人理修復の旅でアルトリアを引いたマスターの話   作:薄茶

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状況確認、そして。

「……なるほど。あんたらカルデアの事情は大体わかった。って事は、この時代に何があったかも当然知ってんだな?」

 

「えぇ。我々の観測では2004年のここ冬木で行われた魔術儀式……万能の願望機をめぐる聖杯戦争があったと確認されているわ」

 

 

所長さんから説明を受けたキャスターは、自身の顎に手を添えながらうんうんと頷いている。

 

……正直1からしっかり説明できる程この状況を把握できてるわけじゃないし、肝心の解説役であるロマニは電波か何か悪いのか、さっきから通信に答えてくれないし。

 

ちゃんとこちらの事情に精通してる所長さんがいて正直助かった。持つべきものは頼れる上司である。

 

 

「その通り。……だが、オレ達の聖杯戦争はいつの間にか違うものにすり替わっていやがった」

 

 

しかし、キャスターから伝えられたこの特異点の現状は自分達が想像しているよりも更に不可思議な状態だった。

 

 

曰く、街全体が一夜にして炎に包まれ、そこにいた全ての人間は忽然と姿を消したとの事。

 

残ったのはサーヴァント達と、意味もなく徘徊する骸骨の山。マスターがいなければ存在できないらしいサーヴァント達も、なぜか消えずにこの街に残された。……だが。

 

 

「そんな中、真っ先にこの聖杯戦争を再開したのがセイバーだ」

 

 

そんな異常事態の中を我先にと動き出し、その戦いを更なる異常に染めあげた者が一騎。

 

 

「奴さん、水を得た魚みてぇに暴れやがって、残っていたサーヴァントを次々と倒していった。今となっちゃ、まともにサーヴァントとして存在してるのはオレとそのセイバーだけってこった」

 

 

圧倒的な力で片っ端から他のサーヴァントをぶっ倒し、果てには倒された奴らはよくわからない泥に塗れてそのセイバーの手駒の様に動き始めたらしい。

 

生ける屍、感染したゾンビ。感覚としてはそんな所だろうか。しかしそんな骸の様な奴らも元はといえばサーヴァント。実力はそんなB級映画に出てくる様な貧弱なものじゃない。

 

事実、他の骸骨程度では相手にならないあの盾の子……マシュですら、あのランサーを1人で倒し切ることは不可能に近かったのだ。

 

 

あれだけの実力を持つキャスターなら泥を被った奴らを倒す事も出来るは出来るんだろうが、そんな奴らが四方八方から突っ込んできたならそりゃめんどくさい。これまでキャスターが隠れて静観していたのも納得できる。

 

 

 

「ですが、残ったサーヴァントが貴方とそのセイバーというのなら……」

 

「そうだ。オレがセイバーを倒せばこの聖杯戦争は終わるだろうよ。この状況が元に戻るかどうかまではわからんがな」

 

 

自分の隣にいるセイバーが口にした疑問に、キャスターがその通りだと答える。

 

そう、何も悪い事だらけじゃない。この特異点のセイバーが暴れ回った事で、生存しているサーヴァントはそのセイバーとここにいるキャスターのみ。

 

逆に言えばそのセイバーを倒すことさえ出来れば、この壊れた聖杯戦争は終わりを迎えると言うわけだ。

 

 

「まぁその為にこれまでやりたくもねぇ隠密行動なんざするハメになったんだが……こうしてアンタらに出会えたんだ、これなら戦力としては申し分ない」

 

「……なるほど、わたし達を助けたのはそう言うことね」

 

「ご明察。言っただろ? 結局は自分(テメェ)の為だって。オレはセイバーを倒せるだけの戦力。アンタらはこの異常事態解決の為の協力者。互いに利害関係は一致してるんだ、手を組むってのも悪い話じゃねぇだろ?」

 

 

キャスターが持ちかけた協力関係は、正直言って自分達にとっては渡りに船だ。キャスターほどの実力者が仲間になるなら、こんなに頼もしい事もない。

 

隣にいるセイバーも確かに強力なサーヴァントである事に間違いないが、強い味方はどれだけいても困る事はない。セイバーにマシュ、そしてキャスターの3人がいるなら、並大抵の敵に負ける事もないだろう。

