔物を辛うじて視界に捉える。冷たい殺意が込められた『ソレ』が自分に向けられていると感じたのはすぐだった。

 

隣にいる藤丸や所長さんは勿論、辛うじて反応し始めたマシュの助けも間に合わない。

問答無用の直撃コース、音を切り裂いて接近する物体は、このままなら瞬く間に自分の頭蓋を粉砕するだろう事は想像に難しくない。

 

 

「叩き落とすっ!」

 

 

しかし、一も二もなく間に割り込んでいたセイバーがまるで飛ぶ様に駆けていた。

 

言葉通り、向かってくる物質に向かってその見えない剣を振り下ろし、爆音と共に跡形もなく吹き飛ばして見せた。

 

 

「……ッ」

 

 

息を呑む暇すらない一瞬の攻防。忘れた呼吸を行なってみて初めて、自分が生きている事を思い出す。

 

 

「無事ですか、マスター!?」

 

「っあ、あぁ、なんとか。助かった、セイバー……いや、本当に助かった」

 

「やるねぇセイバー。こりゃあ、オレの出る幕はなかったか?」

 

 

こちらに声をかけるセイバーに何とか返事を返す。隣で杖を構えるクー・フーリンもこの襲撃に気付いていたのか、おそらく何かしらの対策を講じてくれていたのだろう事がセリフから読み取れる。いや、本当2人には申し訳ない。

 

 

「まさか、サーヴァント!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

『……よく防いだ。流石だな、セイバー』

 

 

 

 

所長さんの声に正解だと答える様に、辺りに男の声が響いた。

 

賞賛の声が聞こえた場所に、全員の視線が向けられる。低く、まるで冷え切った鉄の様な男の声。向けられた殺意に似た波長から、先程の自分への攻撃がその者から向けられたのだと即時に理解した。

 

 

 

「貴方は……『アーチャー』ッ!」

 

 

 

剣を構えるセイバーがやはり、と声を上げた。高台の様になっていた崖の上、そこには日に焼けた褐色の肌をした白髪の屈強な男……弓兵(アーチャー)のサーヴァントがこちらを見下ろしていた。

 

 

「ようやく信奉者様のご登場か。それにしても警告もなしにマスターを攻撃とは、何時もの余裕ふかしたあの態度はどこにやった?」

 

そんなもの(信奉者)になった覚えはないがね。つまらん来客の相手ぐらいなら務めるさ。それに、そもそもこちらは弓兵。キャスターだけならまだしも、かの騎士王が敵だと言うのなら、馬鹿正直に真正面から戦いを仕掛ける方がおかしい」

 

 

クー・フーリンの発した挑発もなんのその、逆に涼しい顔で小馬鹿にした様に煽り返すアーチャー。

 

なんか……仲悪くない? いや、敵としてはそりゃそうなんだけども。

 

 

 

「アーチャー、なぜ貴方が……!?」

 

「なぜ、と言われてもな。敵である者達に語る言葉など、こちらは持ち合わせていないのでね」

 

 

セイバーがかける言葉に対してもどこかそっけない。とりつく島もないとはこの事だ。

 

 

「……知り合い?」

 

「まぁな、どっちかっつうと腐れ縁だけどよ」

 

 

藤丸の言葉に吐き捨てる様に同意しながらもクー・フーリンは前方にいるアーチャーへの警戒を怠らない。

 

というかやはりこの3人、共通の知り合いらしい。恐らくセイバーの言っていた聖杯戦争での対戦相手と言った所だろうか。クー・フーリンだけならまだしも、あのアーチャーまでも知り合いとは。

 

 

「普段はセイバーの影に隠れてセコセコやってる奴がこうして出てくるとは、一体どう言う風の吹き回しだ?」

 

「それはこちらの台詞だキャスター。今更若輩の引率とはお優しい事だ。戦いとなれば実の息子すら刺し殺した君らしくもない」

 

「ったく、相変わらず余計な事を。いちいち嫌味な野郎だなテメェは」

 

 

……やっぱり仲悪くない? あんまりにも一言二言多い気がする。以前の対戦相手とはいえ、セイバーとクー・フーリンはここまでバシバシに言い合ってなかった気がする。

 

 

「君もだ、セイバー。ここに来て『また』未熟者の世話係とは、最優と謳われたセイバーの幸運もいよいよ底が見えたと言った所か? いや全く、その貧乏くじには頭が下がる」

 

「うわぁ、めっちゃこっち見てるよ……多分馬鹿にされてるし」

 

 

2人の言い合いを横で聞いていると、アーチャーの名に違わぬ鋭い言葉の矢が流れ弾の様にブッ刺さる。実際その通りだから何も反論できないけど。

 

 

「っていうか、『また』?」

 

「……なに。こちらの話だ、セイバーのマスター」

 

 

チクチクする様なアーチャーの何処か嫌味の込められた言葉以上に鋭い視線に気圧されそうになるが、ふと引っかかる言葉を無意識に呟いた。

 

そんな自分の言葉を聞いて、アーチャーが目を伏せる。しかし、すぐにその冷たい目を薄く開き、こちらを再び睨みつける。

 

 

「最も、そういう意味で不運なのはお前達だ。身の丈に合わない大義を志した者共に振り回され、望まぬ死地に送り込まれたという点では勝手ながら同情させて貰おう」

 

「お前にしては随分と甘いじゃねぇか。ついでに見逃してくれるってんなら有難いんだが?」

 

「まさか。生憎こちらも仕事でね」

 

 

そう言ったと同時に、アーチャーが何処からともなく弓を出現させた。

 

