仮面ライダーブートレグ   作:志村琴音

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第12話です。
もう終わりに近付いて来ました……。
感想や読了報告等くださると筆者の励みになります故、何卒宜しくお願いいたします。



【イメージED】
King Gnu - 破裂

【イメージST】
牛尾憲輔 - Chainsaw Man Original Soundtrack Complete Edition - chainsaw edge fragments -


12 - 死神(S)

 スキッドユーザーに変身をした杏奈は、とある山道の中で待ち構えていた。近くにある白いテーブルには大量の花束や缶ジュースにペットボトルが置かれており、それが献花台であることが判る。

 

 すると何かが走行して来る音が聞こえてきた。音源が遠くの方から姿を徐々に見せてくる。

 それは優司の乗るユーザーズストライカーであった。スキッドユーザーから少しだけ離れた場所に停まり、降りた優司はヘルメットを着けたままの状態で彼女と向かい合う。

 

「来たわね」

「はい。来ましたよ。……けどどうしてここなんですか?」

「覚えてる? ここで貴方がスパイダーユーザーと初めて会った時に言われたこと」

 

 当然、今でも鮮明に覚えている。

 ──この神聖な場所を荒らすな。

 あまりにインパクトの強い出来事であったことから、脳裏から簡単に離れることは無いのであるが、彼が最初に放ったこの言葉の意味が未だに理解出来ないのだ。

 この場所がどうして彼にとっての聖域なのか。そもそも彼の正体が誰なのか判らなければ知ることは出来ないため、殆どお手上げと言っても良い。

 

「この神聖な場所を荒らして、貴方はブートレグになった。言ってしまえばここは全ての始まりね」

「そうですね」

「だから、この場所で全てのけりを付けてみたくなったの」

「『けりを付ける』って……。言っておきますけど、死ぬのは貴女だけですよ」

「だとしてもよ。だって()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 スキッドユーザーの言っていることの意味が解らず、小首を傾げる。

 恐らく彼女の言う『絶望』とは、主治医として支えてくれた自分を殺すということ。それによって戦意の一つでも喪失させようとしているのだろうか。

 だが今の彼にそんな手は通用しない。

 何せもう覚悟は決まっているし、そうでなくても使っているシステムは戸惑いも何も全て消し去ってくれる。

 

「……とにかく、僕は貴女を倒します。行きますよ……!」

「えぇ。でもその前に、私を倒す(すべ)は何なの?」

 

 何せスキッドユーザーはどうやっても倒せない、不死身に近い。

 だが優司には倒す方法があると言う。少しだけ内心怖がりながらも、煽ってみるのだ。

 

 すると優司の足元に浅緑のガジェット──カメレオンガジェットが歩いて来た。そして脚をよじ登って優司の手の中に収まる。

 

「これですよ」

 

 優司は尻尾や両脚、頭部を仕舞ってドライバーのスロットに装填をする。

 

07(ZERO-SEVEN)

 

 三味線を掻き鳴らす音が流れる中で、優司はレバーにゆっくりと手を掛け、そして下げた。

 

「変身!」

『変身シークエンスを開始します』

 

 一旦黒くなった身体は、赤色の紋様が典型的な忍者の服装のように見える、浅緑の戦士に姿を変える。

 赤色の複眼や2本の角は変わらないが、頭部には渦巻き模様の入った黄色い半球のパーツが2つ着いていて、口元は黒いマスクの類で隠されている。

 そして黒い薄い装甲をライフジャケットのように身に纏っているため、奇抜な格好ながら紛争地帯の兵士を彷彿とさせるのだ。

 

『CHAMELEON』

 

 仮面ライダーブートレグ カメレオンフォームが誕生をした瞬間である。

 

 登場したのも束の間、スキッドユーザーが素早くブートレグに接近をし、頭部から伸ばした触手で何度も攻撃を喰らわしてくる。身体を突いたり殴ったりするスピードは尋常じゃなく速いため、防御のしようがない。

 痛覚を感じず身体が崩れないというのが不幸中の幸いであった。

 そしてかなり弱ったブートレグを蹴り飛ばすと、彼は後方に転がって暫く動けない。

 

「高々透明になれるだけのカメレオンで、私に勝てるだなんてふざけてるの?」

 

 ぐうの音も出ない正論であった。

 確かにカメレオンユーザーも透明になる能力以外に特に何も使っていなかった。というより、搭載されていない。

 それなのであれば他の形態で戦った方が何倍もマシな気がする。

 なのにどうして……?

