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炎の海の合間を走り抜ける。息が切れるのなんて構わずに、目の前のセイバーに置いていかれない様に必死になって喰らいつく。
話に聞くサーヴァントの身体能力ならとっくの昔に藤丸と合流を果たしているはずだ。だというのに未だ街の中を走っているという事は、単純に自分という存在が彼女の行動の足を引っ張っているという事だ。
その事実が、何とも歯痒い。
「ハァッ!」
『ーーッ、ーー!?』
遭遇する既に見慣れた骨達には脇目も降らず、今は通信が安定せずに切れたロマニから教えられた目的の場所へ真っ直ぐに向かう。
途中、立ち塞がる様に現れた骸骨も、先行していたセイバーの一撃によって訳もわからず吹き飛ばされていく。
あれだけ逃げ回っていた敵を相手に、今は歯牙にもかけない立ち回り。改めて、セイバーと呼ばれるサーヴァントの実力を実感する。
「っ! マスター、左だ!!」
「ぇ、あ!?」
『ーーッ!!』
余計な事ばかり考えていたのか、それとも疲労で周囲を確認しきれていなかったのか。セイバーの声に反応して隣を見てみたら、すぐ真横に武器を構える骸骨の姿を視界に捉える。
狙いを澄ました様に握られていた槍に、思わず身構えて目を瞑る。
「風よ!」
しかし、恐怖に負けて瞳を閉じた瞬間、セイバーの声が辺りに響く。
「舞い上がれッ!」
その言葉を号令に、目の前を突風が吹き荒れる。全く来ない衝撃にゆっくりと目を開けてみれば、迫る骸骨は影も形もなく、そこには風と共に土埃が舞っているのみ。
何かしたらしいセイバーの方を見てみれば、手に持っている見えない筈の武器から、隙間をさす様な輝くばかりの光が一瞬だけ見えた。
「マスター、怪我は!?」
「ハァ……ハァ……っいや、大丈夫。……ふぅ。ごめん、また助けられた」
「いえ、かまいません。無事で良かった」
こちらに駆け寄って安否確認をしてくるセイバーになんとか礼を伝えなら、膝に手をついて息を整える。
同じ距離を進んでいる筈なのに、英霊である彼女は息一つ切らしていない。しかも彼女の場合は進行ルートの確保のために戦闘まで請け負ってくれている。
それに引き換え、こちらはついていくだけで精一杯。情けない事この上ない。
「……少し、進む速度を落としますか?」
「……いや、大丈夫だッ」
こちらに気を遣い、見かねたセイバーがこちらに提案を投げかける。
しかし、答えはNOだ。藤丸と自分は確かにサーヴァントと行動を共にしているが、こんな異常事態の中ではそれも安心とは限らない。
だからこそ、一刻も早い合流を。
力も技術も碌にない自分。だからこそ、それ以外の点で怠ける事は許されない。そして、そんな人間の召喚に応えてくれたセイバーの足を、これ以上引っ張る事はしたくない。
「……ッ行こう!」
「はい!」
吐き出した言葉と共に、今度は自分が先頭となって突き進む。返事一つ、こちらの意思を汲み取ってくれたのか何も言わずに並走する様にセイバーも走り出す。
息は整えられていない、足にも疲労が回っている。腕を振る力もどこか足りなくなっていく。
それでも、前へ。
「フフッ……」
「っこうなったら戦うしかない……!」
「先輩……了解です。もう、それしかありません」
場面は変わり。
逃げ回っていた自分たちをまるで誘い逃がさないと言わんばかりに周囲を囲む鎖の檻、そして正面には不気味な笑みを浮かべる女性……いや、サーヴァント。
この状況に覚悟を決めた様に、先輩……『藤丸 立香』は、目の前で身の丈を超える大楯を構えた少女、『マシュ・キリエライト』に戦闘の意思を伝える。
不安ながらも自身を信じたマスターとしての立香の覚悟を受け取ったのか、マシュも意を決した様に目の前の敵性サーヴァントに向けている盾を握る手に力を込める。
「健気ですね……わかりました、纏めて私の髪で絡め取ってあげましょう……!」
「戦うって、正気!? どうやっても勝ち目なんてないでしょう!?」
そんな献身的な少女をまるで値踏みするかの様に、サーヴァント、ランサーは妖しく微笑んだ。
だが立香の隣にいるカルデア所長、『オルガマリー・アニムスフィア』は叫びながらも冷静に彼らの選択を無謀と結論づける。
戦うと言っても防戦一方。あちらが攻め、こちらが守る。これまで数分の間互いの力をぶつけ合ったものの、その力量差は歴然。
おまけにランサーが明かした彼女の槍は『不死殺しの刃』。一度その身に受けてしまえば、例えどんな方法だとしてもその身体に受けた傷を治す事が出来なくなる呪いの力。
