実は『BOOTLEG編』はもう折り返し地点になってしまいました……。じゃあ、次は?
そして、今作は前作である『仮面ライダーアクト』の続編(?)という形で作っておりますので、徐々に関連性なんかも明らかにしていこうと思います。
感想や読了報告等くださると筆者の励みになります故、何卒宜しくお願いいたします。
【イメージOP】
WONK - Passione
【イメージST】
牛尾憲輔 - Chainsaw Man Original Soundtrack Complete Edition - chainsaw edge fragments -
二人の怪人が夜の山の中で戦っている。
一人は仮面ライダーブートレグ ホッパーフォーム。もう一人は全身が棘によって覆われた、複眼が白い花のようになっている草色の怪人──カクタスユーザーだ。
彼等は木々が生い茂る森の中で拳を交え合うのだが、どちらも力としては互角なために決着がつかない。
「すみませんけど、僕は今日すごく体調が悪いので、さっさと終わらせたいんです……!」
「それならさっさと帰れば良いじゃないですか!」
「そうは言われても、呼ばれたんだから仕方無いじゃないですかっ!」
ブートレグの怒りの拳がカクタスユーザーの胸部にぶつかり、衝撃で後退する。
戦闘中とはいえ自分を怒りの捌け口として使われたことに腹が立ったカクタスユーザーは、
「舐めないでください!」
全身の棘を勢い良く伸ばした。とげは周りの木に次々と穴を開け、枝や黄色い色の付いた葉を落とす。
更にブートレグの顔に胸、両腕や両太股を突き刺す。何のダメージも感じないブートレグであるが、些か厄介な敵であることに間違いは無いとし、戦術を変えることとした。
今ドライバーの中に入っているホッパーガジェットを取り出すと、後ろから飛んで来たワスプガジェットを変形させて中に入れる。
『
ドライバーのレバーを押した。
『変身シークエンスを開始します』
身体が黒く変色をすると、黒い羽織を身に纏った形態──ワスプフォームへと姿を変える。
右手に持った剣で自分に伸びて来る棘を次々と斬り落とし、そしてドライバーのレバーを再度下げて、鞘を抜いて月光によって銀色に輝く剣心を顕にする。
『WASP FINISH』
そして美しい翅へと変形させた羽織を思い切り羽ばたかせ、カクタスユーザーの前へと瞬時に移動。彼の上半身を上から一刀両断した。
『Rest in peace. 次の人生に、ご期待ください』
黒くなった怪人の身体が溶け、土の上に草色のガジェットだけが残る。
上から棘のある突起が出ていて、表面には『04』『CACTUS』と白く書かれている。
ブートレグが拾い上げたところで、彼の近くに万太郎がやって来た。
「お疲れ様。有り難う」
「どういたしまして。あの、もう帰って大丈夫ですよね……?」
夕飯を食べ終わって電話があったと思ったら、近くの森にユーザーがいるから出動してくれと言われてこれだ。
はっきり言って眠い。明日も学校だというのに。
「もう大丈夫だ」
ホッと一息吐いたブートレグは、身体を粒子状にして退散する。
万太郎も何処かへと立ち去って行った。
自分達を見送った誰かがいたことは、彼等は知らなかった。
スマートフォンで一連の流れを動画に収めた男は、画面を見ながら嬉しそうに笑みを浮かべる。けれども周りには誰もおらず、喜びを共有することは出来ない。
「これでようやく、分かった……!」
しかし彼は気が付いていなかった。
後ろに、誰かがいることに──。
────────────
翌日。優司は昼過ぎの学校に辿り着いた。
ここ数日持病のために休んでいた優司は、午後から授業に参加することにしたのだ。
誰もいない廊下を歩いて教室の中に入り、こんにちはと静かに言った途端、授業を受けていたクラスの全員が優司の方を一気に向いた。
一人だけ途中参加をすればそうなるだろうが、だからと言ってここまで注目を浴びるだろうか。
不思議そうに会釈をした優司は会釈を一つして、そのまま授業に臨む。
けれども彼等が優司に向ける奇妙な目線は止むことがない。
その真相を知らしてくれたのは、絵麻の友人であるヒロミから聞かされた話だった。
今朝絵麻が学校に来ると、やけに上機嫌であった。数日前まで何だかよく分からない微妙な表情をしていた彼女が、いきなり口角を少しだけ上げて投稿して来たのである。笑顔を見せることが珍しい絵麻のその表情は、まるでこの世の奇跡に等しかった。
「どうしたの絵麻?」
訊いてももじもじとするだけで何も答えてくれない。
ここは一ついつもの手段に出ることにしよう。
「もしかして、優司君と何かあった?」
いやらしい笑みを浮かべながら再度質問した。
こういう時にいつもの絵麻であれば、そんなわけないでしょ、と否定して大まかな詳細を語ってくれる。その様子を
だがこの日の絵麻は、
「え? え、うへへへへ……。うん……」
明らかにおかしかった。
先の笑顔が奇跡に等しいものなのだとすれば、これは何だ。不幸の前兆か。
というかそもそも、彼女の様子を見るに、確実に優司と何かあったことに間違いは無い。あの冷淡な絵麻がここまでふやけるようになるとは、まさか──。
そんなわけで、放課後に優司は質問攻めにあった。ヒロイン格を手中に収めたのが、同居するコミュ障な陰キャであったからだ。
一体どうやったの? 馴れ初めは何なの? 一体何処まで進んだの? 『B』? もしかして『C』!?