 

 

「……えぇ、わかったわ。一先ず貴方のことを信頼しましょう」

 

「そいつはどうも。……しかしなぁ、オレがランサーとして召喚されてりゃ、セイバーを一刺しで仕留めてしてやるってのに……なんだって冬木の聖杯戦争でキャスターなんぞやる羽目に……」

 

 

リーダーである所長さんもその事がわかっているのか、キャスターの作戦参加に特に反対はなかった。不機嫌そうに答える所長さんに、キャスターがやれやれと首を振る。

 

 

しかし急に項垂れてぶつぶつと不貞腐れたキャスターの言っていた事が気になる。キャスターがランサー? どう言う事?

 

 

「ランサーだったら……? マシュ、どう言う事?」

 

「そう言う事もあるんです、先輩。英霊の中では複数のクラス特性を持つ方もいて、恐らくキャスターさんは槍の使い手でもあり、魔術師としての側面も持った強力な英霊なんだと思います」

 

 

藤丸も自分と同じ疑問を持っていたのか、隣にいたマシュにその疑問を投げかける。

 

伝説上の人物や偉人なら、刻まれた伝説によってはあれを使った、これが得意だったという話はゴロゴロあるだろう。場合によっては複数のクラスに適応する英霊もいると言う事だ。

 

 

つまり、キャスターは本来ならランサーのクラスとして聖杯戦争に呼ばれる事が殆どであり、今回のキャスターとしての召喚こそごく稀。しかも本人はどちらかと言うと前者のクラスの方が個人的に好みらしい。

 

まぁあるよね、得意な事と好きな事は全く違う時って。

 

 

「……あ、もしかしてセイバーも他のクラスとして召喚される時とかもある?」

 

「そう、ですね。生前は一通りの武具の扱いなら出来ましたが……もし私がサーヴァントとして召喚される場合、セイバー以外にもランサー、ライダーとして現界する可能性ならあるかと」

 

「へぇー、なるほどぉ」

 

 

でも確かに、あのアーサー王その人なら剣以外の伝説があったって不思議じゃない。

 

きっと暴れ馬なりなんなりを平然と乗りこなし、槍の一本程度自在に扱う事も出来るだろう。むしろ他のクラスの可能性がない方がおかしい。

 

 

「さて、まぁオレが聞きたいのはもう一つあってだな」

 

「聞きたいこと……? なにかしら?」

 

「これはアンタらじゃなく、そっちのセイバーに向けてだ」

 

 

だが、突然さっきまで落ち込んでいたキャスターが今度は所長さんや自分達ではなく、セイバーに向かって話を振ってきた。

 

その表情は、さっきまでのとっつきやすい近所の兄の様な雰囲気はなく、なぜか戦闘時にも迫る気迫を感じる。

 

 

「私に……? 今更私と貴方が話し合う事もないと思いますが」

 

「オレが言いたいのはそう言う事じゃねぇ。それに、こっちもこの期に及んで思い出話に耽る気も無ぇ。……まぁ、その様子ならほとんど白だろうが、一応な」

 

「……何が言いたい、キャスター」

 

 

何かを含んだキャスターの言い分に、横にいるセイバーの言葉が静かにその鋭さが増していく。

 

マスターである自分を含めたカルデア御一行も、その重苦しい雰囲気に息を呑むが、キャスター本人はそのプレッシャーを真正面から受け止めながら、それでもなおセイバーを睨み返す。

 

……そして、セイバーの疑問に答えるキャスターの言葉は、自分達の想像をはるかに超えていた。

 

 

「知れた事。『このイかれた聖杯戦争で大暴れした騎士王本人が、どうしてこの場にいるのか』、だ」

 

「っどう言う事だ!?」

 

 

疑惑をのせたキャスターの言葉に真っ先に反応したのは、他でも無いセイバーだった。

 

この聖杯戦争を混沌に陥れた冬木のセイバー。

それが、自分の隣にいるアーサー王なのだと。

 




暴れ馬(耐久性ガン無視宝具活用魔改造爆速バイク)
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