急展開が続きますが、どうかお付き合いください。
感想や読了報告等くださると筆者の励みになります故、何卒宜しくお願いいたします。
【イメージOP】
WONK - Passione
【イメージST】
牛尾憲輔 - Chainsaw Man Original Soundtrack Complete Edition - chainsaw edge fragments -
ライドボットの身体に意識を転送した優司は、無我夢中で院内を走っていた。
一体何処に行けば良いのかは分からなかったが、何故か本能的に病院の屋上へと足を進めていた。同じ機械の身体同士、惹かれ合うのかどうかもしれないが、そんなことは今は問題ではない。
町並みの大半を一望出来る屋上に辿り着くと、ユーザーズドライバーを腰に巻いた杏奈が待ち構えていた。
「早かったわね。2分くらいしか経ってないじゃない」
「走りましたからね。……それで、これから一体どうするつもりですか?」
「実は、もう少しだけ被験者を用意しろって言われてるの」
「それは、野宮ホールディングスの野宮社長からですか?」
「ううん。
何だか楽しそうな様子である杏奈のことは、もうただの優しい主治医と思えない。ただのマッド・サイエンティストにしか見えない。
「そんなことはさせませんよ……! 変身!」
『変身シークエンスを開始します』
瞬時に仮面ライダーブートレグ ホッパーフォームへと姿を変えた優司は、じっと杏奈と対峙する。
すると杏奈のところに
その頭部と脚を押し込む形で内側に収納し、ドライバーのスロットに装填した。
『
ギターをメロディーラインとするロック・ミュージックが流れ始める。
杏奈はレバーに手をかけて、ニッコリと笑って下げた。
「変身!」
『変身シークエンスを開始します』
杏奈の身体が全く別のものへと変わる。
元々の身体のシルエットに限りなく近い秘色の身体に、白濁としたレースを白衣のように纏ったその姿は、内に秘めた妖艶さを醸し出すのにぴったりであった。
黒い複眼が2つ付いた頭部には大きな三角形の帽子が着けられていて、そこから前に8本の、後ろに2本の白い布切れが垂れている。
『SQUID』
スキッドユーザーに変身をした杏奈は、ギロっとブートレグを睨む。
それに屈することなど無くブートレグはジャンプをし、右の拳をぶつけようと試みる。
すると帽子の布切れが伸び、まるで触手のように襲い掛かって来た。
様々な方向から来るそれを蹴り飛ばして移動しながら、何とかしてすぐに敵の所へ辿り着く。
──これで一気に決める……!
『HOPPER FINISH』
「ライダーキック!」
前方に触手を送り込むことだけに集中をしていたスキッドユーザーの真ん中はガラ空きだった。
なので右足に力を入れて、一気にその部分を蹴る。
防御のしようがなかった為か、そのまま貫通をし、向こう側にブートレグは着地をする。
攻撃をモロに喰らったスキッドユーザーは、衝撃によって上半身と下半身が分離し、上半身が音を立てて無様に落ちる。
僅か十秒弱の出来事である。
何だ。こんな簡単なことか。自分を治療してくれた恩人を倒すというのにもう何も罪悪感を感じなくなってしまった自分の気は狂っているのだろうか。
感じる前に事が済んだことへの安堵だけが残る。
これで後倒さなければならないユーザーは1人。
ブートレグは変身を解除してその場を立ち去ろうとした──。
だがその時、スキッドユーザーの帽子に付着している布切れのうち、2本が金色に光っているのが見えた。
「?」
ブートレグが疑問に思った次の瞬間、スキッドユーザーの上半身と下半身が一つになって、再び人の形を成していくではないか。
「!?」
「やってくれたわね〜」
何事も無かったかのようだ。
あれ程の攻撃をお見舞いされれば、もう既に死んでいる筈だというのに。
「今度は、こっちの番よっ!」
再び触手をブートレグの方へと伸ばす。今度は先程よりもスピードが速いため、とても今の形態では逃げ切れない。
ドライバーのガジェットを瞬時に入れ替え、レバーを押した。
『変身シークエンスを開始します』
選んだのはバットフォームであった。
纏っているコードを展開し、大きな羽根として空へと飛び立つ。
逃すまいと触手達は次々と追って来る。
縦横無尽に飛び回りながら回避をして、耳から次々と超音波を流す。こうすることによって少しは動きが鈍る筈だと思った。
けれども怯むのは一瞬だけで、その後はごく普通に迫る。
何度やっても結果は同じだ。何をやっても通用しない。
