蜘蛛、蝙蝠と来て、今回は……?
感想や読了報告等くださると筆者の励みになります故、何卒宜しくお願いいたします。
【イメージOP】
WONK - Passione
【イメージST】
牛尾憲輔 - Chainsaw Man Original Soundtrack Complete Edition - chainsaw edge fragments -
さて、今からお前らにはゲームをしてもらう。自分の生き残りを賭けたゲームだ。
もしクリアしたら解放してやるよ。
ルールはただ一つ。
コイツを連れ去るだけだ。
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土曜日の午後の病院というのは、休日の社会人だけではなく、学校終わりの学生達が大量に押し寄せて来る。それを人員削減されている中で捌いていく病院のスタッフというのは恐ろしい。
診察室に呼ばれた優司は、杏奈と向かい合って座っていた。
電子カルテを見ていた杏奈は優司に微笑みを見せる。
「うん。特に異常は無いわね」
「本当ですか。良かった……」
ホッと胸を撫で下ろす優司。
月に一度の定期検診は何度やっても緊張をしてしまう。もしここで何かしら見つかれば、あの館に暫く戻れなくなるやもしれないからだ。
すると杏奈は優司の顔をじっと見つめる。何かあるのかと首を傾げようとした時、
「何かあった?」
「え?」
「いや、何か面白そうなことが起こった、って顔してるから」
かなり的確なところを突いた。
詳細こそ言えはしないので、優司はただ笑って誤魔化しながら、数日前のことを思い出していた。
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「簡潔に言うと、俺はとある情報機関の人間だ。ジャーナリストでも何でもない」
呼び出された万太郎はそのように告白をしたのだ。
元々何かあるとは思っていたのだが、全く想像もつかない答えが提示される。
「とすると、私達に近づいたのは、ショッカーの情報を集めるため?」
花蓮が問う。
「それは少し違う。野宮ホールディングス、並びにショッカーの動向を探るためにジャーナリストとしてこの街に潜入したところ、君がブートレグに変身をしたため、一気に接近を仕掛けた、というわけだ」
言われてみれば、優司がブートレグに変身をした時から、万太郎が三人に接近する回数が増えたような気がする。それもこれも全て捜査のためだったというわけか。
「で、滝口さんは私達をどうしたいの? 殺しでもするの?」
絵麻に対して万太郎は微笑を浮かばせ、「まさか」と呟いた。
「逆だ。君達に協力を要請したい」
「え?」
「我々の最大の目標は、ショッカーの壊滅及び全ヘキサゴンガジェットの回収だ。ただ我々だけで太刀打ち出来る
「断れば?」花蓮が訊く。
「想像に任せる、と脅し文句だけ言っておこう」
花蓮と絵麻の目線は優司に向けられた。
これはつまるところ、私達はどっちでも良いから当事者の君が決めて、ということなのだろうか……?
暫く沈黙が流れた。
「……分かりました。ショッカーと戦うのに人手はあった方が良い。手を貸します」
「了解した」
すると万太郎はジャケットのポケットからスマートフォンを取り出して、誰かからの通話に応答を始める。そして驚いた表情を見せて、暫くしてから電話を切った。
「どうしたの?」
花蓮の問いかけにほんの少し間を置いて答えた。
「木野塚マリアが、死亡した」
あまり驚かない一同。
「……全身を無惨に殴打され、最早身元の確認が出来ないくらいにだ」
「「「!?」」」
ここでようやく三人は驚愕した。
特に驚いているのは優司だ。彼は確かにワスプユーザーとなった彼女を倒し、ワスプガジェットを回収している。
「待ってください。僕は確かに彼女を倒したんですよ? 現にガジェットだって手元にあるし──」
「いえ。ガジェットはユーザーが変身を解除すれば、自動的に持ち主の
花蓮の言う通りならば、マリアはあの時に心筋梗塞で死んだのではなく、意識を元の肉体に戻された時に殴られて死亡したということになる。
じゃあ誰が……?