 

 ブートレグは立ち上がると、ドライバーのレバーを下げた。

 

『CHAMELEON FINISH』

 

 するとジャケットが分解されて2丁の拳銃の形となり、両手に装備をされる。

 そして彼は自分の姿を消した。否、透明な状態にした。

 

「そんなことをしても、こっちにはこういう手があるのよっ!」

 

 何処にいるか判らないブートレグが持っている拳銃から次々と銃弾が放たれる。

 それをスキッドユーザーは触手によって叩き落とし、同時に銃弾が飛んで来た方へと攻撃を仕掛ける。何処にもいないのかそれとも攻撃が貫通したからなのか、行き場を無くした触手達が道路を削り、木を薙ぎ倒していった。

 

 銃弾の出発点は前方から左の方へと移動をしている。そして徐々に銃弾の数は減っていき、遂には止んだ。

 どういうことだ……? もう退場をしたのか?

 

 ブートレグシステムは痛覚を感じなければ死にもしない。

 だが一つだけ弱点があるとすれば、脳への負担が大きいということだ。身体を一切動かしていないため、疲労は全て脳に襲い掛かる。なので、集中力が切れれば通信が遮断される仕掛けとなっているわけだ。

 

 ──何だ。もうゲームオーバーか。

 

 非常に退屈だ。

 もう終わりなのか。後ほんの少しだけでも楽しませてくれると思っていたのだが……。

 

 仕方無くスキッドユーザーはその場で溜息を吐き、変身を解いてその場を立ち去ろうとした──。

 

 

 

 

 

 けれども彼女の考えは、ただの過信だったようだ。

 

「ッ!?」

 

 突然こめかみの部分に衝撃が走った。

 あまりのものにその場から全く動けなくなる。動けと念じても言うことを聞いてくれない。

 

 すると背後にブートレグが現れ、一体何が起こったのかが判明した。

 彼は両手にそれぞれ握ったナイフで、スキッドユーザーのこめかみを刺しているのだ。刃がめり込んでいる部分から血のようにライドボットがポタポタと流れ始めている。

 

「どう、して……!?」

「ご存知ですか? 烏賊(いか)には(えら)心臓という臓器があります。それを潰させていただきました。……これで復活は出来ない筈です」

 

 ブートレグの言う通り、烏賊の頭部には鰓心臓という2つの心臓が存在する。これは海中を素早く移動するために必要な(えんぺら)に、急速に血液を送り込む補助の役割を果たしているのだ。

 勿論、本物の烏賊はメインの心臓を破壊されれば即死する。けれどももしスキッドユーザーの場合、メインの心臓を破壊されても鰓心臓が生きていればすぐに復活するのではないか。

 昨日図鑑を見てそう確信をした優司は、カメレオンフォームに変身をして姿を消し、後方に回り込んで鰓心臓の部分を破壊したのだ。

 

「ようやく優位に立ちましたよ……っ!」

 

 右足で離れた距離のところへ蹴り飛ばしたブートレグ。

 スキッドユーザーは素早い動きを支えている鰓心臓を破壊されたからか、立ち上がるにも何をするにも全てがスローモーションのようだ。

 

「これで、終わりにしましょう……!」

 

 ブートレグが右手に握っているのは、ゴリラのような頭部や大きな両腕が付いていて、『09』『GORILLA』と印字された茶鼠のガジェットだ。

 その頭部と両腕を仕舞い、カメレオンガジェットを外したドライバーの中に挿れた。

 

09(ZERO-NINE)

 

 打楽器が奏でる勇ましい音楽が轟く中で、ブートレグはレバーを下げた。

 

『変身シークエンスを開始します』

 

 再度身体が黒く変色をし、その上から傭兵のような茶鼠の装甲を身に付ける。

 頭部の赤色の複眼や2本の角は何ら変わらないのであるが、口元がゴリラの大きな鼻を模したマスクで覆われているのが印象的だ。

 そして特筆すべきは、少しだけ他の形態よりも筋肉質な両腕だ。見るからに剛力でありそうである。

 

『GORILLA』

 

 これが仮面ライダーブートレグ ゴリラフォームである。

 その姿になったブートレグはゆっくりと歩き始め、覚束無い足取りで向かって来たスキッドユーザーに対し、右手を大きく振って後方に吹き飛ばした。

 

「グァァッ!」

 

 彼の一撃はあまりにも重く、あれだけで満身創痍の状態となってしまう。

 

 ──これで一気に決める……!

