俺の隣人が悪の首領達ってどういう事なんだよ 作:塩焼きそば啜郎
こたつの魔力に敗れる総帥
「寒い……」
シャドルーの総帥、ベガ。彼は十一月になってもピチピチスーツにマントという防寒もへったくれも無い格好で過ごしていた。さっさと衣替えをすれば良いのに、何故かしない。その訳とは……。
「だって、モコモコの防寒着着る総帥とかダサいじゃん?」
「それはそうですけど……」
目の前で鼻水垂らしながらガクガク震えてる方がよっぽどダサいんですがそれは。まぁそんな心無い事を言ってしまったらこの人のメンタルが崩れ落ちるので止めておこう。
「シャドルーの総帥たる私が、こんな寒さごときにやられる筈が無いわ!……ズビッ」
「鼻水すすってますよ」
にしても強情な人だ。素直に寒いと言えば楽になるのに、わざわざ我慢している。最早流石だと言うしかないだろう。何か案は無いか……。
「暖房でも付けるか?いや、それだと電気代が……」
「ひもじい総帥だなぁ……そうだ」
頭の中に浮かんだ考えを元にベガさんの机に掛け布団を敷く。その上を固定すれば、簡易的なこたつの完成だ。
「はい、ベガさん」
「おぉ!気が利くではないか龍成!」
ベガさんはいそいそとこたつに入ると、フゥ……と粋を漏らした。よっぽど寒かったんだろうな。俺は食べようと思っていたみかんをこたつの上に置き、中に入る。
「テレビでも見ながら食べますか?」
「そうだな。何かやっているといいが」
みかんを剥きながら、テレビを付ける。ちょうどバラエティー番組がやっていた。
「お、好きなやつだ」
「ではこれにしよう!みかんをくれ!」
「はい!」
ベガさんは貰ったみかんを一気食いする。すると、その顔がみるみる青くなった。
「……」
「そりゃ冷たいに決まってるでしょうが」
「ハァ……ハァ……寒い……」
「結局振り出しかよ!なんでそんなに馬鹿なんだよ!?」
「ええい、この私に向かって馬鹿とはなんだ馬鹿とはァ!」
「寒い中みかんを一気食いする馬鹿に馬鹿つって何が悪いんですか!?」
テレビ番組などお構いなしに、ギャーギャーと文句を言い合う俺達二人。一旦落ち着いて、テレビを見ようという事になった。
「フハハハ!」
「いっつもその笑い方なんですね」
番組のトークに爆笑するベガさんを見守ったり。
「ヌゥゥゥ、またそこか!」
(弱すぎ無いか……?)
オセロでベガさんをボコしたり。
「……」
「どうしたんですか?」
「……種を噛んだ」
「あぁ……」
少し気まずくなったり。そんな時間を過ごしていると、あっという間に帰る時間になった。俺は自室に戻り、ソファーに座り込む。
「うっ……」
急に腹が痛くなった。不意打ちは止めて貰いたいが、文句を言ってもしょうが無い。俺はトイレへと向かった。
◇ ◇ ◇ ◇
「ふぅ」
トイレから出ると、何やらいい香りが漂って来た。
「これは……」
机に置かれていたのは、オムライスと水。その横には、「お礼」と書かれた紙が。
「……やっぱ、いい人だなぁ」
そのオムライスを一口頬張る。やはり、あの人の料理は美味しい。