仮面ライダーブートレグ   作:志村琴音

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第34話です。
今回滅茶苦茶長いです。
感想や読了報告等くださると筆者の励みになります故、何卒宜しくお願いいたします。



【イメージED】
米津玄師 - 感電

【イメージST】
得田真裕 - TBS系 金曜ドラマ「MIU404」オリジナル・サウンドトラック


34 - 波のゆくさき(S)

 戦いが始まった早々、フランケンシュタインユーザーは人差し指だけを伸ばした状態の左手を、前に突き出す。

 すると彼の体に付くネジが微かに発光。光が瞬時に指先に集中すると、白い短い線が放たれた。

 

 電気である。ネジがまるでコイルのような役割を果たすことで、自身の肉体を一種の発電機としているのだ。

 ユーザーは電気に弱い。しかし、そのユーザーも電気を使い生きている。ならば自身を動かす動力であり、相手の弱点であるものを活用するというやり方は、非常に合理的である。

 

 だがハクタクユーザーは電気が放たれたのと同時に足を動かし、瞬く間に別の場所に移動することで回避した。

 続けてその方へと電気を流す。しかしこれも避けられてしまう。

 

 ならばこうであれば良いだろう。

 左手を大きく開くと、掌いっぱいから大量の線を放ち、四方八方へと別れていく。

 下手な鉄砲も数打てば当たる。そう思えてしまうが、他に方法も無いので質より量を求めることにしたのだろう。

 

 夜の中を光の線が走る。

 フランケンシュタインの原作となった小説の原題が『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』であることを考えると、この光は崖に(はりつけ)となったプロメテウスに群がる鳥達のようだ。

 獲物の方に確実に向かい、そして喰らう。無機的なものが生物に見えてしまう。

 

 するとハクタクユーザーは宙空を走る光を見上げると、すぐに移動を開始した。

 隙間を縫って動くことで、当たらなかった攻撃は雨に打たれる地面に激突して、固まった土を浮き上がらせる。

 これだけの数にもかかわらず、一切が通用していない。

 まるで彼が攻撃が何処に向かうのかを予言しているかのように。

 

 しかし、予言をするのは(くだん)という妖怪の仕事であり、ハクタクは全ての知恵を司っているだけであるから、この説はあり得ない。

 だがもしも攻撃が何処に向かうのかという、ある種の定石があるとして、それを膨大に溜め込んでいるのだとしたら──。

 そうならば彼がやっているのは予言ではなく、ハクタクのように、ビッグデータから引き出した情報を頼りに動いているだけに過ぎないのだ。

 

 全ての攻撃が終了した時には、ハクタクユーザーはフランケンシュタインユーザーまで後少しの場所まで来ていた。

 このままでは自身が不利になるだけである。フランケンシュタインユーザーは決着をつけようと、ドライバーを再度押した。

 呼応するようにハクタクユーザーも同様にする。

 

『FRANKENSTEIN FINISH』

『HAKUTAKU FINISH』

 

 フランケンシュタインユーザーのネジがこれまでに無い程に発光。

 酷く眩しい光が右手に集まると、拳を握りしめた。

 

 ハクタクユーザーは自身の猛スピードに任せ、左腕を振るう。

 どうやらこのやり方が最適解らしい。

 

 そして二人の拳が思い切りぶつかった。

 波動が起こることで地面の泥がほんの少し浮かび上がる。本来、これだけの威力であれば大量に砂煙が起こる筈なのだが、雨によって土が固くなっているため、このような光景になっている。

 

 威力が同等のためか、片方が吹き飛ばされるようなこと無く、二人共後方へと吹き飛ばされる。

 着地をした瞬間、攻撃に使った自らの腕が先端から崩壊を始めた。これ以上の戦闘は無意味、というより不可能だと判断したためか、彼等はその場から一向に動かない。

 

「やっぱ強いね、君は」

「これで満足か? そろそろここを離れなくては、我々も厄介なことに巻き込まれるかもしれない」

 

 ハクタクユーザーの近くにある建物から、公安の捜査員が展開した段ボールの中に様々な荷物を入れて退出する。

 どうやらこの短時間で、ある程度のものは押収出来たらしい。

 体がライドボットで出来ていることから、余計な不安を抱く必要は無いのだが、この場にいつまでも留まっていることが不味いのに変わりは無い。

 

「そうだね」

 

