仮面ライダーブートレグ   作:志村琴音

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第3話です。
前回も説明回でしたが、今回もそうです。
感想や読了報告等くださると筆者の励みになります故、何卒宜しくお願いいたします。



【イメージOP】
WONK - Passione

【イメージST】
牛尾憲輔 - Chainsaw Man Original Soundtrack Complete Edition - chainsaw edge fragments -


03 - 巣(F)

 午後6時。

 上米町の都心部に建っている一軒のマンションに出入りをする人の数は少なく、学校終わりの学生や仕事や買い物を終えた主婦が帰宅するのみだ。

 そのため、オートロックの扉の前にある管理人室で年老いた男性が新聞を読んでいるだけで全くの暇である。

 

「そろそろ、始めようかな」

 

 管理人を任されている男は腰に何かを巻くと、そのレバーを押してゆっくりと目を閉じる。

 暫くして目を覚ました管理人は立ち上がり、壁に付けられていた緑色のボタンを押してニヤリと笑う。

 

 口角を上げた彼が次に目線を合わせたのは、各階の廊下の様子が映し出されたモニターだ。特に誰の出入りも無く、変わらない映像がただ表示されるだけである。

 

 何も面白味の無いのにニヤけが止まらない。

 グッと堪えた彼は管理人室を出て行った。

 

 

 

────────────

 

 

 

「──死んだわよ。君の手によって」

「……え?」

 

 理解が追いつかず、優司と絵麻はちょっとしたパニック状態になっている。

 なので花蓮は彼等を少しでも安心させるために、一から説明をすることにした。

 

「そもそも事を仕組んだのは、野宮ホールディングスよ」

「野宮ホールディングスが……!?」

 

 絵麻に対して頷きを返す。

 

「あそこはロボット開発とかで有名だけど、それはあくまで表に出している顔で、裏の顔は──」

 

 すると花蓮はデスクの上からタブレット端末を持って、画面を見せる。

 そこに表示されているのは、白い背景の中に黒く描かれた鷲らしき鳥のイラストだ。鷲には白く地球儀のような模様が入っていて、真ん中には六角形が配置されている。そして絵の下には文字が書かれている。

 

「Sanctuary of Humanity to Obtain Certain Knowledge and Energy for Rivalry……?」

 

 絵麻が書かれた文字を呟く。

 

 

「そう。通称『SHOCKER(ショッカー)』。この名前で軍事兵器の開発を行っているの。今世界各地で行われている紛争で使われているロボット兵器の8割はあそこが作っている。

 彼等の最新兵器として作られたのが、君の使っているドライバーを含めた『ユーザーズシステム』。その実証実験をするために、この町にドライバーとガジェットをばら撒いた、ってわけ」

 

 町を支える大企業の裏の顔をそんな平然と教えられたところで、どうしたら良いのだろう。

 何とも言えない表情をする二人に、花蓮は話を続けた。

 

「で、優司君の質問に答えるには、君の使っているシステムの根幹から話さないといけないわね」

 

 花蓮は次にデスクの上に置かれたユーザーズドライバーを手に取る。

 机上ではホッパーガジェットとスパイダーガジェットが鳴き声に似た音声を流し、一緒に戯れている。

 

「ユーザーズドライバーは装着者の神経回路に接続をして、脳からの信号をライドボットに伝えることによって動かすことが出来る。

 ……けど、もし倒されれば心臓の神経を操作されて心停止を起こし、装着者は死亡する……」

「「!」」

 

 確かに倒した際のスパイダーユーザーからは生気を感じることが出来なかった。

 元々機械の身体であることからそんなものを感じ取れないのは当然なのだが、理由はそれだけであって欲しかった。

 

「じゃあ、優司が何事も無いのは?」

 

 絵麻が訊く。

 

「優司君の使っているブートレグシステムは並のユーザーズシステムとは違う機能が2つあるの。一つ目はさっき言ったみたいに、倒されても心停止を起こすことは無い。もう一つは──」

「──()めてください」

 

 花蓮の言葉を優司が遮る。

 

「もう、止めてください……。聞けば聞くほど、辛くなるだけですから……」

 

 優司の顔はあまりにも暗かった。

 元来のネガティブである彼であるのだが、内気な男がただ詰められただけのそれではなかった。

 

「……二度と、僕はそれを使いませんから……」

 

 覚束無い足取りを見せた優司は部屋から出て行ってしまい、残されたのは絵麻と花蓮だけになった。

 すると絵麻が立ち上がって激昂した。

 

