仮面ライダーブートレグ   作:志村琴音

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第33話です。
シーズン2は後4話で終了します。ただ、ラスト2話はスペシャル回になりますので、実質的には後2話で完結です。最後までお付き合いください。
感想や読了報告等くださると筆者の励みになります故、何卒宜しくお願いいたします。



【イメージOP】
THE RiCECOOKERS - 波のゆくさき for SPEC【壬】

【イメージST】
得田真裕 - TBS系 金曜ドラマ「MIU404」オリジナル・サウンドトラック


33 - 波のゆくさき(F)

 満月からの光に照らされた木々が、背中から優しく体温を奪っていくような夜だった。

 葉の深い緑色と幹の茶色は夜に同化し、舗装されていない道を通る者に冷たさを覚えさせる。

 しかし、車のヘッドライトは木々に光を差し、夜の闇に紛れることを阻止しようとする。台数は片手で数える程。一列になって連続で照らすために、車内の全員が熱を失うことは無かった。

 

 一切の整備がされていない道に大きな振動を与えられながらも、着々と山奥に向かって行った黒い車の群は、ある所で停車をした。

 白い手袋を付けて畳まれた段ボールを持った捜査員達は、後の道を自らの足で進んで行く。

 静かな夜の森に数々の足音がこだまする。砂利を踏む音が響くのは明らかに違和であるのだが、これだけ広大な場だ。樹木の一本一本に音が吸収され、何の問題にもならない。

 

 そうして目的地に辿り着いた。

 3メートル程はあるだろう錆びた鉄門が聳え立っている。この大きさとはいえ、古びた門は森や夜と一体化をしていたために、灯りが無ければ見つけることは不可能に違いない。

 

 更にここを越えた場所へと進んで行く必要がある。

 表情の一切を変えないまま、捜査員達はまた一歩足を進めた。

 

 

 

────────────

 

 

 

 たった数分しか経たぬうちに、キジムナー号も近くまで来た。

 本来、この車両は山道を登るために設計されてはいないため、最初こそ苦戦を強いられた。強い振動が通常の車両よりも何倍にもなって伝わるためである。

 しかしある程度慣れてくれば、後はどれだけ道を外すこと無く進めるかの勝負になるため、慎重且つ速度をやや上げた状態で進むことが出来た。

 

 そして黒塗りの車の後部をヘッドライトが照らしたところで停車する。

 颯太が既にライドボットの体に移行をし、本来の肉体が長椅子に横たわっていることと、浩介と洋平の拳銃の所持や防弾チョッキの着用を確認すると、いよいよ深い夜の中へ自らの足で歩むことになった。

 

 前にある黒塗りの車は同じ車種が縦に列を成していて、結果として三人が進める幅はかなり狭くなっている。徒歩で暗い山道を歩くだけでも相当な時間を喰われるにも関わらず、この道の狭さだ。足を進める度に徐々に血が湧き立ってくる。

 

 何とか車の列の最前まで辿り着いた時、三人の耳に入ってきたのは喧騒だった。

 決して遠くない場所から聞こえてくるそれは、経過と共に増大していく。

 

 ──もう始まったのか……⁉︎

 

 困憊寸前の体を奮い立たせ、先よりもスピードを上げて坂を登った。

 すると、開かれた鉄門が寂しく立っていて、その中から現状を確認出来た。

 

 そこでは、まさに混沌を極めていた。

 夜明け前の突入に混乱する信者達。彼等を横目に奥に侵入しようと試みる公安の人間達。

 ナイフや棍棒等の武器を持った数名が行く手を阻み、先に進もうとする者達は応戦しなければならないために中々目的を果たせない。

 

 敷地内の幾つもの松明から出る炎は陽炎を生み、二つの勢力が作り出す状況を揺らして、まるで悪夢のように演出している。

 しかしそれは信者にとっての悪夢か、誰にとっての悪夢か、この場の人間には判断する余裕すら生まれない。

 

「とりあえず、佐藤さんが何処にいるのか探そう」

 

 洋平の呼びかけを合図に、三人は一斉に捜索を開始しようとする。

 だが、颯太はある一点を向いてから暫く動いていなかった。

 

「どうしたんですか、壱宮さん?」

「……悪い。先行っていて」

「え、ちょっ──」

「後で必ず合流するから」

 

 それだけ言い残し、颯太は視線を向けていた先へと駆け出した。

 何故彼は走り出したのだろう。そこには一体何があるのだろう。

 だが考えている余地は無い。今、この混乱は由姫を探し出すための絶好の機会とも取れる。ならば利用する以外に手は無い。

 なので浩介と洋平は、颯太とは逆の方向、まだ比較的人だかりの少ない方へと足を運んだ。

 