 それだけ言って二人は体を崩壊させ、粒子の波が雨風に乗って去って行く。

 後に捜査員達がこの場を通りかかった際、土に何かがめり込んだ後や多数の足跡があったことを不審に思ったのだが、なんだったのかは開目見当がつかなかった。

 

 

 

────────────

 

 

 

 暇潰しのための派手な戦いが終わった時より、少し前のこと。

 オルグユーザーは銀色になったリモデルをじっと見つめていた。

 実力も何も、全く未知の銀色の形態。そのことにまずは怯えていた。

 

 ある基準以上に頭の良い人間が最も恐れること。それは「知らない」ということだ。

 相応の知識と知力を蓄えているからこそ、その恐怖は計り知れないものである。

 ましてや、これは試験でもクイズでもなく戦いだ。別の入れものを使って戦っているとはいえ、本能的に死を感じる場においての焦りは計り知れない。

 

「……所詮、色が変わっただけの銀メッキだろっ!」

 

 自分の言い聞かせるように叫び、武器を持って突進を始める。

 しかしリモデルは微動だにしない。

 それどころか、左手を軽く曲げた状態で伸ばし、掌が見える状態で相手に聞こえる程の音量で声を発した。

 

「『条件:相手がガジェットを奪う効果を発動する』」

 

 何を意味しているのか推測する暇は、右手の刺股を上から振るった彼には無かった。

 リモデルが出す左腕に当たった瞬間、刺股は思い切り跳ね返った。

 

「⁉︎」

 

 驚きながらも左側のもので同じように仕掛けるのだが、これも一切のダメージを与えない。

 ただの銀メッキではなく、見た目や文字の通りに鋼の肉体であるということだろうか。

 

 両方の刺股の上下を入れ替え、同時に腹部へと向かわせる。

 勢い良く刺しにかかったのだが、寸前で軽々と両手で受け止められてしまい、外側に払われてすぐに胸部に右の拳を喰らわされた。

 

「ハァッ!」

「ガァァッ!」

 

 硬く強烈な一撃をお見舞いされたオルグユーザーは、後方へと吹き飛ばされてしまう。

 何とか刺股の柄の先にある両刀で、地面を刺してブレーキの代わりにすることで止まった。

 だが一撃の威力はあまりにも大きく、次に繰り出す攻撃を思わず躊躇してしまう程だ。

 

「やるなぁ……。けど、ガジェットが回収出来ればそれで良いんだよっ!」

 

 ブレーキにしたことで突き刺さっている刺股から手を離すと、右手で強くドライバーを押し、両手で再び刺股を高く上げた。

 

『ORGE FINISH』

 

 夜中に轟く雄叫び。

 別に相手を倒す必要性など無い。残り1つとなったガジェットを回収し、そしてこの場から逃げれば自分の任務は終わりだ。

 協力な相手に真っ向から立ち向かうことなど、最初からしなくても良かったのだが、つい血が騒いでしまった。一旦冷静になれなければ。

 

 木々と住宅が揺れ、垂直に落下する筈の雨水が吸い寄せられる。

 しかしどれだけ叫んでも、目当てのものがやって来ることは無い。

 

「かかったな」

 

 次の瞬間、

 

「ッ⁉︎」

 

 オルグユーザーの雄叫びが止まった。

 風景は落ち着きを取り戻し、雨は再び元の軌道を進んで行く。

 刺股を持て高く挙げた両腕は戻ること無く、虚しく静止している。

 

「何、だ、こ、れ……」

 

 上手く言葉が発せない。

 頭では考えられても、つっかえて途切れてしまう。

 

「これがこの形態の能力。自分で設定した条件に適う時、相手の全ての能力を無効化する」

 

 ゲームでは確か、このような能力のことを「チート」級と言うらしい。

 確かに言ってしまえば何でもありだが、この形態がTROJAN HORSE──トロイの木馬をベースにしていることを考えると、合点がいく。

 

 トロイの木馬は城塞都市トロイアを攻めるため、ギリシャ人が実行した作戦の要だ。

 トロイア人がギリシャ人との戦いの戦利品として持ち帰った木馬。その中には大軍の兵士がいて、夜中に飛び出して暴れ、結果として一晩でトロイアは滅亡した。

 

 この伝承から、安全なものと謳った悪意のあるプログラムのことを「トロイの木馬」とIT業界で呼ばれるようになった。

 だがトロイの木馬はコンピューター・ウイルスとは違い、何かのきっかけが無ければ作動することは無い。

 そのため予め、何を機に効果を発揮するのかをプログラミングされているのである。

 

