俺の隣人が悪の首領達ってどういう事なんだよ 作:塩焼きそば啜郎
「いつの間に閉めたんだ?」
おかしいな……確かに俺は鍵を閉めようとして後ろに振り向いた筈。そんなに疲れが溜まっている訳でもないが……
「ま、いいか……!?」
「……」
部屋に戻ろうと後ろを振り向いた。だがそこには、廊下で別れた筈のドッピオさんが立っている。逆光で顔は見えないが、縛っていた髪を垂らし、体は俺より大きくなっていた。
「ドッピオさん……?」
「
声も低く、威圧感のある瞳だ。本当に別人なのか?俺は思わず身構える。その肉体はやがて服に収まりきらなくなり、彼は服を脱いだ。その下には網のような物を纏っている。ほぼ上裸だな。
「本来、この姿を見た者は既にこの世にはいない……だが、今面倒事を起こせば必ず探りを入れる者が現れるだろう……よって、貴様がするのはただの一つ。今日、ここであった事は誰にも口外しない事だ」
「え、あの、えと……」
俺は目の前で起きている出来事を理解出来ずにいた。この事を口外したら殺されるって事だけが理解出来る。それ以外の感情なんてものは無かった。
「いいな、絶対だぞ……」
「ちょっとまてぇい!」
「「!?」」
このシリアスな雰囲気をブチ壊す声色、相変わらずムッキムキな肉体、そして白目にケツアゴ!そして部屋の奥から出てきた事によって溢れ出る不審者感!!
「ベガさん!?なんで奥から出てきたんですか!?」
「フッフッフッ……晩飯を奢って貰いに待機していたのだァ!」
「なんでそんな誇らしげに言うんだよ!?」
「このケツアゴサイコ野郎が……!」
あーもうめちゃくちゃだよ!!えぇ!?雰囲気が一瞬で崩壊しちまったじゃねぇか!まぁ今回はそれが救いになったんだけどさ!
「ところでディアボロ!こいつはどうしてくれるのだ?」
ベガさんは腰周りを指差す。そこには何かがこぼれて染み込んだ跡が付いている。
「ベガさん、それは?」
「ディアボロ、貴様が能力を使ってくれたお陰でコーヒーをこぼしたではないか!」
「そんな事、俺の知った事では無い」
「ええいそう言うと思ったわ!貴様には……こいつのクリーニング代を請求するッ!」
「言ってる事と顔の雰囲気が一致してないですよ」
ベガさんは不敵に笑っているがディアボロさんはまんざらでもなさそうだ。分かりやすく歯をギリギリいわせてベガさんを睨んでいる。
「……フン、貴様の嫌がらせは底を尽きないな。この筋肉化け物が……」
「当たり前よ!龍成、こいつはイタリアのギャング組織『パッショーネ』のボス!!」
「はぁ」
「何だそのリアクションはァ!」
「ほう、随分と落ち着いているな」
「いやーね、そりゃ周りにシャドルー総帥やハワード・コネクション総帥や鰐の王様がいればこんなリアクションにもなりますよ」
「……龍成と言ったか、お前とは話が合いそうだ。だが、口外したら分かっているだろうな」
その言葉を最後に、ディアボロさんは一瞬で消えていた。能力とか言っていたが、まぁ……ベガさん見てたらもう慣れたよな。うん。
「逃げられたか……」
「ベガさんは彼がどこに住んでるか知らないんですか?」
「あぁ。このマンションにいる事は間違いない。だがどこを当たってもいないのだ。貴様よりちょっと前に入居してきたドッピオという青年は似てる気がするが……気のせいだろう」
ベガさんは同一人物だって事を知らないのか……。ん?ちょっと前に入居してきた?
「ベガさん」
「なんだ」
「ドッピオさんにも歓迎会ってしました?」
「あぁ!その日はギースもオフだったから、三人で飲んだぞ!」
ドッピオさんにはこれからも強く生きて欲しい。俺は切に願った。