当然、他人と上手く話せない優司は答えられない。
すると横から見ていた絵麻が優司の手を引いた。
「何してるの? ほら、行くよ」
いつもは助け舟なんて出さないのに。関係が進展をした二人の様子に女子は胸をときめかせ、男子は羨望の眼差しを向ける。
そして優司の手を引いて教室を出る寸前、絵麻は顔を赤らめながら言い放った。
「もう私達にあんまり質問してほしくないから言うけど、私達は付き合ってるし、何だったら『C』まで行ってるから!」
すぐさま優司を連れて逃げ出した絵麻。
彼等に対してクラスメイト達は何も言えずにただ固まってしまった。
────────────
「どうしてあんなこと言ったの……?」
「仕方無いじゃない! ああするしかなかったんだから!」
Cafe Amigoで自身の業務を行いながら軽い口論を繰り広げる優司と絵麻。
通常であれば接客態度が成っていないとクレームが来るのだが、常連客達は微笑ましそうに二人を眺めている。
「あのさ優司君に絵麻ちゃん」
「「?」」
「その、仲良いのは良いんだけどさ、ちょっと加減してくれると……」
武史から軽く注意が入り、すみませんと会釈をして仕事に戻る。
先日、同じ部屋で一夜を過ごした二人のことを知っている武史は注意したものの、ニヤニヤが止まらない。
すると優司の電話がバイブレーションを始めた。
手に持った盆を左脇に挟んで画面を見ると、万太郎からメールが届いていた。「30分後にこの場所まで来てくれ」と。
「吉花さん。ちょっと出ます」
「え!? 今から?」
「すみません」
エプロンと盆を武史に託した優司は、すぐに店を飛び出して行った。
突然行ってしまった彼のことを絵麻は当然、事情を知らない武史や客達も心配する。
彼等だけではない。
厨房の奥から一連の出来事をじっと見ていた花蓮もだ。勢い良く開かれた状態のドアの間から、優司の残像を確かに感じ取ろうとする。
そしてドアは静かに音を立てて閉まった。
────────────
集合場所は埼玉県警上米署だった。
書類の届け出や相談をしに来た者達に混じった優司は、ロビーでソファに座りながらテレビ掲示板を眺める。様々な県内のニュースが流れて来る。
──久喜市に強盗致傷事件が発生。森透容疑者(31)と林拓真容疑者(29)の2名を逮捕。
──川越駅で飛び降り事故が発生。16歳の少年が死亡。
──23日に越谷市で発見された変死体の身元が、椎名春樹さん(33)と判明。殺人事件を視野に捜査を進める。
色んな事件があるんだな、と優司は呆然と眺めていた。だが自分がユーザーとして処理した人がこの中にいるのではないかと考えると、とても他人事とは思えない。
唇を無意味にでも噛み締めていた時、優司の下に万太郎がやって来た。
優司が立ち上がって一礼をすると、万太郎は優司を先導する形で歩き始める。
そうして連れられたのは、3階にある会議室であった。二人で使うには広い部屋の中に置かれたデスクに、向かい合う形で腰掛ける。
「何でこんな場所使えるんですか……?」
「まぁ、ちょっと、色々な」
これ以上訊くことは何となく止めておいた方が良いと優司が判断したのと同時に、万太郎は何枚かの写真をデスクに置いて優司に見せる。
様々な風貌や年齢の男女計3人の写真が並べられていて、唯一の共通点は全員が死体になっているという点だ。
吐き気を覚えるのだが、グッと抑えて万太郎の話を聞く。
「嫌なものを見せて申し訳無い。これは、この2週間の間に起こった殺人事件の現場写真だ。死因はバラバラ。絞殺、刺殺、溺死。ただ共通しているの点は、被害者が全員ジャーナリストで、どれも犯人が防犯カメラに映っておらず、しかも犯人がいた痕跡が皆無だ。指紋もDNAの類もだ」
例えどれだけ不可思議な事件であったとしても、そこには必ず痕跡が残る。それを採取し解析しても尚解決に至らない場合は山程あるのだが、そもそも何も手掛かりが無いというのは聞いたことが無い。優司があまり好きではないライトノベルであっても、そこまで突飛なことは起こらない筈だ。
「……ショッカー、ですか?」
「我々はそう考えている。ライドボットで出来たユーザーであれば、指紋も何も出ないし、身体を分解してカメラに映らないようにするのも可能だ」
だから自分は呼ばれたのか。納得出来た。
だがもう1つ気になることがある。
「でもどうして、ショッカーはこの三人を……」
