『っ君はまさか、あの『アーサー王』なのか!?』
「はい」
「あ、アーサーって……自分でも知ってるぞ」
アーサー王。騎士といえば、の代表格。彼に纏わる話や、その伝説を題材とした作品は世界中に多く存在する。それ程のビッグネーム。
「アーサー王ってあれだ、確か凄い剣の持ち主だ。えぇっと……」
『エクスカリバー。アーサー王が持つとされる、聖剣の中でも頂点に位置する究極の一振りだ!』
「っそうそう、そのエクスカリバー……もしかして、手に持ってるその見えない武器が、その聖剣?」
肯定する様に頷くセイバー。
エクスカリバー、アーサー王の持つ魔法の剣。詳しくないけど、アーサー王が死の淵に至るまで持ち続け、最後には返却されたっていう強力な武器だったはず。
これも持ち主同様、その知名度は折り紙付き。この剣の名前一つで勝手に物語が作られるレベルの名剣だ。
聞けば聞く程自分の様な初心者マスターが呼び寄せるには分不相応なのが悲しい所。いや、むしろ初心者だからこそ、彼女程の存在が共に行動してくれるのはめちゃくちゃラッキーなのでは……?
……ん? 『彼女』? 『彼』じゃなくて?
「……ちょっとまて、アーサーって女の人だったのか!?」
『た、確かに。アーサーは伝承では男性のはずだ。女性だったという話は聞いたことがない』
「……私の時代では、王権といえば男性のもの。民を守り、国を纏めるには自らを男と偽る他なかった。故に、少女の身である事を捨てると決めた。それだけの事です」
「(いや、だとしても無理がなくない?)」
心の中で浮き上がった疑問をぐっと飲み込んで、改めてセイバーを見る。
男として生きるしかなかった。と言っても、今の自分からは彼女はどう見ても女性にしか見えない。着てる服も完全にドレスだし、髪も結ってはあるがそれ相応に長い。女顔、で押し通すにも些か無理がある。
でも、彼女にも事情があるのだろう。そうでもなければ性別を偽り、国を守るために王になんてなるわけがない。
今重要なのは彼女がアーサーかどうかの真偽じゃない、彼女が一緒に戦ってくれるという事実だけだ。
「ま、まぁその辺はまた今度で。とにかく今は、もう1人のマスターと会おう。藤丸だっけ?」
『確かに、僕も賛成だ。彼も先程所長と合流した所だ、2人も出来るだけ早く合流して欲しい。位置はこちらから誘導するよ』
「あの所長さんも無事だったのか。セイ……いや、この場合なんて呼べばいい? アルトリア? それともアーサー?」
「戦闘時以外の場合は特にこだわりはありません。ユウトが呼びたい名で呼んでください」
「そう、か。名前がバレると弱点にもなるんだっけ。じゃあセイバーで。普段から呼んでないと、大事な場面でボロ出しそうだし」
名前がバレるとどんなふうに倒されたのか、どんな相手に苦戦したのか。そう言った事がそのまま弱点として作用する。らしい。
毒で殺されたなら毒にめっぽう弱くなったりするとか、そんな感じか。ともかく百害あって一利なし。
相手によってバレるでもなく、自分によってバラして弱点を突かれるなんて笑うに笑えない。もっとも、彼女にそんな弱点があるのかどうかはわからないが。
これ、無事に帰ったら歴史とか伝説とか色々見なきゃいけない感じ?
『よし、それじゃあ改めて案内する。時間も惜しい、サーヴァントが一緒とはいえ無用な戦闘は極力避けて欲しい。周囲の状況は僕が見ておく』
「了解。……行こう、セイバー!」
「はい、それでは私が先行します。ついて来てください、マスター!」
ロマニの誘導をうけて、2人同時に駆け出す。1人で逃げ回っている時よりもずっと、足に力が入る。
ただ走るだけというのに、なぜだろう。前を力強く駆ける彼女の姿がどうしようもなく頼もしい。