「犯人は判っているの? ショッカーの誰か?」
最大の疑問を絵麻が訊いた。
「不明だ。だがそう考えるのが妥当だろうな」
何故だろう。途方の無い恐怖が優司達を襲った。
もしショッカーがマリアを惨殺したのだとすれば、彼等は失敗した者を容赦無く殺していくのだ。それはとても人間の出来る所業ではない。
優司の中には怒りも湧いてきたのだが、それを超える奇妙な感情が侵食をしていった。
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「まぁ、ちょっと色々あって……」
「……そう」
事情など知る筈も無いが、杏奈に何となく勘づかれないように話を逸らす。
「ところで、深田さんって今どうしてますか? 町役場に行っても、いらっしゃらなかったんですけど」
「ああ、深田さんね……。実は、膵臓癌が思ったより進行していてね、都内の病院に転院したのよ……」
「そう、ですか……」
その時だった。
外の方から女性の悲鳴が聞こえた。
診察自体は終わっていたので外に出て様子を見てみると、廊下の奥の方で金属バットにナイフといった凶器を持った不良達が歩いているのだ。
もしここで暴れようでもしたら大変なことになる。けれど今の自分には止めるだけの力が無い。
辺りを見渡すと、男子トイレが目の前にあったので、その中に飛び込む。
幸いにも個室が全て空いていたので、中に入って鍵を閉めた密室を作って、リュックサックの中からユーザーズドライバーを取り出して腰に巻き、レバーを押し込んだ。
『只今より、意識を転送します』
ライドボットによって作られた身体が出現したのは、病院の外だった。グリーンボックスが外にしか無かったためである。
けれども不良達はまだエントランスホールにいる。走れば間に合う。
急いで中に入ると、警備員達と不良達が揉み合っていた。
他の患者達は何処かに避難をしたようで、思う存分暴れられる。黒い首輪を着けた不良達は手に持った凶器で警備員達を襲う。
そこへ優司が止めに入った。ライドボットで身体が形成された今の彼は、数倍の力を出すことが出来る。
バットを手で受け、軽々と不良達を投げ飛ばす。突然の乱入者の異様な強さに驚きヤケになった不良達は、更に刃物やハンマーで攻撃を仕掛けた。けれども相手は細かな粒子で形成をされている。そんなものは一切の効果が無く、逆にパンチやキックを受けて返り討ちにあってしまった。
優司はしゃがみ込んで、倒れた不良の横に来ると、彼に声をかける。
「大丈夫ですか? 一体どうしてこんなことを……」
「お、俺らはただ、女を探しているだけなんだよ……」
「女?」
「とにかく、早く見つけねぇと俺達は──」
男が言葉を言い終わる寸前、彼の首輪が赤く発光したかと思うと、首を両手で押さえながら苦しみ始めた。
彼だけではない他の不良達も悶え苦しむ。
そしてそれが暫く続いた後、不良達はいきなり意識を失った。目を見開いたままパタリと動かなくなった様子は、何やら只事ではないことを表している。
「これ……まさか……」
その時、外の様子が見える目の前の窓から、何かが去って行く様子が見えた。
すぐに病院を飛び出すと、それが近くの立体駐車場の中へと入って行くので、外からの僅かな光で照らされるそこへ足を踏み入れた。
刹那、目の前を紫色の液体が通り過ぎた。
鉄骨に液体がかかると、その部分だけが煙を出しながら無くなっていく。要は溶けたのだ。
左側を向くと、そこには暗紅色の大きな
「貴方ですか? あの人達をあんな目に合わせたのは……」
「そうだ。アイツらは俺のゲームの参加者。ゲームオーバーになったから死んだ。ただそれだけだ」
人の命を何だと思っているのかと怒りを滲ませる優司。そこにホッパーガジェットがやって来たので、両脚と頭部を折ってドライバーに装填する。
『
「変身!」
『変身シークエンスを開始します』
仮面ライダーブートレグ ホッパーフォームが巨大な蠍──スコーピオンユーザーへと走る。そしてジャンプをして身体にパンチをお見舞いした。
だが、
「ッ……!」
硬い。その硬さ故に傷一つつかないどころか、攻撃を仕掛けた側であるブートレグの方がダメージを負ってしまう。
するとスコーピオンユーザーは身体を思い切り横回転し、避けたブートレグの右腕を、左の鋏で切り落とした。更に尾の先から紫色の液体を出し、それで左腕を溶かす。
「!?」
痛みを感じないというのが不幸中の幸いだった。
けれども両腕が無いというのはかなりのハンデである。尾で吹き飛ばされたブートレグはうつ伏せに倒れたまま、起き上がるのに苦労をしている。
「これでも喰らえっ!」
スコーピオンユーザーが尾から紫色の液体が大量に噴出される。
流石にこれ以上は不味いと思い、転がりながら避ける。
絶体絶命の中ではあったのだが、突然スコーピオンユーザーは噴射を止めた。
「悪いな。
「……それって、あの人達が探していた女の人のことですか?」
「知ってるのか。なら話が早い。そうだ。俺はその女をお前から奪う」
「僕から? どうしてです?」
何とか足を使って立ち上がったブートレグ。
「あの女がお前のものなことがムカつくんだよ……! 折角この身体を手に入れられたんだからなぁ、ぜってぇやってやる……!」
