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【イメージED】
King Gnu - 破裂
【イメージST】
牛尾憲輔 - Chainsaw Man Original Soundtrack Complete Edition - chainsaw edge fragments -
翡翠家の1階はCafe Amigoとなっていて、2階が優司達の暮らすスペースとなっているのだ。
ただ店内に入るためのドアしか無いわけではなく、その裏にある大きな門を使うと2階の直結するスペースとなるのだ。
今、花蓮は家の前に車を停めて優司を荷台に積んでいた台車に乗せると、押しながら門を通って家の中に入った。
「あれ? 花蓮ちゃん。どうしたの?」
鍵を使って部屋の扉を開けようとしたその時、左から武史に呼び止められた。どうやら裏の倉庫から食材を取り出しに来たらしい。
彼の目線は荷台の上で体育座りをさせられながら運ばれている優司に集中した。いきなり部屋から出て来たらお使いを頼んだ彼がこんな状態なのだから、変な表情をしてしまう。
「あ、これ? 疲れて寝ちゃったみたいだったから、運んだの」
「そう……。なるべく丁寧に扱えよ」
「うん。勿論」
店に戻って行く武史を笑顔で見送る花蓮。
彼が去ったのを確認すると、ようやく扉を開いて台車ごと中に入って行った。
────────────
「そうか。成功したか」
「えぇ。これで、
もう夜になった。戦いを終えた蜘蛛男は先程の部屋に戻って、男に報告をする。
やはりホッパーユーザーに関することは、彼等にとって嬉しいことらしい。
「ただ、本当に成功したかどうかを確認出来るのは、君がこの世を去った後になるだろうが……」
「構いませんよ。それが私の使命ですから」
蜘蛛男は首を捻り、天井から地面に着地をする。
そして身体が黒い粒子の塊に変貌をすると、その粒子は何故か部屋の中に置かれた自動販売機程の大きさをした緑色の容器の中へ入って行った。
部屋の中に残されたのは、椅子に座る男ただ一人となる。
姿勢を正し満足そうな様子の男は、左側の壁に立てられている棺桶のような透明な2つの箱を見つめると、静かに目を閉じて考え事を始めるのだった。
────────────
ゆっくりと目を覚ました。
さっき戦った時はまだ陽は登っていたのに、今はもう沈んでいて、室内の茶色い灯りだけが照らしている。
「……ん……?」
「目が覚めた? 優司君」
背中に伝わる柔らかさから、どうやら自分は花蓮の部屋の中にあるベッドに寝ているらしい。
上半身だけを起こすと、デスクの前の椅子に花蓮が座っているのが分かった。
「あの……一体何がどうなっているんですか……? もう一人の僕がいて、身体と声がいきなり変わって、それで──」
「詳しくは明日話す。だから今日はもう寝て」
「いやでも──」
言う前に優司は部屋のドアの前へと押し出されてしまう。
「おやすみ」
強制的にドアが閉められて、優司は少しの灯りしか無い暗い廊下に取り残されてしまう。
頭の中で一切の整理がつかない状態のまま、彼は廊下を歩いて自分の部屋に戻った。
────────────
翌日の早朝6時。
店の前には著名な食料配達会社のトラックが停まっていて、その前に絵麻が立っている。
「いつもお疲れ様です」
「あ、お嬢さん、毎度有り難うございます」
オレンジ色のキャップを被った青年がトラックの荷台から段ボールを持って店の中へと入って行く。
彼は週に数回やって来て、こうして店で使う食料品を配達してくれるのである。
「じゃ、私も手伝ちゃおうかな」
「えぇ〜。良いんですかぁ〜? じゃ、お言葉に甘えて」
「それじゃあ、システムの基本的なことについて説明するわね」
一方、翡翠家の方の入り口前にはドライバーを着けた優司と花蓮が向かい合いながら立っていた。
二人の横には自動販売機のような緑色の容器が置かれている。ボタンや商品の画像は無く、「N」を基にした白いロゴマークが描かれている。
「色々説明するために、まずは昨日みたいにユーザーズドライバーのレバーを押して」
言われた通りにレバーを左手で押し込む。
『只今より、意識を転送します』
やはり意識が朦朧としてきた。視界がぼやけて目の前の花蓮の姿も良く目視出来なくなってしまう。
