仮面ライダーブートレグ   作:志村琴音

16 / 42
第15話です。
いよいよシーズン1も後2話で完結です。
感想や読了報告等くださると筆者の励みになります故、何卒宜しくお願いいたします。



【イメージOP】
WONK - Passione

【イメージST】
牛尾憲輔 - Chainsaw Man Original Soundtrack Complete Edition - chainsaw edge fragments -


15 - 創造する時(F)

「野宮……小五郎……!」

「初対面の相手を呼び捨てとはねぇ。まぁ、別に良いんだけど」

 

 大人の余裕に似たものを見せる野宮。

 その様子に徐々に怒りが湧いて来るのだが、ひとまず冷静になって対話を続ける。

 

「何の用ですか? 裏で手を引く黒幕の貴方が出て来るってことは、相当何かあるってことですよね?」

「黒幕は別にいるんだけど……まぁ良いか。そう。僕は君をスカウトしに来たんだ」

「……はい?」

 

 この男は一体何を言っているのだろう。

 何故敵である自分を引き抜こうとしているのか。その真意が全く分からないのである。

 

 頭の中に疑問符を浮かべ始めた優司に、野宮は語り始める。

 

「全ては、君をショッカーの一員に引き入れるために、我々が仕組んだことだったんだよ。君を国内留学生としてこの街に呼び、深田君が襲うところを翡翠君に救わせる。その後、ドライバーでブートレグとなって戦わせる。そして全てのユーザーを倒した(のち)に、最強の軍事兵器としてスカウトをする。これが、我々が建てた計画なんだよ」

「え……」

「つまり、君は我々の掌で踊らされていただけなんだよ」

 

 最早何も考えられなくなってしまった。

 

「じゃあ、花蓮さんが死んだのも……」

「全ては計画通りだよ」

「……!」

 

 次に収まった筈の怒りが倍増をして再度現れた。

 それが右手に集中をする。

 

「ふざけるなぁっ!」

 

 初めて自身の感情を生身の状態で他人にぶつけようとした。

 握られた右手が思い切り振られる。

 

 しかし何故かその拳は空を切るだけで終わった。

 笑顔を向けていた野宮の顔を確実に捉えた筈なのに、彼は目の前から消えている。

 

「こっちだよ、こっち」

 

 後ろの方で声がした。

 振り返るとそこには前にいた筈の野宮が変わらず笑顔を見せている。

 

「……⁉︎」

 

 おかしい。何かがおかしい。

 目の前にいた相手が一瞬のうちに背中の方に回り込んでいることに、優司は驚きを隠せない。

 けれども考えられることは1つだけであった。

 

「まさか……!」

「そう。私の身体はライドボットで形成されているんだよ。しかも使っているのは君が使っているブートレグシステムの試作品。少しだけ構造は違うが、私を倒しても殺せないのは同じだ」

 

 そのことに優司は絶望に近い感情を手に入れてしまった。

 自分がそうだから分かることだが、即ち彼を倒すことは出来ないというわけだ。何処に自分の怒りを吐き出せば良いのか分からず、何も考えられなくなってしまう。

 

「折角だし、私が持っている最強の力を見せてあげようか」

 

 そう言うと野宮の元にバサバサと音を立てながら何かがやって来た。

 それはまるでショッカーのマークのような鳥の形をした黒いガジェットで、表面には『SP』『EAGLE』と白く印字されている。

 

 野宮が持っているガジェットに、何も考えられなくなっていた優司は驚いた。

 

「ヘキサゴンガジェットは僕が全て回収した筈ですけど……⁉︎」

「これはね、僕専用に特別に製作をしてもらったものなんだ。だから君が知らないのも当然だよ」

 

 ユーザーズドライバーを取り出した野宮は、ガジェットの頭部や両翼を内部に仕舞い込み、そのスロットにガジェットを装填した。

 

『SPECIAL GADGET』

 

 高貴な気高いオーケストラの旋律が流れ始める。

 野宮はゆっくりと左手をレバーに掛け、そして下に押した。

 

「変身!」

『変身シークエンスを開始します』

 