するとスキッドユーザーは帽子の内側から青白い炎を出すと、ロケットの要領で宙空に飛んで、ブートレグの前に現れる。
そして触手を自身の前に集め、その先から黒いエネルギーを出して球状に固め、そして凄い勢いで放出した。
「ッ!」
胸部に当たると、その部分が爆発を起こした。
それはかなりの痛手であったらしく、そのまま病院の屋上に叩きつけられてしまう。
彼の様子を眺めながらスキッドユーザーはゆったりと着地をした。
「私はこれから打ち合わせに行って来るから。じゃあね」
二人の身体は崩れ去って、粒子は消えていく。
屋上に誰かがいた痕跡は皆無となった。
────────────
優司が目覚めるまでの刹那の中で、思い出した記憶がある。
それは彼が上米町に来てすぐのことであった。
町を一通り見てみようと、博の車に乗せられて回ったのだ。
ビルや洒落たカフェ、北欧のような家の群。とても埼玉の山奥とは思えない光景に、優司は目を光らせていた。
「楽しいだろ? 僕も最初来た時は度肝を抜かれたよ。こんな東京みたいな、と言うよりそれ以上のものが埼玉の山の中にあるだなんて」
「本当ですね。びっくりですよ……!」
信号が赤になったので車が止まる。
何故か間が生まれてしまったのだが、博がそれを埋めてくれた。
「優司君。君はこれから、色んな災難に見舞われて、その度に苦悩するかもしれない。……けど、君なら大丈夫だ。僕が保証する」
突然の言葉に優司は驚き、目を大きく開いて博を見る。
「どうしたんですか、急に……」
「いや、ただそう思っただけだ……」
恥ずかしいのか、博は首を微かに捻る。
それやりすぎると首痛めますよ、と優司が優しく言うのだが、癖だから仕方無いと返すだけだ。
実に楽しい時間であった。
きっと忘れることの無い、充実したドライブであった。
これが博と最後に会った日のことである。
今の自分に彼はどんな言葉を掛けてくれるだろうか。
その前に何と言って彼に事情を説明すれば良いのだろうか。
今更どうでも良いことを考えながら、元の身体が再び動き始めた。
────────────
武史に絵麻、花蓮の三人はCafe Amigoのカウンターテーブルにて夕飯を食べていた。
絵麻はテーブルの真ん中で、立ちながら食べている武史と向かい合いながら食べているのに対し、花蓮は何も手をつけずに窓の方を眺めている。
すると武史がふと店の壁に掛かっているカレンダーを見た。
「あ、そういえば明日、絵麻ちゃんと花蓮ちゃんの誕生日だ……!」
今日は11月5日。明日11月6日は絵麻が17歳、花蓮が21歳になる誕生日であった。
「え? もしかして叔父さん、私達の誕生日忘れてたの?」
その言い方に少しだけ不機嫌になる絵麻。
武史は必死に弁解をする。
「いや別にそうじゃないんだよ! ただ『あ、そういえばそうだった』ってことなんだよ!」
「ふぅーん。じゃあ、今年の誕生日プレゼントはもう決まってるの?」
「まだ決めてない。今年は二人に直接決めてもらおうと思って」
天を仰ぎながら考える絵麻。
暫く考えて導き出したのは、
「……じゃあ、凄い高いお肉食べたい」
「オッケー! 花蓮ちゃんは?」
武史と絵麻は花蓮の方を向く。
窓の外を見つめたまま何も答えようとしなかったが、ただ一言だけ伝えたことがある。
「……プライスレスなもの。明日になったら、もう手に入ると思う」
花蓮が一体何を言いたいのか全く理解出来ず、首を傾げるだけの二人。
ただこれ以上は何かを訊いても無駄だと思うし、寧ろ踏み込んではいけないと思ったため、わざと話題をずらした。
「そういえば、優司君は今何やってるんだ?」
「優司なら今、調べ物してる。今日中にやっておきたいんだって」
一方、優司は自室のデスクに座りながら一冊の分厚い本を眺めていた。
中身は図鑑だ。大きな烏賊の絵が描かれていて、内臓や脚に関する解説がびっしりと細かい文字としてある。
優司が何かを見つけたようで、口角をほんの少しだけ上げた。
そして図鑑を閉じて本棚に戻し、スマートフォンを操作し始めた。
────────────
「それで、我が社を其方にお売りするという話が出ているようですが。これは一体どういうことでしょうか?」
広い会議室の中には巨大な円形のデスクが並べられていて、その端には野宮が座り、周りは彼と同じようにスーツを纏った男女が腰掛けている。
中でも目を引くのは、白いローブに身を包んだ者だ。フードを被っているために深く被っているどころか、緑色の塗料で大樹が描かれた白い面を着けていることから、顔が一切確認出来ない状態となっている。
