戦闘を行っていたサーヴァント達の後方から、敵サーヴァントであるランサーが消えて行くのを確認する。
「すっ……ごい……」
息を呑む、とはまさにこの事。初めて見るしっかりとした戦闘、サーヴァント同士の激戦は、肌がひりつく様な独特の空気を感じた。
そして、何より思い知ったのは自分と契約したサーヴァントであるセイバーの実力。
これまで少しの間とはいえ行動を共にしていた存在が露わにした実力……その圧倒的な力の片鱗。
「(わかっちゃいたけど……いや、わかってなかった。やっぱり、めちゃくちゃ強いっ)」
盾を持った女の子へのフォロー、示し合わせたかの様なキャスターとの連携。
敵である筈のランサーの行動まで踏まえた、仲間2人の決め手を確実にする為に懐に飛び込んでの接近戦。
「(最優の名は伊達じゃないって事か……)」
敵の警戒を植え付ける不可視の剣、周囲の状況を読み取る視野の広さに、そしてそれを実行できるだけの戦闘能力。
どれ1つとっても完璧な立ち回りだった。敵にダメージこそ与えちゃいないけど、セイバーのサポートがなければあれだけ早く、綺麗に決まっていたとは思えない。
最も、倒すだけならセイバーを抜いた2人でも出来たとは思うが。
そして恐らく、何の確信も持ってないけど……彼女はまだ、本気は見せていない。
マスターとしても魔術師としても赤子同然に近い自分でも、彼女の底知れなさは伝わってくる。
「さて、なんだ。……とりあえず、勝鬨でもあげておくか?」
「まったく、貴方と言う人は……」
戦闘を終えたキャスターの茶化す様な言葉に、セイバーが呆れた様に口を開きながら自分達の元に歩いてくる。少し遅れながら盾持ちの女の子も一緒だ。
「お疲れ、セイバー」
「ありがとうございます。ですがこの程度、どうと言う事はありません」
何はともあれ、戦った人達への感謝は必要。なんの足しになるかはわからないけど、労いの言葉だけでもかけておきたい。
しかし、セイバーはこれまでと同じく涼しい顔。やはり数の有利もあったのか、さっきの戦闘でセイバーに疲労を与えるにはやはり今ひとつだったらしい。
流石は音に聞こえしアーサー王、やっぱりすごい。
そんな一連のやり取りを見ていたのか、キャスターが自分に近づいてきた。
「お前さんがセイバーのマスターか?」
「一応、そう見たいだけど……」
「んだよ歯切れの悪い。男ならもうちっとシャキッとしやがれ、シャキッと」
セイバーのマスター。いざ他の人からそう言われてしまうと、やはり実感はない。キャスターにそう言われて曖昧な返事を返したが、内容よりも自分の自信なさげな態度がお気に召さなかったのか。
バゴンっ、と。危うく吹っ飛びそうになる力でキャスターに背中を叩かれる。
「ッ〜〜!!?」
言葉と同時にキャスターの平手が自分を襲い、あまりの痛さに悶絶する。辛うじて捉えた視界の端では、そんな自分の様子を見ながらケタケタと笑うキャスターと、それを咎めてくれるセイバーの姿が見える。
「あ、あのっ!」
ある意味戦闘よりも混沌とした空間に、鈴のなる様な声が響く。そこには持っていた盾を霞の様に消しながら、先ほどの女の子がこちらに小走りで近寄ってきた。
……なんというか、戦っている時はあんまり気にしてなかったけど、この子すごい格好してるな。鎧の形をしたスカート?もなんかいろいろ全然隠せてないし、いっそ破廉恥といっても差し支えなさそう。こんな服装誰が作ったの?
「お二人とも、その……ありがとうございます。おかげで、先輩を守る事が出来ました」
「気にすんな、言ってみれば結局は
「はい、キャスターの言う通り。先程の戦い、見事でした。何を臆する事もない、自分の成果に胸を張りなさい」
「キャスターさん、セイバーさん……っはい!」
ぺこりと礼儀正しく頭を下げる女の子に、2人は思い思いにその健闘を讃える。一瞬驚いた表情を浮かべたものの、女の子はその言葉を聞いて照れくさそうにはにかんだ。
「……そろそろ、話を始めても良いかしら?」
そんなふんわりとした雰囲気に包まれそうな空間に、グサリと一言。振り返ってみてみれば、ジト目でこちらを睨む所長さんが、腕を組んで少々お怒り。
「キャスター、セイバー。貴方達にはこの状況の説明をキチンとしてもらうわよ」
「……やれやれ、随分と肩肘張った姉ちゃんだな。まぁいい、俺もそこのセイバーには色々と聞きたい事もあるんでな」
肩に杖を引っ掛けて、睨みを効かせる所長さんのプレッシャーをのらりくらりと躱わすキャスターは、隣にいるセイバーに視線を向けながら了承する。
まずは互いに情報交換。バラバラに散っていた陣営同士が、これまでの出来事を語り始める。この特異点……冬木に何が起こったのか。そして、この場にいる自分達がどうするべきなのかを。