 彼の身体が黒く変色をし、他のユーザーの比にならない大きさをした巨大な鳥のような形になる。

 黒い身体には白いラインが大量に入っていて、鋭い嘴や赤色に光る目は恐ろしく、その姿を見て逃げ始めた周りの人間は勿論のこと、優司でさえも恐怖を覚えてしまう。

 

『EAGLE for the lord of SHOCKER』

 

 ショッカーを司る者にだけ与えられた姿──イーグルユーザーである。

 

 イーグルユーザーは恐怖に固まっている優司を他所に、上空へと飛び去って行く。

 優司はようやく気を取り戻し、すぐ近くに停めてあったユーザーズストライカーのトランクからユーザーズドライバーを取り出し、腹部に巻いてレバーを押した。

 

『只今より、意識を転送します』

 

 ライドボットの身体を車両の前に呼び寄せるて見えたのは、膝から倒れて寄り掛かった状態になっている本来の身体であった。

 違和感の無いように階段のところに寝かせると、バイクに乗り込んで飛んで来たガジェットを装填する。

 

08(ZERO-EIGHT)

 

 すぐにアクセルを蒸して発車をすると、遠くの方に行ってしまったイーグルユーザーを追い掛け始めながらレバーを押し、更にバイクの左ハンドルに付いたレバーを操作した。

 

「変身!」

『変身シークエンスを開始します』

 

 優司の身体が仮面ライダーブートレグ ホッパーフォームに変わるのと同時に、ユーザーズストライカーが三輪車の状態へと変形。これで敵を追うのに必要な準備は整った。

 

 幸いにも今日の交通量は少ないため、距離を詰めることはある程度容易であった。

 信号や横断歩道を歩く人はいたが、上手く避けて何とかする。もし警官の一人でもいたら、確実に捕まるだろう。

 

 しかしそう簡単には追い付かせてくれないようだ。

 イーグルユーザーは自身の翼から次々と赤色のエネルギー弾を発射。走行するブートレグに向ける。

 

「!」

 

 三輪車というのは機動力にこそ欠けるが、安定性は抜群だ。

 彼が避けたことによって地面に当たった結果生まれた爆風でもびくともしない。更に速度を上げて徐々に近付く。

 

 そして都心からほんの少しばかり外れた道に入る。

 このまま曲がらずに進んで行けば、野宮コーポレーションのある山に到着する。そうなれば逃げられてしまう。

 それを危惧したブートレグは別のガジェットを装填し、レバーを下げた。

 

『変身シークエンスを開始します』

 

 スコーピオンフォームへ姿を変えると、右手に持った銃をイーグルユーザーに向け、次々と引き金を引いて銃弾を発射する。

 

「ッ……!」

 

 毒を含んだ銃弾の威力はそれなりに協力らしく、徐々に力を失ったイーグルユーザーは左側へと倒れて落下する。

 

 ユーザーズストライカーを停車させて降りたブートレグは、地面に転がる彼と向かい合った。

 

 翼を使って器用に立ち上がったイーグルユーザーは突如として身体を変形させた。

 黒い身体に白いラインが入っているのは変わらないが、大きさは徐々にブートレグと同じくらいになり、翼は柔らかそうな羽毛が大量に付いた腕となる。

 言わば怪人態と言ったような形態だ。

 

「今は一先ず、この姿で戦わせてもらうよ」

「お好きにどうぞ。僕も好きにしますから」

『変身シークエンスを開始します』

 

 今度はスキッドユーザーに変身。腰の触手を全て伸ばして攻撃を開始した。

 しかし、目から出すビームや羽を銃弾のように飛ばすことによって、それを妨害していく。

 10本ある触手は例え数本が攻撃されたとしても、攻めることは止められない。

 

 何本かがイーグルユーザーに到達をしたのだが、両腕を大きく広げて翼を展開することによって回避されてしまう。中々に計算高い相手というわけだ。

 

 一気に近付いたイーグルユーザーは次々とパンチを繰り出していく。

 高い威力を誇る攻撃の応酬に、ブートレグは一切太刀打ち出来なくなってしまう。

 更には左手で頭を上から掴まれ、後ろに投げ飛ばされてしまった。

 