「……実は、三人ともショッカーに関する特ダネを入手していたらしい。それでやられたんだろうな。ただデータは全て完全消去されていて、一体何を手に入れたのかは不明だ」
ショッカーの存在は優司や万太郎を始めとする一部の人間しか知らない。ただのジャーナリストがその存在に気が付いて調査を始めていただけでも驚きなのに、自分達も恐らく辿り着いていないであろう事実を突き止めていたとは。
優司は内容を考えるのだが、全く検討がつかない。
「関係者への事情聴取によれば、そのネタは黒いUSBメモリに保存されている。データの複製や転送、印刷は不可能。見るにはそのUSBメモリを持って行くしかない」
「それは今何処に?」
「身の危険を察した被害者が次の被害者にどんどんと手渡していったらしい。明日、今USBメモリを持っているとされる人の元に行く。同行してくれないか?」
「……分かりました」
────────────
もう少ししか灯りが灯っていない2階の廊下を花蓮は歩いていた。
歩幅はいつもより大きく、背中はより真っ直ぐとしている。
すると、
「ねぇ、お姉ちゃん」
絵麻が彼女に背後から話しかけた。
声をかけられた花蓮は自室のドアの前で立ち止まる。
「何?」
いつもより声のトーンが低い。
恐る恐る絵麻は訊いた。
「お姉ちゃんさ……何か怒ってる?」
「……どうして?」
「だって、最近何となく冷たいし……」
子供か、とでも突っ込めば良いのだが、花蓮は何も言わない。
ここは一つ吹っ掛けてみることにした。
「……もしかしてお姉ちゃん、私に嫉妬してるの? 私が優司とくっついたから、先を越されたって──」
「五月蝿いっ!」
怒号が放たれた。
ここで絵麻は仕掛けたことを軽く後悔する。
「だったら何なのよ……。別にそっちはそっちで楽しくしてれば良いじゃない……。私なんて……。私なんて……」
ヤケになった感じの花蓮はそのまま部屋の中に飛び込んでしまった。
彼女の後ろ姿が見えなくなったとしても、その場で立ち尽くして動かない。
「お姉ちゃん……」
何となく罪悪感に駆られるのだが、それは本来感じなくて良い筈のもの。
絵麻自身も気持ちの整理がつかずに軽く混乱をしてしまった。
────────────
翌日。優司は万太郎と共に住宅街の中を歩いていた。
休日の昼なので家族連れは何処かに出掛け、その他は殆どが家の中に閉じ籠もっていることから、出会うのは宅急便のトラックと自家用車だけだ。
「ここだ」
辿り着いた場所は『堀江』と表札が掲げられた一軒家であった。
決して広くは無いが一軒家を持てるということは、SNSでの一般人による投稿にその地位を危ぶまれているジャーナリストという職業においてかなりの立ち位置を有していると優司は推測した。
インターホンを鳴らすと男が出て来た。
「どうも」と会釈をする男は30代後半の筈であるが、とてもそうには思えないくらいに若々しい見た目をしている。
「
堀江は優司と万太郎を家の中に招き入れる。
中は壁一面が本棚となっていて、優司はじっとレパートリーを眺める。見ると二流の出版社から出た、ぽっと出のビジネス本だ。堀江には失礼だが、例え彼が優秀な記者だったとしても所詮はその程度の人間ということか。
ひ弱な自分が他人を見下しても良いのだろうかと思いながら、ソファに座って出されたハーブティーを飲む。
「まさかびっくりしましたよ。USBメモリを手渡されて、そしたら殺されたって……」
「そうですよね……。今、そのメモリは何処に?」
「実は、何か呪いのアイテムみたいで怖くなったので、他の記者の方にお譲りしたんです。連絡先をお渡しするので、あの、ちょっと待ってください」
スマートフォンを操作しながらリビングルームを去る堀江。
高々連絡先を探すだけならこの場で行えば良いのに。
時間がかかりそうなので、優司は万太郎に話しかけた。
「まだ花蓮さんからユーザーズシステムについて聞けてない部分があるんですけど……」
「? 何だ?」
「ユーザーを倒す度に、それに抵抗が全く無くなっていくんです……。僕がただ単に狂ってきたのか、それとも、ドライバーのせいなのか……」
優司は自身の両掌を眺める。血で汚れたことが無いだけで、この手が何人もの命を奪ったことに何の変わりも無い。
なのに一昨日の戦いでは、カクタスユーザーを倒すことに何の躊躇いも生まれなかった。そんな自分が恐ろしい。憎くて仕方が無い。