 もう一度レバーを引くと、ブートレグは両腕で胸を小刻みに叩き始めた。

 

 すると突如としてブートレグを震源に強い揺れが起こり始めた。木々は崩れ、道路には罅が入り、ガードレールは崖の下へと落ちていく。更にはスキッドユーザーをより遠くの方へと吹き飛ばした。

 

 だがこれで終わりではない。

 先程までの揺れによって破壊されたものが全て、今度はブートレグの方へと引き寄せられるのだ。言わずもがな、スキッドユーザーもである。

 

 そして自身の目の前にやって来たスキッドユーザーに対し、ブートレグは両手で一斉にパンチを喰らわせた。

 

『GORILLA FINISH』

「ライダーパンチ!」

 

 当たった瞬間、スキッドユーザーの身体はバラバラに崩壊。残ったのは彼女が持っていたスキッドガジェットだけであった。

 あまりにも早い勝利である。

 

『Rest in peace. 次の人生に、ご期待ください』

 

 ガジェットを拾い上げたブートレグは、優司の姿に戻る。

 

 また一人やってしまった。

 なのにどうして、何も感じないんだ。

 ずっと自分のことを見守ってくれたのに。自分に戦える力をくれた人なのに。

 裏切ったから? そうなのか?

 

 どう整理をつけたら良いかなんてまるで分からない。

 なので優司は、考えることを放棄し、その場から姿を消した。

 

 

 

────────────

 

 

 

「スキッドもやられたか……」

 

 野宮は自身の社長室にてパソコンの画面を眺めていた。

 映し出されているのは優司の身体を崩して去って行く光景である。その後は崩れた山道が映るだけで、全くつまらなく感じてしまい、すぐに閉じてしまった。

 

「最後の1人か……」

 

 すると野宮は自身の左側の壁に立て掛けられている2つの大きな箱に目を通した。

 中は透明になっていて中身が丸見えになっていて、それを眺めながら野宮は何とも言えない表情を浮かべるのだった。

 

 

 

────────────

 

 

 

 それぞれの者達がそれぞれの行動を起こしている中、万太郎はコインロッカーの前で電話を掛けていた。

 彼の表情は任務を遂行している時にしか見せないものであることから、ただの駅前にいる人々と同化をするにはあまりにも不適である。

 

「それで、本当に復元した映像がこの中にあるんだろうな?」

『はい。6番ボックスです。お渡しした鍵で開けてみてください』

 

 若い男の声に導かれて、鍵を使って『6』と書かれたロッカーを開錠する。

 預けられていたのは、TOUGHBOOKという種類のノートパソコンと茶封筒だ。茶封筒を取り出して中身を見てみると、そこには緑色のUSBメモリが入っている。そう。カメレオンユーザーがジャーナリスト達を殺害してでも奪いたかった代物だ。

 

 すぐにその場を離れて、すぐ近くにあった喫茶店へと駆け込む。仮にショッカー側の人間がいたとしても、人混みにいれば襲われる心配は無いと考えたためだ。

 

 外の景色が一望出来るガラス張りの壁に備え付けられたカウンター席に腰掛け、パソコンを起動する。支給されたものの中には一切のデータが入っていないため、仮に店のフリーWi-Fiを経由したとしても此方側の情報が漏れることはあり得ない。

 

 身の危険を極限まで削減出来たことへの安堵を覚えながら、万太郎はUSBメモリを差し込んで中のファイルを確認し、その中で『復元後』とタイトルを付けられた動画を再生し始めた。

 

 僅か30秒程の動画は何処かの山道に設置をされた防犯カメラの映像だろうか。急勾配でかつカーブの多い深夜の山道を観光バスが徐行している。

 だが車体の向きを反対方向へと変えようとした瞬間、バスが横転。ガードレールに直撃をして崖の下へと真っ逆様に落ちて、木がへし折られる音が鳴った直後にオレンジ色の炎が立ち込めてきた。

 

 この光景で万太郎はこれが何の映像なのかピンと来た。

 数ヶ月前に起こった観光バスの事故だ。確かカーブに差し掛かったところで速度を落とさなかったことから曲がり切れず、バスが崖下に落下したというものだった。

 

 そういえば初めて自分と優司がユーザーと出会ったのは、その事故の献花台の目の前であった。

 スパイダーユーザーは自分達に「この神聖な場所を荒らすな!」と言って襲い掛かって来た。

 あの頃は一体何を言っているのか理解出来なかったが、今なら解る。

 真相はこの映像の中に全てある。ただそれだけだ。

 