「……ッ! コイツ、強い……!」

「当然だよ。これは私専用に作られたものだからね。他人のものを使っているだけの君とは大違いなんだよ」

 

 それでも立ち向かわなけばならない。

 起き上がったブートレグは再度触手を伸ばして攻撃を仕掛ける。

 

 だがイーグルユーザーは再度全身から羽を大量に飛ばし、触手を全て切断。残りを全てブートレグにぶつけた。

 

「グァァァァッ!」

 

 相当なダメージを与えられたため、ブートレグは優司の姿に戻って倒れ込んでしまう。

 その姿を見たイーグルユーザーは異形の顔のまま少し笑い、彼もまた変身を解除する。

 

 立とうと試みるのだが、ライドボットの身体は動かない。仰向けの状態を保っている。

 それに野宮は声を掛け始めた。

 

「さて、ここで1つ教えてあげようか?」

「……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「翡翠花蓮君なら、生きているよ」

「……え?」

 

 そんな筈はない。

 何せ彼女は自分がこの手で殺したのだ。この目で身体が崩れ去っていくのを見たのだ。

 だから今野宮が言っていることの意味が解らない。

 

 混乱している優司に野宮は説明を始める。

 

「実はね、私と翡翠君のブートレグシステムは未完成品を使っていてね。彼女と私のドライバーを連携させることで、倒されても死なないようになっているんだ」

「じゃあ、花蓮さんの肉体は……!」

「私の社長室にある。ただ、私の意思が無ければ意識を取り戻すことは無いがね」

 

 ホッとしたのと同時に、野宮が近付いて来た理由が分かった。

 

「成程……。花蓮さんの肉体を目覚めさせるのと引き換えに、僕に兵士になれと……」

「大体そんな感じだ。……ただね、それだけじゃないんだよ」

「?」

 

「僕が使っているブートレグシステムは翡翠君のドライバーと連携している。ただね、これに関しては()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「どういう意味ですか……⁉︎」

 

「つまり、もし私を倒せば翡翠花蓮君は私の代わりに死ぬ、ということだ」

 

 更に脳内がパニックになってきた。

 しかしおかげで彼女が言っていたことの意味がようやく理解出来た。

 

 ──もう私は自分一人の身体じゃないんだし。

 

 あの時は何か花蓮が冗談を言っているものだと思っていた。

 だが今になって、それは野宮と彼女の命が繋がっていることを意味していたのだと分かった。

 

 だからこそどうすれば良いのかが分からなくなってしまう。

 

「君が私と一緒に兵士になるか。それとも逆らって翡翠花蓮の命を本当に奪うか。返事は明日聞かせてくれ。場所は私の部下に君の身体にでも書かせておくよ。では」

 

 再び巨大な鳥となった野宮は、翼をはためかせて上空へと飛び去って行った。

 大きな羽音を聞きながら優司は目を閉じ、そして身体を解かして消え去った。

 

 

 

────────────

 

 

 

「って言っているけど、どうするの?」

 

 そこは野宮が彼等と会議をした大きな会議室の中であった。

 一切の灯りは点いておらず、室内を照らしているのは先程のブートレグとイーグルユーザーの戦いを映すパソコンの画面だけだ。

 

 それを観た長身の子供のように若い男は、白装束に身を包み仮面を着けた男と話し始める。無論、白装束の男は野宮と先日話をしたあの男である。

 

「どうもこうも無い。彼は負ける」

「どうして判るの?」

「長年の勘だよ」

「成程ね」

 

 ニッコリと不気味に笑う若い男。しかし白装束の男は一切仮面の下で笑わない。

 

 するとテーブルの上から何かが歩いて来た。

 小さな大きさをしていてまるで玩具のようであるそれは、白装束の男の右手の上に収まると、彼に自身の4本の脚と頭部を仕舞い込ませた。そうして六角形のデバイスとなり、手の中にフィットするようになった。

 

「これも貰ったことだ。そろそろ潮時だろう」

「だね。後もう少しで全部終わらせようか」

 