悩む彼に万太郎は話し始めた。
「結論から言えば、それはユーザーズシステムを使った際の副作用のようなものだ。使えば神経系に異常を
考えてみれば、ワスプユーザーこと木野塚マリアは『自身の人気を維持したい』という願いのもとに活動をしていた。
スコーピオンユーザーこと樋口は『絵麻を我が物にしたい』というもの。そのためにゲームを行なって絵麻を誘拐して辱めたのだ。
だとしても自分の望みがこんな歪んだ形で叶えられるとは思ってもいない。
「そもそも、ユーザーズシステムは野宮コーポレーション、つまりショッカーが軍事兵器として製作をしたものだ。『スパイダー』は糸を張って偵察をし、『バット』は音波によって敵陣を壊滅させる。『ワスプ』はネットからのサイバー攻撃。『スコーピオン』は毒によって兵士を殺し、『カクタス』は棘による広範囲への遠距離攻撃。そして、君の『ホッパー』は超人的な身体能力。兵士としてシンプル且つ理想的な能力だ」
兵器。
何かに貢献するためではなく、ただ単に自らの利益のためだけに力を振るう。
自分は違うと言い聞かせたとしても、じゃあ果たして本当に違うのかと問われれば否定出来ない。
小刻みに震える手を何とか落ち着かせて、優司は目の前にあるハーブティーを一気に飲み干した。
遠くの方から悲鳴が聞こえたのは、それと同時だった。方向は堀江が去って行った方であった。
急いでリビングルームを抜け出して現場に走る。
1階は特に異常が無さそうだったので、2階にある大きな堀江の自室に踏み込んでみると、そこには黒ずくめの戦闘員達がいた。
「ショッカー……!」
けれども堀江の姿は何処にも無い。万太郎が各部屋を見て回ってもだ。
戦闘員達は自らが先に割っていた窓ガラスから逃走を図る。
ベランダ部分から逃げ、道路へと着地をしたのだ。
「滝口さん、僕の身体、お願いします」
「分かった」
優司はユーザーズドライバーを腹部に巻き、レバーを下げる。
『只今より、意識を転送します』
身体中から力が抜けて、部屋の真ん中で優司は倒れた。
ライドボットで作られる新しい身体はというと、人影が殆ど無い道路の上に出来上がって、戦闘員達の前に立ち塞がった。
「堀江さんは何処ですか?」
相手は答えない。
と言うより、ただ単に答える機能を持っていないだけなのか。
「……じゃあ良いです。倒して、何処にいるか聞き出させていただきます」
すると優司はいつの間にか右手に持っていたカクタスガジェットの突起を押し込んで仕舞い、ドライバーのスロットに装填した。
『
バットフォームに変身する際に流れるジャズ風の待機音声の中で、優司は小指から順にレバーに掛けていく。
「手に入れたばっかりだから、上手く扱えるか判らないですけど……。変身!」
『変身シークエンスを開始します』
レバーを下げると優司の身体が黒く変色して、草色の新しい姿に再構築される。
全身が棘のようなもので覆われていて、頭頂部には縦長の山のようなパーツがいくつも着いていて、そこにもやはり棘は大量に付属している。
『CACTUS』
これが、仮面ライダーブートレグ カクタスフォームである。
戦闘員達が槍を持って走り出し、先端を突き刺そうとする。
ブートレグはそれを避け、次々とパンチを繰り出していく。拳にも棘が着いていて、一撃一撃が厄介なものだ。
それでも敵は攻撃を仕掛けてくる。当然、痛みを感じることが無いため何をされても問題は無いのだが、度重なる攻撃によって動けなくなる可能性がある。
早く必殺技の一つでも決めたいのだが、四方八方に囲まれながら槍で全身を突かれている今のブートレグには至難の業だ。顔と上半身を重点的にやられていることから、煩わしさを感じてしまう。
何とかして隙を生み出そう。
戦闘員の一人が突いてきた槍を掴みながら持ち主を蹴り飛ばし、奪った槍で残りの戦闘員達を吹き飛ばす。
思った以上のチャンスを貰ったブートレグは、ドライバーのレバーを下げた。
『CACTUS FINISH』
「ハァァッ!」
次の瞬間、ブートレグの棘が一気に膨張し、周りの戦闘員達を串刺しにした。串刺しにした以外の棘は、周囲の一軒家や車に当たる寸前で止まり、一切の被害を与えない。
黒い粒子が血のように吹き出した戦闘員達は、元のきめ細かい状態に還っていく。あっさりとした感じではあったが、これで一先ず敵は退けた。
だがここで一つ問題がある。堀江は一体何処にいるのだ?