「どうして優司にそんなの背負わせたの!」

「……彼にしか頼めなかったから」

 

 淡々と言う花蓮。

 彼女の顔には何処か切なさが隠れているようであるのだが、興奮している絵麻はそんなことに一切気付くことは無い。

 

 突如、絵麻が花蓮の手の中からユーザーズドライバーを奪い、自身の腰に巻いた。

 

「だったら……私が戦う……!」

「え?」

「優司にあんな思いさせるんだったら、私かお姉ちゃんがその役目を務めれば良いじゃんっ!」

 

 そして優司がやったのと同じように、左手で思いっきりレバーを押した。

 けれども外からカサカサと何かが蠢くわけでもなく、そもそも何の音声も鳴らない。

 

「何で……!?」

「ライドボットを動かせるのは、脊髄に特殊なICチップを埋め込んだ人間だけ。埋め込んでいない絵麻ちゃんには使えない」

「……」

「因みに言うと、私はそもそも埋め込めないわよ。3ヶ月前の事故でボルト埋め込んじゃって、それでチップが誤作動するかもしれなかったから」

 

 その言葉で絵麻は思い出した。

 3ヶ月前、近くの崖で花蓮の乗った高速バスが横転し転落する事故が起きた。

 マスコミでの発表では、乗客乗員全員が死亡したとのことであったが、花蓮は見ての通り生きている。

 それもそうだ。マスコミ発表の際、花蓮の心臓は停止をして死亡扱いされていたのだが、発表後に奇跡的に息を吹き返したのだ。

 奇跡的に肋骨の骨折だけで済んだことから、ボルトを埋めるだけで隊員出来たのである。

 

「けど、何で絵麻ちゃんは、そんなに優司君にさせるのを嫌がるの?」

「それは優司が! 優司が……」

 

 何故か続きが口に出せなかった。

 出せば良いだけなのに、どうしてだろう。

 

「とにかく、今は彼にしか、この役目を託せない。それは分かって」

 

 納得なんて出来ない。してはいけない。

 けれども絵麻は信じるしかないのであろうと思えてしまい、その日はそれを持って自室に戻ることとなった。

 

 

 

────────────

 

 

 

 翌日。

 学校が終わった絵麻は同じ制服を着た女子と並びながら道を歩いていた。

 

「ごめんね絵麻。勉強に付き合わせちゃって」

「ううん。大丈夫だよヒロミ」

 

 島田(しまだ)ヒロミに笑顔を見せる絵麻。黒髪を後ろで2つに束ねた彼女は、何となく可愛らしい印象だ。

 テスト勉強を手伝って欲しいと、部活を終えた彼女に呼び出されたのである。

 

「今日、梶本君は? 学校来ていなかったけど」

「ちょっと今日は……体調崩しちゃって……」

「ふぅ〜ん。彼女なら一緒にいなくて良いの?」

「か、彼女って!」

 

 唐突な発言に驚く絵麻に対して、ヒロミはニヤニヤと笑みを浮かべる。

 どうやらそういう類の話が彼女は大好物なようだ。

 

 他愛の無い会話をしているうちに、二人は一軒のマンションの前に辿り着いた。

 茶色いコンクリートの壁が印象的な4階立てで、都心の中にあるマンションとしては中々趣深いものであった。

 

 その中へ入ろうとした時、絵麻は自身の右側に誰かの気配を感じた。

 見るとそこには、いつものようにスーツを身に纏う眼鏡の男──万太郎がマンションの方を見ながら立っていた。

 

「滝口さん?」

「ん? あれ? どうして絵麻ちゃんがここに?」

「ちょっと、取材をしに」

 

 ふぅん、とあまり興味の無さそうな絵麻は、ヒロミと万太郎を含めた三人で入ろうとした時、

 

「あ、そうだ。特別にこれ、プレゼント」

 

 手渡してきたのは、小さな赤色の丸い装飾が付いたブローチだ。

 どうしていきなり手渡してきたのか分からないヒロミであったが、元々店で交流のある絵麻には何となく理解出来る。理由なんて無い。ただ渡したいからこの男は渡しているだけなのだ。

 一体どうしようか戸惑った二人であったが、折角ならばとブレザーのポケットに差し込み、同じように万太郎もしたところで、全員でマンションの中に入って行く。

 

 オートロックの扉の隣にある器具にヒロミが鍵を挿して回すと、扉が自動的に開いた。

 途中、扉の横にある窓の先で、老人が一人眠っているのが見えたが、そんなことは知ったことではないと放っておく。

 