「ふ、ふざけるなぁっ! ぼ、くは、ラシャ様の、期、待に、応えな、きゃい、けないんだ……! 僕から、使命を、奪う、なぁっ!」

「うるせえ! 散々人から奪ったお前らが言ってんじゃねぇっ!」

 

 リモデルに反論する力は残されていない。

 

「奪われる側の人間のことを考えるために、一回頭冷やせ」

 

 リモデルは冷静にドライバーを両手で押すと、体を浮かび上がらせる。

 そのまま歩き出して徐々にスピードを上げ、宙空を高速で駆けるのはキリンユーザーと同じだ。

 

 しかしただ同じ技を繰り出すのでは、全く面白くない。

 体に付いた四角いパーツが、箱が開くように展開されると、そこから小さな人形が無数に中から出て来た。

 それはまるで伝承にあった、トロイの木馬に忍び込んだ兵士のようだ。

 

 銀色のリモデルと同じ見た目をした兵士は、彼が蹴りを喰らわせるために右足を出した状態で跳んだ瞬間、同じ体勢となって真っ先に飛び出す。

 余程小さいためか、すぐに急加速し、オルグユーザーの体を次々と貫いていく。

 

 いくつもの小さな穴が開いた彼に、最後にリモデルが向かって行く。

 

『TROJAN HORSE FINISH』

「ライダーキック!」

 

 速くそして強烈な一撃が、オルグユーザーを貫通した。

 着地した瞬間、削れる地面から泥が舞い上がり、銀色の体を汚していく。

 それでも、月の明かりを銀色の体が反射し、更に雨の一粒一粒によって乱反射する様が、茶色い泥を美しく映させているのだが、後ろの者は既に体を分解してしまったために知る由も無い。

 

 ゆっくりと立ち上がる。

 巡る筈のない血が頭に到達したためか、ふと先の言葉が浮かんできた。

 

 ──散々人から奪ったお前らが言ってんじゃねぇっ!

 

 ゲルダム団は颯太からりみを奪った。

 満は由姫を奪おうとした。

 そして颯太は、満から目的を奪った。

 

 そこには何の正当性も無い。

 因果応報である、という意見も通用するだろうが、今の彼には届かない。

 

 人間は不のループに陥る。

 颯太は、「復讐」というループから抜け出すことが出来た。

 

 だが今度は「奪う」というループが出来上がった。

 きっかけは与えられたものだ。

 けれどもその輪廻を作り出したのは、紛れも無い自分自身だ。

 

 嫌な終わり方だ、とすぐに体を分解して元に戻る。

 消えてなくなるその時まで、泥が雨に洗い流されることは無かった。

 

 

 

────────────

 

 

 

 目を覚ました時、満の口に微かに苦い土の味が広がった。

 唇に付着したものが、何かの拍子に入ってしまったらしい。

 

 意識が戻ってすぐのためか、牛歩のような動きで立ち上がる。

 爪や指の間に泥が挟まる感触が気持ち悪い。

 

 ぼやけた意識が明瞭になってきたことにより、眼前にいる浩介と洋平の姿を認識出来た。

 二人が何者であるのか、満はその一切を知らない。しかし大体の察しはつく。

 

 逃げはしない。

 逃げても無駄であるし、もうそんな余力は残っていなかった。

 

「城島満。誘拐教唆、及び銃刀法違反の容疑で、逮捕します」

 

 無意識のうちに、満は両手を差し出す。

 そこに浩介が手錠をかけた。

 

 洋平が誘導を始め、浩介もそれに続く。

 すると、

 

「壱宮に、伝えておいてくれませんか」

 

 満は立ち止まったまま呟く。

 振り向くと目線を下に向けたまま、言葉を続けた。

 

「……そうやってお前も、僕から奪っていくんだな、って」

 

 何を意味しているのか、二人には分からない。

 分かる筈がない。

 そんなことは到底分かっている。

 

 それでも伝言を頼んだ満の頭は垂れたままで、足を進め始めた。

 

 

 

────────────

 

 

 

 由姫が目を覚ましたのは、自分の体が揺れていることがきっかけだった。

 開かれた状態の両脚を抱えられ、両腕は何かを挟んで垂れている。

 

