「やああぁっ!」
「そんな直線的な攻撃……!」
勢いよく飛び跳ねたマシュが、その手に構えた大楯ごとその質量を利用してランサーに向けて落下する。
しかし相手の言う通り、言ってしまえば何の変哲もない体当たり。これまで相手にしていたエネミーならまだしも、例え汚染されたとて英霊として刻まれたサーヴァントに対する攻撃としては物足りない。
「後悔しなさい!」
その証拠に、ランサーはなんの苦もなく盾の打撃から身を躱す。空振りした攻撃は轟音と共に地面を砕くが、守る為の盾を地に押し付けたマシュの身体は当然無防備。その瞬間を待ってましたとばかりにランサーの狂槍がマシュを襲う。
「させねぇ、よっと」
「ッ……!」
だが、そのランサーの攻撃をキャスターは見逃さない。意識を逸らした敵に向かって、狙い澄ましたかの様に火球を発射。被弾を回避する為にランサーは急いで攻撃を中止、後退を余儀なくされる。
「そこだっ!」
「ぐ、うぅっ!?」
しかし、咄嗟に距離を離したのは愚策だ。敵から離れた所で、それが無計画であるならなんの意味もない。そう、セイバーが持つ、スキルにまで昇華された『直感』の前ではなおさらだ。
予言を言い当てるように、飛び退けたランサーの懐に足を踏み入れたセイバーの不可視の剣がランサーに迫る。
距離、大きささえ測れない武器を防ぐ為に、ランサーは足を止め、全霊を持ってその攻撃を防ぐ。さまなくば、その一撃は致命傷にもなりうる。
凄まじい破裂音に似た響き。セイバーの一振りを、ランサーは両手での構えで辛うじて防ぐ事ができた。
「やってくれますね……ですが、ここまで味方が近くにいればキャスターの攻撃も……!」
槍と剣の鍔迫り合い、擦り切れる様な金属音が辺りを木霊する。まるでタイミングを測る様に手に握る武器の力の強弱を調整する2人。
だがランサーの言う通り、武器を抑えたセイバーはこうしていればその剣を振るえず、キャスターも仲間を巻き込む様な迂闊な攻撃は行えないはずだ。
あとは自分の髪……鎖を利用すれば、ある程度の形成の不利は立て直せる。
「……さて、それはどうかな?」
しかしそんなランサーの思惑など何するもの。セイバーは顔色一つ変えず、その考えが本当に正しい物かと問いかける。
まるでわからないと顔を一瞬曇らせるランサーだが、もう遅い。
取りに足らぬと捨て置かれた一番の足手纏い。半人前と侮り警戒を薄められていた存在が、その瞬間を虎視眈々と狙っていた。
そうとも、この場にいるサーヴァントは、キャスターとセイバーだけではない!
「ーーー今だ、マシュっ!」
男の声が、その戦場に響き渡る。
それと同時に、キャスターが放った火炎から生じた黒煙を突っ切る様にシールダー……マシュ・キリエライトが、マスターである藤丸の声に応える様にその姿を表した。
「っ! しまっ……!」
「捉えた……!」
突然姿を表したマシュにランサーは対応できない。全力で振りかぶられた盾は、セイバーに抑えられた今となっては防ぐことも、逃げる事も不可能。
「はあぁぁっ!」
「馬鹿、な……こんなっ!」
直線的な攻撃、そう揶揄したマシュの突撃を、この状況のランサーは避ける術を持たない。
呆然とするランサーの身体を、マシュの盾が激しく打ち鳴らした。
「ガッ……っ!?」
渾身の一撃、そう形容するに相応しい打撃に、ランサーは勢いよく吹き飛んだ。
脳天を揺らす様な衝撃に、受け身すら出来ずランサーが地に勢いよく倒れる。
これまで散々攻撃を受けていたマシュの借りを返す様な爽快な反撃。2人のサーヴァントの協力が有ったとはいえ、まさか自分が有効打を与えられるとはと言う事実に、息を切らしながらも何処かマシュの顔は晴れやかだ。
だが、まだ勝利には至ってない。視界の先には諦めも悪くランサーが手に待つ槍を杖のようにしながら、よろよろと立ち上がろうと足掻いている。
「まだ……まだ……!」
……が。
「オラよ、これで……終いだ!」
トドメはすぐだった。まるでダメ押しと言わんばかりに降り注ぐ炎の雨。キャスターのルーンによって繰り出された魔術は、敵対する存在の反撃すら許しはしない。
「ーーー……」
その豪火に押しつぶされる様に、ランサーは悲鳴すら上げることなく消滅。幕切れは、殊の外呆気ないものだった。
「戦闘、終了しました……私達の勝利です、先輩!」
汗を拭いながら、マシュが後ろにいる藤丸に改めて笑顔を向ける。
信じられませんと言いたげなマシュを労う様に、藤丸はサムズアップを彼女に向けた。
タコ殴りです。やっぱり我らがファーストサーヴァント、可愛い後輩マシュちゃんにはしっかり活躍させてあげたいので。
ついでにもし最後、マシュが突撃して来なかった場合セイバーが風王結界で吹き飛ばした後ぶった斬ってます。なお直感でマシュが来ることもわかっていた模様