そして気を失って後ろに倒れそうになった優司を、花蓮が抱えた瞬間、緑色の容器の上部が割れると、そこから黒い粒子が大量に吹き出して花蓮の前で固まっていく。
それらが形成した形は、今花蓮の腕の中で眠っている優司そのものであった。
形成されたものは目の前の光景を見て驚愕する。
何せ自分を抱き抱えた花蓮がいるのだから。
「このグリーンボックスから放出される、ライドボットっていう全長2ミリのロボットによって、今の君の身体は形成されている。そのユーザーズドライバーを使って意識を転送しているの。
ライドボットで出来たその身体はユーザーズドライバーとヘキサゴンガジェット、後は自分が思い描いたことによって変形することが可能。さっき変身出来たのもそのおかげ」
「じゃあ、声が変わったのは?」
「誰が変身しているのかバレたら色々困るでしょ?」
何となく合点がいったような気がする。
目の前にいるのはただの抜け殻で、黒い粒子によって作られた偽りの身体が今本物となっているのだ。
そして声がいつもの貧弱な声から、芯の通ったものになったのも納得がいく。
「あの蜘蛛人間みたいなのも、同じですか?」
「そう。スパイダーユーザー。君と同じようなものよ。ヘキサゴンガジェットは全部で10個ある。もしアイツを倒したら、必ずガジェットを回収して」
まだ様々な疑問が残る。
だが恐らくは彼女が言ってくれることが全て教えてくれるだろう、と思って黙って聞いてみた。
「因みに君の使っている『ブートレグ』っていうのは他のユーザー達が使っているのとは違って、特殊な能力が2つあるの。まず1つ目は──」
その時、
「「うああああああああっ!」」
「「!?」」
聞き覚えのある悲鳴が聞こえてきた。
急いで店の方へと走ってドアを開けて店内に入る。
その中では段ボールの中から野菜や果物が溢れ、机は倒れていて、更に配達員が床に倒れてしまっている。
あまりにも無惨な光景に驚愕をして、優司は配達員に駆け寄った。
「大丈夫ですか!?」
「……あ、はい……っ」
腹部を押さえる配達員。
「一体何が……」
「僕にも分かりません……。いきなり
赤色の化け物。
脳裏に思い浮かぶものがあったところで、外から何かが走り出す音が聞こえてきた。
同時刻。外では絵麻がトラックの中から段ボールを運び出そうとした。
先程から何故か配達員が帰って来ない。どうせ武史と長話をしているのだろう。ならば自分がトラックから段ボールを持ってくれば良い話だ。
なので仕方無いなと鼻息を吐いて、荷台の中に身を入れたのだ。
店の中から悲鳴が聞こえた時、絵麻はトラックの荷台の奥の方にいてしまっていた。
「え……?」
店内で何が起こったのかを確認するために荷台から降りようとしたその時、突如としてトラックが走行を始めた。
何処かで降りるタイミングを伺っていたのだが、もたもたしているうちにその時を失って手遅れになってしまう。
「ちょ、何これ!? どういうこと!?」
状況が理解出来ない絵麻を乗せたトラックが走り出したところで、優司と花蓮が店から出て状況を確認しに来た。
二人が見たのは、走り去って行くトラックの荷台の中に絵麻がいること、そして荷台の上でスパイダーユーザーが胡座をかいている様であった。
「!」
すぐに追いかけようとするのだが、トラックの速度は速くてあっという間に姿が見えなくなった。
「どうしましょう花蓮さん……!?」
「……こっち来て」
連れられて来たのは翡翠家に入るための門で、入ると庭が広がっているのである。
その右側には銀色のビニールシートで覆われている大きなものが目に入った。
「これは?」
優司の問いに答えるように、花蓮はビニールシートを取った。
そこにあったのは白いネイキッドタイプのオンロードバイクであった。大きな1つのヘッドライトが特徴的で、左ハンドルに赤いレバーがあること以外は一般的に流通をしている市販のバイクだ。
「ユーザーズストライカー」
「?」
「説明は後。ヘルメット出して」
ヘルメットなんて周りに無いため戸惑ったのだが、彼女の言葉を思い出して試しにヘルメットを被っている自分を想像してみる。
すると自身の頭部が黒色のヘルメットによって覆われた。
何となくシステムが分かってきたところで、優司はバイクにまたがった。
「それから、変身する時は左ハンドルのレバーを捻って」
「あ、はい……」
「……アイツのこと、必ず止めて」