 さて、素早く足を交互に踏み出して辿り着いたのは、混乱が拡散する場所から少し離れた広場のような所だった。

 信者が住む建物も特に無く、ただ松明が辺りを照らしているだけの場所。成程。決戦の場にはもってこいというわけだ。

 

 自身と向き合う男がいる。満だ。

 常時身に付けているアニメ柄のTシャツとは違い、白いローブに金色のペンダントを付けている。言わば、颯太を迎え入れるための正装だ。

 (かたわら)では本人の肉体がうつ伏せの状態で転がっており、颯太がそれを確認したのと同時に腹部にドライバーを出現させた。

 

「最後1つ、残りのガジェットを回収させてもらう。戦力の乏しい今を狙うのが、絶好だからな」

「……城島、一つ訊いていいか?」

「何だ?」

「お前さ、何のために戦っているの?」

 

 相手の姿が陽炎によって揺らぐ。

 しかし真っ直ぐと捉えているため、決して見失うことは無い。

 

「決まっているだろ。ゲルダム、(もとい)ラシャ様のためだ。尤もあのお方が何を考えているかは分からないがな」

「そのためには他の誰かが犠牲になっても良いとでも?」

「壱宮。逆に訊くが、何となく説教臭そうにしているお前は、一体何のために戦っているんだ?」

 

 まだ答えが固まっていないためか、意表を突かれたためか、颯太は何も答えない。

 その様子を見て、満は少し鼻で笑った。

 

「まぁ良い。決着をつけようか」

 

 すると満の手元にガジェットが飛んで来たため、すぐさま手に取って変形させる。

 同時に颯太の元にもやって来る。やや遅れて彼も六角形を作った。

 

 そして二人共ガジェットを装填。

 静かに言葉を放ち、ドライバーの表面を押し込んだ。

 

「「変身」」

『『変身シークエンスを開始します』』

 

 颯太と満。

 リモデルとオルグユーザー。

 

 二人の戦いの火蓋は切られ、緩やかに落ちていった。

 

 

 

────────────

 

 

 

 一体由姫は何処にいるのか、浩介と洋平には見当もつかなかった。

 これだけ広大な現場だ。信者の居住スペースであると思われる建物だけでも、十数棟にも渡る。おまけに公安側もゲルダム団側も相当な混乱を来している。

 一切がノープランのまま、颯太と別れてしまったのだ。

 それでも足を止めるわけにはいかない、というのが二人の共通認識である。

 

 だが彼等の行く末は目の前に現れた男によって阻まれてしまう。

 納谷である。いつも浮かべている薄気味悪い笑顔は無く、能面のような面立ちで二人を眺めているのだ。

 

「そこをどいてください」浩介が言う。

「悪いけど、これ以上君達の好きにさせるわけにはいかないからね。無理な話だよ」

「力ずくでもどいてもらいますよ」

 

 洋平の言葉で二人はテーザー銃を取り出し、銃口を納谷に向ける。

 

「出来るとでも思っているの?」

 

 目線こそ標的に向いているが、銃は下方へ微動している。

 それを見てようやく納谷は、口角をほんの少し上げたのだ。

 

 ゆっくりと近づく。

 得体の知れない者が歩み寄る恐怖に、浩介と洋平は無意識にも後退りをしてしまう。

 戦力を確認するまでも無く、この人間には勝てないのではないか、と杞憂を浮かべてしまう程のものを、納谷は持っていたのだ。

 

 すると二人の目の前にゆっくりと、しかし滑らかに両の足を動かして何者かが現れた。

 白いローブに全身を包んだ彼の姿を見た時、二人は驚愕し手元の拳銃を下ろしてしまう。

 

「「ラシャ……⁉︎」」

 

 突然現れたラシャ。

 しかし彼は自身と対峙しているため、納谷は小首を傾げる。

 

「探しているものがあるんだろう? ……行きなさい」

「けど、僕達が探しているものは──」浩介が思わず躊躇いを見せた。

「分かっている。いいから、早く」

「……渋谷君、行こう」

 

 何故か後ろ髪を引かれる気がしたが、すぐに足を進めその場を後にした。

 こうしてこの場に残ったのは、ラシャと納谷の二人だけとなる。

 取り逃すきっかけを作った相手が相手なだけに、どうやら少し当惑しているようだった。

 

「一体何の真似?」

「もう彼女から目的のものは取り出した。これ以上止める必要性は無い」

「それはそうだけど、良いの? 折角あの子を取り戻せたんでしょ?」

「ああ。その点問題は無い。もう既に手は打ってあるからな」

 

