俺の隣人が悪の首領達ってどういう事なんだよ 作:塩焼きそば啜郎
「……」
「では今からスキー場に向かうぞ!」
「このギースよりも滑れるか?ベガよ」
「お二人ともスキーの経験は?」
「「勿論無い!」」
「なんで競ってんだよッ」
早朝から眠気が吹っ飛ぶツッコミを入れさせるのは止めていただきたい。なんでもベガさんが一言「スキーとか良いかもな」と呟いたらいつの間にか俺を巻き込んで勝負する話になったらしい。恐ろしく展開が速いな。
「どうせ断っても連行されますし、行きますよ。でも今度奢って下さいね?」
「朝飯前よ。出発!」
◇ ◇ ◇ ◇
係員から一通り説明を受けた後、更衣室で着替えた。道具は貸し出しだ。
「重っ」
「そうか?意外と軽い物だが」
「ギースさんが普段鍛えてるからですよ」
「おい!早く着替えろ!私はあれに乗りたいのだ!」
ベガさんが窓の外を指さして急かす。見てみると、他の客をリフトが頂上へと運んでいた。子供かな?(失礼)
「あれに乗りたいんですか」
「そして頂上から滑るのだ!」
「……ワープで行けばいいのではないか?」
「そんな事したら夢が無いだろう夢が」
「よく今まで組織経営出来ましたね」
一番夢とは遠い経営業をこれでこなせるとは、日本は案外楽な国かもしれない。若干価値観が狂った所で、小屋を出てリフトへと向かった。出た瞬間に感じたのは、猛烈な寒さ。防寒着を着込んでいるのにも関わらず、僅かな隙間から風が入り込んでくる。
「寒いな……」
「ですねぇ……」
ベガさんだけが楽しみなのかニヤニヤと笑っていた。やっぱり大男がニヤつくと絵面が酷い事になるな。映像ではなくて文のみで良かった。周囲に若干引かれながらも、三人でリフトへと乗り込む。
「意外と揺れるな……」
「そりゃ三人で乗ってますからね」
冷たい風とリフトに揺られる事数分。無事に山頂へと着く事が出来た。そこからの景色は言うまでも無く圧巻だった。
「高いなぁ」
「町があんなに小さく見えるとは。早速滑るぞ!」
ベガさんは斜面に向かって歩き出す。なんか嫌な予感がしたので俺とギースさんは見ている事にした。
「なんだ、来ないのか?」
「いえ、ベガさんの滑りを見たくて!」
「そうかそうか!では見ておくといい!」
(チョロい……)
ベガさんは勢いを付けて斜面に躍り出た。
「ほう、中々に速いではないか!ん、ちょっと待て、少し速すぎないか!?」
「そりゃ雪ですから」
「ぶるああぁぁああああぁぁあぁああ!!(転落)」
「あーあ」
「大体予想出来ていたがな。助けにいくか」
と、その時。隣にベガさんがワープで帰って来た。
「貴様ら……まさかこうなると分かっていたのか!?」
「あぁ、そうだが?」
悪びれもなく答えるギースさん。ベガさんは何かを決意した表情を浮かべた。
「さて、ギース、龍成。確か貴様らも滑れないんだよな?」
「はい」
「だな」
「……死なば諸共よーッ!!」
ベガさんはワープで後ろに来ると、俺達を掴んで斜面へとジャンプする。……は?
「馬鹿野郎ォォォォォォ!!!」
それが、俺達が雪玉になる前に放った最後の言葉だった。