「ここにいらっしゃる株主の皆様方は、貴方にこのままショッカーを任せていては不安だという風に仰っている」
ローブを着た男が低く籠った声でそう言うと、周りに座っていた株主達は頷くか、野宮をじっと睨むかの二択の反応を示した。
「仮面ライダーという厄介な存在もことじゃないですか。対処なら我々だけでも可能です」
「だから、『ゲルダム』に全てを任せろとでも? 冗談じゃないですよ。我々にも切り札はあるんですから」
静かに熱を帯び始めてきたこの場の角に、杏奈は一人立っていた。
被験者に関することで打ち合わせかと思って来てみれば、ただ野宮ホールディングスの株主達にあのローブの男を加えて口喧嘩をするだけではないか。来て損をした。
そろそろ飽きてきたその時、杏奈のスマートフォンに着信が入った。
流石にこの場で出るのは不味いと思い、室外に行って相手を確認する。
優司だった。
「もしもし何?」
『……分かりましたよ。貴女の弱点』
暫く間が空いた。
だがすぐに余裕を聞かせてやろうと声を出す。
「そう。まぁ私は明日から、新しい被験者を探しに行くから、病院は退職することになるでしょうね。もう君の主治医でもなんでもない」
「……死神が……!」
「何とでも言いなさいよ。貴方だって同じくせに。……じゃあ、また明日」
一方的に通話を切った杏奈。
表情こそ平静を装っているが、何故か指先が震えていた。
スマートフォンを白衣のポケットに仕舞い込んで耐えるのだが、それでも駄目だ。
これはきっと何かの間違いだ。何かを勘違いして身体が反応してしまっている。
そう自分に言い聞かせたとて、震えがすることに変わりは無かった。
────────────
11月6日を迎えた翡翠邸は慌ただしかった。
折角の二人の誕生日ということで店は臨時休業。幸いにも学校は行事のために休み。なので四人で朝から飾り付けなどをして盛り上がっていた。
絵麻と花蓮の願いで何処にも出掛けることは無く、家で朝食や昼食を済ませ、そしてもう少しで夕方になる。
優司はこっそりと自室の中でドライバーを巻き、ベッドに寝転んで厚手の布団で身を包んだ。
自分がこれから行うことを誰にもバレないようにするためである。
そして優司は静かにレバーを引いた。
『只今より、意識を転送します』
折り紙で作った鎖で店内を装飾していた絵麻達三人が、バイクか何かが外を走り始めた音を聞いたのは、それからすぐのことであった。
武史には近くをただバイクが通ったと思っただけだろうが、絵麻と花蓮には誰が運転しているものであるのかまで判った。
今自分の部屋で寝ているであろう彼は、きっと夕食までには戻って来る。そうしたら四人でケーキでも囲みながら仲良く過ごすのだ。
絵麻が口角を上げながら飾り付けを再開したその時、
「──そろそろ始めようかな……」
花蓮が突然呟いた。
一体何を?
誰もそれを訊こうとしない。何故か口が開かないのだ。
花蓮がニッコリと笑顔を見せながら二人に近付いて来る。
反射的に背を向けようとしたのだが、強張ってしまっているためか身体が上手く動かない。
そして部屋の中で何かが浮遊をし、ドアが静かに開いた。
【参考】
イカデビル|仮面ライダー図鑑|東映
(https://www.kamen-rider-official.com/zukan/phantoms/804)
メ・ギイガ・ギ|仮面ライダー図鑑|東映
(https://www.kamen-rider-official.com/zukan/phantoms/713)
メズール 完全体|仮面ライダー図鑑|東映
(https://www.kamen-rider-official.com/zukan/phantoms/562)
イカ - Wikipedia
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%e3%82%a4%e3%82%ab)
【自由研究・生物】イカを解剖して、ヒトとイカのからだの共通点を探る(中学生向け)|リセマム
(https://resemom.jp/article/2018/07/26/45863.html)
2026年(令和8年)カレンダー(祝日・六曜・月齢)|便利コム
(http://www.benri.com/calendar/2026.html)
優司って変身の際にレバーに手を掛けるだけなんですけど、変身ポーズっていりますか?
-
いる!
-
いらない!