 暫く炎によって上の道路が淡く照らされるだけのものが続き、映像は残り10秒となった。

 結局収穫は無しかと諦め掛けた残り10秒で、全てはひっくり返る。

 

「……?」

 

 万太郎は何か違和感に気が付いた。

 見切れてしまっているために姿が見えないトラックの方から黒い何かの群が登って来る。それはまるで諸外国にて蝗害を引き起こす飛蝗の大群、もしくは蚊のようだ。

 

 するとそれらは路上にて集まり、一気に何かの形を作り出していく。

 僅かな光しか浴びられないためにその姿はまるで判らないのだが、最後のほんの数秒だけ()が見えて、そして映像が途切れた。

 

 視聴を終えた万太郎は暫く身体を動かせなかった。あまりにも衝撃的であったためである。

 けれどもすぐに机上に置いていた一式を抱えて、店を飛び出した。

 

 ──不味い……! このままだと、優司君が危ない……!

 

 

 

────────────

 

 

 

 ゆっくりと自室のベッドの中で目を覚ました優司。

 もうすっかり陽は暮れ掛けている。とすれば、もう絵麻と花蓮の誕生日を祝うパーティーは既に始まってしまっているに違いない。

 

 急いで布団から出ようとしたその時、枕元に置いてあったスマートフォンに着信が入った。

 一先ず電話に出てみることとする。

 

「もしもし?」

「優司君」

「花蓮さん?」

「ちょっと……私の部屋に来てくれるかな……?」

 

 これで通話は切れた。

 酷く興奮をした様子であったがために、優司は少しだけ不安を覚えたのだが、仕方無く隣の花蓮の部屋に向かった。

 

 その程度のことなら電話じゃなくて直接言ってくれれば良かったのに。

 だがこれはきっと、ライドボットを起動するために意識を飛ばしていた自分への配慮なのだと納得をし、彼女の優しさに感謝をしながら3回ノックをして部屋の中に入った。

 

 室内は風船や折り紙で作られた鎖などで飾り付けがされているために、ノスタルジックないつもの雰囲気とはまた違う空気を感じる。

 ニコニコと見たことの無い笑顔を見せる花蓮は、()()()()()()()()()()の左隣に立っているのだった。

 

「いらっしゃい」

 

 何故だろう。凄く嫌な予感がする。

 ただ花蓮が笑顔で自身を迎え入れてくれているだけなのに。

 それを悟られてしまうと彼女に失礼、というより何かが起こる気がしてならないと今までの経験と本能が身体中に警告を出しているため、優司は主導権を握られまいと話し始めた。

 

「あ、そういえば、花蓮さんへの誕生日プレゼント、取って来ますね」

「その必要は無いよ」

「……え……?」

「もう、受け取ったから。ううん。これからいっぱい貰うから」

 

 すると花蓮は白い布を一気に取り去った。

 生臭い臭いを漂わせながら姿を見せたものに、優司は思わず目を見開いた。

 正体はただの椅子だった。だが──

 

 

 

 

 

「……絵麻……!?」

 

 普通のものと違うのは、何も身に着けていない全裸の絵麻が結束バンドや縄で括り付けられているという点だ。

 透明や白濁とした液体が掛かった全身は嫌なまでに光っており、口を半開きの状態で虚な目をしている。何をされたかは、嫌でも分かってしまった。

 

「これ、どういうことですか……」

「そのリアクションを待ってたよ。じゃあ、まずこのことから伝えなきゃいけないわね」

 

 これまでの中で最も邪悪な笑顔を見せながら、花蓮はまるで息を吐くように教えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最後に君が倒さなきゃならないユーザーは、私だよ」




【参考】
イカデビル|仮面ライダー図鑑|東映
https://www.kamen-rider-official.com/zukan/phantoms/804
カメレオン男|仮面ライダー図鑑|東映
https://www.kamen-rider-official.com/zukan/phantoms/745
K.Kオーグ|仮面ライダー図鑑|東映
https://www.kamen-rider-official.com/zukan/phantoms/1691
急勾配の山道「低速で下らないと曲がりきれない」…観光バス横転、同じ路線使う同業者指摘:読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/national/20221013-OYT1T50330/

優司って変身の際にレバーに手を掛けるだけなんですけど、変身ポーズっていりますか?

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