 職業柄、このような状況では絶対に警戒しなければならない。

 だが何故か力が入らない。

 意識を取り戻してすぐということもあるが、それ以上に安心を覚えたからかもしれない。

 

 顔が見えなくても、その背格好と金髪で分かった。

 

「起きた?」

「……うん」

「歩けるの?」

「……無理」

「は? ふざけんなよ。重いんだよ」

「ちょっと、女子に失礼でしょ」

 

 いつも通りの会話を繰り広げる二人。

 山道を一歩下っていく度、微かに吹く風が体を冷やす。

 しかし密着している彼等にとっては、何の問題でもない。

 

「……良かった」

 

 ふと颯太が呟いた。

 

「……やっと守れた……」

 

 颯太の姿勢が少し低くなる。

 由姫にとっては、彼が前傾姿勢になってくれた方が落ちる確率が低くなるので良いのだが、おぶっている側はより苦しくなる。

 

 突然、由姫が颯太の背中から降りた。

 もう大丈夫なのか。

 姿勢を元に戻して振り向いた瞬間だった。

 

 由姫が両腕を伸ばして颯太の首に回す。

 戸惑う颯太。

 何をしようと試みているのか見当がつかず、戸惑う颯太には今、じっと自分を見つめる由姫の顔しか見えない。月明かりが目に吸い込まれ、茶色い瞳を淡く輝かせている。

 

 すると由姫はいきなり視線を逸らし、両腕を離した。

 流れる沈黙。

 

「……ごめん。やっぱ何でもない」

「は? 何だそれ。アンタ何しようとしたんだよ!」

「何でも良いでしょっ!」

「あぁっ⁉︎」

 

 常時繰り広げられる会話が、静かな森の中で反響する。

 他愛も無い会話だ。

 だからこそ、ようやく安心出来たような気がする。

 

 負のループは、否応無く作り出される。

 だが同時に、対比されるようなループも存在する。

 そのどちらも、自分の中で回っていればそれで良い。

 今はただ、そう思うことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 派:REMODEL、終

 以下、間話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深夜、渋谷。

 若者の街とは言われているが、肝心の若者がいなくなればもぬけの殻のようだ。

 ビルから出る光は未だ眩しく、人の往来も依然としてあるのだが、それでも昼間に比べれば静かな方である。

 

 そのうちの一つの高層ビルの屋上、警備も手薄になっている大きな場に、何十人もの集団がいた。

 白い線で骸骨を模した黒いボディスーツを着込む彼等の前方には、2人の異質な見た目をした怪人がいた。

 

 左手にハサミを付け、硬い甲羅に身を包んだ緑色の怪人。

 赤色の(ひだ)が大量にある、黄色とピンク色の怪人。

 

 二体は夜の中に言葉を響かせる。

 

「「全ては、栄光なるショッカーのために!」」

 

 黒い大軍は右手を斜め上に挙げて歓喜する。

 どうやら勝ち鬨が上げられたらしい。

 

 誰も知らぬところで、動き出す者達。

 その様子を、納谷は物陰から見つめていた。

 それもポケットに手を突っ込みながら、退屈そうに。

 

「どうやら面倒なことになりそうだね。……まぁでも、こっちはこっちで計画を進めるだけだから」

 

 誰に聞かせるわけでもなく口を開く。

 これ以上いても何にもならないと思ったのか、振り返って歩き始めた。

 

 最中、彼はまた呟いた。

 

「そろそろ始めようか。()()()()()()()()()()()()

 

 もうすぐ、朝日が昇り始める。

 

 

 

────────────

 

 

 

 街路樹の木々が黄色く変色し始めた。

 暦の上では秋なのだが、如何せんこの暑さだ。9月初頭にもかかわらず街行く人全員が半袖である。

 

 颯太もその一人だ。

 ピアスやネックレスはそのまま、白いズボンに灰色のTシャツ、黄色い花が全面に描かれた茶色い半袖のジャケットを羽織っている。

『壱宮颯太先生 「静寂の冬」発売記念サイン会』と書かれたパネルの下の、白い布で覆われた長机の前に座っているためか、客には派手な上半身しか見えない。

 

 最初、編集者にはこの格好を止められた。

 デビューして初めてのサイン会で、どうしてそんな派手な服装なんだと。せめてワイシャツでお願いします、と。

 