 暫し流れる沈黙。

 側頭部を左手で掻きながら、ラシャが口を開いた。

 

「なんかさ、前と変わったよね」

「何がだ?」

「少し前から方針が変わったっていうか、僕達が前から目指していたものとは別のものに目が向いているというか」

「気のせいじゃないのか」

「どうだろ。まるで全く別の人間と話しているみたいなんだよね」

「そう思うのだったら、お前の脳は錆びてきたのか。とっとと別の体を見つけたらどうだ」

「それが出来るんだったら、そうしているよ」

 

 最後、微妙に納谷の語気が強くなった気がする。

 静かにラシャの吐いた言葉が、気に障ったらしい。

 

「ちょっと腹立ってきたな。……今って暇?」

「この状況で暇には出来ないだろう」

「良いじゃん、少しだけ。ストレス解消したいんだけど」

 

 すると納谷の腹部が変化する。

 ドライバーが装着されたのだ。

 仕方無いと思ったのか、ラシャも白いローブの上にドライバーを出現させる。

 

 二人の元にそれぞれのガジェットが走り寄って来たため、各々右手に取る。

 納谷が手にしたガジェットは、人型の黒いものだ。白い鎖のような模様が巡らされていて『L01』『FRANKENSTEIN』と印字されている。

 対するラシャのガジェットは白く、山羊を彷彿とさせる。赤色で細かな文字が多く書かれ『L02』『HAKUTAKU』と印字されている。

 

 変形させ、スロットに装填する。

 

『L: 01(ZERO-ONE)

『L: 02(ZERO-TWO)

 

 互いに向き合い、そして静かに表面を押した。

 

「「変身」」

『『変身シークエンスを開始します』』

 

 納谷の黒いコートが、ラシャの白いローブが()()()、吸収される形で異形になっていく。

 極めて変則的な変身である。

 そうして出来た姿というのは、まるで対照的だった。

 

 納谷の体は黒くなり、体中に不規則に様々な色のパーツが付けられている。要はつぎはぎの鎧のようだ。

 神経や血管を模しているのだろう白い線が巡らされているのが確認出来、更に大きさを問わないネジが至る所に埋め込まれている。

 頭部は白や茶色といったパーツで作られた簡易ヘルメットによって隠れていて、辛うじて左目だけが確認出来る。

 

 納谷が痛々しい機械仕掛けの生物なのだとすれば、白い毛で覆われたラシャの姿は純粋な生物そのものだ。

 山羊をそのまま二足歩行にした。それだけの説明で事足りる程に単純な見た目をしている。

 強いて言うならば、全身に渦巻く鮮やかな模様と、巻かれた大きな2つの角を持った頭部によって、彼自身が大きな樹木のようだ。

 そして赤色の目から出る眼光は鋭く、それだけで萎縮してしまいそうである。

 

『FRANKENSTEIN』

『HAKUTAKU』

 

 誰も知らぬところで、二人による緊急事態下での暇潰しが始まった。

 

 

 

────────────

 

 

 

 その後、浩介と洋平は捜索を再開した。

 あらゆる場所を隈無く探した。信者の家屋は当然のこと、設置されている井戸や小さな倉庫の中まで、至る所をである。

 だが何処にもそれらしき影も形も見つけられていない。

 もしやここから遠く離れた場所に幽閉されているのか。もしそうなのだとしたら、この広大な土地の何処から手をつければ良い?

 考えを巡らせながら体は疲弊をしていく。まさに絶望的な状況である。

 

「どうします? このまま(しらみ)潰しに行くのも限界がありますよ……」

「そうだね……。けど、どうしようにも、手掛かりが全く無いからね……」

 

 息を切らしたまま止まり、会話をする二人。

 大きく呼吸をして脳に酸素を行き渡らせるのだが、疲弊し切った脳は全く機能してくれない。

 視線は頭と共に下に落ちてしまい、そこから暫く動かない。

 

 ふと浩介が顔を上げる。

 ある光景が目に入った。

 

「柿沢さん、あれ」

「?」

 

 彼が指差したのはこの領域を囲む森である。数多の木々が連なることで巨大な影を作り、向こうの景色が全く確認出来ない。

 その中に一つ、気になるものがあった。

 白装束に身を包んだ者計4名が、森の中へ入って行こうとしている。しかし手ぶらではなく、棒にぶら下がる大きな箱を全員で力合わせ担いでいるのだ。

 

 まさしく不審な行動であり、見逃すわけにはいかない。

 だが二人が気になったのは、ただ森の中へ侵入していくことだけではなかった。

 彼等の持つ箱。その形状は神輿のようにも、人が乗る駕籠(かご)のようにも見えるのだ。

 

 ──まさか……!