そして弓を持った逆の方の手で、つがえる為の矢を……。

 

矢、を……。

 

 

「みすみす獲物を見逃す狙撃手がどこにいる?」

 

 

しかし、アーチャーが取り出したのは予想外のものだった。当然の様に出現させたソレを、まるで当然だと言わんばかりに弦にかける。余りにも平然と取り出した事が、逆におかしいのは自分達だと突きつけられている様な気さえしてくるくらいだ。

 

 

「っちょっと待て、あれどうみても剣だぞ!?」

 

 

そう、アーチャーが取り出したのはどこからどう見ても西洋剣。およそ矢として運用するにはどうみても不釣り合いな代物に思わず叫んでしまったのは言うまでもない。

 

流石は英霊、常識なんかでは測れない超常の存在。本当に何でもありである。

 

 

しかし、引き絞られた剣は同時にその形を変える。まるで発射への最適化の為に自ら変化する様に、瞬く間にその姿を一本の矢となった。

 

瞬間、発射される強弓。

 

狙いは先程と同じ自分……ではなく、自分の隣にいたサーヴァントであるマシュだった。

 

マスターに向けた攻撃、と思わせた後に今度は仕掛けた攻撃の矛先はサーヴァント。藤丸や自分に意識を向けていたマシュは全く反応する事が出来ず……

 

 

Eihwaz(エイワズ)

 

 

 

ーーーそして、着弾の遥か手前で、クー・フーリンが繰り出したルーンによる魔術によって、発射された矢は先端から崩れる様に燃え尽きた。

 

 

「釣れない事言うなよアーチャー。ここまで来たんだ、いい加減決着付けようや」

 

「チッ……」

 

 

ニヤリと笑うクー・フーリンにアーチャーは堪らず、と言った様に舌打ちした。

 

 

「おうセイバー、あの頭の硬い男の相手はオレに譲ってもらおうか」

 

「キャスター……」

 

「なぁに、何時もの喧嘩だ。すぐにあの野郎をぶっ飛ばして追いつくさ……とっとと行きな」

 

「……えぇ、貴方もご無事で!」

 

 

キャスターが後は任せろと言わんばかりに洞窟に向けて指をさす。

 

こうまで言われては、こちらもクー・フーリンにこの場を託す他ない。それに、自分たちの目的はまだ先にある。ここで足踏みしている暇はない。

 

そう判断した自分達はセイバー先導のもと、鍾乳洞への入り口に駆け出した。

 

 

「任せたよ、クー・フーリン!」

 

「おうよ。お前も気張れよ、マスター!」

 

 

去り際に声をかけた藤丸に答える様に、クー・フーリンは手に持つ杖を地面に突き立てる。

 

ここは通さん……これまで門番の様に行く手を阻んだアーチャーを、逆に立ちはだかる様に壁となって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行ったか……本来であればあのまま貴様とセイバー2人の足止めをしたかったのだが、そう上手くはいかないか」

 

「なるほど。ハナっからそっち(分断)が目的か」

 

「当然だ。より勝てる確率の高い方をとる……私の戦い方は知ってるだろう?」

 

 

ーーー残されたのは二騎の英霊。まるでこの展開がわかっていたかの様に、2人は落ち着いていた。

 

 

「それにしては色々言った割に随分大人しく引き下がったじゃねぇか?」

 

「なに、そもそもあの盾の英霊ではセイバーには敵わん。あのセイバーにしてもそうだ。彼女が全力を出す事は出来ない」

 

「ほぉ? その心は?」

 

 

まるで謎かけの様に、距離を測りながらの問答は続く。

 

 

「彼女達の持つ剣……全力を解放した二振りの聖剣同士の衝突に、周囲の人間は耐えられない。その事に気付かぬほど、愚かでもあるまい」

 

 

 

アーチャーが口にしたのは純然たる事実。命を賭けたサーヴァント同士の戦いであるのなら、真名を解放しての戦いは必定。同じ存在同士の闘いとあれば尚の事。

 

しかし、その全力はその周囲に躊躇なく牙を向く。己が守るべき存在すら、容易く消し去る程の余波と共に。

 

だからこそ、彼女は本気を出せない。そしてその躊躇は行く手に立つ『王』には致命的な弱点となる。

 

『騎士』として戦う彼女は、『王』としてその力を振るう彼女には勝てないのだと。

 

 

「……さて、そいつはどうかねぇ?」

 

 

 

しかし、クー・フーリンの考えは違った。

 

 

 

「撃ち合うだけが戦いじゃねぇ。勝負ってのは守護(まも)ってこそ……だろ?」

 

 

だからこそ、彼女がいる。

剣を振るうのみが闘いではない。背負うべき主を護らんと震える足で立つ彼女を。恐れと勇気を帯びた、その覚醒を待つ守護の存在を。

 

後を託した者達を信じる。自らのマスターとなった無謀ながらも溢れんばかりの善性を宿した者と、未熟ながらも傍らの剣を信じた魔術師を。

 

 

 

 

「……何を言うかと思えば。やはり貴様とは相容れんな!」

 

「へっ、こっちのセリフだ馬鹿野郎がッ!」

 

 

瞬間。ルーンによって生み出される炎がアーチャーに向かって吹き荒れる。

 

最早言葉は不要。残されたのは二騎がすべき事は、眼前の仇敵を叩き潰す事のみ。




アーチャーの口調が合ってるのか不安です。彼の話し方とも認識できるのかも不安。

ルーンの綴りもあってるかどうか。不安すぎてまじでわからない。
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