 デビュー当時から世話になっている編集者だからか、颯太は反論した。

 芥川賞・直木賞の受賞会見に、安堂ホセはトレーナーで登壇したし、松永K三蔵もTシャツの上にジャケットだった。どうして俺は駄目なんだ、と。

 

 言い合いは平行線上を行き、結局時間になってこの格好での登場となった。

 結果としては、颯太に勝利とも言える。

 

 それにしても、正直ここまで来てくれるとは思ってもいなかった。

 会場は雑居ビルの中にある書店だ。人も疎ら。名が通っているとはいえ、参加してくれる客数は少ないだろうと、颯太は何となく感じていた。

 

 だが予想に反し、狭い書店の中に沢山来てくれた。

 ある程度長い列が出来、白いペンで本にサインをして手渡せば笑顔を見せて握手をしてくれる。

 サインするための書籍が当初は山を成していたのだが、徐々に減っていき、気付けば残り1段となった。

 

 その客の中には、公安第五課の面子もいた。

 いつも見せている、ふざけたような顔ではない、作家としての真面目な顔を四人共何となく面白がっていた。

 恥ずかしそうに無造作に本を手渡した颯太に、浩介が声をかける。

 

「そういえば、この後皆でご飯行くんですけど、どうですか?」

「……いや、いいや。この後、大学の同級生と飯行くから」

 

 どうやら時間が来たらしい。

 スタッフの誘導に従って四人が去ると、次の客がやって来た。

 

 一人一人の読者に触れ合い、感謝を述べるこの時間も1時間弱が経過した。

 徐々に客足も少なくなっていき、残りの時間や冊数も僅かだ。

 

 けれどもまだ彼は来ない。

 今日は暇で、必ず来ると言っていたのに、だ。

 

 何となく苛立ち始め、ペンを持っていない左手で頭を掻く。

 頭を下げて一呼吸置こうとした、その時だった。

 

「サイン、お願いします」

 

 聞き覚えのある声が耳に届いた。

 ──まさか。

 

 思わず頬を緩ませ、差し出された本を手に取ると、表紙を開いて最初のページにサインをする。

 本来は転売を防ぐ目的や、本人にとってのプレミア品とするために名前を訊いて記すのだが、今回はそれをしない。

 何故なら、彼は転売をするような輩ではないし、会えばいつでもサインを出来るからだ。

 

 顔を上げて本を差し出し、本人と向かい合う。

 ジーパンにオーバーサイズの水色のTシャツを着込んだ男。前髪は中央から分けられていて、彼が持つ陰気を払い除ける力を持っている。

 

 そんな男の名前を、颯太は笑みを浮かべながら呼んだ。

 

「遅ぇよ──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「梶本」

「ごめん、壱宮」

 

 梶本優司は微笑を見せ、確かに本を受け取った。

 

 二人の戦士は、当人の知らぬうちに邂逅していたのである。




【裏話・余談】
もう既にお分かりの方もいらっしゃると思います。
今回コラボ致しますのは、夢野飛羽真様の作品『仮面ライダーディクリード』です。
1年前にもコラボしたディクリード。今回は、あくまでも設定や敵キャラのみの登場となりますが、有り難いことに承諾いただけました。
改めて夢野様に感謝申し上げます。


仮面ライダーディクリード re
https://syosetu.org/novel/332283/


後、次回作に関するアンケートもありますので、お答え頂けましたら幸いです。



【参考】
フランケンシュタイン - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%e3%83%95%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%82%b1%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a5%e3%82%bf%e3%82%a4%e3%83%b3
白沢 (瑞獣) - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%e7%99%bd%e6%b2%a2_(%e7%91%9e%e7%8d%a3)
トロイアの木馬 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%e3%83%88%e3%83%ad%e3%82%a4%e3%82%a2%e3%81%ae%e6%9c%a8%e9%a6%ac
安全なフリで侵入する「トロイの木馬」。感染時の処置と防御策とは|Microsoft Azure コラム|東京エレクトロンデバイス
https://esg.teldevice.co.jp/iot/azure/column/column39.html
ガニコウモル - アニヲタWiki (仮) - atwiki(アットウィキ)
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/18342.html
イソギンジャガー - アニヲタWiki (仮) - atwiki(アットウィキ)
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/17900.html
【第172回芥川賞受賞】「DTOPIA」安堂ホセさんが会見 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=HlHWWHn4fA4

次回作の舞台、次のうちのどれが良いですか?

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  • その他
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