 そして全員がエレベーターに乗って各々の目的の階を目指そうとした──。

 

 

 

 

 

 その時、

 

「ギャァァァァァッ!?」

 

 上の階の方から幾つもの悲鳴が上がった。

 幸い、まだエレベーターに乗り込む前であったために、三人は悲鳴の原因を探ろうと、横に30センチメートルくらいのスピーカーが置かれた非常階段を駆け上がる。

 

 2階に辿り着いた。

 一先ず廊下の様子を見てみると、Tシャツにジーンズとラフな格好をした一人の男性が、頭を両手で押さえながらうつ伏せで倒れているのだ。

 

「どうしたんですか!? 大丈夫ですか!?」

 

 ヒロミが声を掛けるが、声が出せないくらいに苦しんでいて、只事ではないことはすぐに判った。

 

「滝口さん救急車!」

「ああ!」

 

 絵麻に言われた通り、万太郎はスマートフォンを取り出して操作をし、救急車を要請する電話を掛ける。

 これでやって来た救急隊員達に適切な処置を施してもらえれば、彼は助かるだろうと、三人は安堵した。

 

 けれどもどうやらその必要は無かったらしい。

 男性がゆっくりと立ち上がった。頭を片手で押さえ、虚な表情で前を見据えている。

 

「良かったー。何とか良くなって」

 

 ヒロミが安堵をした次の瞬間、

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」

 

 獣のような雄叫びを上げながら、ヒロミの方へと飛び掛かって来たのだ。

 突然のことに身体が上手く動かない彼女の代わりに、横から万太郎が男性に向かって強烈な回し蹴りを喰らわせた。それによって、壁に叩きつけられた男性は気を失ったのか、途端に大人しくなる。

 

 奇行に走った彼を見て、不思議に思う絵麻とヒロミ。

 けれどもそれで終わりではない。

 

 他の部屋から次々と人が飛び出し、三人に襲い掛かって来たのだ。

 万太郎が自らの肉体を使って対処をしているのだが、まるでキリが無い。

 

「何処か隠れられる場所は無いか?」

「あ、じゃあ、私の部屋に!」

 

 ヒロミに先導をされて、絵麻と万太郎は階段を駆け上がって行く。

 途中、後ろから追い掛けて来る者共にパンチやキックをお見舞いしたり、非常階段の入り口に置かれていたスピーカーを投げたりして、何とか振い落として追手を少なくしていき、そして4階に辿り着くと、遂にヒロミの部屋の中に入って事無きを得たのである。

 

 ドンドンドン。

 扉を叩く音が何回も聞こえてくる。

 それがあまりにも怖く、絵麻とヒロミは震え上がっていた。

 

「一体どういうことなの……?」

「分からない……。これってまさか……ショッカー……?」

 

 自分が知り得る範囲のものの中で、思い当たるのはそれしか無い。

 そうなれば自分達の手には確実に負えないだろう。

 

 すぐに唯一対抗出来そうな男に電話を掛けようとスマートフォンを取り出す。

 しかしすぐに操作をしようとは思えなかった。

 もし来てもらって、原因であろう怪物を倒したとして、それが彼にどれほどの悪影響になることだろう。

 

 ドンドンドン。

 まだドアを叩く音は消えない。

 隣を見れば怯えるヒロミの姿があって、居ても立ってもいられなくなってしまった絵麻は、思わず画面を操作していた。

 

 

 

────────────

 

 

 

 数分前の出来事である。

 午後6時というこの時間は、客足が疎らであることから、店内にいるのはカウンター席に座っている優司と、その前に立っている武史だけとなっている。

 優司は別に何をするわけでもなく、ただ俯いてカウンターの木目を見ているだけだ。

 

「どうした今日は」

「……」

 

 何も答えない。

 こんな時に無闇矢鱈に訊くのは野暮であると考えた武史は、静かに立ち去ろうとした。

 

 すると、

 

「吉花さん」

 

 優司が目線を下げたまま話しかけてきた。

 

「ん?」

「……やりたくもない仕事を任された時って、どうすれば良いんでしょうね」

 

 唐突な質問であり、武史はどう答えて良いか必死に考える。

 状況も何も不明なままのため、逆効果になりかねないのだが、考えた末の言葉を彼に掛けることにした。

 

「そうだな……。やりたくないか……。けど、それをやらなきゃ誰かが困ってしまう、ってこともあるからな……。この世に必要じゃない仕事なんてものは無いわけだし……。けど無理してそれをやる必要は無いからなぁ……。

