「ッセイバー!? 馬鹿な、何故貴方がここに……!」
「やれやれ、まさかとは思ったが本当に騎士王とはね。しかも既にどいつかと契約まで取り付けてるみてぇだな」
突如として参戦したセイバーの姿に対し、2騎は相反する反応を見せる。
ランサーは目の前に彼女が現れた事自体に対する驚愕。キャスターはまるでこの状況を予知して居たかの様な態度だ。少しばかり予想して居た構図とは違うみたいだが。
「ランサー……いえ、今はキャスターの様ですね」
「応よ、そういうお前は全く変わらねぇみたいだな。ちょっとばかり安心したぜ」
「それはこちらの台詞だ。どうやらクラスは変わっても、貴公の本質は変わらないと見える」
セイバーは目の前のランサーに視線を向けたまま、背にしたキャスターへの最小限の警戒心は解かずに軽口を叩き合う。
どこか懐かしむような、しかしそこはかとなく牽制を織り交ぜた言葉の応酬。まるで懐かしい商売敵に再会した、そんな雰囲気にも似た独特な空気。
「ほ、本当に、味方……?」
「どうやらそのようです、所長」
座り込んだまま動かないオルガマリーを気遣いながらも、光明を見出したかの様にマシュが声をかける。
圧倒的不利の状況は一転、カルデア一行を守るように背を向けたサーヴァント達の姿は、決死の覚悟で立ち向かおうとするマシュとそのマスターである藤丸の心に少しずつ希望が募り始める。
「っ追い、つい、たぁ!」
そして、新たに合流する者がここに1人。
声が響いた方にその場いたセイバー以外の全員が視線を向ける。
「ハァ……ハァ……っセイバー、間に合った!?」
「えぇ。ユウトもご無事で」
藤丸の隣で肩で息をしながらセイバーのサーヴァントに話しかけるユウトと呼ばれた男。
来ている服は藤丸と同様の礼装を身につけている事から、男が藤丸と同じカルデアの人間だという事がわかる。
「結果論だけど、セイバーに先に行ってもらって正解だったな……」
「君がドクターの言っていたもう1人のマスター?」
「っあぁ、自分の名前は小鳥遊勇人。藤丸、だっけ? アンタと同じ、カルデアのマスター適性者だ」
「うん、俺は藤丸立香。よろしくね、勇人」
息を整え終えた勇人が藤丸に向き直る。ロマニから話を聞いていたのか、互いの存在は既に認知している。
だが、知ってはいてもお互いほぼ初対面。そう思ったのか、挨拶もそこそこに藤丸は勇人へ自分の右手を向けた。
「こっちこそ、よろしく頼む」
そして、勇人も差し出された右手をしっかりと握り返す。
普通の自己紹介に、普通の握手。この異常な空間を彷徨った数少ない『ただの人』である2人。ある種の極限状態に身を置かれた2人にとって、何よりもそんな普通の出来事に安心を覚える。
「おーおー青いねぇ。だが、この場面で落ち着いてるたぁ中々腹の据わった奴らだぜ」
「……では、我々もその期待に答えるとしましょう」
「言われるまでもねぇ。……さて、待たせて悪かったなランサー! しかし状況は3対1、生憎量も質もこちらが有利ときたもんだ」
「くっ……」
「まぁ恨むんなら好きに恨んでくれや。……まぁ最も、恨むならこの状況に陥った自分自身にだろうが、な」
後ろのマスターの戯れに茶々を入れながら、改めてセイバーとキャスターが闘志と共に正面の敵を捉える。
英霊2人のプレッシャーは容赦なくランサーただ1人を刺し、その重圧にランサーは歯噛みする。
不利を正す為にも、逃走は一つの手だ。しかし、この2人が無防備に向けた背中をみすみす逃す訳がない。
「お嬢ちゃん、しっかりついて来い。ここからは詰将棋だ。これまでやられた分、利子つけて返してやんな」
「は、はいっ!」
「(あの盾は……いや、まさかな)」
杖を出現させたキャスターに声をかけられたマシュが遅れながらに一歩前へ。さっきまで感じていた孤独感を置き去りにする様にまた一歩、前へ。
そうして隣で盾を構えたマシュを見て、セイバーはどこか言いようのない懐かしさを覚えるも、すぐに思考を切り替えて目前の敵を睨む。
今なさねばならない事はただ一つ。マスターの壁となる目の前の敵を切り伏せるのみ。
「戦闘、開始します……っ!」
その言葉と同時に、剣と盾が駆け出した。
黒じゃなくて青か出て来てランサーびっくり、色々見てたけど本当に騎士王が来てキャスターびっくり