「それでも、戦うしかありません!」
だが、こうして退路を断たれたからには戦うしかない。立香も、実際に戦ったマシュ自身も勝ち目が薄い事など百も承知。
それでも、ほんの一欠片の勝機だとしても、今は賭けるしかない。それ以外に道はないのだ。
『ーーへぇ、小僧や小娘と思って見ていたが、それなりの
「っ何者!?」
しかし、そのサーヴァント達の戦いに横槍を入れるものが一騎。どこからともなく響いた声に、真っ先に反応したのはランサーだった。
しかし、その声の返事に投げかけられたのは言葉ではなく、幾つもの火球だった。
「なっ!? ぐ、アァっ!!」
突如降りかかる炎に反応できず、ランサーのその身を炎で炙る。その熱に耐え切れなかったのか、周りに張り巡らされた鎖は音を立てて崩れ落ちる。
「……だったら、ほっとけねぇな」
「ッ貴様ぁ、キャスター!!」
淡い光と共に立香達の前に現れたフードを被った男の飄々とした態度に、身を捩りながら炎を払ったランサーが憤りと共に彼を睨みつける。
急な出来事に唖然とする3人を尻目に、展開は進む。
「なぜ漂流者等の味方をするのです……!?」
「あぁ? ……んなもん、テメェらよりマシだからに決まってんだろ」
忌々しげに男……キャスターのサーヴァントの背に隠れる弱者に視線を向けながら、ランサーは吹き出す疑問が止まらない。
しかしキャスターはまるで小馬鹿にする様に、あっけらかんとしてその疑問に答える。
要は単純、気に食わない奴よりはまだマシ。たったそれだけだ。
「……おい、坊主」
「っはい!?」
「あんた、マスターだろ? 俺はキャスターのサーヴァント、故あってアイツらと敵対してる身でな。敵の敵は味方っていうだろ? ここは一つ、手を組まねぇか?」
突然話しかけられた立香の戸惑いを無視して一方的に投げつけられたキャスターからの協力関係。混乱の中、その選択はマスターである立香の手に委ねられた。
「……わかりました。お願いします、キャスターさん!」
「へっ、いい返事だ。俺にしちゃ運がいい。よし構えな、お嬢ちゃん。腕前なら兎も角、その根性だけはあいつにだって負けてねぇ」
「っ……はい!」
「仮契約とはいえ、俺はこれからあんたのサーヴァント。しっかり頼むぜマスター!」
「……そこまで言うならいいでしょう。殺す順番が早くなっただけの事。2人まとめて潰してあげましょうっ!」
選んだ道は共闘。少なくとも立香から見てもこちらへの溢れんばかりの殺意を燃やすランサーより、理性的な会話ができるキャスターの方が好感が持てる。
そんな立香の返事に気を良くしたのか、キャスターはニヤリと笑いながら、隣にいる盾のサーヴァントに向かって檄を飛ばす。その激励に奮い立たせられる様に、マシュの瞳に力が宿る。
対する目の前のランサーもやる気十分、低くしていた姿勢をゆっくりと上げる。
「2人、ねぇ……おいおいお前さん、泥に被ってそこまで鈍くなっちまったのか?」
「なに……?」
しかし、ランサーの言葉を聞いてキャスターは不敵な笑みを浮かべた。そんなキャスターの余裕の態度に不快そうに顔を歪めるランサーだったが。
「っまさか!?」
ハッとした表情で、彼方の方角を勢いよく見る。わかる、わかってしまう。
超速で突進してくる強大な力が、自身に向けて接近している事に。
「ハアァァァーーッ!!!」
「っく、早ーーッ!?」
力強い声と共に、閃光を纏う様に何者かがランサーがいる場所に襲撃する。
すんでの所で気づいたランサーは、なんとか飛び退き身をかわすが、頭に被っていたフードはまるでその余波を物語るかの様に呆気なく千切れ飛ぶ。
衝撃と共に爆音が鳴り響く。閃光が降り注いだ場所は大きな歪みとなり、土煙が辺りに拡散する。
「こ、これは一体……?」
「……キャスターさん、もしかして!?」
「おうよ、良かったなマスター。喜べ、どうやら増援らしい。……ようやく俺にもツキが回ってきたって事かねぇ?」
その場でへたり込む所長、混乱するマシュ。
しかし置いてけぼりの2人を他所に、立香は希望を込めた視線でキャスターの顔を見る。そんな視線を受けてなお、キャスターは変わらず不敵に微笑むばかり。
「……いかにも」
ーーーそして、風が吹き荒れる。何者かの声が響くと同時に、その者の手から発せられる風によって淀んだ空気が少しずつその場から散っていく。
「サーヴァント、セイバー。我がマスターの命を受け、これより貴方達にこの剣を預けましょう」
完全に晴れた煙の中から、輝きがその姿を表す。手に持つ不可視の剣を敵に向け、闘志と共に美しき獅子が静かに吠える。
騎士王、推参
やっと合流