 ……ある程度だけやってみて、人様に迷惑がかからないところまで終わらせてから、後のことは考えても遅くはないんじゃないか?」

 

 何となく腑に落ちたような感覚を覚えた優司。

 すると厨房の奥から花蓮がやって来て、優司の隣に座る。

 その場の空気を瞬時に察した武史は、花蓮と入れ替わるように厨房の奥へと消えて行った。

 

「何しに来たんですか……」

「……謝りに来た」

 

 優司は花蓮の方を向く。どうやら花蓮の言葉に驚いているらしい。

 

「私には頼れる友達も恋人もいなくて、自分でドライバーを使うことも出来なくて、一体どうすれば良いのか分からなかった。

 それで、君にドライバーを託して、全てを終わらせてもらおうって思ったの。

 ……けど、それが結果的には君を苦しめた。全部私の自分勝手な考えのせい。……本当にごめんなさい」

 

 頭を下げる花蓮。

 それを見た優司は、彼女に対して言おうとしていたことが頭の中から無くなって、何も言えなくなってしまった。

 

「君にもう一度訊きたいの。

 過酷な運命を背負ってでも、誰かを守るために戦うか。それとも、全てを忘れて平和な生活を送るか。君はどっちの道を選びたい?

 私は君がどっちを選んでも構わないって思ってる。皆そう思ってるし、きっと誰も責めないから……」

 

「僕は……」

 

 次の瞬間、優司のスマートフォンが音を鳴らした。

 何かと思って見てみれば着信元は、ヒロミの部屋で勉強会をしている筈の絵麻からであった。

 

「……もしもし?」

『優司!? 助けて! 今ヒロミのマンションの人達が変になって、ショッカーかもしれないの!」

「え……!?」

「お願い! 早く助けてっ!」

 

 通話はそこで切れた。

 彼女の声は緊迫感で溢れていたことから、優司の中で焦りが芽生え始めてきた。

 

 考える余地など無く、答えは半ば強制的に一つに絞られてしまう。

 けれどもそれは優司がこれから選ぼうとしていた道であった。だから決して愚痴をこぼそうともせず、ただ一言花蓮に言うのだ。

 

 

 

 

 

「──ドライバーをください」

「……え?」

「……ドライバーをください……!」

 

 真っ直ぐと花蓮を見つめる優司。

 彼の目を見た花蓮は特に何も言わず、店の奥へと走って行って自室からユーザーズドライバーを取る。

 そしていつの間にかユーザーズストライカーの前にいた優司の下へと急ぎ、彼にドライバーを手渡した。

 

 ドライバーを巻いた優司は、レバーを下げる。

 

『只今より、意識を転送します』

 

 倒れ込む優司を抱える花蓮。

 ライドボットが近くのグリーンボックスから転送されて、黒いヘルメットを被った新しい肉体を作り出す。

 

 バイクに跨った時、

 

「あの……」

「ん? 何?」

「流石に、ドライバー巻いたまま行動するのはちょっと……」

 

 少しだけ意見をする優司。

 花蓮が足を進めて来たため、

 

「いや、別にあの、勝手にそう思ってるだけなので、別に……」

 

 などと言ってどうにかしようとする。

 けれども花蓮は別に怒りを見せているわけではない。

 

「『消えろ』って念じてみて。そのドライバーもライドボットで構成されているから」

 

 それどころか対処法まで教えてくれる。

 試しにやってみると、本当に消えた。これで身体が機械で出来ていることは気付かれない筈だ。

 

「そうだ。ただ君が『ブートレグ』だの『ホッパーユーザー』だの呼ばれるのは嫌でしょ? 新しい名前考えてあげようか?」

「え、良いんですか?」

 

 頷く花蓮。

 数秒目線を上げて考え、閃いた際には優司に目線を合わせて笑顔を見せる。

 

「そうね……。じゃあこんなのはどう?

 誰にも顔を見られないように仮面を着けて、バイクで颯爽と現れる孤高の戦士。その名も──」




【参考】
https://twitter.com/orb_brave/status/1665698053477605376
野原ひろみ|仮面ライダー図鑑|東映
https://www.kamen-rider-official.com/zukan/characters/1415
コウモリ - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%e3%82%b3%e3%82%a6%e3%83%a2%e3%83%aa
蝙蝠男|仮面ライダー図鑑|東映
https://www.kamen-rider-official.com/zukan/phantoms/741
バット|仮面ライダー図鑑|東映
https://www.kamen-rider-official.com/zukan/phantoms/1396

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