あの戦闘員達が連れ出したと考えるのが良いのだが、もしかしたらどさくさに紛れてもう既に連れて行ってしまったのか……。
そんな考えが頭の中をよぎりながら、優司は元の身体に意識を戻した。
「グッ……!」
目が覚めたその時、最初に耳に入ってきたのは万太郎の唸り声だった。
何事かと思って立ち上がると、部屋の中で万太郎が倒れている。特に外傷は見当たらず、気絶をしているようだった。
「滝口さん! ……!?」
駆け寄ろうとした優司は、いきなり壁に打ち付けられた。当然優司が自らやったわけではない。
敵は見えない。
だが一つだけ見えたものがある。ナイフだ。割れた窓の中から入って来る光によって銀色に輝き、存在感を増している。
不味い……。このままだと刺される……!
けれども抵抗の術など無い。成されるがままにするしかないのだ。
「悪いけど、貴方にはここで死んでもらうから」
そして女性の声が聞こえたのと同時に、ナイフは優司の方へと向かって来た──。
────────────
同時刻。病院の食堂で絵麻と杏奈が向かい合いながら座っていた。絵麻から話がしたいと呼ばれたためである。
二人はそれぞれ水を飲みながら話をしていた。
「──つまり、優司君と付き合ってからお姉さんの様子がおかしい、ってこと?」
「はい……。何か、心配になっちゃって……。こんなこと相談出来るの、杏奈さんくらいしかいないので」
「え? 叔父さんは?」
「相談出来るんですけど、こういうのは同じ女性に訊いた方が良いと思って」
元々絵麻は、忙しい杏奈に時間を作って貰って様々な相談事をしていた。大半はひ弱な優司に関することで、彼の体調を聞けることもあってか杏奈は喜んで時間を割いてくれるのだ。
だが今日は花蓮についてであった。絵麻が優司と付き合い始めたのも驚きだが、それ以上に花蓮の様子を聞くにこれは──。
「……それ、多分嫉妬じゃないかな?」
「やっぱそう思いますか?」
「うん」
溜息を吐く絵麻。両手で顔を覆いながら話す。
「こういう場合どうしたら良いんでしょうね?」
「そうねぇ……。これで姉妹の仲がギスギスしちゃうのもあれだからねぇ……」
「まぁ、絶対に優司は渡さないですけど」
一緒のタイミングで水を飲む二人。
考えは纏まらず、ただ時間が過ぎるだけだ。
「こういう時、深田さんがいてくれたら簡単に結論は出せるんだけどねぇ。何かこう、首を捻りながら一緒に考えてくれるだろうし……」
首を捻ってみせながら何かに耽る杏奈。
絵麻は絵麻で姉への対応に困って固まる。
想定外の出来事というのは容易に人の思考を停止させるのかと思い知り、その場は解散となった。
先に書きました通り、本作は『仮面ライダーアクト』と殆ど同じ世界観です。
なので、テレビ掲示板のあのニュースは……。
【参考】
サボテン - Wikipedia
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%e3%82%b5%e3%83%9c%e3%83%86%e3%83%b3)
たまテレ
(https://www.tamashima.tv/channel/news/stream.php?num=54)
サボテグロン|仮面ライダー図鑑|東映
(https://www.kamen-rider-official.com/zukan/phantoms/752)
優司って変身の際にレバーに手を掛けるだけなんですけど、変身ポーズっていりますか?
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いる!
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いらない!