 

 急いでその方へ足を走らせ、後ろすぐの所で立ち止まる。

 

「すみません。ちょっとお話し良いですか?」

 

 洋平が声を掛けると、全員が振り向いてじっと視線を向ける。

 大きく開いた目は明らかな異常性を示していて、警戒を強める。

 

 箱が置かれ、背負っていた棒も地に着くと、四人は懐から小刀を取り出した。どうやら護身用に身に付けていたらしい。

 しかしそれは彼等だけではない。浩介と洋平も腰回りから警棒を取り出して展開。

 これで双方の準備が整った。

 

 刹那、信者の一人が刀を突こうと試みる。

 浩介は右に避け流し、空になった腕を自身の左腕で抱え、肘の裏側に警棒を叩き込む。

 攻撃不能になった信者を蹴り飛ばすと、二人目が刀を振り上げ、下ろそうと試みているのが見えた。

 そのため、警棒で挙げられた状態の手首を打ち、痛みで相手が武器を手放したところで、その腕を抱え込んで投げる。華麗で見事な一本背負いだった。

 

 洋平は警棒を握る左手に右手を添える形にし、剣道の中段の構えを思わせる立ち姿をしていた。

 そこに信者が両手で刀を握り締め迫る。小刀が腰程の位置にあるのを確認すると、まずはそこに一発。続けて頭部に一発喰らわせてノックアウト。

 更にはもう一人の信者に対しては、相手が攻撃を仕掛ける前に右肩に一発攻撃し、小刀を痛みで落とさせ、すかさず左脚の付け根にもう一撃する。

 体勢を崩したところを蹴り飛ばすというのは、いつもの洋平からは考えられない一連の動きだ。

 

 こうして全員を戦闘不能にした二人は、地面にポツンと残された大きな箱に歩み寄る。

 見ると側面には、鉄製の簾のようなものが付けられているため、そこから何かを入れることが可能だと判断出来る。もし誰かを入れるとすれば、ここからだろう。

 

 下から簾を上げて中身を確認する。

 夜の暗さや月光による影でよく見えないが、僅かな情報から推測出来る形ですぐに何なのかが分かった。

 それは──。

 

 

 

────────────

 

 

 

 仲間が優勢である一方で、リモデルは苦戦を強いられていた。

 地上から浮かび上がって拳や蹴りを繰り出す。これまでに無い程素早く攻撃を仕掛けているため、オルグユーザーでも対処しきれない。

 しかし、彼は相手とは違って武器を持っている。殆どの攻撃を刺股の柄で受けて防御しており、また、そもそも当たったとしても頑丈に出来ている体には一切のダメージが加えられない。

 

 左脚で蹴りを入れようとしたリモデルの、無防備な腹部に両方の刺股を押し込み、そのまま床に倒して動きを完全に封じた。

 

「お前はただ復讐のためだけに戦ってきた! 舞元を殺したやつを殺したい。それが目的だった! だがその目的が無くなった今、お前はただの()()()の殻だ!」

 

 今まで聴いていたものとは違う、荒ぶる口調が般若のような顔立ちによく似合っている。

 必死に脱出しようとしながら、反論を開始した。

 

「そういうお前はっ、もしラシャがいなくなったら、一体どうするつもりなんだっ⁉︎」

「分からないのか? ゲルダム団は宗教で、その頂点にいるのがラシャ様だ。もしあのお方が死んだとしても、教えは受け継がれる。最初の目的が失われることは無いんだよっ!」

 

 右の刺股を使って勢い良くリモデルを転がす。

 相手の硬い体を攻撃したことによるダメージが蓄積していることも所以か、両手を使って何とか立ち上がっている様子だ。

 

 オルグユーザーは刺股の上下を入れ替え、鋭利な刃を二つともリモデルの胸部に突き刺した。

 システムの都合上、決して痛みを感じることは無いのだが、まるで心臓が燃えるような気がした。

 

 引き抜いた瞬間に後退りし、変身が解けた状態で仰向けに倒れた相手の姿を見て、静かに言った。

 

「これが僕とお前の違いだ。どうせ、今日もあの女を奪われた怒りをバネに来たんだろ? 何か復讐の機会が無いと動けないお前とは、訳が違うんだよ」

 

 颯太の頬に微かな感触があった。何かが触れたのだ。

 その感触は少しずつ他の部分にも渡っていく。

 

 雨だ。雨が降り始めたのだ。

 土を湿らせ、木々の葉に乗ったものは月光を反射し、この場全体を艶やかに照らしていく。

 

