俺の隣人が悪の首領達ってどういう事なんだよ 作:塩焼きそば啜郎
「ゼェ、ゼェ……こんなに大変だったとは……」
今俺は、ドッピオさんと建てたテントの前で地面に突っ伏していた。簡単だと思っていたものがこんなに大変になるなんて十数分前の俺は想像出来ただろうか。
「いや〜疲れましたね」
「全然余裕そうじゃないっすか、ドッピオさん……」
俺の隣にはまたしても涼しげな顔をするドッピオさんが。そんな彼は、荷物を漁り始める。そして取り出したのは……
「釣り竿?」
「ここから少し下った所に川があるんですよ。ここでボーっとしてるのもなんだし、釣りでもしませんか?」
「釣りしてるんですか!?」
「えぇ、趣味で」
「ハイスペックゥ……」
中々に強いなこの学生(畏怖)まぁ釣りが経験出来るというのなら同行するしか無いだろう。俺はしばらくドッピオさんに付いて行くと、本当に小さな川が流れていた。彼は慣れた手付きで針に餌を仕掛けていく。
「速いですね」
「これでも一年くらいは続けていましたから。でも、日本でするのは始めてなんですよね」
ポチャッと針が投げ込まれた。浮きがプカプカと浮いている。……静かだ……。良いなぁ、こういう感じ。今まで周りがうるさい人達しかいなかったから、こんなのもたまには癒やされる。一人考えにふけっていると、早速魚が掛かった。
「おっ」
ドッピオさんはスルスルとリールを巻いていく。すると、針には小魚が掛かっていた。
「勿論キャッチアンドリリースですよ」
「優しい……」
針を外して川に戻すと、また投げる。これの繰り返しだ。
「ふぅ……静かですね、龍成さん」
「ですね。いつもはベガさんやギースさんがいますから……」
「あぁ、彼らに歓迎会を開かれた時は死ぬんじゃないかと思いましたよ。なんせあのガタイですから」
「想像したくないなぁ……」
彼と談笑しながら釣りをしていると、あっという間に時間が過ぎていった。気付くと辺りは暗くなり始めており、急いで道具を片付けてテントに戻った。
◇ ◇ ◇ ◇
テントに着く頃にはすっかり暗くなっていた。もう少し遅かったら真っ暗な山道を歩く羽目になっていただろう。少し怖い。
「じゃ、夕食にしますか」
「来ましたね」
火を起こし、飯盒にご飯を入れていく。一気に沸騰させたら弱火で約十五分炊くらしい。しばらく待っていると、ドッピオさんが飯盒を外した。どうやら炊け終わったみたいだ。そこに各自用意した具材を添えて完成。こちらからは豚肉の炒め物を、ドッピオさんからはなんとカレーが出された。
「カレー!?」
「やっぱりキャンプと言ったらこれですよ」
一口食べてみる。……美味い!やっぱ屋外で食べるのはカレーだよなぁ。そのままガツガツと食べ進めていき、すぐに無くなってしまった。もう少し味わうべきだったか……(後悔)その後は、テントに寝転がり入り口から頭を出す。空には満点の星空が広がっており、暗闇を明るく照らしていた。
「綺麗ですね……ドッピオさん?」
「そろそろ、良いだろう……」
「!」
いつの間にかドッピオさんはもう一つの人格、ディアボロさんに変わっていた。
「あの頃はこうして星空を眺める事も無かったな……全く、何が起こるか分からんものだ」
「そんなに激務だったんですか?」
「俺はギャングのボスだぞ……呑気に野外に出たら狙われるのは十中八九確実だ」
「すっごい大変そう」
「他人事のように言うな」
「他人事ですから」
「正直な奴だ……かつて他人と生きる事を拒んだ俺が、こうして他人と星空を見ている。こうも不思議な感覚とはな」
「俺も不思議ですよ。なんせギャングのボスとキャンプに来てるんですから」
「……」
静かに笑ったディアボロさんを見て、俺も釣られて笑った。そんな俺達を、星の輝きが照らしていた。