 若い男が白装束の男が持っているデバイスの白い表面を撫でる。

 そこに書いてある黒い文字は、『L02』『HAKUTAKU』。

 

 

 

────────────

 

 

 

 翌日の朝、優司はCafe Amigoにて朝食を摂り丁度終わったところだ。もう時刻は午前7時。そろそろ行かなければならない時間だ。

 だが立ち上がれない。下半身が言うことを聞いてくれないのである。

 答えがまだ見出せない。ただそれだけのことだが、今の優司には耐えられないようなものであった。

 

「……おじさん」

「ん? どうした?」

 

 目の雨で皿を洗いながら準備をしていた武史に仕方無く訊いてみることにした。

 

「選びたいけど絶対に不味い選択肢と、選びたくないけど安全な選択肢。どっちの方を選びます?」

「不味いって、どんな風に?」

「……例えば、誰かが死んでしまうとか、社会的制裁を受けるかもしれない、とか……」

 

 皿を洗う手を止めた武史は、両腕を組んで熟考し始める。

 

「うーん。……僕は安全な方を選ぶかな」

「ですよね……」

 

「……けど、選びたいんだったら選びたい方を選べば良いんじゃない? どんなことにも絶対穴はあるんだよ。そこから抜け道を作ればある程度は安全になるかもしれない」

「法律スレスレなことしている政治家や詐欺師と同じ理屈じゃないですか……」

「理屈じゃそうだよ。だけど、それを誰かが幸せになるようにすれば、誰も文句言えないでしょ?」

 

 暫く流れる沈黙。

 優司は「そうか」と呟くとコップの中に入っていた水を全て飲み干し、すぐに厨房の奥へと消えて行った。

 

 突然のことに武史は驚いたが、優司の後ろ姿を見て安堵をしたのか、口角を上げて皿洗いを再開した。

 

 

 

 

 

「優司」

 

 2階の廊下を歩いていた優司の後ろに絵麻が立って声を掛けてきた。

 優司は振り返ること無く彼女に言う。

 

「これから僕は花蓮さんを助けに行く。……けど、あの人は君に酷いことをした。もしかしたら助ける価値は無いって思っているかもしれない。……だから、助けて良いかどうかは君の判断に任せるよ。どっちが良い?」

 

 振り返った優司。

 絵麻は俯いた状態を保っていて、そのうちに答えを出し始めた。

 

「そうね……。はっきり言って憎いよ。私は優司だけを愛しているのに、その思いを踏み躙られた……」

 

 だったら答えは一つなのかと思っていると、

 

「けど、それはお姉ちゃんも同じ。優司が好きだったのにそれを踏み躙られた。だからお姉ちゃんの想いだとかを否定したくない。……だから、お姉ちゃんを助けて。ちゃんと話させて」

 

 そう言って絵麻は顔を上げて優司の目をじっと見つめている。

 暫く彼女を見ていた優司は「分かった」と一言言って立ち去ろうとした。

 

 だが何かを思い出したようで再度質問した。

 

「……花蓮さんが帰って来たら話そうと思ってるんだけど、先に君に訊いておこうと思って」

 

 優司が心の中で思っていたことを静かに吐き出す。

 それをじっと聞いていた絵麻は少し驚いたが、話が終わると笑顔でゆっくり首を縦に振った。

 

 そして優司はニコリと笑って自室に入り、腹部にドライバーを巻く。

 きっと自分が下す選択が最善なのだと信じ、レバーを下げるのだ。

 

『只今より、意識を転送します』

 

 1階に降りた絵麻がバイクの走行音を聞いたのは、それからすぐのことであった。

 

 ──行ってらっしゃい。優司。




実は近々今作に関係する新作を出す予定ですので『ACTサーガ』『ハージェネ参戦作品』のタグをチェックしていたらけると有り難いです。



【参考】
イーグルアンデッド|仮面ライダー図鑑|東映
https://www.kamen-rider-official.com/zukan/phantoms/681
ワシ @ 動物完全大百科
https://animalbook.jp/animalia/eagle/

最後どのフォームでトドメ刺して欲しいですか?

  • ホッパーフォーム
  • 新フォーム
  • その他の形態
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。