「どう言う事も何も、言葉通りだ。なんだってこの聖杯戦争で大立ち回りを演じたアーサー王本人がここにいるのかって話だ」
激しく問い詰めるセイバーを正面に捉えながら、キャスターは尚も言葉を続ける。
「ちょっ、ちょっと待って下さい! セイバーさんが、あのアーサー王……!?」
「アーサー王といえば、エクスカリバーを持ってるっていうあの……? でも、セイバーさんはどう見ても女の人じゃ……」
「……あー、まぁお前らの疑問は最もだが、この際男だ女だってのは置いといてくれ。今重要なのはそこじゃねぇしな」
マシュの驚く様な声に続けて、藤丸がキャスターにむけて、少し前に自分が初めてセイバーに会った時に抱いていた全く同じ疑問を聞いている。
混乱するよね、有名な人物が実は男性じゃなく女性だったって。
しかしキャスターの言い方、やっぱりセイバー……あのアーサー王が女性ということを最初から知ってるみたいな口振りに聞こえる。これまでの会話からして、やはり過去にセイバーと面識があるのはほぼ間違いなさそうだ。
「……キャスター、つまりはなにか? 私こそがこの聖杯戦争を乱し、ひいてはこの特異点が生まれた原因そのものだとでも?」
「せっかちだねぇ。……だが、オレも回りくどいのは好きじゃねぇ。簡単に言やぁ、背中を預ける以上少なくともお前があのセイバーとは『別』だ、っていう確証が欲しい」
少し落ち着いたらしいセイバーだが、キャスターに投げかける言葉は依然刺々しいまま。
かく言うキャスターも肩にかけていた杖を持ち直したかと思えば、その先端をセイバーに向けて威嚇する。
しかし確証、か。
……難しい話だ。自分達はまだ冬木のセイバーに出会った事がない。キャスターがいう通りその正体がアーサー王だとして、姿形まで同じだったとする場合2人のセイバーが別人だと言う証拠を用意するのは不可能に近い。
悪魔の証明とも言うべきか、少なくともキャスターを納得させるだけの裏付けが取れるか、自分には自信がない。
「……セイバーのマスター。お前はどうだ?」
「自分?」
「オレが見たセイバー、そしてお前自身のサーヴァントであるセイバー。マスターであるお前はどう考える?」
色々考えていると、今度はキャスターが杖を自分に向けていた。言葉通りなら2人のセイバーの関係性を問われているのだが……なんだろう、自分としては内容よりはマスターとしての意思を問われている。そんな気がする。
「え、別人だと思う」
しかし、自分の中では既に答えは出ている。迷う必要はない。
「ユウト……」
「ほぉ……で、その理由は?」
隣にいるセイバーは困惑した様な、驚いた様な表情でこちらを見ている。あまりに簡単に答えた自分に、心底不思議だと言った感じか。
対してキャスターは無表情、変わらず杖の照準はこちらに定めたままだ。しかし、理由を聞かれた以上は答えねば。
「まず、2人のセイバーが同一人物だとするなら自分達に協力なんてしないはずだし。この特異点の始まりである聖杯戦争の時から存在する冬木のセイバーと違って、隣にいるセイバーが召喚されたのはさっきだから、時間的にも色々合わない」
「……マスターが欲しい為だけにお前を利用したって言う可能性は?」
「マスターが居なくてもここのサーヴァント達は存在できるっていうし、それもないと思う。それに、マスターを求めてるって言っても、こんな初心者マスターと契約する必要もないしな」
自分達がここに来る前から、既にこの土地は特異点として出来上がっていた。その元凶である聖杯戦争も、自分達が来る前から既に壊れていた事になる。
なら既にこの地にいたセイバーと、自分の元に召喚されたセイバーは別人だ。
もし同一人物なら、出会った瞬間ぶった斬られてるはず。セイバーの手下であるランサーが自分達と敵対していた事から、親玉である冬木のセイバーも同じく自分達の敵だろうし、セイバーの実力からしてわざわざ味方を装う必要もない。
「……それに」
「それに?」
それに、何より重要な事がひとつ。
「それに、セイバーは自分を助けてくれたからな」
助けてくれた。
出会ってほんの少しの間だけでも、セイバーは何度も助けてくれた。召喚の際には命を、その後もここに来るまでに何度もだ。彼女を信じる理由は、それだけで十分だ。
「未熟なマスター、初心者魔術師。そんな自分に弱点になるかもしれない
ならせめて、助けてくれた分だけは信じたい。
救われた命の分まで償う、とまで言う覚悟なんて無い。でも、少なくともセイバーがマスターと呼んでくれる限りは……
「だから、自分はセイバーを信じる」
自分は、セイバーのマスターだ。