「……はい……!」
そしてエンジンを蒸して走行を始め、勢い良く屋敷を飛び出して行った。
スピードがぐんぐんと上がっていく。
バイクに乗ることは始めてではないのだが、こんな速さで走行をすることは始めてだ。
ハンドルを握る左手の甲にホッパーのガジェットが乗っかっている。それを右手で取って頭部と両脚を収納すると、ユーザーズドライバーのスロットに装填した。
『
「変身!」
左ハンドルのレバーを捻った勢いを利用して、左手でドライバーのレバーを下げる。
『変身シークエンスを開始します』
次の瞬間、右手で持っていたハンドルが手の重さによって下げられ、
先頭部分が白いパーツで覆われ、ヘッドライトの前にはクリアパーツが配置される。
後方ではそれまであった2本のマフラーとは別の管が現れて、計6本の管がマフラーとなる。
更にタイヤが2つに分裂し、欠けた半分が埋められることで三輪バイクになったのだ。
これで優司の乗るユーザーズストライカーの変形は終了した。
けれどもまだ終わりではない。
優司自身の身体が一時的に黒く変色をし、一瞬のうちに焦茶色の怪人──ブートレグとなった。
『HOPPER』
アクセルを回すと6本のマフラーから白い火柱が勢い良く噴き出し、猛スピードで山道を駆け抜けて行く。
全く経験したことの無い速度で景色は過ぎて行って、身体に風が吹きつけて力の源となっていっているような気がするのだ。
そして川の近くの道まで来たところで、何かがコンクリートによって舗装された道を走行する音が聞こえてきた。
──まさか……!
自身が何かを通り過ぎたことを確認したブートレグは、ユーザーズストライカーを横向きに止め、その勢いを利用して宙空で1回転をした後に着地。目の前にあるのが先程のトラックであることが確認出来た。
目の前のブートレグに若干の驚きと戸惑いを見せたスパイダーユーザーはトラックを停車させ、運転をしていた戦闘員を粒子状にして自分の中に戻すと、降りてブートレグと向かい合う。
「よく追いつけましたね。流石としか言いようがありません」
賞賛をするスパイダーユーザーであったが、ブートレグは一切それに反応しない。
「さて、貴方は我々に楯突く存在。なので、ここで始末させていただきます」
するとスパイダーユーザーの身体から黒い粒子が大量に噴き出して人の形を形成していくと、結果として槍を持った十数人の戦闘員がブートレグを取り囲む形となった。
戦闘員達は一斉に槍を突き出す。一気に串刺しにしようという算段らしい。
だがブートレグはジャンプをして全てを回避。目の前にいる2人の戦闘員の顔を両手で掴み、地面に叩きつけて潰した。
他の戦闘員達も対抗しようと背後から襲い掛かって来る。
ブートレグは潰した二人が持っていた槍を回収して両手に持ち、振り返ること無く背後の敵に突き刺して引っこ抜くと、振り返って槍を振り回すのだ。
次々と腹部に斬りつけ、首を刎ね、更に槍を向こう側に投げて突き刺し、両手が空いたので右足で勢い良く蹴り飛ばす。
全ての戦闘員を倒したのは、戦闘が始まってから10秒少し経った時であった。
その戦闘力にスパイダーユーザーは思わず拍手を送る。
けれども自らの役目を思い出し、ブートレグの下へと走り出した。
4本の腕がブートレグに向かう。2つの拳を両手で防ぐが、残りの二本が彼の両方を殴りつけた。何度も何度も殴られて後退させられてしまう。
痛みこそ感じないのだが衝撃は感じるようで、妙な感覚を覚える。
「やはり経験は私の方がありますから、貴方は勝てますかね……っ!」
6本の腕で一気に殴りつける。ブートレグはそれらに右足で対抗をした。
どうやら脚力は凄まじいらしく、スパイダーユーザーは勢い良く吹き飛ばされた。
しかしこれで終わりではない。
スパイダーユーザーは頭部の8本の紐を伸ばしてブートレグに巻き付け、トラックの方へと投げ飛ばした。身動きが取れないブートレグは成されるがままである。
更には彼を軸に再び舞い戻って来た。
同時に一部の紐を絶って残りのものの先を鋭くする。これで勢い良く突き刺す算段だ。
するとブートレグは後方へとわざと退いた。この勢いによって紐が切られ、計画が水の泡になったスパイダーユーザーはその場に転げ落ち、反対にブートレグは何事も無かったかのように着地をしてスパイダーユーザーを見据える。
──一気にけりを付ける……!
