俺の隣人が悪の首領達ってどういう事なんだよ 作:塩焼きそば啜郎
「ここが牡蠣小屋……」
「冬は焼き肉も良いですけど、やっぱ牡蠣も外せませんよねぇ」
毎年冬に期間限定で開催されているこの牡蠣小屋。コツコツ貯めたお金で牡蠣を贅沢に食うのが毎年の楽しみだが、今年はギースさんの奢りだ。流石は大企業の総帥。
「あ、これ着ないと飛んだ汁に当たりますよ」
「これか」
店員に案内され、席に置かれていた上着をギースさんに渡す。この人無茶苦茶寒いのにいつもの半袖道着だったからな。多分ベガさんと同じタイプだわ。待っていると焼く準備が整ったので、早速牡蠣を投入する。
「この後はどうすればいいのだ?」
「大体四十秒くらいしたらひっくり返して、殻が開いたら食べごろですよ」
「焼き肉と同じような物か」
「まぁそう考えて貰って良いです」
にしても金髪の巨体外国人が牡蠣を焼く光景かぁ……中々無い組み合わせだな。そんな事言ったら鰐が肉を焼く光景を見ているけれどもね。
「にしても、落ち着きますね」
「だな。普段はベガに振り回されているからな……奴がいない所というだけでも……
「龍成にギースではないかぁ!」
「「!?」」
この雰囲気をブチ壊すような大声ッ!まさか……
「ベガ、何故ここにィ!?」
「馬鹿者!冬と言ったらラーメンか牡蠣だろう!つまり二分の一を引いた訳だな!!」
「チックショオ俺達の平和な時間が……」
「フハハハ、それにしても大きい牡蠣だな!もうひっくり返して
その時、牡蠣から飛び出た汁が一閃。
アッッチィイイィィイィィ!?!?!?」
「そりゃ顔を近付けたらこうなりますよ!!」
「馬鹿は貴様だったな」
ベガさんは顔を押さえながら自分の席に戻って行った。なんだったんだあの総帥……。
「まるで嵐みたいだぁ……」
「言いたい事はなんとなく分かったぞ、龍成よ……そうだ、ひっくり返すのだったな」
ギースさんが慣れない手で牡蠣をひっくり返す。なんか可愛い。
「さて、ここからは二分待つか」
「ですね」
「という訳で待ったぞ」
「随分綺麗にカットしましたね」
「そういう物だ。さて、どうやって開けるのか……」
「このナイフで……フンッ!こうやるんですよ」
「なる程、こうか!」
今更だがギースさんは格闘家でもある。つまり、俺よりも何倍も力があるという事だ。そんな人が加減を知らずに牡蠣にナイフをねじ込んだら……。
「ふぐおおぉぉおおッッッ!?」
「ギースさぁん!汁が顔面にィ!」
「くそう、熱いぞ龍成!!」
「大丈夫ですか!?」
熱さに顔をしかめるギースさんにティッシュを手渡しながら、ふと思った。
(こんなやり取りも、もう何回目だろうか……)
今年ももう終わりに近い。後数ヶ月でここに来て一年だ。随分派手だったな。
「……どうした、龍成よ。ボーッとして」
「あぁ、いえ。それより、早く食べましょうよ」
窓から見えた空は、相変わらずの晴天だった。
遅くなって申し訳無いです。
そして次回、最終話。