何処か歪んだ決意をするスコーピオンユーザーに、ブートレグは既視感を覚えた。
彼とは以前に話した記憶は無いのだが、動機に1つ思い当たる節がある。
「まさか……貴方は……!」
「さて、もう見つかったみたいだからな、俺はそっちに行くぜ。じゃあな」
するとスコーピオンユーザーの体色が濃さを増していき、黒くなった身体が崩壊して後ろの方へと流れて行った。
ブートレグも自身の身体を崩壊させ、意識を病院のトイレの個室にあった本体に戻した。
もし自分が考えていることが本当だとすれば、彼女が危ない。
優司はすぐさまスマートフォンを取り出し、何処かに電話をかけた。
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一方の翡翠邸では、花蓮が自室で絵麻と一緒にいた。花蓮はデスクの前の椅子に座りながら、タブレット端末で『蚊と感染症の関わりについて』という見出しのネットニュースを読み、絵麻はソファに寝転がりながらスマートフォンで小説を読んでいる。
「ねぇ絵麻ちゃん」
「ん?」
「絵麻ちゃんってさ、優司君のこと好きだよね?」
「え!?」
大きな声を出して驚き、身体を起こす。
「そ、そんなわけないでしょ! 何であんな、あんな奴のこと好きになるのよ!?」
「じゃあ私が優司君を取っちゃおうかな〜。こないだの件で結構距離縮まったからな〜」
「それは駄目っ!」
突然声を出したことに自分でも驚いてしまう絵麻に対し、花蓮はニヤニヤと笑みを浮かべる。
それ以上何も言い出せずにいた絵麻に、花蓮は訊いた。
「どうして優司君のことが好きになったの? 小さい頃から一緒にいたから?」
「……そうなんだけど、もう一つあって──」
それは、優司が留学生として上米町にやって来て数週間しか経っていない頃。
絵麻は同級生の樋口にしつこく絡まれていた。樋口は元から絵麻に好意を持っていたらしく、自分と付き合うようにと毎日のように迫って来た。
優司と一緒に帰り始めたことで、少しは魔除けのようになると思っていた。
だがそれがいけなかった。
優司がある日、樋口とその取り巻き達に呼び出されて暴力を受けた。非力な彼が対抗を出来るわけがなく、なされるがままだった。
そこに絵麻が先生を連れて止めた。仕方無く樋口達は退散。事無きを得たのである。
大丈夫? と絵麻が話しかけると優司はこう言った。
ごめん……。僕にもっと力があったら、あんな奴から君を守れるのに……。
何とも言えない気持ちになった。
彼が今襲われたのは自分のせいなのに、どうして──。
ただ優司が苦しそうに微笑むのを見て、絵麻は思わず顔を背けた。
「──それで一気に好きになった、ってわけね?」
無言で絵麻は頷いた。
「好きならさっさと告っちゃえば良いのに〜」
「そんな勇気無いよ……。勇気が無いから、いつもそっけない態度をとっちゃう……」
「……どうする? 今告らないと私に取られちゃうよ」
いつもの花蓮の笑顔が更に怖く感じられてしまう。
自分がやる気を出すか。それとも、このまま現状維持で姉に大切な人を取られるか。
しかも先日の件で優司と花蓮の仲は静かに進展しそうだ。もしここで手を打たなければ、手遅れになってしまう。
「それに、その樋口っていう人、今は意識不明の重体でずっと学校来てないんでしょ?」
「うん。……ん? 何でお姉ちゃんがそのこと知ってるの?」
「風の噂」
確か樋口はスパイダーユーザーに襲われて怪我をして入院とのことだった。
情報というのは必ず何処かで手に入れられるものなのであるが、引きこもりの花蓮がどうして自分のクラスメイトの情報まで持っているのか。客が話しているのを見たのか。だとしたらその客の情報源は何処なのか。
デスクの方を向く花蓮の後ろ姿すらも怖く感じ取れてしまったその時、大きな窓ガラスがパリンと音を鳴らして割れた。
割れた窓ガラスから黒い首輪をした男達がバットを持って次々と入って来た。
「な、何なの貴方たっ……!」
花蓮の腹部に一人の男がスタンガンを当て、その場に倒れさせる。
「お姉ちゃん!」
その攻撃は絵麻の方にも襲い掛かって来た。
首筋に激しい痛みを覚え、すぐさま目の前が真っ暗になる。
男達は絵麻を抱き抱えると窓から立ち去って行く。
これで部屋の中には花蓮と割れた窓ガラスの破片だけが残る形になった。
【参考】
サソリ - Wikipedia
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%e3%82%b5%e3%82%bd%e3%83%aa)
さそり男|仮面ライダー図鑑|東映
(https://www.kamen-rider-official.com/zukan/phantoms/742)
最終的に優司にはどっちと結ばれて欲しいですか?
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花蓮
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絵麻
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どっちもって手もあるんじゃないか……?