両腕に力を入れて巻き付いた紐を破ると、ドライバーのレバーをもう一度押し込んだ。
『HOPPER FINISH』
その瞬間、全身に力が漲っていく感覚がやって来る。
それを利用して彼は地面を強く蹴ると、右足を前に出した状態で猛スピードで進行して行く。
「速い──」
呟きが終わったのと同時にブートレグの右足がぶつかり、トラックに激突した。衝撃でトラックは減り込み、運転席の部分は最早原型を留めていない。
「──これで、計画は一先ず達成ですね……」
『Rest in peace. 次の人生に、ご期待ください』
それが最後の言葉だった。
スパイダーユーザーの身体がボロボロと崩れ始め、トラックに減り込まれていた筈の彼の姿は無くなる。残ったのは赤いヘキサゴンガジェットだけだった。
花蓮の言葉を思い出したブートレグは赤色のガジェットを拾い上げる。
その瞬間に頭部に8本の脚を出して若干の抵抗をするのだが、すぐにそれらを引っ込めて大人しくなった。
一応は戦いが終わった、ということだろう。
けれどもブートレグの中に残ったのは終わった喜びではなく、何処かやりきれない気持ちだけであった。
「何……あれ……?」
その様子を一人眺めていた少女がいた。トラックの荷台にいた絵麻である。
トラックが停まったので降りてみたら、化け物達が戦っていたのだ。もう何が何なのか分からない。
もし見つかったら自分の身が危ういと思い、物陰で息を顰めるのだが、彼女のスマートフォンが勢い良く着信音を立ててしまった。
不味いと思った絵麻は画面を見て切ろうとする。しかし着信元を見て咄嗟に電話に出た。
「もしもしお姉ちゃん!? 助けて! 今化け物に追われてて──」
「知ってるよ。大丈夫。そいつは問題無いから」
「え?」
「彼と一緒に帰って来て。それじゃ」
「え、ちょっ、え!?」
これで通話は切られた。
姉が一体何を言っているのか理解が追いつかない中、彼女の横にブートレグが現れた。
悲鳴をあげて後ずさる絵麻。
彼女を安心させようとしたブートレグは変身を解除し、ドライバーを着けていない状態の優司の姿になる。
「ゆ、優司!?」
「事情は後で説明する。……っていうか、僕もはっきり言ってよく分かっていないから、一緒に花蓮さんに訊こう」
目の前にいるのは幼馴染で、同じ家に住む同居人で、そして──。
だが逆らったら何だか不味い気がして、ゆっくりと首を縦に振った。
そして二輪の状態に戻したユーザーズストライカーに乗って、二人は家路についた。
────────────
その夜、夕食を終えた優司と絵麻は花蓮の部屋に呼ばれた。どうやら先の出来事を説明してくれるらしい。
優司と絵麻は部屋のベッドに腰掛けていて、花蓮はデスクの前の椅子に座って二人と向かい合う形をとっている。
「お姉ちゃん教えて。あの化け物は一体何なの? どうして優司の姿がいきなり変わったの?」
一応優司にある程度の事情を聞いたのだが、やはり現実離れしていることだからか首を傾げるばかりであった。
なので今花蓮に訊いているわけである。
すると、
「あの……。スパイダーユーザーは一体どうなったんですか? 逃げたんですか?」
ブートレグとなった優司がスパイダーユーザーに強烈なキックを喰らわせた際、彼はライドボットの状態になって消えていった。
同じようにしたことのある優司は、彼がただ単にその場を離れただけで、まだ何も終わっていないのではないか。一抹の不安が今の優司を襲っているのである。
「じゃあまず、優司君の質問から答えるね」
そうは言った花蓮であったが、中々答えてくれようとしない。
それが只事ではないことを表していた優司と絵麻は固唾を飲んでしまう。
そして花蓮は重い口を開いて、隙間から吐き出した。
「──死んだわよ。君の手によって」
【参考】
サイクロン号|仮面ライダー図鑑|東映
(https://www.kamen-rider-official.com/zukan/items/1061)
サイクロン号(本郷ライダー用)|仮面ライダー図鑑|東映
(https://www.kamen-rider-official.com/zukan/items/2184)
あなたの乗りたいバイクがきっと見つかる! バイクの種類と購入について - ヤマハ バイクブログ|ヤマハ発動機株式会社
(https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/yamaha-motor-life/2017/08/20170813-001.html)
三輪バイクってどんな乗り物?車種別にメリットとデメリットを解説!|Bike Life Lab|バイク王
(https://www.8190.jp/bikelifelab/notes/trivia/tricycle/)
ヒロインのうち、どっちがお好きですか?
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翡翠花蓮
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翡翠絵麻