 情景と世界を作る、恵みの雨。

 しかし、颯太にとっては自身の世界を閉ざした、言わば死の象徴だった。

 何も為せずに一つの命を終わらせてしまった時、最後に視界に入ったのはこんな大粒の雨だった気がする。瞼を閉じた自分の体を濡らし、深く沈み込ませた。否、確かに沈み込ませたのはそうなのだが、浮かんでこようと(もが)きもしなかったのは自分自身じゃないか。

 

 ははは。自然と笑い声が出てきた。

 ガジェットを回収しようと徐々に歩み寄っていたオルグユーザーは、唐突な出来事に思わず停止してしまう。

 

「お前の言う通りだよ。俺はりみを殺した奴に復讐するために生きてきたし、今日もお前らが佐藤さんを連れ去ったことに、さっきまで滅茶苦茶イラついたよ」

 

 ゆっくりと、しかし着実に立ち上がっていく。

 

「……けど、そういうのはもうやめることにしたわ」

 

 颯太はドライバーからガジェットを二つとも取り出す。

 すると遠くから、馬の形をした大きな銀色のガジェットが猛スピードで向かって来る。

 ぬかるみを進む小さな音を響かせたそれは、颯太の右手にあるキリンガジェットの上で跳ね、彼の眼前までやって来る。

 前のガジェットを収納した後、銀色のガジェットを両手で持つと、頭部や両脚を仕舞って2つのガジェットに分解した。

 

「なぁ、知っているか?」

 

 突然颯太が語りかける。

 

「人間っていうのはさ、マイナスなことがあるとどうにかしようとマイナスなことして、負のループに陥って抜け出せなくなるらしいぜ。俺も正直、りみが死んで佐藤さんが連れ去られてからハマっていたわ。……だから、俺はもう復讐のために戦わない」

「じゃあ、今のお前は何のために戦うんだ?」

「……もうこれ以上そうならないために、まず目の前の誰かを救うことだけを考える。戦う理由は、正直それだけで充分だろ?」

 

 その顔は憎しみに満ち、負の連鎖との出会いに飢えていた人間の顔ではない。

 屈託の無い笑みを浮かべ、ただ愁眉を開いている人間の顔だ。

 

 ガジェットを同時にドライバーに装填する。

 

『『SPECIAL GADGET』』

「そんなわけで、今からの俺は一味違うから、よーく見とけよ」

 

 今までのものとは違う待機音声が流れる中、颯太は両腕を右手側に伸ばす。

 ゆっくりと回して左手側に来たところで、十字を作り叫び、ドライバーの表面を押した。

 

「変身!」

『変身シークエンスを開始します』

 

 黒く変色した体が異形となり、そして銀色の戦士が出来上がった。

 その姿に、オルグユーザーは驚愕する。当然だ。何せ誰も知らない、全く未知の形態であるのだから。

 

 キリンストレートフォームの全身が銀色になった状態。一応の説明はそれだけで事足りるかもしれない。

 だが他に四角いパーツがいくつも付けられ、更に赤い目を隠すように縦に線を入れた目元のバイザーがあることで、まるで西洋の甲冑を身に付けているようだ。

 更に頭頂部からは2本、太い角が伸びており、ただの色違いではなく全くの別物であることが見て取れる。

 

『TROJAN HORSE』

 

 トロイホースフォームとなったリモデル。

 白銀の体に雨が降り頻り、月光を反射して彼の色を美しく輝かせた。




【裏話・余談】
実はシーズン2のラスト2話に関しては、とある作品とのコラボとなっております。(相手方の許可は頂いております。)
以前にもコラボをした作品ではありますが、やっぱりスペシャルっぽい感じにするんだったらこれかなと。
後、汎用性が高いのもあります。
乞うご期待!

ていうか、戦闘シーンを書いた後の部分、疲れてしまうのか語彙力が無くなってしまっている……。



【参考】
大迫力! 世界の妖怪大百科
(ISBN978-4-7916-2366-2, 西東社, 山口敏太郎 著, 2015年)
ゴートオルフェノク|仮面ライダー図鑑|東映
https://www.kamen-rider-official.com/zukan/phantoms/539
剣道の基本のチェックポイント総点検【超基礎から!上達への近道】|剣道初心者のための、初段への近道
https://kendobeginner.com/kendo-basic-practice/
特殊警棒の威力について。 - 特殊警棒の威力について、知っている事を… - Yahoo!知恵袋
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14100103544

次回作の舞台、次のうちのどれが良いですか?

  • 実在する京都ののどかな田舎町
  • 架空の海上都市
  • その他
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